【税制メルマガ第183号】
2025年2月21日
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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 今月は何税の月?「2月:税務代理士法の制定(昭和17(1942)年)」
4 編集後記
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1 はじめに
寒さの厳しい時期も徐々に過ぎようとしておりますが、皆様、如何お過ごしでしょうか。
昨年10月の税制メルマガで、小中高生の財務省訪問における税制検討体験プログラムが新たに選択可能となったことをご紹介しておりました。先日、初めて当該プログラムを希望頂いた中学生一行をお迎え致しました。
日本の財政に関する説明を聞いた後に、税制における「公平」について検討してもらうプログラムを実施し、その後、財務省内を見学して頂きました。鉛筆片手に真剣に考える姿を見て、「少し問題が難しかったかなぁ」とも最初は思いましたが、事後アンケートでは、当該プログラムのレベル感や満足度に良い評価をして頂くとともに、参考教材として「うんこ税金ドリル」も持ち帰って頂く等、来訪頂いた中学生の皆さんにとって、日本の財政・税制を考える良い機会になったのではないかなと感じております。
なお、来訪された中学生一行は、校外学習の一環としての訪問で、テーマを選択するとともに問いを班の仲間と考え、ルートや時間配分も生徒が計画し、課題解決するためのインタビュー等を行うとともに、事後にスライドと新聞にまとめ、発表されるそうとのこと。流石、ユニセフ「子どもにやさしいまちづくり事業実践自治体」に選ばれた自治体の中学校における、こどもの主体性を重視した学習プログラムだと思いました。
そのような貴重な学習の場に財務省を選んで頂き、光栄に思うとともに、是非、他の学校の学習プログラムにおいても、小中高生の財務省訪問・税制検討体験をご活用頂ければ、大変嬉しく思います。
財務省主税局総務課 企画官 境吉隆
・小中高生の財務省訪問 ~いっしょに考えよう!日本の財政と私たちの未来~https://www.mof.go.jp/public_relations/shonai_kengaku/index.html
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2 税制をめぐる最近の動き
HP掲載日 |
内容 |
2月3日 |
令和6年度 12月末租税及び印紙収入、収入額調 |
(1)租税及び印紙収入、収入額調
令和6年度 12月末租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。
・令和6年度 12月末租税及び印紙収入、収入額調
https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/202412.pdf
https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/202412.xls
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3 今月は何税の月?「2月:税務代理士法の制定(昭和17(1942)年)」
2月23日は「税理士記念日」ですが、これは税理士法の前身である税務代理士法が昭和17(1942)年2月23日に制定されたことに由来します。今回の歴史コラムでは、税務代理士法の制定について取り上げます。現在も世界において、税務を専門とする職業が法律により制度化されている国は、日本をはじめ、ドイツ(Steuerberater)、韓国(税務士)、中国(注冊税務師)など限られており、多くの国では会計士などが税務サービスを行っています。
日本において、税理士業務がどのように会計士業務等から分離していったのでしょうか?
(1)計理士法の制定(昭和2(1927)年)
日本における職業会計人制度は、昭和2(1927)年に制定された「計理士法」に基づく計理士から始まります。計理士法第一条において、“計理士ハ計理士ノ称号ヲ用ヒテ会計ニ関スル検査、調査、鑑定、証明、計算、整理又ハ立案ヲ為スコトヲ業トスルモノトス”と規定されました。当時、計理士業界は玉石混淆状態であると批判されました。その背景には、筆記・口述試験を通過して計理士に登録する者よりも、無試験で一定の経歴(既に計理士業務をしていた者や、大学・専門学校で会計学を学び卒業し3年以上会計業務に従事した者等)により登録した者が多くいた点がありました。無試験登録を行った者のなかには、「失業したからとにかく計理士になっておけというものもあり、卒業したから登録だけしようとする者もできてきた」といった状況で、計理士としての実務能力の有無を確認することはできずにいました。このような計理士たちが、会計業務とともに税務も受託しており、昭和14(1939)年の商工省による調査では、受託件数ベースで税務が26%を占めておりました。
こうした状況を改善しようと、計理士たちの団体は計理士法の改正運動を起こします。無試験登録制度の撤廃とともに、計理士制度から税務の職能分離を主張するグループもあり、税務代理人制度の設立を求める建議が帝国議会に提出されたりもしました。他方で、税務と会計が密接不可分の関係にあるとして、それに反対するグループもありました。
このような計理士業界内の意見対立や計理士団体が複数存在していたこともあり、税務と会計の分離は決着がつかない状態が続きます。
(2)税務代理士法の制定(昭和17(1942)年)
昭和15(1940)年に全国単一団体の計理士会が誕生し、昭和16(1941)年に計理士の主務官庁が商工省から大蔵省に移管されると、状況が変化し、昭和17(1942)年に税務代理士法案が第79回帝国議会に提出されます。帝国議会貴族院本会議(昭和17(1942)年1月22日)において、賀屋興宣・大蔵大臣は、税務代理士法案の提出理由を次のように説明しています。
“先ヅ稅務代理士法案ニ付說明申上ゲマス、中上ゲル迄モナク租稅ハ國家財政上極メテ重要ナ地位ヲ占メテ居ルノデアリマシテ、其ノ運營ノ適否ガ、直チニ國政ノ全般並ニ國民ノ利害ニ重大ナル影響ヲ与ヘルノデアリマス、(中略)從ッテ稅務行政ノ適正ナル運營ヲ図リマスコトハ現下喫緊ノ要務デアルノデアリマス、此ノ見地ヨリ致シマシテ、新タニ稅務代理士法ヲ制定シ、稅務代理士ノ制度ヲ設ケ、其ノ素質ノ向上ヲ図リマスルト共ニ、(中略)、其ノ業務ノ公正ヲ期スル爲、稅務代理士ノ資格ヲ限定シ、一定ノ資格ヲ有スル者ガ主務大臣ノ許可ヲ受ケタ場合ニ限リ、稅務代理士タルコトヲ得ルコトト致シマシテ、同時ニ稅務代理士ニノミ限リマシテ、所得稅、法人稅其ノ他ノ租稅ニ關シ、他人ノ委囑ニ依リ稅務官庁ニ提出スベキ書類ヲ作成シ、審査ノ請求等ニ付代理ヲナシ、又ハ其ノ相談ニ應ズルコトヲ業ト爲シ得ルコトト致シタノデアリマス(後略)”
このように、税務業務の公正を期するとともに、税務に携わる者の素質の向上を図るため、許可制となる税務代理士制度が創設され、会計士業務から税理士業務が分離されることになりました。・税理士記念日について(日本税理士会連合会HP)
https://www.nichizeiren.or.jp/cpta/system/history_memorial/
・国際交流(日本税理士会連合会HP)
https://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/interchange/
・公認会計士制度(日本公認会計士協会HP)
https://jicpa.or.jp/cpainfo/introduction/organization/cpasystem/
・計理士法・御署名原本(国立公文書館デジタルアーカイブ)
https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/Detail_F0000000000000030357
・昭和初期における計理士法改正運動(平野由美子 著、立命館学術成果レポジトリ)
https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/records/1026
・税の歴史クイズ 税理士制度ができるまで(国税庁HP)
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/quiz/2502/index.htm
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4 編集後記
立春も過ぎ、段々と気温が暖かくなり、日中過ごしやすいのは嬉しい反面、花粉症の症状も日に日に強くなっており、若干憂鬱な今日この頃です…。さて、令和6年度確定申告も2月17日よりスタートしました。私が去年まで勤務していた税務署は申告件数が管内トップクラスに多く、この時期はずっと確定申告の受付・相談を行っていた記憶があります。面倒で後回しにする気持ちは分かりますが、申告期限日付近は税務署がかなり混雑しますので、相談・申告は早めに行うのがお勧めです。
また、話は変わりますが2月4日、「所得税法等の一部を改正する法律案」が国会へ提出されました。内容については財務省HPにも掲載されておりますので、下記リンクよりご覧ください。来月以降、本メルマガでも税制改正案の内容を解説していく予定となっております。
今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。
財務省主税局総務課 広報係 粟飯原
・財務省ホームページ「第217回国会における財務省関連法律 所得税法等の一部を改正する法律案」https://www.mof.go.jp/about_mof/bills/217diet/index.html
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