
あけましておめでとうございます。令和8年の年頭に当たり、謹んで新春のお慶びを申し上げます。
昨年10月に財務大臣兼金融担当大臣を拝命し、そこから約2か月間、総合経済対策の策定、補正予算及び当初予算の編成、NISAの拡充、地域金融力強化プランの策定等、ベッセント米国財務長官等との会談やG7財務大臣会議への出席など、国内外の重要案件を様々進めてまいりました。また、兼務する租税特別措置・補助金見直し担当大臣としては、12月に関係閣僚等及び副大臣会議を開催して協力を要請したほか、本年1月からは、専用の窓口を設置し、国民の皆様からのご提案を募集することとしました。
私個人としては、20年ぶりにこの職場へ戻ってまいりました。当時から変わらない建物であったり、当時一緒に仕事をした後輩職員が幹部として残っていたりと懐かしいところがあります。私は現役時代、政策評価室長として「納税者としての国民の視点に立ち~」という財務省の使命を取りまとめましたが、今はその上に、「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」という言葉を大きく掲げてくれています。この言葉は、高市内閣の「責任ある積極財政」にもつながるものだと思っており、感謝しています。
経済・社会情勢は大きく変化しており、山積する課題に向けて官民連携を強化し、戦略的な国内投資の拡大を通じて力強い日本経済を取り戻していく必要があります。その重要な一歩となる年となるよう、以下、経済財政運営等についての3つの抱負と主な取組について申し上げます。
1 「責任ある積極財政」の考え方に基づき「強い経済」を実現する
1つ目は、「責任ある積極財政」の考え方に基づき「強い経済」を実現することです。
我が国は、1990年代以降、バブル崩壊後の不良債権問題を契機に、長期にわたりデフレと低成長に苦しんできました。さらに、世界的な金融危機や度重なる自然災害、新型コロナウイルス感染症のまん延など、突発的な困難に幾度も直面してきました。加えて、足元では、米国関税措置に関する日米協議は合意に至ったものの、世界経済の先行きには不透明感がある中、我が国の名目GDPは600兆円を超え、設備投資は過去最高を更新し、賃金も2年連続で5%を上回る賃上げ率が実現するなど、従来の「デフレ・コストカット型経済」から投資拡大と生産性向上を伴う「成長型経済」に移行しつつあります。
こうした中、昨年11月21日に「「強い経済」を実現する総合経済対策」を策定し、その裏付けとなる令和7年度補正予算も昨年12月16日に成立しました。まずは今の国民の暮らしを守る物価高対策を早急に講じるとともに、日本経済の強さを取り戻してまいります。加えて、令和8年度予算についても、先般成立した令和7年度補正予算での対応に続き、切れ目無く、「強い経済」を実現する予算となっています。複数年度の取組、歳出構造の平時化に向けた取組を推進し、重要施策に当初予算を増額させ、昨年末に取りまとめたところです。そこで、主な取組として、①足元の物価高対策、②税制改正・成長に向けた投資の拡大、③資産運用立国の更なる推進、④米国の関税措置への対応の順に御説明します。
① 足元の物価高対策
高市内閣発足以来、物価高への対策を最優先に掲げてまいりました。足元の物価高に対しては、早期に効果が見込まれる施策として、一人2~4万円の「所得税減税」を実施し、また昨年末にはいわゆるガソリンの暫定税率を廃止しました。
このほか、今般の経済対策において、寒さの厳しい冬の間の電気・ガス料金の支援、物価高の影響を強く受ける子育て世帯のための「物価高対応子育て応援手当」、地域のニーズにきめ細かく対応し、子育て世帯や食料品価格高騰への支援などに用いることも可能な重点支援地方交付金の拡充、「基礎控除を物価に連動した形で更に引き上げる税制措置」等を盛り込んでおり、暮らしの安心を確実かつ迅速に、お届けしていきます。
② 税制改正・成長に向けた投資の拡大
令和8年度税制改正でも、「責任ある積極財政」の考え方に基づき、物価高への対応や「強い経済」の実現に向けて、必要な措置を盛り込んでおります。
まず、所得税について、物価上昇局面では実質的な税負担が増加するという課題に対応するため、上述の基礎控除等を物価に連動して引き上げるルールを策定することとしています。さらに、人手不足の問題が顕在化しつつある中での働き控えへの対応や、低所得者だけではなく、同じように物価上昇の中で足元厳しい状況にある中間層も含めた手取りの増加のため、令和6年12月の三党合意の趣旨を踏まえ、課税最低限を178万円まで先取りして引き上げることとしています。
また、「強い経済」の実現に向けて、国内における高付加価値型の設備投資を促進する観点から、大胆な設備投資の促進に向けた税制措置を創設いたします。加えて、研究開発税制について、新たに「戦略技術領域型」を創設し、AI・量子・バイオ等、国家戦略として重要な技術領域への企業の研究開発を促すこととしております。
高市内閣で設置された日本成長戦略本部及び会議における議論を通じ、経済安全保障の強化にも資する戦略分野を中心に、官民が連携して積極的な投資を行うことにより、日本の課題を解決し、先端産業を開花させ、日本経済を力強く成長させてまいります。
③ 資産運用立国の更なる推進
また、成長戦略を加速させるためには、金融の力が不可欠です。日本成長戦略会議の下に、私が金融担当大臣として座長となる分科会を昨年末に設置したところです。この分科会において、金融を通じて、必要な資金・人材・知見を日本の企業や地域に集結させ、日本経済と地方経済の潜在力を解き放つための新戦略を今年夏までに策定し、官民連携で取り組んでまいります。
昨年末には、地域経済の成長に地域金融機関が一層貢献できるよう、関連施策をパッケージ化した「地域金融力強化プラン」を策定しました。プランには、地域金融機関が企業価値の向上や地域課題の解決に一層貢献していくための様々な方策や、そのための環境整備を盛り込んでおり、これらを強力に推進したいと考えています。
また、政府ではこれまで、「資産運用立国」の実現に向けて、コーポレートガバナンス改革や家計の安定的な資産形成の支援、資産運用サービスの高度化、アセットオーナーの機能向上のための取組を進めてきたところです。例えば、家計に向けては、少額投資非課税制度であるNISAを抜本的に拡充し、投資の裾野を広げました。現在、NISA口座数は約2,700万口座となり、18歳以上の国民の4人に1人が口座を保有する状況です。長らく課題であった「貯蓄から投資へのシフト」が、若年層も含めて着実に進んでいます。
NISAについては、あらゆる世代が自身のライフプランに沿った形で資産形成を行えるよう、令和8年度税制改正の大綱において、つみたて投資枠の対象年齢の引下げ(こどもNISAの創設)や対象商品の拡充など、一層の充実を図ることとしております。引き続き、貯蓄から投資への取組の成果を活かし、「資産運用立国」の実現に向け、更に発展させてまいります。
④ 米国の関税措置への対応
米国による関税措置につきましては、昨年10月、日米首脳会談の際に、関税に関する日米間の合意について、両国による迅速かつ継続的な取組を確認する文書に署名し、日米両国の経済を更に力強く成長させることを確認したところです。財務省は、昨年9月の投資イニシアティブの合意も踏まえ、経済・国家安全保障の重要分野における日本企業等の海外展開を支援するためJBICに「日本戦略投資ファシリティ」を創設しており、こうした合意の着実な実施を進めてまいります。
また、米国関税の影響を受ける中小企業・小規模事業者への資金繰り等の支援に万全を期すため、日本政策金融公庫等のセーフティネット貸付について、利用要件緩和に加え、米国関税の影響により売上高又は利益率が5%以上減少した事業者に対して、一定の金利引下げを行う等の措置を実施してまいります。
酒類事業者に対しては、日本産酒類の主要な輸出先である米国による関税措置の影響を踏まえ、米国を含む各国への販路開拓や輸出先多角化を一層支援するとともに、現地での需要創出等に取り組んでまいります。
2 「強い日本」を実現するため、国民の安全・安心を確保する
2つ目は、「強い日本」を実現するため、国民の安全・安心を確保することです。
国難級の大規模災害の発生が懸念されている我が国において、防災・減災・国土強靭化への取組はもとより、災害からの復旧・復興、ひいては発災時における被災者の良好な生活環境の確保が重要です。こうしたリスクにも政府の一員として適切に対応してまいります。
厳しい安全保障環境に対応するため、いわゆる「対GDP比2%水準」について、補正予算と合わせて、2025年度中に前倒して措置するとともに、政府として「国家安全保障戦略」などの三文書の本年中の改定を目指して検討を進めてまいります。
国民の安全・安心を守るため、税関における水際取締りは不可欠です。年間の輸入許可件数は2億件を、訪日外国人旅行者数も4,000万人を超える勢いで増加する中、不正薬物や金などの密輸は一層巧妙化しています。経済安全保障の観点からの不正輸出防止も重要な課題であり、国境を越える全てのモノの流れを管理する税関の責務はますます重くなっています。時勢の変化に対応した制度・体制の整備を進め、厳格な取締りと迅速な通関の両立に取り組んでまいります。
世界経済は貿易政策や地政学的緊張の影響で高い不確実性に直面しており、国際協調の一層の推進が求められています。日本としても、G7やG20等での議論や、各国の財務大臣や国際機関のトップとの議論を通じて、ウクライナ支援や対露制裁、途上国の債務問題、国際保健、サプライチェーン強靭化などの諸課題に取り組んでまいります。
3 将来世代へ持続可能な経済社会を引き継ぐ
3つ目は、将来世代へ持続可能な経済社会を引き継ぐことです。
足元の人手不足の大きな要因でもある人口減少は、2030年代に加速することが見込まれております。少子化は様々な要因が複雑に絡み合っていると考えておりますが、いまだ多くの方々の「こどもを産み育てたい」という希望の実現には至っていないと認識しております。我が国最大の問題は人口減少であるとの認識のもと、令和5年末に取りまとめられた「こども未来戦略」に基づき、政府として、少子化対策の強化に取り組むことが重要です。
そのためにも、当事者の希望に応じて、仕事と結婚、子育ての両立を支援する環境を整備することが重要と考えており、それは家族のみならず職場の理解・協力を得られなければ不可能です。財務省でも、昨年、課長級ポストに占める女性の割合が10%となり、また旧大蔵省時代も含めて初の局長級の女性幹部を任命いたしました。女性初の財務大臣として、引き続き性別を問わず活躍できる職場づくりに取り組むとともに、政府としても、子育て世代や、若い人たちが将来の展望を拓くことが可能となり、希望と夢をしっかりと持つことができる社会を作っていきたいと考えています。
一方、今のこども・子育て政策をどれだけ充実させたとしても、将来の経済社会を明るく見通すことができなければ、少子化・人口減少のトレンドを改善させ、持続可能な社会を実現することは困難です。そのためには、「責任ある積極財政」との考え方のもと、「強い経済」を作っていくことが必要となります。
こうした中、令和8年度予算については、「経済財政運営と改革の基本方針2025」を踏まえ、日本経済を新たなステージへ移行させることを目指す中で、経済・物価動向等に配慮しながら、中期的な経済財政の枠組みに沿った内容になっていると考えます。具体的には、診療報酬改定・介護報酬改定をはじめ、予算全体について、経済・物価動向等を適切に反映しています。また、防衛力強化、いわゆる教育無償化などの重要施策について、財源を確保しつつ、予算を増額しています。
新規国債発行額は29.6兆円となり、17年ぶりに30兆円を下回った令和7年度当初予算に続き、当初予算としては2年連続で30兆円を下回りました。 公債依存度も24.2%と、27年ぶりに30%を下回った令和7年度当初予算(24.9%)よりも更に低下しております。
その上で、我が国の財政状況については、多角的、客観的に分析し、真摯に受け止める必要があります。政府としては、「責任ある積極財政」との考え方の下、「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」をバランス良く同時に実現し、今を生きている国民と未来を生きる国民に対する責任を果たしていく所存です。
最後に、財政を通じて実施される政策は、国民の皆様からの納税で支えられています。経済社会のグローバル化やデジタル化が進む中、納税者利便の向上や適正・公平な課税・徴収の実現を効率的・効果的に推進していきます。さらに、事業者の業務のデジタル化を促進することにより、税務を起点とした社会全体のDXを推進していきます。
4 結び
以上、今後の経済財政運営等についての抱負とその主な取組について申し述べてまいりました。
本年は昭和元年から起算して満100年を迎えます。令和を生きる我々は、未曽有の激動と変革、苦難と復興の時代といえる昭和の時代を生きた先人の叡智と努力に学びながら、歴史の教訓を次世代に継承するとともに、我が国の新たな姿・価値観を模索していくことが求められるのではないでしょうか。財務大臣としても、成長する日本、夢や期待が持てる日本を将来に残すため、「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」との財務省の組織理念を胸に、副大臣、政務官、そして総勢7万人からなる財務省職員とともに、国民の皆様のため汗馬の労を厭わず職務に励んでまいる所存です。
本年が皆様にとって良い一年となりますよう祈念しまして、新年の挨拶とさせていただきます。
財務大臣 片山 さつき

