Q&A ~身近な税について調べる~
Q 日本の税の歴史を教えてください。
A 回答
アメリカの影響下にあった第二次世界大戦後、直接税を中心とする恒久的・安定的な税体系を目指すシャウプ勧告(※)に基づいた税制が昭和25年に施行され、現在の我が国の税制の基礎となりました。
このいわゆるシャウプ税制は理論的に首尾一貫した公平な税体系を目指したものの、戦後復興期の社会経済の実情にそぐわないこともあり、昭和28年以降、シャウプ税制の修正が行われました。例えば、執行が困難な富裕税や累積的取得税制度などが廃止されました。また、シャウプ勧告は租税特別措置を公平の原則に反するとし、多くの租税特別措置は廃止されていましたが、高度経済成長期の昭和30年代からは、資本の蓄積と経済の発展を図ることなどを目的として様々な租税特別措置が導入されました。さらに、道路など社会インフラの充実を図る観点から、財源確保のため揮発油税などの税率引上げ等が行われました。
所得税は累進構造を有しており、所得水準の上昇に応じて適用される税率が自動的に高くなる特徴があります。このため、昭和40年代には、高度経済成長による国民の所得の増加や物価の上昇に応じて、所得税の減税が毎年行われました。また、昭和40年代後半には、ドル・ショックや石油危機を背景とした不況対策のため所得税減税が行われました。
昭和50年代には不況による歳入欠陥に起因した財政危機を打開するため、自動車関係諸税などの間接税の増税、法人税率の引上げや租税特別措置の整理・合理化などが行われました。この時期には、国民に広く薄く負担を求める一般消費税の導入が議論されましたが実現には至らず、課題として残されることとなりました。
昭和62・63年にかけての抜本的税制改革では、高齢化、国際化などの経済社会の構造変化にあわせ、所得・消費・資産等の間でバランスのとれた税体系の構築が目指されました。法人税率が段階的に引き下げられ、所得税は税率構造を簡素化するとともに、基礎控除等の人的控除を引き上げました。個別間接税は廃止され、税率3%の消費税が平成元年4月から導入されました。
その後、少子高齢化の加速を背景に、勤労世代の人口が相対的に減少する一方、社会保障の財政需要の増大が避けられないこと等を踏まえ、個人所得課税の軽減と消費税の充実(3% → 5%・平成9年)を柱とする税制改革が行われました。
さらに、社会保障と税の一体改革の下、消費税については、国民が広く受益する社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点で、社会保障の財源と位置付け、平成26年に税率を5%から8%に引き上げ、また令和元年10月に8%から10%に引き上げられました。この間、所得税については、格差の固定化を防止し所得再分配機能を回復する観点から、最高税率等の見直しが行われました。法人税については、国内企業の活力と国際競争力を維持する観点から、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」ことによって成長志向型に改革されて、平成28年度には地方税も含む実質的な租税負担を示す実効税率の20%台が実現し、平成30年度には29.74%まで下がっています。
このように、その時々の経済社会の構造変化に応じた税制の見直しが行われており、我が国は現在もそうした構造変化に直面しています。
なお、戦前の税制【→税の歴史】については以下の関連リンクをご参照ください。
(※)連合国軍最高司令官の要請により昭和24年5月10日に来日したカール・シャウプ博士を中心とする使節団により作成され、同年9月15日に日本の税制の包括的な改革案として発表された。