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第201回国会における麻生財務大臣の財政演説


令和2年1月20日

 

令和元年度補正予算及び令和二年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。

 

(日本経済の現状と財政政策の基本的な考え方)
日本経済につきましては、海外経済の減速等を背景に外需が弱いものの、雇用・所得環境の改善、高水準の企業収益等により、内需を中心に緩やかな回復を続けております。一方で、昨年は、自然災害が相次ぎ、広範囲にわたり甚大な被害が発生しました。また、通商問題を巡る動向をはじめ、様々な不確実性が存在しており、海外発のリスクには留意していく必要があります。
こうした経済認識の下、昨年十二月五日に「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を閣議決定し、十三兆円規模の財政支出を講じることといたしました。総合経済対策は、自然災害からの復旧・復興を加速するとともに、経済の下振れリスクを確実に乗り越え、日本経済の生産性・成長力の強化を通じて民需中心の持続的な経済成長の実現につなげていくことを目指しております。
また、急速な高齢化等を背景として、社会保障給付費が大きく増加している中、国民の安心を支える社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすためにも、財政の持続可能性を今後とも維持することも重要であります。引き続き、「新経済・財政再生計画」に基づき、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化と同時に、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指してまいります。

 

 

(令和元年度補正予算の大要)
次に、総合経済対策の実行等のために今国会に提出をいたしました令和元年度補正予算の大要について申し述べます。

 

一般会計につきましては、総額で約四兆四千七百億円の歳出追加を行うこととしております。その内容としては、総合経済対策に基づき、「災害からの復旧・復興と安全・安心の確保」に係る経費に約二兆三千百億円、「経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援」に係る経費に約九千二百億円、「未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上」に係る経費に約一兆八百億円を計上するとともに、国際分担金等の追加財政需要について、約千七百億円を計上しております。
その財源面につきましては、歳出において、既定経費を約一兆二千九百億円減額しております。また、歳入において、前年度剰余金約八千億円を計上し、建設公債約二兆千九百億円を発行することとしています。
なお、剰余金の処理につきましては、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることとしております。
他方、税収は、最近までの収入実績等を勘案して、約二兆三千二百億円の減収を見込んでおります。また、国税の減収に伴う地方交付税交付金原資の減額の補塡のため、所要額を計上しております。これらについては、特例公債を約二兆二千三百億円発行することで対応することとしています。
この結果、令和元年度一般会計補正後予算の総額は、一般会計当初予算に対して歳入歳出ともに約三兆千九百億円増加し、約百四兆六千五百億円となります。
また、特別会計予算等につきましても、所要の補正を行っております。
財政投融資計画につきましては、総合経済対策を踏まえ、現下の低金利状況を活かしたインフラ整備に対する超長期の資金供給や、日本企業の海外展開支援等を行うため、約一兆四千五百億円を追加しております。

 

 

(令和二年度予算及び税制改正の大要)
続いて、令和二年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 

令和二年度予算は、消費税増収分を活用した社会保障の充実、総合経済対策の着実な実行、歳出改革の取組の継続により、経済再生と財政健全化の両立を実現するものとしております。

 

具体的には、全世代型社会保障制度の構築に向け、消費税増収分を活用し、幼児教育・保育の無償化や高等教育の無償化を着実に実施するほか、勤務医の働き方改革の推進をはじめ、社会保障の充実のために約一兆六千七百億円を計上しております。

 

また、総合経済対策を実行するため、「臨時・特別の措置」を講じることとし、キャッシュレス・ポイント還元事業、マイナンバーカードを活用した消費活性化策や、「防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策」等を実施するため、約一兆七千八百億円を計上しております。
同時に、歳出全般にわたり見直しを行い、一般歳出等について、「新経済・財政再生計画」の目安を達成するなど、歳出改革の取組を継続しております。
これらにより、新規国債発行額を約千億円減額しております。この結果、新規国債発行額は安倍内閣発足以来八年連続で縮減することとなり、平成二十四年度当初予算と比較して約十一兆六千九百億円の減額となっております。

 

歳出につきましては、通常分の予算と「臨時・特別の措置」との合計で、一般歳出が約六十三兆五千億円であり、これに地方交付税交付金等約十五兆八千百億円及び国債費約二十三兆三千五百億円を加えた一般会計総額は、約百二兆六千六百億円となっております。

 

一方、歳入につきましては、租税等の収入は、過去最高となる約六十三兆五千百億円、その他収入は、約六兆五千九百億円を見込んでおります。また、公債金は、約三十二兆五千六百億円となっております。

 

次に、主要な経費について申し述べます。

 

社会保障関係費につきましては、「新経済・財政再生計画」に沿って、様々な歳出抑制努力を積み重ねた結果、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成するとともに、消費税増収分を活用した社会保障の充実を実施することとしております。

 

文教及び科学振興費につきましては、教職員定数において効率化と必要な分野の充実を図るほか、私立高校授業料の実質無償化、大学改革、安全・安心な学校の施設整備等を推進することとしております。また、科学技術基盤を充実するとともに、イノベーションを促進することとしております。

 

地方財政につきましては、地方の一般財源総額を適切に確保しつつ、臨時財政対策債の発行を縮減するなど、地方財政の健全化に資する内容としております。

 

防衛関係費につきましては、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するため、中期防衛力整備計画に基づき、防衛力整備の一層の効率化・合理化を徹底しつつ、防衛力を強化することとしております。

 

公共事業関係費につきましては、一連の豪雨・台風災害等を踏まえ、治水対策を中心とした防災・減災対策等の強化を図るほか、中長期的な成長の基盤となるインフラの整備を推進することとしております。

 

経済協力費につきましては、戦略的外交を後押しする観点から、「自由で開かれたインド太平洋」の取組強化を進めつつ、ODAは予算・事業量ともに必要な額を確保することとしております。

 

中小企業対策費につきましては、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度の創設など事業承継に対する支援を充実するほか、生産性向上や資金繰り対策にも万全を期すこととしております。

 

エネルギー対策費につきましては、再生可能エネルギーの主力電源化や脱炭素化に向けた取組を拡充するほか、国内資源の開発や海外資源の権益確保等を推進することとしております。

 

農林水産関係予算につきましては、農林水産物・食品の輸出環境整備、高収益作物の生産支援、新規就農者の確保を進めるほか、水産改革の推進等に取り組むこととしております。

 

東日本大震災からの復興につきましては、復興・創生期間の最終年度において必要な復興施策を確実に実施するため、令和二年度東日本大震災復興特別会計の総額を約二兆七百億円としております。

 

令和二年度財政投融資計画につきましては、成長力強化のための重点投資として、現下の低金利状況を活かした高速道路の整備及び成田国際空港滑走路の新設・延伸や、日本企業の海外展開支援等、真に必要な資金需要に適切に対応するため、総額約十三兆二千二百億円としております。

 

国債管理政策につきましては、借換債を含む国債発行総額が約百五十三兆円と、極めて高い水準にある中で、引き続き市場との緊密な対話に基づき適切に運営してまいります。

 

令和二年度税制改正につきましては、持続的な経済成長の実現に向け、オープンイノベーションの促進及び投資や賃金引上げを促すための税制上の措置を講じるとともに、連結納税制度の抜本的な見直しを行うこととしております。また、経済社会の構造変化を踏まえ、全てのひとり親家庭の子どもに対する公平な税制を実現するとともに、NISA制度の見直しを講じることとしております。このほか、円滑・適正な納税のための環境整備等を行うこととしております。

 

 

(むすび)
以上、財政政策の基本的な考え方と、令和元年度補正予算及び令和二年度予算の大要について御説明申し上げました。
人口減少・少子高齢化の中で、経済再生と財政健全化の両立を図るとともに、総合経済対策の着実な実行により、経済の持続的な成長を実現していく必要があります。そのため、これらの予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。
何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。