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税制メールマガジン第169号 2023年12月22日

【税制メールマガジン第169号】
 2023年12月22日

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 国際課税への誘い~ポストBEPSプロジェクトの新潮流(最終回)~
4 今月は何税の月?「12月:税制改正大綱」
5 編集後記

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1 はじめに

2023年も残りあと僅かとなりましたが、皆様如何お過ごしでしょうか?霞が関の銀杏並木は12月中旬に入り、ようやく黄色に色づき落葉し始めました。日本だけでなく、世界中で非常に暑い年だったらしく、世界気象機関(WMO)は2023年が観測史上最も暑い年になりそうだと発表しております。
こうなると、「暑」が“2023年の今年の漢字”に選ばれそうなところですが、2位(5,571票、3.77%)という結果となり、報道等でもご存じのとおり、「税」が1位(5,976票、4.04%)に選ばれました。過去を振り返ってみると、「税」が今年の漢字トップ20にランクインしたのは、1997年(18位)、2013年(16位)、2014年(1位)、2019年(10位)の4回。今年の漢字を揮毫された清水寺・森清範貫主は、「国民がシビアに税の行方を見ている。税に対する意識が非常に強いということを改めて感じた」と述べられており、税制の広報担当者として更に精進しなくてはならないと思いを新たに致しました。
そんな2023年も残りあと僅か。大晦日の紅白歌合戦が待ち遠しいところですが、最近、私は八ツ尾順一・大阪学院大教授がYouTubeに公開された税金に関する歌をよく聴いております。「税金~そして人生~」「消費税よ、どこへ行く」「源泉徴収恨み節」等、どれも名曲揃いです。税制に関心のある皆様にも、是非、一度ご視聴頂きつつ、良い年末をお過ごし頂ければ幸いです。

財務省主税局総務課 企画官 境吉隆

・2023 shatters climate records, with major impacts(WMO)
・2023年「今年の漢字」第1位は「税」(公益財団法人 日本漢字能力検定協会)
・八ツ尾順一と税金一座(YouTube)

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2 税制をめぐる最近の動き  

HP掲載日 内容
11月1日
令和5年度 9月末租税及び印紙収入、収入額調
11月1日
ギリシャとの租税条約が署名されました
11月6日
第2回インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議
11月10日
「QuizKnock」と財務省主税局のコラボ動画を公開!
11月10日
暗号資産等報告枠組みの実施に向けた共同声明
11月14日
国境を越えたデジタルサービスに対する消費税の課税のあり方に関する研究会報告書

(1)租税及び印紙収入、収入額調

   令和5年度 9月末の租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

・令和5年度 9月末租税及び印紙収入、収入額調

(2)ギリシャとの租税条約が署名されました

11月1日、ギリシャとの間で「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約」の署名がアテネで行われました。ギリシャとの間では、これまで租税条約は存在せず、本条約は、両国間の経済関係の発展を踏まえ、新たに締結されるものです。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

 ・ギリシャとの租税条約が署名されました

(3)第2回インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議

インボイス制度の施行にあたり、制度開始後最初の確定申告時期までの間の施行状況をフォローアップし、運用上の課題などを把握、共有し、必要な対応策を講じるため、「インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議」が設置されています。その第2回会合が開催され、内閣官房のホームページで議事次第が公開されました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

 ・インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議

(4)「QuizKnock」と財務省主税局のコラボ動画を公開!

クイズ王・伊沢拓司さん率いる東大発の知識集団としてメディア等で大活躍中のQuizKnock【クイズノック】と財務省主税局がコラボした動画を公開致しました。コラボ動画のテーマは「税トリビアでバズれ」。トリビアを通して、楽しみながら税金に関する知識を身につけられるような内容となっています。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

 ・「QuizKnock」と財務省主税局のコラボ動画を公開!

(5)暗号資産等報告枠組みの実施に向けた共同声明

この度、我が国を含む48か国・地域は「暗号資産等報告枠組み(CARF : Crypto-Asset Reporting Framework)の実施に向けた共同声明」を発表しました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

 ・暗号資産等報告枠組みの実施に向けた共同声明

(6)国境を越えたデジタルサービスに対する消費税の課税のあり方に関する研究会報告書

デジタルサービス市場の拡大によりプラットフォームを介して多くの国外事業者が国内市場に参入している中で、 国外事業者の納めるべき消費税の捕捉や調査・徴収が課題となっています。こうした課題等を踏まえ、国境を越えたデジタルサービスに対する消費税の課税のあり方について検討するための研究会を開催し、報告書をとりまとめました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

・国境を越えたデジタルサービスに対する消費税の課税のあり方について
・国境を越えたデジタルサービスに対する消費税の課税のあり方に関する研究会報告書

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3 コラム・国際課税への誘い~ポストBEPSプロジェクトの新潮流(最終回)~

このコラムも、いよいよ最終回になりました。
前回は、「グローバル・ミニマム課税」が①所得合算ルール(IIR: Income Inclusion Rule)、②軽課税所得ルール(UTPR: Undertaxed Profits Rule)及び③国内最低課税(QDMTT: Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)から成っていることと、このうち①所得合算ルールの概要についてお話ししました。
今回は、グローバル・ミニマム課税の残り2つ、すなわち、軽課税所得ルールと国内最低課税についてお話しします(以降では、それぞれIIR、UTPR、QDMTTといいます。)。

UTPRの話を始めるに当たって、まずはIIRを思い出してみていただければと思います。
IIRは、多国籍企業グループ内の子会社等が得ている利益に着目して、その子会社等の所在する国での実効税率が国際的に合意された最低税率15%に満たない場合に、その親会社等に対して、最低税率に満たない部分を課税するという仕組みでした。
こうした制度を前提に、IIRを導入している国に親会社があり、最低税率未満の国(軽課税国)に子会社のある多国籍企業グループがIIRを適法に免れようと思った場合、どのような行動に出るでしょうか。おそらく最もシンプルな方法は、親会社と子会社の所在地国を入れ替えることかと思います。IIRは子会社の実効税率が15%を下回る場合に、その親会社に課税する仕組みですので、親会社を軽課税国に移し、子会社をIIR導入国に移してしまえば機能しません。
こうした状況を想定して、この例で言えば、子会社の所在地国の側で、この子会社に課税する仕組みがUTPRです。つまり、UTPRは、親会社等が軽課税国にあることなどによってIIRが十分に機能しない場合に、子会社等の側から最低税率までの課税を実現する「バックストップ」としての機能を果たします。この点で、UTPRはIIRを補完する役割を担っているのです(※)。

(※)ここでは、もっともシンプルな事案として親会社が軽課税国にある場合を例に挙げています。しかし、実際にはこうした事例に限らず、例えば親会社がIIR未導入国にある場合にも、UTPRが機能する場面は想定されます。例えばIIR・UTPRともに導入していないX国に所在する親会社Pと、その子会社で互いに兄弟関係にあるS1・S2から構成される多国籍企業グループについて、S1が軽課税国Yに、S2がUTPR導入国Zにそれぞれ所在する場合を考えてみてください。この場合も、上記の親会社が軽課税国にある場合と同様に、Pの所在地国XではIIRによる課税が行われませんので、S2に対してZ国でUTPR課税が行われることで、S1に関する最低税率による課税が担保されることになります。

さて、こうしたIIRとUTPRの仕組みを前提に、次はQDMTTの話に進みたいと思います。
QDMTTは、「国内最低課税」という名前のとおり、各国が自国内に所在する会社等についてその最低税率が15%に至るまで課税を行うための仕組みです。これにより、自国に所在している会社等の実効税率が15%を下回っていることによる他国からのIIR課税やUTPR課税を防ぐことが可能になります。
このように説明すると、もともと税率が高い国にとっては、QDMTTは無縁の制度のように聞こえるかもしれません。しかし、仮に、法人税率の高い国であっても、例えば、政策的な特別措置によって税額控除などが付与されていることで、グローバル・ミニマム課税のもとで計算した実効税率が15%を下回る場合は十分に考えられます。そのため、たとえ高税率国であっても、こうした特別措置などの適用の結果として実効税率が最低税率を下回ってしまう場合に備えて、QDMTTを導入する意味はあるのです。

以上で、このコラムでの「グローバル・ミニマム課税」の説明はおしまいです。

最後になりますが、初回のコラムで「共通言語」の話をしたのを覚えていらっしゃるでしょうか。これまでご紹介してきた「経済のデジタル化に伴う課税上の問題への対応」は、国際課税の世界で長らく前提とされてきた「共通言語」に大きな変革をもたらす可能性のあるものです。長らく親しんできた「共通言語」が変わることによる将来への影響は、場合によっては、税の世界にとどまらないものになるかもしれません。
こうした大きな時代の流れの中にある国際課税の世界について、このコラムを通じてそのダイナミズムを少しでも味わっていただけたなら、筆者としてこれ以上の喜びはありません。
4回にわたってこのコラムにお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。来たる2024年が皆さまにとって良い1年になりますように!

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4 今月は何税の月「12月:税制改正大綱」

先月から日本テレビ系列で放送開始となったドラマ・ゼイチョー ~「払えない」にはワケがある~、を楽しく拝見しております。
一方、主税局職員が“ゼイチョー”という言葉を聞くと、徴税吏員ではなく、与党税制調査会もしくは政府税制調査会を思い浮かべます。国民各層や各種団体の税制改正要望等を踏まえつつ、例年、予算編成作業と並行して、税制改正の作業が行われます。その中で、政府税制調査会が中長期的視点から税制のあり方を検討する一方、毎年度の具体的な税制改正事項は与党税制調査会が税制改正要望等を審議し、その後取りまとめられる与党税制改正大綱を踏まえて、「税制改正の大綱」が閣議に提出されます。(参考:身近な税・税制改正プロセス)この税制改正大綱がとりまとめられるのが、例年、12月となっています。
財務省ホームページでは、税制改正の大綱及びその概要とともに、大綱に基づいて財務省が作成し国会に提出した国税の改正法案が掲載されております。最近は過去資料のデジタルアーカイブ化が進んでおり、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)を見ると、平成11(1999)年度税制改正の大綱まで遡ることができます。図書館に籠もらなくても、パソコンの前で大量の資料を検索できる大変便利な時代になったと思います。
WARPの過去資料を見ると、平成21(2009)年度以前に政府税制調査会が毎年11~12月に出していた各年度の税制改正に関する答申を見ることも出来ます。WARPで遡れない政府税制調査会の答申は、公益社団法人・日本租税研究協会のホームページの「税制調査会答申集」にて見ることができます。掲載されている最も古いものは、昭和24(1949)年7月の「税制改正に関する中間報告」で、手書きの縦書き報告書を拝見することが出来ます。
さらに戦前まで遡ると、国立国会図書館リサーチ・ナビの「昭和前半期閣議決定等収載資料及び本文」において、行政財政税制整理調査実行順序要綱(昭和6(1931)年)や税制整理案要綱(昭和11(1936)年)等を見ることが出来ます。
以上のように、今回はデジタルアーカイブにて、過去の税制改正大綱等を遡ってみましたが、いずれもその時代時代の税制改正に対する思いやメッセージが込められております。今般策定された本年の与党税制改正大綱とともに、過去の税制改正大綱等をご覧頂きつつ、その時々の税制改正の動きを改めて確認頂くのも、年末年始の過ごし方として良いかもしれません。

・身近な税「税制改正のプロセスについて教えてください。」
・財務省HP「税制改正の概要」
・公益社団法人・日本租税研究協会「税制調査会答申集」
・国立国会図書館リサーチ・ナビ「昭和前半期閣議決定等収載資料及び本文」
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5 編集後記

早いものでもう令和5年も終わりが近づいておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今年1年を振り返ってみると、7月に主税局に着任し、今までとは全く違う環境下で仕事をする中で、様々な経験をすることができた貴重な年であったと改めて感じます。悔いの残らない1年にするために、年末に向けてより一層気を引き締めて日々を過ごしたいと思います。
さて、今回の税制メルマガですが、今月で国際課税に関するコラムが最終回となります。奥が深い国際課税に関する世界を楽しんで頂ければ幸いです。
また、「今月は何税の月」では「税制改正大綱」について取り上げております。与党での議論を経て、本日「令和6年度税制改正の大綱」が閣議決定され、令和6年度税制改正案の内容が固まりました。財務省HPから確認していただけますので、ぜひご覧ください。
今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

財務省主税局総務課 広報係 高木

・財務省HP:「令和6年度税制改正の大綱


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