令和8年2月20日
令和八年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。
(日本経済の現状と財政政策の基本的な考え方)
名目GDPは六百兆円を超えて七百兆円に近づいており、高い成長の下では二○四○年頃に一千兆円程度の経済が視野に入ります。賃上げ率が二年連続で五パーセントを上回るなど、日本経済は、「デフレ・コストカット型経済」から、新たな「成長型経済」に移行する段階まで来ました。一方で、我が国は、静かな有事とも言うべき人口減少や、長期にわたるデフレから一転した物価高、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境等に直面しています。こうした中で、潜在成長力は伸び悩み、個人消費は力強さを欠いております。
このような状況においては、今の国民の暮らしを守る物価高対策を早急に講じること、そして、日本経済の強さを取り戻すことが重要です。そのためには、生活の安全保障・物価高への対応、危機管理投資・成長投資による「強い経済」の実現、防衛力と外交力の強化を三つの柱として閣議決定した「「強い経済」を実現する総合経済対策」の裏付けとなる令和七年度補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、令和八年度予算、令和八年度税制改正を実行に移し、切れ目のない経済財政運営を行う必要があります。
高市内閣が掲げる「責任ある積極財政」は、プロアクティブな、先を見据えた財政政策であり、決して、いたずらに拡張的に規模を追求するものではありません。国民生活の下支えや経済成長に資することが期待される施策には大胆に重点化する一方で、見込まれる効果が乏しい施策については見直しを行うなど、歳出・歳入両面で「強い経済」を支える財政構造への転換を図ることが重要です。私が担当大臣として取り組んでいる租税特別措置・補助金の見直しも、その取組の一つです。引き続き、ワイズスペンディングを徹底しながら、成長率を高めていくことと相まって、政府債務残高の対GDP比を安定的に引き下げ、財政の持続可能性を、そして、マーケットからの信認を確保してまいります。
(令和八年度予算及び税制改正の大要)
続いて、令和八年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。
令和八年度予算は、令和七年度補正予算に続き、「強い経済」を実現する予算であり、複数年度の取組や歳出構造の平時化に向けた取組を推進し、重要施策について当初予算での増額を実現しております。具体的には、診療報酬改定・介護報酬改定をはじめ、予算全体について、経済・物価動向等を適切に反映したほか、防衛力強化、こども・子育て支援、GX、AI・半導体といった従来から財源を確保して複数年度で計画的に取り組んでいる重要施策を引き続き推進しております。また、新たな財源確保や予算全体のメリハリ付けを通じて、いわゆる「教育無償化」をはじめとする重要施策について、予算を増額しております。
歳出につきましては、まず、一般歳出は、約七十兆千六百億円となっております。これに地方交付税交付金等約二十兆八千八百億円及び国債費約三十一兆二千八百億円を加えた一般会計総額は、約百二十二兆三千百億円となっており、前年度当初予算に対し、約七兆千百億円の増額となっております。
一方、歳入につきましては、租税等の収入は、約八十三兆七千四百億円、その他収入は、約八兆九千九百億円を見込んでおります。また、公債金は、約二十九兆五千八百億円となっており、十七年ぶりに三十兆円を下回った前年度当初予算に続き、二年連続で三十兆円を下回っております。
これらの結果、公債依存度は二十七年ぶりに三十パーセントを下回った前年度当初予算の二十四・九パーセントから更に低下し、二十四・二パーセントとなっております。あわせて、一般会計のプライマリーバランスは、当初予算としては、二十八年ぶりに黒字化しております。このように財政規律にも配慮した姿となっております。
なお、特例公債の発行につきましては、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることとしております。
次に、主要な経費について申し述べます。
社会保障関係費につきましては、現役世代の保険料負担を含む国民負担を軽減する観点から、市場価格を反映した薬価改定や高額療養費制度の見直しなど、様々な制度改革・効率化努力を積み重ねることにより、実質的な伸びを高齢化による増加分に抑えた上で、診療報酬改定における今後の物価・賃上げ対応や、介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定における現場で働く方々の処遇改善など、経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算しております。
文教及び科学振興費につきましては、一連の政党間合意を踏まえ、財源を確保しつつ、いわゆる教育無償化を実現しております。また、中学校三十五人学級の実施等に向けて必要な措置を講じるほか、「新技術立国」の観点から、国立大学法人運営費交付金や科学研究費助成事業の増額により、基礎研究の充実強化等を行うとともに、AI・量子等の重要技術領域に係る研究開発等を推進することとしております。
地方財政につきましては、給与改定分や物価反映分を措置するなど、地方の一般財源総額を適切に確保しつつ、臨時財政対策債の発行額をゼロにするなど、地方財政の健全化を図ることとしております。
防衛関係費につきましては、厳しい安全保障環境の中で、防衛力整備計画に基づき、引き続き、防衛力を安定的に維持するための財源を確保しつつ、防衛力の強化を着実に進めております。
公共事業関係費につきましては、埼玉県八潮市における道路陥没事故の教訓を踏まえた取組や、規制・誘導手法の活用といったソフト対策との一体的取組などにより、防災・減災、国土強靱化を推進するとともに、成長力強化に向けたインフラ整備等についても重点的に取り組んでいくこととしております。
経済協力費につきましては、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を進めるとともに、同志国やグローバルサウス諸国との連携強化を図りつつ、ODAの効果的・効率的な実施に取り組むこととしております。
中小企業対策費につきましては、適切な価格転嫁や生産性向上、事業承継・M&Aに対する支援など、賃上げ環境の整備等に取り組むこととしております。
エネルギー関係予算につきましては、エネルギー対策特別会計において、GX経済移行債を発行し、カーボンニュートラル目標の達成に必要な民間のGX投資を支援するとともに、「AI・半導体産業基盤強化フレーム」に基づき、産業競争力の強化、経済安全保障及びエネルギー政策上の観点から、AI・半導体分野への支援を実施するなど、当初予算を増額しております。
農林水産関係予算につきましては、農業構造転換集中対策として、生産性向上に向けた大区画化やスマート農業の推進等の取組について、財源を確保し、当初予算を増額するほか、林業・水産業の持続的成長に向けた資源管理等に取り組むこととしております。
東日本大震災からの復興につきましては、第三期復興・創生期間の初年度において、帰還・移住支援や風評対策などにきめ細やかに対応するため、令和八年度東日本大震災復興特別会計の総額を約六千三百億円としております。
能登半島地震・豪雨災害からの復旧・復興につきましては、被災者の生活・生業の再建支援やインフラ復旧などを引き続き推進してまいります。
令和八年度財政投融資計画につきましては、強靱な経済構造の構築、官民が連携した積極的な投資促進、物価高への対応等のため、総額約十九兆二百億円としております。
国債管理政策につきましては、金融市場の状況に変化が見られる中で、市場とのより丁寧な対話に基づき、安定的な国債発行に更に万全を期してまいります。
令和八年度税制改正では、物価高への対応として、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げるとともに、就業調整への対応及び中低所得者への配慮の観点から、所得税の課税最低限を百七十八万円まで先取りして引き上げます。また、「強い経済」の実現に向け、大胆な設備投資促進税制を創設するとともに、租税特別措置の適正化の観点から、賃上げ促進税制の見直しや研究開発税制の強化を行います。加えて、税負担の公平性を確保する観点から、所得が極めて高い水準にある場合の負担の見直しを行うほか、防衛特別所得税の創設等を行います。
(むすび)
以上、財政政策の基本的な考え方と、令和八年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。
我が国経済が転機を迎える今、名目GDPが拡大する中で、物価や金利が上昇するという新たな経済・社会状況に真摯に向き合う必要があります。成長する日本、将来に希望が持てる日本を将来世代へ引き継ぐため、「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」をバランス良く同時に実現することが、今を生きる我々が果たすべき責任です。
その責任を果たすためにも、本予算及び関連法案の速やかな成立が必要であります。
本予算及び関連法案が現下の我が国の経済社会に果たす役割に御理解を賜り、何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

