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普通財産を信託する場合の手続きについて

昭和 61 年 12 月 25 日
蔵理第4889


改正平成元年 4月 1日 蔵理 第 1668 号

12年 12月 26日 同 第 4612 号

18年 11月 22日 財理 第 4375 号

21年 2月 19日 同585 号

24年 5月 22日 同 第 2445 号

28年 4月 1日 同 第 1190 号

28年 6月 23日 同 第 2094 号

令和元年 6月 28日 同 第 2319 号

3年 6月 11日 同 第 1932 号

4年 6月 15日 同 第 2129 号

大蔵省理財局長から各財務(支)局長、沖縄総合事務局長宛

国有財産法(昭和 23 年法律第 73 号)第 28 条の 2 から第28 条の 5 の規定により普通財産である土地(その土地の定着物を含む。以下「普通財産」という。)を信託する場合の手続きについては、下記によることとしたから、通知する。

また、国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)第16条の2に規定する「財務大臣が定める事項」については、下記第1の4によることとされたので、命により通知する。

なお、普通財産の信託を行う場合には、国有財産法、財政法(昭和 22 年法律第 34 号)、会計法(昭和 22 年法律第 35 号)等の定めるところに従い、財政上最も国の利益に適合するよう処理しなければならない。

第1信託しようとする場合の手続き

財務大臣への承認申請

普通財産を信託することについて、普通財産取扱規則(昭和 40 年大蔵省訓令第 2号)第 5 条第 7 号イの規定に基づき財務大臣の承認を受けようとするときは、信託することを適当と認める理由及び次に掲げる事項を記載した普通財産信託調書を作成の上、図面その他の関係書類を添付して財務大臣に申請するものとする。

(注)普通財産の信託については、国有財産法、同施行令(昭和 23 年政令第 246 号)等に定めるもののほか、信託法(平成 18 年法律第 108 号)等の適用があることに留意する。

(1)信託の目的

信託の目的は、当該土地の規模、位置、形状、環境等の立地条件並びに当該地域における都市計画法(昭和 43 年法律第 100 号)等の土地利用に関する法的規制及び将来の発展動向による事業の採算性等を勘案し、かつ、当該土地に対する行政需要等を考慮して、賃貸型、処分型又は管理処分型の別及び信託財産の用途を定めるものとする。

(注)土地信託は、信託の目的により一般に賃貸型、処分型又は管理処分型に分類することができる。

賃貸型は、普通財産の有効活用を図るため、受託者に当該土地を信託し、受託者が建築物等を建築してこれを賃貸することを目的とする。

処分型は、普通財産の有効活用又は処分の促進等を図るため、受託者に当該土地を信託し、受託者が造成又は建築物等を建築してこれを処分することを目的とする。

管理処分型は、普通財産の有効活用又は処分の促進等を図るため、受託者に当該土地を信託し、受託者が管理及び賃貸を行うとともに、権利調整、造成又は建築物の建築等を行いこれを処分することを目的とする。なお、貸付財産への適用にあたっては個別の状況や特性、あるいは貸付料の収納状況等を勘案して財産の選定を行う。

(2)受託者の選定方法

受託者の選定方法は、競争によることを原則とし、会計法令上随意契約が認められる場合には、随意契約によることができるものとする。

(注)受託者については、信託法においては特に限定していないが、信託を業として行い得る者は、信託業法(平成 16 年法律第 154 号)による免許又は金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和 18 年法律第 43 号)による認可を受けた者に限定されていることに留意する。

(3)信託期間

信託期間は、信託の目的、借入金の返済方法等の業務内容を勘案して、次に掲げる期間を限度として定めるものとする。

賃貸型の場合20 年以内

処分型又は管理処分型の場合5 年以内

(4)信託の収支見積り

信託の収支見積りは、信託期間について、各年度毎に事業収入から事業支出を控除して差額を求め、その差額の累計額によって算定するものとする。

なお、借入金返済額については、信託期間内において借入金の返済が完了するよう算定するものとする。

(注)信託の収支見積りは、事業内容等を勘案して、例えば、次のような項目について算定する。

(イ)事業収入

賃貸型の場合

近傍類似の民間賃貸実例に比準して年額賃貸料を求め、信託期間に相応する賃貸料に修正して求める。

(注)敷金、入居保証金等の預り金の運用益については、信託期間に相応して求める。

処分型の場合

近傍類似の民間処分実例に比準して求める。

管理処分型の場合

受託者が管理及び賃貸する期間にあっては、A賃貸型の場合に定める収入とし、また、処分を行う際にはB処分型の場合に基づく収入とする。

(ロ)事業支出

賃貸型の場合

借入金返済額、諸経費及び信託報酬について、次に掲げる支出項目により信託期間に相応する支出額を求める。

(A)借入金返済額及び諸経費

  • 借入金返済額

  • 維持管理費

  • 公租公課

  • 損害保険料

  • 借入金利息

  • その他の経費

(B)信託報酬

処分型の場合

建築物等の建築工事費、造成工事費及び諸経費並びに信託報酬について求める。

管理処分型の場合

受託者が管理及び賃貸する期間にあっては、A賃貸型の場合に定める支出項目とし、また、処分を行う際にはB処分型の場合に定める支出項目及び借地権を取得する場合には借地権取得費用を支出として求める。

(5)信託の事業計画及び資金計画

事業計画は、信託の目的、建築物等の建設コスト等を総合的に勘案し、かつ、当該土地の規模、位置、形状及び現在の管理態様に応じ公共性、公益性にも配慮して事業の基本計画及び実施計画について定めるものとする。

資金計画は、事業の所要資金及び所要資金の調達計画について定めるものとする。

(6)受託者が当該信託に必要な資金の借入れをする場合の当該借入金の限度額

受託者が当該信託に必要な資金の借入れをする場合の当該借入金の限度額は、信託財産(土地に限る。)の価額の範囲内で、かつ、信託財産の建築等及び信託の事務処理に必要な経済性を十分勘案した最小限度の金額にとどめるものとする。

国有財産地方審議会への付議

普通財産を信託しようとする場合には、信託することにつき財務大臣の承認を受けた上、信託の目的、受託者の選定方法、信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間について、財務局長が国有財産地方審議会に諮問し、その議を経るものとする。

なお、会計法第 29 条の 6 第 2 項の規定により受託者を選定する場合には、価格及びその他の条件としてどのような事項を競争の対象とするかについて、当該審議会の意見を聴かなければならない。

(注)普通財産を信託しようとする場合において、借入金限度額が100 億円を超えると見込まれるときは、財務大臣が財政制度等審議会に諮問し、その議を経る。

会計検査院への事前通知

普通財産を信託しようとする場合には、信託の目的、受託者、信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間について、図面その他の関係資料を添えて契約予定日(入札の場合は、入札予定日)の 10 日前までに理財局長を経由して会計検査院に通知するものとする。

信託契約の締結

信託契約を締結する場合は、次の事項を契約書において明らかにするものとする。

(1)受託者は、信託財産から信託事務の処理に関する費用及び信託報酬を支弁すること。

(2)受託者は、信託期間中に災害その他の特別の事情が生じたことにより借入金限度額を超えて借入れをしようとする場合には、事前に国に申請し、承認を受けなければならないこと。

(3)受託者は、信託財産の建築物等の工事については、原則として一般競争入札によらなければならないこと。

(4)受託者は、信託財産を賃貸する場合、処分する場合又は管理処分する場合には入札又は公募による等適正、公正に相手方を選定しなければならないこと。

(5)受託者は、信託法第 48 条第 1 項若しくは第 2 項又は第 53 条第 1 項の規定により信託財産から償還若しくは前払又は賠償を受けようとする場合には、事前に国に申請し、承認を受けなければならないこと。

(6)国は、信託利益の全部を享受する場合において、行政需要等により必要があると認めるときは、当該信託契約を解除することができること。

(7)受託者は、信託財産について、善良なる管理者の注意をもって適正かつ効率的に管理及び処分をしなければならないこと。

(8)受託者は、信託財産の全部又は一部を賃貸する場合には、信託の終了時に国による利用が円滑に行われるよう十分配意するとともに、賃借人の選定、賃貸料その他の賃貸条件について、あらかじめ国に通知するとともに、受託者と賃借人との賃貸借契約において次の条件を付さなければならないこと。

第三者に転貸することを禁止すること。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 122号)第 2 条第 1 項に規定する風俗営業、同条第 5 項に規定する性風俗関連特殊営業及び同条第 11 項に規定する特定遊興飲食店営業(当該地域の性格上、これを付すことが不必要又は不適当であると認められる場合を除く。)並びに暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成 3 年法律第 77 号)(以下「暴対法」という。)第 2 条第 2 号に規定する暴力団の事務所その他これに類する施設(以下「暴力団事務所等」という。)の用に供することを禁止し、違反した場合には催告を行うことなく契約を解除すること。

賃借人が平成 24 年 5 月 22 日付財理第 2445 号「普通財産の管理処分に係る契約からの暴力団排除について」通達の記の 1 に規定する排除対象者(以下「排除対象者」という。)に該当する者であることが判明した場合には催告を行うことなく契約を解除すること。

(9)受託者は、信託財産を処分する場合には、処分価格、処分方法、処分条件(注) 等についてあらかじめ国に通知しなければならないこと。

(注)暴力団を排除するため、次の条件を付するものとする。

暴力団の事務所その他これに類する施設の用に使用してはならないこと。

①に違反した場合には、違約金を支払わなければならないこと。

①に違反した場合、又は処分相手方が排除対象者に該当する場合には、受託者は催告を行うことなく契約を解除できること。

(10)信託の収支計算期等は、次によること。

信託財産に関する収支計算期は、原則として毎年 3 月の末日及び信託期間終了の日とする。

収支計算は、受託者が公正、妥当な会計慣行により行うものとし、当該収支計算書を計算期の翌月末日までに報告する。

収支計算の結果、信託の利益が生じた場合には、当該信託事業の内容を勘案して原則として計算期の翌々月の末日までに国に納付する。

賃貸型の場合において収支計算の結果損失が生じたときには、原則として次年度以降の収益により補填する。

所有権移転登記等

普通財産を信託した場合は、受託者に所有権移転及び信託の登記嘱託請求書を提出させ、不動産登記法(平成 16 年法律第 123 号)の定めるところにより登記を嘱託し、所有権移転及び信託の登記を完了したときは、受託者が登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合を除き、速やかに、受託者に対し登記識別情報を通知するものとする。

信託財産台帳

普通財産を信託した場合は、信託財産の現況及び運用状況を的確に把握し、その適正な運用を図るため、別紙様式「信託財産台帳」を処分担当課に備え付け、記録整理するものとする。

第2信託契約の内容の変更等

普通財産を信託した場合において、信託期間の更新、信託契約の内容の変更その他次に掲げる事務を処理することについて普通財産取扱規則第 5 条第 7 号のロからヘまでの規定に基づき財務大臣の承認を受けようとするときは、その適当と認める理由を記載した調書に関係書類を添付して財務大臣に申請するものとする。

なお、信託期間を更新しようとするとき及び信託契約の内容を変更しようとする場合で信託の目的を変更しようとするときは、その処理につき財務大臣の承認を受けた上、第 1 の 2 により諮問した国有財産地方審議会に諮問し、その議を経るものとする。

(注)財政制度等審議会の議を経て信託したものについては、財務大臣が当該審議会に諮問し、その議を経る。

信託期間の更新

信託期間の更新は、当該信託の事業内容等を勘案して国が期間更新することを適当と認める場合において、かつ、前契約と同一の期間を限度として、これを行うものとする。

なお、信託財産を国において庁舎等として使用する見込みがある場合又は信託財産の運用状況が悪化し、回復の見込みがない場合には、期間更新しないものとする。

(注)国有財産審議会への諮問事項は、更新後の信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間とする。

信託契約の内容の変更

(1)信託の目的の変更は、当該変更することにつきやむを得ない事由があると認められ、かつ、変更後の信託の目的、信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間等の事業内容が適当であると認められる場合に限り行うものとする。

(注)国有財産審議会への諮問事項は、変更後の信託の目的、信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間とする。

(2)信託の目的を除く契約内容の変更は、当該変更することにつきやむを得ない事由があると認められ、かつ、当該変更内容が適当であると認められる場合に限り行うものとする。

借入金の限度額を超える借入れの承認

信託に必要な資金の借入金限度額を超える借入れの承認は、信託期間中における災害その他の特別の事情が生じた場合に限り行えるものとし、当該借入金の合計額は信託財産(土地に限る。)の価額の範囲内であって、かつ、災害等の復旧に必要な最小限度の金額にとどめるものとする。

信託財産からの費用の償還等

受託者の信託法第 48 条第 1 項若しくは第 2 項又は第 53 条第 1 項に規定する信託財産から償還若しくは前払又は賠償を受けようとする場合の国の承認は、信託財産について行政需要等が見込まれない場合に限り行うものとする。

信託受益権の売払い

(1)信託受益権を売払いすることができる場合

信託受益権の売払いは、信託財産について将来の行政需要等が確実に見込まれない場合で売払いすることが適当と認められるときに限り行うものとする。

(2)信託受益権の売払価格

信託受益権の売払価格は、別に定めるところにより売払時の評価額を求め、決定するものとする。ただし、敷金、入居保証金等の返還債務等がある場合には、これらの額を控除して求めるものとする。

第3信託契約の解除等

信託契約の解除

国が信託利益の全部を享受する場合において、信託契約を解除することについて普通財産取扱規則第 5 条第 7 号の規定に基づき財務大臣の承認を受けようとするときは、その理由を記載した調書に関係書類を添付して財務大臣に申請するものとする。

(注)信託契約の解除は、次のような場合が考えられる。

信託財産を国又は公共団体において公用、公共用に供するため必要があると認めるとき。

経済情勢の変化により信託の目的の達成が不可能になると見込まれるとき。

受託者が信託契約に反する行為を行ったとき。

受託者に信託財産に対する管理の失当があったとき。

事業が順調に推移する見込みがなく、債務等の発生を最小限にとどめるためには、契約を解除することが最も適当であると見込まれるとき。

最終計算の承認

信託が終了(解除による終了を含む。以下同じ。) したときは、受託者から最終計算の報告を求め、返還される信託財産の現況、関係図面その他参考となる事項により、その内容を審査の上、適正であると認めた場合には、受託者に対し最終計算を承認するものとする。

残存債務の処理

信託の終了時において、借入金債務その他の債務が残存する場合には、理財局長の承認を得て、①受託者に信託財産の売却を行わせた上残存債務を返済させ、又は②予算措置を講じた上信託財産に繰入れを行って、残存債務を返済させるものとする。

第4特例措置

本通達により処理することが適当でないと認められる場合は、その事由を付した処理案により理財局長の承認を得て処理することができる。

第5書面等の作成等・申請等の方法

電子ファイルによる作成等

本通達に基づき、作成等を行う書面等(書面その他文字、図形その他の人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。以下同じ。)については、電子ファイルにより作成を行うことができる。

電子メール等による申請等

(1)本通達に基づく申請等の手続のうち、書面等により行うこととしているものについては、電子メール等の方法により行うことができる。

(2)上記(1)の方法により申請等を行うときは、電子ファイルをもって行うものとする。

別紙様式(PDF:228KB)