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税制メルマガ第161号 2023年4月5日

【税制メルマガ第161号】 
 2023年4月5日

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 学習まんが「税金のひみつ」が完成しました!
4 令和5年度税制改正の内容紹介 ~法人課税~
5 連載コラム「税制のプロに聞く」(第8回)
6 編集後記

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1 はじめに

 「所得税法等の一部を改正する法律」が国会で可決・成立し、3月31日に公布されました。これで令和5年度改正の議論は一区切りです。しばらくすると、令和6年度改正の議論が始まりますが、各省庁においては、所管業界の要望も踏まえ、検討をスタートさせています。

 さて、3月10日に、学習まんが「税金のひみつ」がリリースされました!1年以上前から構想を練り、何度も校正を重ねて、ようやく完成したものです。全国の小学校、図書館、児童館に無償配布され、電子版は無料で公開しています。詳しくは、以下で紹介していますので、是非、チェックしてみて下さい。

 今月のコラム「税制のプロに聞く」は、税制第一課で資産税を担当する岡崎補佐です。税制第一課には、所得税、資産税、通則法規の3つのグループがあり、主税局の6課室(総務課、調査課、税制第一課、税制第二課、税制第三課、参事官室)の中でも最も大きな課になっています。

財務省主税局総務課 企画官 松井誠二

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2 税制をめぐる最近の動き  

HP掲載日  内容
3月3日  BEPS防止措置実施条約が香港との租税条約に適用されます
3月17日  BEPS防止措置実施条約がルーマニアとの租税条約に適用されます
3月28日  「所得税法等の一部を改正する法律案」が国会で可決・成立しました
4月3日  令和4年度 5年2月末租税及び印紙収入、収入額調

(1)BEPS防止措置実施条約が香港及びルーマニアとの租税条約に適用されます
中国が我が国と香港との間の租税条約について、また、ルーマニアが我が国との間の租税条約について、BEPS防止措置実施条約の規定の適用を開始するための国内手続が完了した旨の通告を行いました。

下記リンクから内容をご覧いただけます。
<香港>

<ルーマニア>

(2)「所得税法等の一部を改正する法律案」が国会で可決・成立しました
下記リンクから内容をご覧いただけます。

(3)租税及び印紙収入、収入額調
令和4年度 5年2月末租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。

下記リンクから内容をご覧いただけます。


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3 学習まんが「税金のひみつ」が完成しました!

 この度、学研様とコラボして、学習まんが「税金のひみつ」をリリースしました。本漫画は、私が昨年6月に着任してから長期にわたり制作してきた作品ですが、学研様と最初に打合せを行ったのは、なんと3年前に遡ります。前々任者から、歴代の想いが引き継がれた漫画が歳月を経て、ついにリリースする運びとなりました。個人的に、今年度の広報施策の中で1、2位を争う、非常に思い入れのある作品ですので、ネタバレにならない程度に、こだわりのポイントを厳選して紹介させていただきます!
 ※「税金のひみつ」は、全国の小学校や図書館、児童館等に寄贈されます。デジタル版は、以下のHPから無料でご覧いただけます。
 <学研まんがひみつ文庫>
  https://bpub.jp/gakken-himitsu/item/510000005027
 <学研キッズネット>
  https://kids.gakken.co.jp/himitsu/library-social002/

 漫画のストーリーには特にこだわりました。主人公のタイキが、叔父さんが営むパン屋で新発売のデラックスコロッケパンを買おうとしますが、消費税分のお金を持ってこなかったため、普通のコロッケパンしか買えませんでした。そこで、叔父さんが消費税の意義等を説明するのが、前半の流れになります(タイキはこの段階では説明を理解できません)。叔父さんの説明では、小学生でも分かりやすいよう、丁寧な表現にすることを意識しました。
 中盤以降は、タイキが夢の中でゲームの世界に入りこみ、その世界で税金を納める意義を学ぶストーリーとしています。納税の仕組みが破綻するとどうなるのか、ゲームを通して、タイキが自分事として感じられるように工夫しました。
 物語全体を通して、タイキの成長はもちろん、タイキとリン(タイキのクラスメート)の距離感の変化にも注目です!

 各ページの端に1行で書いている「まめちしき」もポイントが盛りだくさんです。子供たちに学んでほしい税の知識は何か、一語一句正しい表現になっているか、平易でわかりやすい文章か、順番はこれでよいかなど、関係部署などにも確認をとりながら、丁寧に作業をしてきました。時には意見のすれ違いで、議論がヒートアップしたこともありましたが(笑)、最後は関係者全員が納得のいく内容に仕上げることができました。ぜひ楽しみながらご覧ください。全てのまめちしきを学ぶことで、税金マスターになれること間違いありません!

 計9点の「コラム」もよりすぐりの内容となっています。身の回りで税金が使われている公共施設をクイズ形式で出題したり、税金の歴史をわかりやすいイラストで解説したりと、より深く税について学べるような内容にしていますので、読み飛ばさずに読んでいただければ嬉しいです。

 その他、キャラクターの表情やジェスチャー、各シーンのイラストや色、配置等、細部にまでこだわりました。学研様とは数えきれないほど何往復もやりとりし、冗談抜きで漫画全体を100回以上読んだのではないかと思います(私自身、様々な漫画を読むのですが、ここまで反復して漫画を読んだことはなく、今後もないと思います(笑)。

 少しでも多くの子供たちに本漫画を楽しみながら読んでいただき、税金の大切さを学んでいただければ幸甚でございます。

 制作にかかわっていただいた、学研の皆様、漫画家のおがたたかはる先生、アドバイザーの北先生のほか、財務省・国税庁の関係部署、総務省、関係団体の皆様には、改めて感謝申し上げます。

財務省主税局総務課 広報係長 對馬

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4 令和5年度税制改正の内容紹介 ~法人課税~

 令和5年度税制改正では、法人課税についても、(1)研究開発税制、(2)企業による先導的人材投資、(3)オープンイノベーション促進税制等の改正を行いました。

(1)研究開発税制
投資を増加させるインセンティブを更に強化しました。具体的には、一般型の控除率カーブについて、試験研究費の増加率に応じたメリットをより高める一方、控除率の下限を引き下げ、メリハリのある見直しを行いました。控除率が上限に達した企業に対してもインセンティブが機能することを期待し、一律に設定されていた控除上限を変動させる新たな仕組みも導入しました。
また、オープンイノベーション型において、研究開発型スタートアップ企業の定義を見直すことにより対象が大幅に拡大しました。
さらに、新たなビジネスモデルの開拓につながるよう、サービス開発のための試験研究について、既存ビッグデータを活用する場合も研究開発税制の対象としました。

(2)企業による先導的人材投資
企業の成長を先導する人材を創出するための取組みを後押しする次の措置等を講じました。
・ 大学や高等専門学校、専門学校を設置する学校法人の設立費用として企業が支出する寄附金について、個別の審査を受けなくても全額損金算入が可能となる枠組みを設けました。
・ 高度な研究人材への投資を促し、国際競争に資するハイレベルでオープンなイノベーションを促進する観点から、博士号取得者や、一定の経験を有する研究人材を外部から雇用することに対し、研究開発税制のオープンイノベーション型における新たな類型を創設しました。

(3)オープンイノベーション促進税制
既存企業によるスタートアップ企業のM&Aを後押しする観点から、既存株式を取得した場合にも、オープンイノベーション促進税制の適用を可能としました。
その際、M&Aから5年以内に「成長要件」を満たした場合は減税メリットがその後も継続する仕組みとし、スタートアップ企業の急速な規模拡大や、成長投資の後押しを図ります。

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5 連載コラム「税制のプロに聞く」(第8回)

 主税局税制第一課資産税係の岡崎と申します。資産税係では、相続税・贈与税、登録免許税と地価税(現在は課税停止中)を担当しております。

 先日、令和5年度税制改正法令が公布され、気が付けば季節は春ですね。
 春は、別れと出会いの季節。この時期は、卒業祝い、入学・就職祝いなどを贈ったり、贈られたりすることも多いと思います。そんな時、「ん?贈与税ってどうなるんだっけ?」と気になった方もいらっしゃると思います。このようなお祝い金は、相続税法基本通達で「社会通念上相当と認められる」範囲においては贈与税が課税されないこととされていますのでご安心ください。
 このように贈与税は意外と身近なところに潜んでいます。

 相続税は、平成27年から基礎控除が引き下げられ、それまでに比べ相続税がかかる人の割合が増えました(とはいえ、課税割合は10%に満たないですが)。
 近年、相続を契機として所有者不明となる土地が全国レベルで発生し、社会問題化するケースがあります。その一因として、民法上、遺産分割に期限が設けられていないことが挙げられますが、本年4月施行の民法改正や、来年4月施行の不動産登記法改正などにより、一定の改善が期待されています。相続税には、この問題が顕在化する前から、小規模宅地特例(租税特別措置法69条の4)において遺産分割が適用の要件になっているなど、遺産分割を促進する効果があると言われています。

 このほか、相続税・贈与税というと事業承継税制を思い浮かべる方がいらっしゃると思いますが、この制度は、会社の株式等に関連する措置であるため、会社法や倒産法を前提としています。
 登録免許税は、不動産登記や商業登記の際に納付する税であるため、不動産登記法や商業登記法を前提としています。
 このように民法や会社法、登記法など、比較的皆さんの身近にある法律にも関連するのが資産税の特徴だと思います。

 また、資産税は、家族のつながりにも関わりがある税と言えます。
 例えば、相続税は、取得した財産に応じて課税されますが、遺産の分け方次第で特例の適用を受けられるか否かの運命が分かれ、相続税の負担が大きく異なる場合もあります。本来、遺言者の遺志に従ったり、相続人間で協議したりして遺産を分け、その結果に基づいて相続税を納めていただくのが制度の予定しているところですが、相続税が課税される方々は、相続税の負担を考慮し、逆算して遺産分割等をしているという実態もあります。
 最近は利用件数が少なくなりましたが、教育資金贈与の非課税措置は、おじいちゃん・おばあちゃんがお孫さんのために教育資金を贈与しても贈与税が非課税になることから、平成25年度の制度創設当時、相当もてはやされていました。一方で、「毎年孫を連れて帰省していた子が、一括贈与を機に帰省しなくなったので、贈与を取り消したい。」という声も耳にしました。若年世代への資産移転を通じた経済活性化がこの特例の意義の1つでしたが、家族のつながりに思わぬ副産物を産んでしまった例といえます。

 我が国の相続税は、「法定相続分課税方式」という他国にない独特の方式を採用しています。この方式が採用されたのも生前贈与の加算期間が3年(今回の改正で7年に延長)とされたのも、いずれも昭和33年度の相続税法改正でした。相続税自体は明治38年からありますが、戦後の民法改正やシャウプ勧告を経て、昭和25年に生まれ変わった相続税法はドイツやフランスのような「遺産取得課税方式」を採用していました。それから僅か8年で見直された「法定相続分課税方式」は現在まで維持されています。

 当時も熱心な議論が重ねられ、政府の税制特別調査会で「相続税制度改正に関する特別調査会答申」(昭和32年12月)がとりまとめられました。その一節に次のような記述があるのでご紹介します。
「相続税は、他の租税のように毎年繰り返して課税されるものと異なり、相当長期間に1回課税されるものである。しかも、その税収入の租税収入全体のうちに占める地位は僅かなものである反面、相続税の課税が個々の納税者に与える影響は極めて重大なものがある。このようなことから、相続税は、他の租税のように経済の変動や財政事情に直接結びついて改正をひん繁に行うことは適用ではなく、むしろ相当長期の見通しに基づいて安定した相続税制度を確立することが必要であると考える。」

 先人が残してくれたこの道しるべは令和時代の相続税にも通じるのではないでしょうか。また、相続税・贈与税が家族のつながりにも関わりが深い税であることからも、その改正は慎重に行わなければなりません。
 現実的には様々な要請があり、必ずしもこの理念に則った改正ができるわけではありませんが、担当者としては、こうした理念を肝に銘じつつ、必要な改正を検討していきたいと心掛けています。

財務省主税局税制第一課 課長補佐 岡崎猛

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6 編集後記

 今年は桜の開花がかなり早かったですね。どこにお花見に行こうかと考えているうちに満開の時期が来てしまい、慌てて近所の公園へ桜を見に行きました。花粉症と闘いながらの花見でしたが、春を満喫することができました。

 今号の連載コラムは、資産税担当の記事をお届けしました。教育資金贈与の非課税措置に関する、「一括贈与を機に帰省しなくなった」との声があったというエピソードが印象的でした。

 今号も最後までお読みいただきありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

財務省主税局総務課 広報係 内田


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