令和7年1月24日
令和七年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。
(日本経済の現状と財政政策の基本的な考え方)
日本経済は、三十三年ぶりの高水準の賃上げと過去最大規模の設備投資が実現するなど明るい兆しが見られており、これを確かなものとし、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回り、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現していく必要があります。
こうした中、全ての世代の現在及び将来にわたる賃金・所得の増加を最重要課題とし、省力化投資支援等の賃上げ環境の整備や成長分野における投資促進などにより、生産性や付加価値を高め、安定的に賃金・所得が増えていくメカニズムを構築してまいります。そのため、「日本経済・地方経済の成長」、「物価高の克服」及び「国民の安心・安全の確保」を柱として閣議決定した「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」と、その裏付けとなる令和六年度補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、令和七年度予算、そして令和七年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。
同時に、財政は国の信頼の礎であり、我が国を取り巻く諸課題に的確に対応するため、歳出・歳入両面の改革を着実に推進し、日本の信用や国民生活を守るための財政基盤を平時より備えることが不可欠です。日本の財政は、債務残高対GDP比が世界最悪の水準にあるなど、引き続き厳しい状況にあることも踏まえ、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」で示された「経済・財政新生計画」の枠組みの下、早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、財政健全化に取り組んでまいります。
このように、経済あっての財政との考え方の下、力強く経済再生を進める中で、財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。
(令和七年度予算及び税制改正の大要)
続いて、令和七年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。
令和七年度予算では、官民連携のもとでの「AI・半導体分野の投資促進」や「GX投資促進」の実施、「こども未来戦略」に基づく子育て支援の本格実施、「防衛力の抜本強化」の着実な実施といった、複数年度で計画的に取り組むこととしている重要課題への対応のほか、地方創生交付金の倍増や、内閣府防災担当の予算・定員の倍増など、重要政策に予算を重点的に配分しています。
あわせて、公務員・教職員・保育士の給与改善や物価動向の反映などを行いつつ、政策的予算を適切に確保するなど、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」に基づき、経済・物価動向等に配慮しつつ、これまでの歳出改革努力を継続しています。
一般歳出につきましては、約六十八兆二千五百億円であり、これに地方交付税交付金等約十九兆八百億円及び国債費約二十八兆二千二百億円を加えた一般会計総額は、約百十五兆五千四百億円となっており、前年度当初予算に対し、約二兆九千七百億円の増額となっております。
一方、歳入につきましては、租税等の収入は、七十八兆四千四百億円、その他収入は、約八兆四千五百億円を見込んでおります。また、公債金は、平成二十年度以来、十七年ぶりに三十兆円を下回る約二十八兆六千五百億円であり、前年度当初予算に対し、約六兆八千億円の減額となっております。
次に、主要な経費について申し述べます。
社会保障関係費につきましては、薬価改定により、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保にも対応しつつ国民負担を軽減しております。また、高額療養費制度の見直しにより、制度のセーフティネットとしての持続可能性を確保しつつ現役世代を含む保険料負担を軽減するなど、様々な改革努力を積み重ねております。さらに、「こども未来戦略」に基づく「こども・子育て支援加速化プラン」の取組を本格的に進めていくために必要な予算を確保いたしました。これらを含め、経済・物価動向等に配慮しつつ、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるとの方針に沿った姿を実現しております。
文教及び科学振興費につきましては、教師を取り巻く環境整備のため、学校における働き方改革を進めるとともに、教職員の給与及び定数について必要な措置を講じるほか、「科学技術立国」の観点から、AI・量子等の重要分野の研究開発を戦略的に推進するとともに、国際性の高い研究や若手研究者への支援を強化することとしております。
地方財政につきましては、地方の一般財源総額を適切に確保しつつ、臨時財政対策債の発行額を制度創設以来初めてゼロとするとともに、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金償還額を増額するなど、地方財政の健全化を図ることとしております。
防衛関係費につきましては、厳しい安全保障環境の中で、防衛力整備計画に基づき、防衛力の強化を着実に進めるとともに、引き続き、防衛力を安定的に維持するための財源を確保することとしております。
公共事業関係費につきましては、能登半島地震等の教訓を踏まえた制度改正や、規制・誘導手法の活用といったハード・ソフト一体となった取組などにより、防災・減災、国土強靱化を推進するとともに、地方創生や生産性向上に向けたインフラ整備等についても重点的に取り組んでいくこととしております。
経済協力費につきましては、気候変動等のグローバルな課題解決や、台頭するグローバルサウス諸国との関係強化の観点から、ODAを効果的に実施していくこととしております。
中小企業対策費につきましては、価格転嫁対策、経営改善・事業承継支援など、持続的な賃上げに向けた環境整備等に取り組むこととしております。
エネルギー関係予算につきましては、エネルギー対策特別会計において、GX経済移行債を発行し、カーボンニュートラル目標の達成に必要な民間のGX投資を支援するとともに、「AI・半導体産業基盤強化フレーム」に基づき、次世代半導体の量産化に向けた金融支援等を実施することとしております。
農林水産関係予算につきましては、「食料・農業・農村基本法」の改正を踏まえ、食料安全保障の強化等に資する施策の充実・強化を図るとともに、林業・水産業の成長産業化に向けた生産基盤の強化、資源管理等に取り組むこととしております。
東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間の最終年度において必要な復興施策を確実に実施するため、令和七年度東日本大震災復興特別会計の総額を約六千六百億円としております。
能登半島地震・豪雨災害からの復旧・復興につきましては、引き続き、被災者の生活・生業の再建支援やインフラ復旧など、被災地のニーズに切れ目なく対応してまいります。
令和七年度財政投融資計画につきましては、成長型経済への移行に向けた取組を進めるため、総額約十二兆千八百億円としております。
国債管理政策につきましては、金融市場の状況に変化が見られる中で、市場との対話に基づき、引き続き安定的な国債の発行に努めてまいります。
令和七年度税制改正では、まず、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額等の引上げ及び大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行います。また、成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すために、中小企業経営強化税制を拡充するとともに、国際環境の変化等に対応し、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置や外国人旅行者向け免税制度の見直し等を行います。
(むすび)
以上、財政政策の基本的な考え方と、令和七年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。
これまでのデフレ脱却に向けた様々な政策、そして国民の皆様や各企業といった各層での御努力の結果として、我が国の経済状況は改善してきております。今は、この明るい兆しを本格的な足取りとし、コストカット型経済から高付加価値創出型経済への移行を実現できるかの重要な時期を迎えています。
そのため、本予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。
本予算及び関連法案が現下の我が国の経済社会に果たす役割に御理解を賜り、何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。