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税制メルマガ第147号 2022年2月1日

【税制メルマガ第147号】 
 2022年2月1日

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 令和4年度税制改正の大綱「住宅ローン控除」についての解説
4 主税局職員コラム
5 編集後記

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1 はじめに

 税制メールマガジンをご覧いただいている皆さん、こんにちは。財務省主税局総務課の企画官(広報担当)の和田良隆です。

 第147号の税制メールマガジンをお届けさせていただきます。

 今回は、令和4年度税制改正の大綱「住宅ローン控除」についての解説、主税局職員コラム(スイスの税制の概要)などのコンテンツをご紹介させていただいております。是非、楽しくご覧になっていただければと思います。 

 さて、先月号のメールマガジンでも言及させていただきましたが、昨年末に令和4年度税制改正大綱が閣議決定されました。その概要について、1月20日に、政府税制調査会(第7回総会)が開催され、事務局より委員の先生方に対して、ご報告したところです。
 その際、「賃上げ促進税制」や「住宅ローン控除等の見直し」といった改正項目については、改正の背景となる状況・データについてもご説明させていただきました。  

 政府税制調査会で使用した資料については、以下のURL(内閣府ホームページへのリンク)からご覧になれます。 
 https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/3zen7kai1.pdf 

 いくつかご紹介させていただきますと、賃上げ促進税制に関して、平均賃金の国際比較のデータがあります(URL先資料の10ページ)。OECDのものですが、日本の平均賃金を米国、ドイツ、英国、フランス、韓国と比較しています。我が国では、ここ30年間、平均賃金が横ばいで推移する一方で、近年では、韓国に抜かれて、比較した国々の中では最低になっています。 

 また、企業が支出する教育訓練費の経年データも掲載されています(URL先資料の11ページ)。OFF-JT(業務を離れて行う研修)と自己啓発支援(資格取得等)に分けて整理されていますが、全体として、10年間の間に大きな変化は見られず、残念ながら近年では減少傾向になっています。
 さらに、このOFF-JT、自己啓発支援に関して、両方とも行っていない企業が4割から5割程度存在しており、企業の人的資本に対する投資が低調な状況にあることが見て取れます。

 こうした中、昨年10月に総理の所信表明演説で、「企業が長期的な視点に立って、株主だけでなく、従業員も、取引先も恩恵を受けられる『三方良し』の経営を行うことが重要である」という視座が示されたところです(URL先資料の14ページ)。 

 これらの様々な観点を踏まえ、「成長と分配の好循環」の実現に向けて、積極的な賃上げを促すとともに、株主だけでなく従業員、取引先などの多様なステークホルダーへの還元を後押しする観点から、一定規模以上の企業については、マルチステークホルダーに配慮した経営を宣言することを要件としつつ、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化するという内容になっています。

 賃上げ促進税制に限らず、税制改正の各項目には、そうした結論に至った背景があります。年明け以降、主税局でも、税制改正の内容に関して、広く一般にご理解いただけるよう、機会を捉えてご説明すべく努めています。足下、コロナの感染状況が再び拡大しており、予定された説明会が延期・キャンセルになるケースも多いのですが、オンライン方式なども駆使して、コロナに負けずにしっかりと取り組んでいきたいと思っています。
 もしご関心がありましたら、下記URLから是非お申込み下さい。  
 http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/houmon.php 

 今回も本編の前に長々と失礼いたしました。それでは皆さん、今月号の税制メールマガジンをお楽しみ下さい! 

 主税局総務課 企画官 和田良隆
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2 税制をめぐる最近の動き  

掲載日
 内容
1月25日 所得税法等の一部を改正する法律案国会提出
1月20日 税制調査会第7回総会
1月5日 令和3年度11月末租税及び印紙収入、収入額調

(1)所得税法等の一部を改正する法律案国会提出
  下記リンクから内容をご覧いただけます。
  https://www.mof.go.jp/about_mof/bills/208diet/index.htm

(2)税制調査会第7回総会
  下記リンク(内閣府ホームページへのリンク)から会議資料等をご覧いただけます。
  https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2021/3zen7kai.html

(3)令和3年度11月末租税及び印紙収入、収入額調
  令和3年度11月末の租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。
  下記リンクから内容をご覧いただけます。
  https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/202111.pdf


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3 令和4年度税制改正の大綱「住宅ローン税制」についての解説 

 令和4年度税制改正の大綱
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/20211224taikou.pdf

 令和4年度税制改正の中でも、特に注目された「賃上げ促進税制」と「住宅ローン控除」について、前号では「賃上げ促進税制」についてご紹介しましたが、今号では「住宅ローン控除」についてご紹介します。

 本格的な人口減少・少子高齢化社会が到来する中、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた対策が急務となっております。こういった社会環境の変化等に対応した豊かな住生活を実現するためには、住宅の省エネ性能の向上及び長期優良住宅の取得の促進とともに、既存の住宅ストックの有効活用及び優良化を図ることが重要であることから、現下の経済状況も踏まえつつ、住宅ローン控除制度の見直しを行うこととしております。

 この住宅ローン控除制度の具体的内容は、次のとおりです。

 <住宅ローン控除制度>
 住宅ローン控除制度の適用期限を4年間延長することとし、カーボンニュートラルの実現の観点から、新築住宅及びリフォームにより良質化した上で販売する買取再販住宅においては、認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅について借入限度額の上乗せ措置を講じることとしております。また、これまで新築住宅に限定していた上乗せ措置について、既存住宅においても講ずることとしています。さらに、令和6年以降に建築確認を受ける新築住宅については省エネ基準の要件化を行うなど所要の措置を講じることとし、住宅分野の脱炭素化を推進します。
 控除期間については、新築の認定住宅等について13年間とする上乗せ措置を講ずることとし、床面積要件については、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅において、合計所得金額1,000万円以下の者に限り、40heihoumeter.gifに緩和することとしております(それ以外の場合は50heihoumeter.gif以上が対象となります)。
 また、毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回る状況が生じていることに対する会計検査院の平成30年度決算検査報告に対応する観点から、制度の簡素性も踏まえ、控除率を0.7%とすることとしております。また、住宅ローン控除の適用対象者の所得要件は2,000万円に引き下げることとしております。

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4 主税局職員コラム 

 読者の皆さんこんにちは。財務省主税局総務課の主税企画官(歳入担当)の佐藤栄一郎です。昨年も税制については様々な議論がありました。
 中でも、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」という国際的な議論の場では、合意内容の一つとして、過度な法人税の引下げ競争によって各国が法人税収を十分に確保できない状況に歯止めをかけるため、グローバル・ミニマム課税を導入することに合意するという画期的な出来事がありました。これにより、著しく低い税率でグローバル企業を誘致することに歯止めがかけられることから、企業間でより公平な競争条件が確保されることが期待されています。

 このように世界レベルでの共通ルールが求められているのは、グローバル企業が国境を越えて事業を展開する中で、各国が課税権をもつことで多様な税制度が世界中に存在するからに他なりませんが、これと同じようなまだら模様の状況が一国の中に存在する国が世界には存在します。その一つがスイスです。
 スイスは人口約860万人、面積4.1万㎢程度と九州とほぼ同じ広さの国ですが、国内にはカントンと呼ばれる26の州(及び準州)があり、さらに州内には多くの市町村(コミューン)が存在します。九州ほどの国の中に20以上の州が存在するだけでも驚きですが、さらにこれらの州には強力な自治権が認められているため各々が独自の税制度を有し、州境をまたげば納税者の税負担が異なるのは当たり前となっています(なお、州や市町村の税金とは別途、共通の連邦税も課されています)。ちなみに、スイスには4つの公用語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語)が存在するなど、税制面だけでなく文化面でも多様な世界が広がっています。

 このように税制度がバラバラになっている現状については、州間の租税競争をはじめ様々な問題が指摘されるようになり、これによる弊害是正のため、例えば、1990年代には税制の調和を図るための基本法が定められ、納税手続や罰金制度についての調和が進められてきました(他方、現在においても税率表や免税額の決定権は自治体に委ねられています。)。また、州に対してもし財政の自治を完全に任せてしまうと、州の中には財源が豊かな州と乏しい州が存在するため、地域間の格差が避けられない問題となります。そこでスイスでは、連邦(国)と豊かな州から財源を捻出して地域間の財政調整を行うことで、州の財政自治を守ってきました。

 国際的にも問題視されている租税競争は、公共サービスの提供に不可欠な税源の喪失や公平な競争環境の阻害といったデメリットをもたらすおそれがありますが、スイスではこのような問題を含めたデメリットを解決するため、以上述べたような取組を進めているのです。自治権と公平性のバランスの確保は、スイスにとって引き続き大きな課題になると考えられます。

 主税局総務課 主税企画官 佐藤 栄一郎

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 5 編集後記 

 今月号では令和4年度税制改正の大綱の住宅ローン控除についての解説を掲載いたしました。住宅ローン控除の改正は今回の改正の中でも注目度が高いように思うので、ぜひご覧いただければと思います。

 私が税務署で勤務していた際にも申告相談では住宅ローン控除に関するものが多かったように思います。住宅ローン控除は住宅を購入する方の多くが利用する比較的身近な税制ですが、かなりの頻度で制度が変わるので、税務署職員の確定申告前の研修でもよく取り上げられていたのを思い出しました。(当然ですが、)財務省では確定申告前研修はないので、自分で勉強しなくてはと思っています。

 今月も最後までお付き合いいただきありがとうございます。次回の税制メールマガジンもよろしくお願いいたします。

 主税局総務課 広報係 田中

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