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旧軍未登記財産の処理について

平成13年3月30日
財理第1330


改正令和2年1月31日財理第325号

同 3年6月11日 同 第1932号

財務省理財局長から各財務(支)局長、沖縄総合事務局長宛

旧陸軍省、海軍省及び軍需省(以下「旧軍」という。)が民間から買収等により取得した不動産又は取得したと認められる不動産について、その所有権の移転登記若しくは保存登記が完了していないもの(以下「旧軍未登記財産」という。)については、今後は別紙旧軍未登記財産事務処理要領によることとしたから通知する。

おって、次の通達は廃止する。

昭和42年6月24日付蔵国有第1072号「旧軍未登記財産の処理について」

昭和48年4月13日付蔵理第1807号「旧軍買収未登記処理連絡会の設置及び運営について」

別紙

旧軍未登記財産事務処理要領

第1基本方針

旧軍未登記財産は、速やかな処理に努めるものとし、原則として旧所有者との交渉により、旧所有者に所有権移転登記承諾書等の提出を求めて処理するものとする。

旧軍未登記財産は、原則として新たに売払い、交換、譲与若しくは出資(以下「売払い等」という。)、貸付け若しくは私権の設定(以下「貸付け等」 という。)又は所管換を行ってはならないものとする。

ただし第4の1又は2に該当する場合はこの限りでない。

第2具体的措置

旧軍未登記財産の処理は、口座又は団地(以下「口座等」という。)毎に内容を把握の上、これを一体として処理するものとする。

なお、次に掲げる事項に該当するものがある場合には、口座等にかかわることなく優先して処理するものとする。

(1)旧所有者(国に旧軍未登記財産を譲渡した者又はその相続人をいう。以下同じ。) が当該財産について売払い等若しくは貸付け等を行ったもの又はそのおそれがあるもの。

(2)旧所有者等のために取得時効が完成するおそれがあるもの。

(3)旧所有者が所有権移転登記の請求に応じないため、国が登記義務者としての責任を問われているもの又はそのおそれがあるもの。

(4)旧所有者により当該財産に担保物件が設定されているもの又はそのおそれがあるもの。

(5)国において公用、公共の用に供し又は供しようとするもの。

旧軍未登記財産のうち保存登記未了のものについては、速やかに保存登記の手続きを行うものとする。

旧所有者に対する交渉等

(1)旧所有者に対しては、口座等を単位とする全体の処理計画を定め、買収挙証資料等に基づき交渉を行い、交渉の状況に応じ、交渉継続により処理が見込まれるものと交渉が困難なものとに分類して処理を進めるものとする。

この分類において交渉継続により処理が見込まれるものについては、交渉を継続し極力移転登記承諾書及び印鑑証明書の提出を求めて処理を終了させるものとする。

(2)旧所有者と交渉して所有権移転登記承諾書及び印鑑証明書の提出を受けた場合において、登記申請に要するその他の書類が整備しないため直ちに所有権移転登記ができない場合は、仮登記の嘱託を行うものとする。

交渉が困難な場合の処理

旧所有者が移転登記の承諾に応じない場合には、原則として法務局と協議(現地調査を含む。)の上、所有権移転登記請求訴訟の提起を依頼する。この場合、国の権利の保全措置として、仮登記仮処分命令による仮登記又は譲渡等禁止の仮処分をあらかじめ依頼するものとする。

また、仮登記又は仮処分を完了した後は、旧所有者に対して文書(内容証明)により移転登記義務の履行を催告するものとする。

なお、それぞれの現況に応じた取扱いについては、次に掲げるとおりとする。

(1)国が占有している場合

国に取得時効が完成していると認められるものについては、法務局と協議の上、訴訟によりその援用を図るものとする。ただし、訴訟維持が困難なものについては、それぞれの実情に応じて適切な措置を採るものとする。

また、他省庁に関係のあるものについては当該省庁と十分連絡をとるものとする。

(2)国以外の者が占有している場合

現在財務局(福岡財務支局及び沖縄総合事務局を含む。)が有する買収挙証資

料に基づき法務局と協議の上、訴訟維持が困難である旨の法務局の意見書が出たものについては、財務局長(福岡財務支局長及び沖縄総合事務局長を含む。以下同じ。)の確認書(又は決議書、以下同じ。)により国有財産台帳から除却するものとする。

旧所有者が取得時効を援用することが見込まれ、国に勝訴の見込みのないものについては、財務局長の確認書により国有財産台帳から除却するものとする。

国有財産台帳から除却した場合は、それぞれ別紙「旧軍未登記財産整理簿」に登載整理するものとする。

財務局長は、法務局の意見書により旧所有者に取得時効が完成していると認められるものについて、旧所有者がその意思により買受け又は借受けることを条件に移転登記承諾書を提出した場合には、これにより処理を行うことができるものとする。

なお、旧所有者が買受けを希望する場合は、平成13年3月30日付財理第1267号「誤信使用財産取扱要領」通達の第4に準じて処理するものとする。

(3)国が処分済の場合

買収挙証資料が十分でない場合で国が既に売払い等をしたものについては、売払い等の相手方からの要請があれば移転登記ができるよう、旧所有者をして国への所有権移転登記に応じてもらうよう極力努めるものとし、旧所有者が応じない場合には、その実情に応じて適切な措置を採るものとする。

なお、訴訟維持が困難である旨の意見書が出たものについては、「旧軍未登記財産整理簿」に登載し、整理しておくものとする。

(4)旧所有者が処分済の場合

旧所有者が売払い等した旧軍未登記財産については、おおむね次によるものとする。

旧軍未登記財産を旧所有者から二重に譲渡を受けた者が自己のために所有権移転登記をしている場合。

(イ)旧所有者が国以外の者に二重に譲渡した場合においては、旧所有者に対し、当該譲渡当時における価格に、当該譲渡当時から損害賠償金の納入時までの日数に応じて民法第404条所定の利率により算出した利息相当額を加算した金額を、債務不履行に基づく損害賠償金として請求することの可否について法務局の意見を徴し、請求可能なものについてはその措置を執るものとする。

(注)これらの場合、債権を確定する前に法務局と協議することに留意すること。

(ロ)旧所有者が租税物納している場合には、直ちに国税当局に対し、当該財産は旧軍買収未登記財産である旨の通知を行うものとする。

旧所有者から二重に譲渡を受けた者が自己のために所有権移転登記をしていない場合においては、直ちに法務局と協議の上、仮登記、仮処分による保全措置を講ずるものとする。また仮登記、仮処分を完了した後は旧所有者と交渉して国への所有権移転登記に応じてもらうよう努めるものとする。

第3抵当権設定財産の処理

旧所有者が旧軍未登記財産に抵当権を設定している場合の処理については、おおむね次によるものとする。

旧所有者及び抵当権者と交渉して抵当権の登記を抹消してもらい、国への所有権移転登記に応じてもらうよう努めるものとする。

旧所有者の資力、信用等から判断して抵当権設定登記の抹消が困難であると認められるものについては、抵当権設定登記の抹消がないままで旧所有者と交渉して国への所有権移転登記に応じてもらうよう努めるものとする。

抵当権が実行された場合には、旧所有者に対し、第2の4の(4)のイの(イ)に準じた請求措置を執るものとする。

第4取扱細目

財務局長は、地方公共団体若しくは政府関係機関に対し旧軍未登記財産の売払い等又は所管換を行う必要があると認めた場合において、当該売払い等又は所管換の相手方の責任において登記事務の処理を図るべき旨の条件を付するときは、次の事項を相互に確認の上、第1の2の規定にかかわらず売払い等又は所管換を行うことができるものとする。

(1)当該旧軍未登記財産について存在する買収挙証資料

(2)取得時効の完成又は見込み

(3)国の採っている保全措置

(4)当該旧軍未登記財産の現況(所在、数量、旧所有者名等)及び参考事項(位置図、環境を示す図面等)

(5)旧所有者との交渉経過及び処理の見込み

(6)旧軍未登記財産のまま売払い等又は所管換を行う理由

(7)売払い等又は所管換の相手方の責任において登記事務の処理を図ることに関する当該相手方との特約

財務局長は、旧軍未登記財産の貸付け等を行う必要があると認めた場合において、貸付け等に伴い紛争を生じたときは当該相手方の責任において処理する旨の条件を付するときは、1に準じて取り扱うことができるものとする。

財務局長は、買収挙証資料その他必要な資料の管理保全について十分の配慮を行い、資料を散逸させる等公正な事務処理を妨げることのないように努めるものとする。

関係機関等との連絡については、次により十分その効果を挙げるように努めるものとする。

(1)旧軍未登記財産の事務処理については、必要に応じ国有財産監査官及び訟務担当者等の協力を求め、事務処理の万全を図るとともに、財務局相互間において積極的に協力する。

(2)所轄法務局、地方法務局及び弁護士との連絡を緊密にして、常に適切な措置を採るよう留意する。

旧所有者が所在不明の場合には、公示送達又は不在者の財産の管理人を選任する等の措置を講ずるものとする。

旧所有者が国への所有権移転登記を承諾した場合には、当該財産が国有であることの証明書を発行する等できるだけ既納にかかる固定資産税相当額の還付を受けられるようあっせんするものとする。

旧軍未登記財産でないことが明らかとなった場合又は財務局長等が旧軍未登記財産でないことを確認した場合において国有財産台帳から除却するときは、「(台帳登載時の事由)の誤謬訂正」の事由により整理するものとする。

第5特例処理

本通達により処理することが困難な場合は、詳細な理由及び資料を付して処理案につき理財局長の承認を得て処理するものとする。

第6書面等の作成等・提出等の方法

電子ファイルによる作成等

本通達に基づき、作成等を行う書面等(書面その他文字、図形その他の人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。以下同じ。)については、電子ファイルにより作成等を行うことができる。

電子メール等による提出等

(1)本通達に基づく提出等の手続のうち、書面等により行うこととしているものについては、電子メール等の方法により行うことができる。

(2)上記(1)の方法により提出等を行うときは、電子ファイルをもって行うものとする。

適用除外

上記1及び2の措置は、本通達に規定する手続のうち、次に掲げる場合については適用しないものとする。

(1)第1の1、第2の3の(1)及び第2の4の(2)の二の規定により所有権移転登記承諾書及び印鑑証明書の提出を求め、又は提出を受ける場合

(2)第2の4の規定により、旧所有者に対して文書(内容証明)により移転登記義務の履行を催告する場合

(3)第4の5の規定により、公示送達をする場合

(4)第4の6の規定により、財産が国有であることの証明書を発行する場合