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税制メルマガ第146号 2021年12月24日

【税制メルマガ第146号】 
 2021年12月24日

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 令和4年度税制改正の大綱「賃上げ促進税制」についての解説
4 若手コラム
5 編集後記

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1 はじめに

 税制メールマガジンをご覧いただいている皆さん、こんにちは。財務省主税局総務課の企画官(広報担当)の和田良隆です。

 第146号の税制メールマガジンをお届けさせていただきます。

 12月24日に令和4年度税制改正の大綱が閣議決定されました。与党の税制改正大綱が決定された10日以降、報道もされていますので、お目にされた方もいるかもしれませんが、令和4年度改正では、「賃上げ促進税制」と「住宅ローン控除等の見直し」が大きな改正項目となっています。今回は、そのうち「賃上げ促進税制」に関して、ご紹介させていただいています。是非ご覧ください。

 私は本年7月に主税局に着任しましたので、初めて税制改正プロセスを体験させてもらいました。その過程では、本当に多くの関係者があるべき税制について真剣に議論して結論を導いていきます。その際、「税だけで世の中を変えることはできない」ということを謙虚に認識しつつも、やはり税制は社会経済に大きな影響を与えるため、足下、社会経済に起きている変化やあるべき社会経済の姿を考え抜くという行為が非常に重要だなと個人的に感じた次第です。

 また、税制改正というのは、毎年の議論の積み重ねが非常に重要視されるということも感じました。昨年、もしくはそれ以前から検討された内容が、今年実を結ぶこともあったのだと思います。それはすなわち、今年、検討課題として結論が出なかった事項でも来年以降、しっかりと議論を継続して答えを出していくということです。よりよい社会経済を支える税制を不断に追及する大切さを学んだ気がしています。

 あるべき税制の検討は続きます。これからも微力ながら頑張っていきたいと思います。

 前回のメールマガジンで、富山大学経済学部で講義をさせていただいたときに出したクイズをこちらでも紹介させていただきました。

 「鉄道に関する通行税は、明治38年に創設され平成元年までありました。創設当時、税額を決める基準は2つありましたが、乗車距離ともう一つは何だったでしょう?」

 こちらのクイズの答えを発表させていただきます。

 答えは、「乗車する座席の等級」です。

 通行税は、日露戦争の戦費を賄うために、明治38年(1905年)に制定され、鉄道や船の運賃に課税されました。創設当初の通行税は、「距離」と「等級」の双方に基づき税額を決めていました。
 例えば、200マイル以上乗車する場合、3等車では通行税は4銭でしたが、1等車では50銭だったそうです。10倍以上も違ったんですね。

 今回も本編の前に長々と失礼いたしました。それでは皆さん、今月号の税制メールマガジンをお楽しみ下さい! 
 
 主税局総務課 企画官 和田良隆
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2 税制をめぐる最近の動き  

掲載日
 内容
12月24日 令和4年度税制改正の大綱が閣議決定されました
12月20日 小学生向けの学習用ウェブコンテンツを提供しました。(学研キッズネット、Yahoo!きっず)
12月1日 令和3年度10月末租税及び印紙収入、収入額調

(1)令和4年度税制改正の大綱が閣議決定されました
     下記リンクから内容をご覧いただけます。
     税制改正の大綱
     https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/20211224taikou.pdf
     税制改正の大綱の概要
     https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/04taikou_gaiyou.pdf
(2)小学生向けの学習用ウェブコンテンツを提供しました。(学研キッズネット、Yahoo!きっず)
    下記リンクから内容をご覧いただけます。
  学研キッズネット 
      https://kids.gakken.co.jp/jiyuu/category/research/japanese_unique_tax/" 
     Yahoo!きっず
      https://kids.yahoo.co.jp/study/social/soc040.html

(3)令和3年度10月末租税及び印紙収入、収入額調
  令和3年度10月末の租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。
  下記リンクから内容をご覧いただけます。
   https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/202110.pdf


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3 令和4年度税制改正の大綱「賃上げ促進税制」についての解説 

 令和4年度税制改正の大綱
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/20211224taikou.pdf

 12月24日に、「令和4年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。

 令和4年度税制改正では、成長と分配の好循環の実現に向けて、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点から賃上げに係る税制措置を抜本的に強化するとともに、スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進するための措置を講じます。また、カーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえ、住宅ローン控除等を見直します。加えて、景気回復に万全を期すため、土地に係る固定資産税等の負担調整措置について、激変緩和の観点から所要の措置を講じます。

 今号と次号では、令和4年度税制改正の中でも、特に注目された「賃上げ促進税制」と「住宅ローン控除」について、ご紹介します。今号は、「賃上げ促進税制」です。

 岸田内閣では、官と民がそれぞれ役割分担をして、成長と分配の好循環を生み出す、新しい資本主義の実現を目指しています。
 そのために、まずは成長戦略を加速化させた上で、成長の果実を国民一人一人に分配していくこととしており、
 政府としては、民間企業の賃上げを支援するため、
・賃上げ税制の抜本的強化
・人への投資を積極化させるための3年間で4000億円規模の施策パッケージの創設、
・下請けGメン倍増による下請け取引の適正化
・中小企業が原材料費や労務費の上昇分を適切に転嫁できるよう、施策パッケージの策定と産業界への働きかけの実施
などの環境整備に取り組んでいくこととしています。

 この賃上げ税制の抜本的強化(賃上げ促進税制)の具体的内容は、次のとおりです。

<賃上げ促進税制>
 今般の税制改正においては、岸田内閣が掲げる「成長と分配の好循環」の実現に向けて、長期的な視点に立って一人一人への積極的な賃上げを促すとともに、株主だけでなく従業員、取引先などの多様なステークホルダーへの還元を後押しする観点から、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化しました。
 具体的には、継続雇用者の給与総額や教育訓練費を前年度より一定水準以上増加させた大企業等については、給与総額の前年度増加額の最大30%を税額控除する措置を設けました。また、中小企業についても最大40%を税額控除する措置を設けています。この税額控除率は、賃上げに係る税制措置としては過去最高水準となっております。
 また、一定規模以上の大企業(資本金10億円以上かつ常時使用従業員数1,000人以上)については、給与の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針等といった、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組みを公表していることを、賃上げ促進税制の適用を受けるための要件とすることにより、大企業と中小企業との取引適正化を図ることなどを通じて、企業の持続的な賃上げにつながるような工夫をしています。

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4 若手コラム 

 読者の皆さん、こんにちは。主税局調査課外国係です。先月に引き続き、海外の税制事情についてお伝えしていきたいと思います。今回は、12月8日に新政権が発足したばかりの「ドイツ」です。

 ご存じの方も多いかもしれませんが、ドイツでは今年9月に選挙が行われました。今回の選挙では、メルケル氏が4期16年の任期を終えて引退することも話題になっていましたね!メルケル政権で連邦財務大臣を務めていたショルツ氏を連邦首相として、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党による連立政権が成立しました。各党のイメージカラーから新政権は「信号連立」とも呼ばれます。先月取り上げたEUの中心的存在でもあるドイツの今後の動向は、各国から大いに注目されています。

 さて、古くは医学や法学をはじめ、現在ではサッカーや音楽など(この時期はベートーヴェンの『第九』が流れますね!)、日本には何かとなじみ深いドイツ。世界史ではおなじみの神聖ローマ帝国の時代から、各地域が自立的だったこともあり、現在は16の州からなる連邦制国家です。 そのため、ドイツの税制を理解するためには、連邦と州の関係性を捉えることが重要なのです。今回はその一例をご紹介します。皆さんは「共有税」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
共有税とは、その税収が「連邦と州に共同で帰属する」税のことです。具体的には、所得税、法人税、付加価値税(日本の消費税に当たる税)の3つが共有税に当たります。これらの税収は、基本法(日本の憲法に相当します)や法律で定められた割合で連邦、州、市町村に配分されることになっています。

 また、税務行政においても、連邦と州が役割分担をしています。共有税の企画・立案は連邦が所管している一方、執行は州に委任されています。実はドイツでは各州が税務署を設置しているため、例えば、共有税である所得税の徴収は、州の執行機関である税務署が行うことになります。 ちなみに、各州における財政の最高機関にも「財務省」という名前が付けられており、各州に「財務大臣」がいます(州として扱われる特別市のベルリン、ブレーメン、ハンブルクでは、「市財務局」という名称になります)。つまり、ドイツでは連邦財務省と州財務省、そして連邦財務大臣と州財務大臣が存在するということです!こうした呼称からも、連邦内における州の位置づけをうかがい知ることができますね。

 日本の税制を議論する際によく参考にされるドイツですが、単なる税率などの違いだけでなく、制度の構造や税務行政の違いにも注意しながら比較する必要がありますね。主税局調査課外国係では引き続き、日本の議論に資するよう、ドイツの税制をしっかり調査してまいります!

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 5 編集後記 

 今日はクリスマスイブですね!
 同時に今日は税制改正の大綱の閣議決定日でもありました。今月号では、今日閣議決定されたばかりの税制改正の大綱のうち「賃上げ促進税制」についての解説を掲載いたしました。これから今回閣議決定された税制改正の大綱をもとに財務省において国税の改正法案が作成されることとなります。

 師走の由来は、多忙で僧侶が走り回るようになる月というところから名付けられたともいわれますが、広報係でも11月末ごろから税制改正関係の業務が多くなり、12月はあわただしく、あっという間に過ぎていきました。

 今月も最後までお付き合いいただきありがとうございます。次回の税制メールマガジンもよろしくお願いいたします。

 主税局総務課 広報係 田中

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