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税制メルマガ第151号 2022年6月1日

【税制メルマガ第151号】 
 2022年6月1日

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 「税制の学習マンガ」の作成について
4 若手コラム
5 編集後記

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1 はじめに

 税制メールマガジンをご覧いただいている皆さん、こんにちは。財務省主税局総務課の企画官(広報担当)の和田良隆です。

 第151号の税制メールマガジンをお届けさせていただきます。

 最近の広報活動としては、引き続き、令和4年度税制改正の内容等について、講演、授業などさせていただいています。先日も、北陸財務局が提供している寄付講座の関係で金沢大学でお話をさせていただきました。受講生の皆さんには私のこなれない話を真剣に聞いていただき感謝しかありません。

 令和4年度税制改正に関しては、講演等、多くの依頼をいただいておりますので、インフォグラフィクスを駆使した動画を作成中です。近日中には完成予定ですので、是非、楽しみにしていただければと思います。

 さて、このポストについて以降、若者の方々に対する広報に力を入れてきました。うんこ税金ドリルの制作などは、その取組みの一環ですし、今後も学習マンガやインフルエンサーとのコラボなど、色々と企画検討していきたいと思っています。

 それに関して、5月31日に、大変興味深いオンラインイベントに参加しました。金融財政事情研究会さんが開催された、
 『税の将来について考える! これからの税制ってどうなるの? 政府税制調査会委員に若者の声を届けよう』
と題するwebシンポジウムです。政府税制調査会の3人の委員の皆さんに対して、若者代表として共に20代のPoliPoliの伊藤和真さん、POTETO Mediaの古井康介さんが、ご自身や仲間の若者から集めた税制に関する疑問や質問をぶつけておられました。

 税制・経済の専門家と若者のピュアな思いが交錯した議論は本当に面白く、個人的に特に印象に残ったものとして、
 ・シンポジウムのタイトルにあるような『どうなるの?』というスタンスではいけない。これからの税制を『どうしたいのか』。若者も含めて、一人一人が社会のあり方、税制のあり方に意見を持たないといけない。
 ・社会保障の充実度合いと税金の負担が連関していることが良く分かった。これまで授業で習った記憶がない。もっと多くの若者にこうした社会の仕組みを認識して欲しいと思うし、しっかりと伝えて欲しいと思う。
 ・例えば日本で言えば租庸調や地租改正など、世界の歴史は税制によって動いてきたと言っても過言ではない。税の視点から歴史を見るのも面白いと思う。
などのご意見がありました。

 税のあり方について主体性を持って考えるという点や、そのためにも社会保障、租税負担などのファクトをしっかりと発信していくことが大事だと思いました。若者の意見も踏まえて、これからも分かり易い広報を心掛けていきたいと思います。

 このオンラインイベントの模様は、6月6日から金融財政事情研究会のホームページでアーカイブ配信される予定とのことです。もしご関心がありましたら、是非ご覧になってみてください。

 今回も本編の前に長々と失礼いたしました。それでは皆さん、今月号の税制メールマガジンをお楽しみ下さい! 

 主税局総務課 企画官 和田良隆
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2 税制をめぐる最近の動き  

掲載日
 内容
5月27日 アゼルバイジャンとの新租税条約について実質合意に至りました
5月24日 税制調査会(第11回総会・5月24日開催)会議資料
5月17日 税制調査会(第10回総会・5月17日開催)会議資料
5月9日 令和3年度 4年3月末租税及び印紙収入、収入額調

(1)アゼルバイジャンとの新租税条約について実質合意に至りました
日本国政府とアゼルバイジャン共和国政府は、現行の租税条約(所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約、1986年発効)に代わる新条約について、このたび実質合意に至りました。

 下記リンクから詳細をご覧いただけます。
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/press_release/20220527Aze.html
 
(2)税制調査会
5月17日に第10回総会が開催され、5月24日には第11回総会が開催されました。「働き方の変化」について外部有識者からのヒアリングが行われました。

 下記リンクから会議資料等をご覧いただけます。(内閣府ホームページへリンク)
 https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/index.html


(3)令和3年度 4年3月末租税及び印紙収入、収入額調

令和3年度 4年3月末の租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。

 下記リンクから内容をご覧いただけます。
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/202203.pdf


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3 「税制の学習マンガ」の作成について

 皆さん、こんにちは。主税局総務課広報係の柏木です。
 本号では、現在作成中の「税制の学習マンガ」について少しメルマガでとりあげたいと思います。
 主税局では、昨年夏から、「うんこ税金ドリル」の作成や「もっと知りたい税のこと」の動画化など、税制についてより分かりやすく知っていただきたいことから新たな取組を行ってきたところです。

 (参考)うんこ税金ドリル
  https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei0311.html

 (参考)「もっと知りたい税のこと」の動画
  https://www.youtube.com/watch?v=zB37i8vBAzU

 その思いとしては、「我々の生活と深く関わりを持つものである一方で、とかく複雑で、専門的であるとの印象を持たれがちな税制について、正しく理解を深めてほしい」というところからくるものです。

 また、税についてある程度知識を持っている方への広報活動はもちろんなのですが、普段生活する上では税についてあまり意識していない方もいます。
 例えば、将来の納税者となる子どもたちなどがそうです。(私自身、学生時代、特に小学生や中学生の際に実感するのは消費税くらいでした・・・)

 こういった「そもそも税についてあまり馴染みのない方」に対してどのようなアプローチができるかについて広報担当として考え、その一つとして「税制の学習マンガ」を作ることとしました。

 一見文章だと頭に入りづらい内容でも、分かりやすいイラストと子どもが入り込みやすいストーリーにすれば、手に取ってくれる方もいるのではないでしょうか。また、学習マンガには、豊富な豆知識やコラムも盛り込む予定であり、大人が読んでも十分楽しめる内容にしたいと考えています。(電子書籍として無料でご覧いただける形で公開予定です。)

 リリースは来年の春を予定しており、まだまだ先ですし、その際にはこのメルマガでもご報告したいと思いますが、今回は少しだけその作成状況についてご報告します。
 
 まず、税制の学習マンガを作るにあたって気を付けた点として、我々、主税局職員は税制についてのプロである一方で、子どもたち向けの学習マンガの作成については知見がありません。
 そのため、主税局職員のみで作った学習マンガについて、それを読む子どもたちに全く響かず、おいてけぼりにならないようにすることが重要であると考えました。

 そうしたことから、先日、学習マンガ作成に先立ち、ストーリーについて小学校・中学校の現役の先生方に集まっていただき、ご意見を頂戴しました。
 先生方からいただいた主な意見としては以下のようなものです。
 ・小学生にせよ、中学生にせよ、「税の三原則」といったような抽象的な内容ではなく、具体的な内容まで落とし込まないと理解がついてこない
 ・税に馴染みのない子どもたちに対しては、「年間の義務教育にかかる費用が○○万円」など、自分事で考えるような身近な事例が必要

 普段の生活でそもそも税に馴染みのない子どもたちに対しては、眠くなるような抽象的な内容ではなく、イメージが着くような事例も交えて広報することが大事ということで、やはり実際に教育の現場に携わってらっしゃる先生方から生の声を聴くことは大変貴重な機会となりました。

 ストーリーの具体的な中身については、まだまだ構成段階ではありますが、先生方からいただいたご意見なども踏まえながら、これから形になっていくと思うと、広報担当として、今から完成が待ち遠しいです。一人でも多くの子どもたちが、税制について考えてくれるようなきっかけになってくれるとよいなと、楽しみにしております!
 メルマガをご覧の皆さんも、リリースされた際にはぜひチェックしてくださいね!

主税局総務課 広報係 柏木

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4 若手コラム 

 読者の皆さん、こんにちは!主税局調査課外国係です。今回はカナダの消費課税制度についてご紹介します!

 過去のメルマガをご覧になった方はご存じだと思いますが、フランスの回(2022年3月号)では付加価値税制の歴史について、ドイツの回(2021年12月号)では連邦と州の関係性について、それぞれ深堀りして解説しました。今回取り上げるカナダは、ドイツのように連邦制国家であり、また税制でいえば、フランスのように試行錯誤を重ねて付加価値税の導入に至ったという経緯があります。後ほど説明しますが、現行のカナダの消費課税制度は、私たちの感覚からすると少々複雑な制度になっており、今回のメルマガでは、なぜそのような複雑な制度となったのかを紐解いていきます。ぜひ、過去の2つのメルマガの応用編のような気持ちでお読みくだされば幸いです!

 まずはカナダにおける消費課税制度の概要からご説明します。
 先程述べたようにカナダは連邦制の国家であり、中央政府にあたる連邦政府、地方政府にあたる13の州・準州政府から構成されます。消費課税制度について言えば、連邦税にあたる財貨・サービス税(Goods and Service Tax: GST)、州税にあたる小売売上税(Provincial Sales Tax : PST)、連邦・州の共通の税としての統合売上税(Harmonized Sales Tax : HST)が存在します。
※ケベック州では、Québec sales tax (QST)と表記されます。
 消費課税だけでも3種類の税が存在するというのは、私たちの感覚からすると少々複雑な制度に思えますね!以下では、このような制度となった背景について、解説いたします。

 今から遡ることおよそ100年前、第一次世界大戦による財政危機に直面したカナダ連邦政府は、従来の関税依存の連邦収入に加えて、連邦所得税を導入しました。その後1920年には、小売段階以外の取引段階に課税する取引高税を導入、1924年には取引高税を発展させる形で、現在のGSTの前身となる製造者売上税(Federal Sales Tax :FST)を導入しました。FSTは小売段階以前の取引段階に課税し、製造業者等を納税義務者とする間接税で、導入以降カナダの間接税収の大部分を占めてきました。
 連邦によるFSTの導入後、各州においても、小売段階に課税する消費課税の一種であるPSTを導入する動きが強まりました。ちなみに憲法上各州は独自の間接税を設けることができないのですが、小売業者や中間業者は納税義務者である消費者から税を代理徴収しているに過ぎないとの解釈によって、直接税として位置づけています。こうして、消費課税において連邦のFSTと州のPSTが存在するという二重構造が生まれました。

 その後、FSTについては、税率が複数あるために執行費用や納税費用が大きい、課税ベースが狭い(サービスには課税されない)といった問題点が指摘されるようになりました。さらには、連邦のFSTと州のPSTが併存する状況を改善するため、これらを統一的に運営し、徴税と納税のコストを削減するような税制が、連邦の政府委員会より度々提案されてきました。

 こうした状況を踏まえ、連邦政府は1987年のホワイトペーパーで、連邦と各州の協議の上、FSTとPSTを統合させ、単一税率かつ課税ベースの広いHSTを導入することを提案しました。なお、各州がHSTの導入に合意しない場合は連邦単独で、HSTと同様の機能を持ちつつ、HSTからPST分の税率を引いた税率で課税されるGSTを導入することとしていました。

 ところが各州は課税の裁量権を失うことから、州における直接税の課税自主権を認めた憲法に違反するとして、連邦の提案に強く反発しました。GSTについては、課税ベースが広くなることにより、低所得者への負担が大きくなるのではないかといった懸念や、導入までの準備期間が短いことにより、税制上の混乱を招く恐れがあるといった懸念から世論の反発も強く、州政府としては、このような不人気な税とPSTをあえて統合することによって、選挙時に不利益を被りたくないといった考えもあったようです。

 連邦と各州の協議は難航し、結果として1991年にはHSTの導入が見送られ、連邦単独でGSTを導入しました。連邦は各州がHSTの導入に踏み切ることができるよう、HSTにおける連邦分の税率のさらなる引下げやHSTの導入によって予想される州税の減少分を補填するといった提案を出してきました。こうした提案もあり、1997年にはニュー・ブランズウィック州、ノバ・スコシア州、ニューファウンドランド州の3州がHSTを導入、その後2010年にはオンタリオ州、2013年にはプリンスエドワードアイランド州が導入し、現在、併せて5つの州でHSTが導入されています。

 消費課税を巡る動向は各州の事情に応じて異なり、以下のように大きく3つに分かれて現在に至ります。
①GSTのみ課される州(アルバータ州、ヌナブット準州等)
…これらの州では、従前からPSTを課していませんでした。例えばアルバータ州は財政面で余裕があるため、PSTを課す必要がありませんでした。
②GSTに加えて、PSTも課されている州(ブリティッシュ・コロンビア州、マニトバ州等)
…これらの州では、前項で説明した課税の裁量権の喪失等を理由に、導入を見送っています。
③HSTのみ課される州(ノバ・スコシア州、オンタリオ州等)
…これらの州では、連邦による徴収事務の一本化による州政府のコスト削減や企業の負担減を図る狙いからHSTを導入しました。

 今回はカナダの消費課税制度について解説いたしました。今回の例のように、一見して複雑に見えるような制度の裏には、政治的・経済的事情が深く絡み合っています。

 諸外国の制度を参考にする上では、現行制度をスナップショットのように切り取って考えるのではなく、現行制度に至るまでの歴史的経緯やその国特有の政治・経済の制度も踏まえて理解する必要があります。
 当係では引き続き諸外国の税制について、制度の背景も含めて調査を進めてまいります!

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5 編集後記 

 6月に入りました。先月はGWがありましたが、6月は祝日がないですね。また、6月は梅雨で洗濯物が乾かなくなるのがつらいので、個人的には我慢の季節です。気が早いですが、夏休みに何しようか考えながら元気に過ごしたいところです。 

 今回の若手コラムではカナダの税制についてお送りしました。消費課税の種類が複数あり、州によって適用される税の種類も違うとなると引っ越ししたときには混乱しそうですね。
カナダといえばという話はないのですが、カナダのトルドー首相が伊勢志摩サミットの際に宿泊したホテルに泊まったことがあります。(トルドー首相が泊まった部屋ではないですが。)部屋からも英虞湾や志摩半島を眺められ、自然に囲まれた場所でとてもリラックスできました。少し足をのばせば伊勢神宮へお参りもできます。今年の夏はどこに行こうかなと考えている方にはおすすめです。

 今月も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
 主税局は7月に大きな異動があるため、現体制でのメルマガは次回で最後となります。どんな内容をお届けするのか考え中ですが、次回の税制メールマガジンもよろしくお願いいたします。

 主税局総務課 広報係 田中

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