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税制メールマガジン第181号 2024年12月27日

【税制メルマガ第181号】 

 2024年12月27日

 

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 今月は何税の月?「12月:シャウプ勧告を踏まえた税制改正(物品税)(昭和24、25(1949、1950)年)」
4 編集後記

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1 はじめに

 2024年も残りあと僅かとなりましたが、皆様如何お過ごしでしょうか?
 昨年(2023年)は、“2023年の今年の漢字”に「税」が選ばれましたが、今年(2024年)は「金」(通算5回目)が選ばれ、「税」は18位(1,785票、0.81%)に止まりました。
 他方、Google検索ランキング2024のカテゴリー(意味を調べる時に使われる)【○○とは】においては、「定額減税とは」が1位、「103万の壁とは」が8位にランクインしており、多くの方々に税制について関心をもって頂いた一年であったと思います。
 また、先月頃から財務省Xに多くの関心が集まり、以前は数万impが平均だったのが、前回の税制メルマガ11月号のX投稿は56万impを達成しました。ただ、リアルタイムで推移を観察していた者の感想としては、最初は普段より少し多めだな、といった水準だったものが、マスコミ(新聞・テレビ)で取り上げて頂いた後に、impが急上昇したことから、やはりマスコミの影響力の大きさを改めて認識した次第です。
 いずれにせよ、SNSや動画では示しきれないような、長い文章の情報をお示しすることがメルマガでは可能なので、2025年も引き続き情報発信に努めて参ります。どうぞ良い年末をお過ごしください。

 

財務省主税局総務課 企画官 境吉隆

・2024年「今年の漢字」第1位は「金」(公益財団法人 日本漢字能力検定協会)
 https://www.kanken.or.jp/kotoshinokanji/former/2024.html
・Google検索ランキング2024
 https://blog.google/intl/ja-jp/products/explore-get-answers/year-in-search-2024/

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2 税制をめぐる最近の動き

HP掲載日

内容

11月5日

ギリシャとの租税条約が発効します

11月8日

政府税制調査会 第4回開催

11月13日

経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合 第1回開催

11月15日

活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合 第1回開催

11月19日

税制のEBPMに関する専門家会合 第2回開催

12月1日

令和6年度 10月末租税及び印紙収入、収入額調

 

 

(1)ギリシャとの租税条約が発効します

 11月5日、日本国政府とギリシャ共和国政府との間で「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約」(2023年11月1日署名)を発効させるための外交上の公文の交換がアテネで行われました。
 下記リンクからプレスリリースをご覧いただけます。 

 ・ギリシャとの租税条約が発効します
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/press_release/20241105_gr.html

 
(2)政府税制調査会 第4回開催

 政府税制調査会の第4回が開催され、石破総理がご出席されました。
 下記リンクから当日の会議資料等をご覧いただけます。

  ・税制調査会(内閣府HPへリンク)
 https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2024/6zen4kai.html
 ・税制調査会(首相官邸HPへリンク)
 https://www.kantei.go.jp/jp/102_ishiba/actions/202411/08zeichou.html
 

(3)経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合 第1回開催

 経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合の第1回が開催され、税務手続や適正・公平な課税・徴収のあり方等や、経済社会のデジタル化を踏まえた税務・税制のあり方について、説明・議論がなされました。
 下記リンクから当日の会議資料等をご覧いただけます。

 ・税制調査会 経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合(内閣府HPへリンク)
 https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/digital-noukan/2024/6digital-noukan1kai.html

 

(4)活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合 第1回開催

 活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合の第1回が開催され、「年金課税と退職所得課税」等について、説明・議論がなされました。
 下記リンクから当日の会議資料等をご覧いただけます。

 ・税制調査会 活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合(内閣府HPへリンク)
 https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/life/2024/6life1kai.html

 

(5)税制のEBPMに関する専門家会合 第2回開催

 税制のEBPMに関する専門家会合の第2回が開催され、「近年の法人税改革の振り返り」や「租税特別措置の検証(中小企業税制)」について、説明・議論がなされました。
 下記リンクから当日の会議資料等をご覧いただけます。 

 ・税制調査会 税制のEBPMに関する専門家会合(内閣府HPへリンク)
 https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/ebpm/2024/6ebpm2kai.html

 

(6)租税及び印紙収入、収入額調

 令和6年度 10月末租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。
 下記リンクから内容をご覧いただけます。

 ・令和6年度 10月末租税及び印紙収入、収入額調
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/202410.pdf
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/202410.xls

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3 今月は何税の月?「12月:シャウプ勧告を踏まえた税制改正(物品税)(昭和24、25(1949、1950)年)」

(1)シャウプ勧告

 今回の歴史コラムでは、シャウプ勧告を踏まえた税制改正の中から、物品税に関する改正について取り上げます。物品税は日中戦争中の昭和12(1937)年に創設され、自動車からコーヒーなどの飲料まで様々なものに課税されていました。特に、戦時下においては、必需的でない商品等は課税の対象とされ、物品税についても大きく引き上げられました。
 戦後、昭和24(1949)年に来日したシャウプ使節団がとりまとめた第一次シャウプ勧告書(昭和24年9月15日)では、直接税を税制の根幹に据えるとともに、物品税の税率引下げ等を含む間接税の見直しが勧告されました。以下、第一次シャウプ勧告における物品税の関連部分になります。

 “多種類にわたる物品に対して、一連の製造者消費税が課されている。その税率は百%、八十%、五十%、三十%、二十%の五段階である。これは製造者価格に対する税率であるから、小売価格に対する税率とくらべると、はるかに軽少なものといえる。今一例をあげると、税を課せられないと仮定した場合には、小売価格は製造者価格の二倍となる商品が、甲類に該当して百%の税を課せられたとすると、税を課せられないと仮定した場合の小売価格の五十%に相当する額を課税されることになるのである。
全般的にいって、われわれはこの税を存置するように勧告する。物品税は、奢侈品または準奢侈品消費に示される担税力に対する間接的課税方法である。
 甲類物品に対する百%の課税は極めて少額の収入にしかならない。即ち今年度の二百七十億円の合計見込額のうちの約一億四千万円を占めるにすぎない。これは一つには広範な徴税によるものといわれている。
大蔵省の提供した資料によって推定するとこの税率を五十%に下げた場合、この税収入は、九千万円になるだろう。しかし原則的にわれわれは、宝石などのような超奢侈品に対して百%が高過ぎるとは信じない。われわれは全く徴税上の理由から税率を七十%まで引き下げるように勧告する。
 乙類物品とは写真機、写真用器材、蓄音機、銃、双眼鏡、ある種の楽器、ライター等を含み、その税率は八十%である。これによる収入は、十三億円であるが、この税率を三十%に引き下げると、収入は六億千百万円に減少すると見積もられる。われわれは、乙類商品の税率を六十%まで引き下げるように勧告する。
 丙類商品の税率は現在五十%である。それはレコード、扇風器、電気及び瓦斯ストーブ、冷蔵器、金庫および鋼製家具およびトランクを含む。この税収入は今年度分、五十一億円と算出されている。大蔵省が提出したこれに関係ある収入見込では、税率を三十%迄引き下げると、収入額は三十六億円に減少するようである。しかし、これは余りに収入を犠牲にし過ぎるものである。これらの物品に対する税率は原則として乙類物品の税率と同率であるべきではない。しかし実際には乙類と丙類とを精緻区別することを正当とするような大きな差異はないのである。従ってわれわれは、丙類物品については五十%の税率を維持するように勧告する。これは大体二十五%の小売課税に等しい。
 丁類物品とは、運動用具、時計、扇子類、簾、ラジオ聴取器、携行用の電灯、計算器及びタイプライター等を含んでいる。現行税率三十%はこれを維持すべきである。これは小売価格に対しては十五ないし二十%にあたるに過ぎない。本年度丁類物品の税収入は、七十三億円と算出されている。
 戊類(新たに丁類となるべきもの)物品は、電球、ミシン、小型自動車、安全剃刀、靴、板硝子、敷物類等である。税率は二十%であり、この収入は百六億円と推算される。われわれは、靴を含む履物は生活必需品であるから、これを免税とするほかは、現行税率を維持すべきことを勧告する。この免税は二億七千六百万円の収入減となるだけである。
(中略)
 ここに勧告する税率の下において、且多少の生産増加を考慮に入れれば1950-51年度の物品税収入は、1949-50年度と同水準即ち二百七十億円にとどまるであろう。
 個々の物品については若干の改正が必要のように思われる。われわれは全品目の一つ一つについてここでのべることはできないが、一つの全般的原則を勧告しよう。それは、専ら、または主として事業に使用される物品、たとえば計算器のようなものは、物品税から全く除いてしまうべきである。奢侈的消費の概念は工場および事務用品に対する支出については概して運用されないものである。”(第一次シャウプ勧告書より)

(2)2回の法改正(昭和24、25(1949、1950)年12月)

  この勧告を踏まえた「物品税法の一部を改正する法律」が第6回国会(臨時会)にて議論され成立・公布されたのが、昭和24(1949)年12月になります。参議院本会議(昭和24(1949)年12月2日)において、櫻内辰郎・大蔵委員長は審議経過等を以下のように報告しました。
 「次に物品税法の一部を改正する法律案の審議の経過並びに結果を御報告いたします。本税法においては、これまで必ずしも適当でない物品を課税対象としており、又その税率も現在の社会生活の実情に照して妥当を欠くと認められる点もあるので、課税物品相互間の権衡等を考慮して、今回の税制改正の一環として物品税の大幅な改正を行おうといたしたのであります。即ち日常生活上必要性の比較的多いと認められる物品並びに主として事務用に供せられる物品等に対する税率、及び余りに高率と認められる第一種甲類及び乙類の税率を相当程度引上げ、新たに従価一割の税率を設けることといたしました。(後略)」

 本改正は翌年昭和25(1950)年1月1日から施行されますが、更なる改正となる「物品税法の一部を改正する法律」が第9回国会(臨時会)にて議論され、昭和25(1950)年12月に成立・公布されます。参議院本会議(昭和25(1950)年12月9日)において、大矢半次郎・大蔵委員長は審議経過等を以下のように報告しました。
 「次に物品税法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。先ず本案の内容について申上げます。物品税につきましては、本年一月事務用品及び日常生活用品につき相当大幅に課税の廃止を行うと共に、税率の引下げが行われたのでありますが、その後における課税物品の生産、取引の実情及び一般日常生活の正常化等を考慮いたしまして、明年一月一日から、現在の課税物品中事務用品及び日常生活用品と認められるものについて課税を廃止すると共に、税率を第一種物品については現行百分の七十乃至百分の十を百分の五十乃至百分の五とし、第二種物品については概ね現行の三分の一程度に軽減しようというのであります。この機会に課税最低限の大幅な引上げ及び新設を行う外、物品税延納の際の担保の範囲を拡張する等、所要の改正を行おうというのであります。(後略)」

  このように、2回の法改正を経て、シャウプ勧告の内容を上回る物品税の税率引下げや整理が行われました。

(3)朝鮮戦争の影響

  ここで着目したいのが朝鮮戦争(昭和25(1950)年6月25日)が物価及び物品税引下げに与えた影響です。当時は、ドッジラインによる緊縮デフレから、朝鮮戦争によるインフレに経済状況が大きく変化しました。これを踏まえた参議院大蔵委員会(昭和25年12月5日)における議論を以下にご紹介致します。

 森下政一議員「主税局長に一つお尋ねしたいと思うのですがね、(中略)こういうふうに非常な御苦心をなさつて物品税を逓減するということに努められた。そうすると常識的に考えると、一番末端の小売価格が、税金が下つたことによつて低落して行くというのが先ず普通の場合だと思われるのですね。ところが朝鮮事変その他の関係で物価はどつちかというと上向きの傾向にあるのじやないかと考えられる。折角物品税の低落に努められたにかかわらず、結果において末端の小売価格にそれならどれほどの影響を及ぼすかということを考えると、大して変らんという結果になるのじやないかということを私は思う。(中略)お見通しはどうですか。」

 平田敬一郎主税局長「(中略)それから物品税でございますが、これは率直に申しまして今年の上半期ぐらいの情勢でございますと、税率を下げると必ず物価はぴたつと下つて来るだろうと思います。最近は状況がやはり大分変つておるものが出て来ておるようであります。従いまして税率を下げましても下つただけ全部のものが下るかどうか、これは相当問題があろうと思います。でございますから例えば木材等の値上りによりましても、これは自然に放つて置きまして、もつと上るところを税が下つたために税の部分だけ上らなくて、減税の分だけ上らなくて済んだという場合もあろうかと思います。いずれにしましてもこの長い目で見ますれば、減税しますれば必ず私はいつかはそれだけ消費者の負担が軽くなる。今すぐ軽くなるか、或いは少し遅れて軽くなるか、それは確かに御質疑の通り問題があるかと思いますが、いつかは必ず軽くなるのじやないか。業者の利潤が減りまして生産がそれだけ殖えまして供給が増加するという方向で、値段はやはり或る程度落ちついて来るというようなことに結局におきましてなるのじやないか。それは併し理窟でございますが、方向といたしましては絶対にそういう方向になるのではないかと思います。今御指摘の通り今年の一月からずつとデパートの小売値段がぴたつと下るかといいますと、なかなかそうは行かんと思います。確かに御指摘のところは多分あるだろうと考える次第でございます。」

 昭和25(1950)年12月30日付の読売新聞夕刊では、「生活ノート 物品税は下がったが さてお値段は?」という記事で、値下がりする物品(板硝子、釣具)や、値上がりする物品(万年筆、ラジオなど)を紹介しています。
 税のみならず、原材料価格や需要など、様々な要因で物価が決まっていることが改めて認識できる事例です。

 

 ・租税史料ライブラリー 19 シャウプ勧告と税制改正(国税庁HP)
 https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/shiryou/library/19.htm

 ・第二次世界大戦と戦後の税制(政府税調答申 わが国税制の現状と課題(令和5年6月)p.22)
 https://www.cao.go.jp/zei-cho/shimon/5zen27kai_toshin.pdf

 ・NETWORK租税史料 物品税の解説展(国税庁HP)
 https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/network/234.htm

 ・第6回国会(臨時会)物品税法の一部を改正する法律(昭和24(1944)年12月27日)
 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/00619491227286.htm

 ・第9回国会(臨時会)物品税法の一部を改正する法律(昭和25(1945)年12月20日)
 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/00919501220286.htm

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4 編集後記

 昨年とは打って変わって今年は厳しい寒さが続いております。今日が仕事納めの方も多いのではないでしょうか。
 「今月は何税の月」では「物品税」について取り上げております。12月は1年で最も消費支出が多い月でもありますが、物価はどのような要因で上下するのか、とても勉強になりました。
 また、本日令和7年度税制改正の大綱が閣議決定されました。今年は与党税制調査会の審議の段階から高い注目を集める改正内容もございました。税制改正の大綱については下記URLよりご確認いただけますので、ぜひご覧ください。
 今月も最後までお読みいただきありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください!

財務省主税局総務課 広報係 粟飯原

 ・財務省HP:「令和7年度税制改正の大綱」
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/20241227taikou.pdf

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