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第196回国会における麻生財務大臣の財政演説


平成30年1月22日

 

平成三十年度予算及び税制改正並びに平成二十九年度補正予算の御審議に当たり、財政政策等の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。

(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)
安倍内閣のこれまでの取組によって、雇用・所得環境の大幅な改善を達成したことを背景に、経済の好循環は着実に回り始めております。このような経済の好循環をより確かなものとし、持続的な経済成長を実現するためにも、昨年十二月に取りまとめた「新しい経済政策パッケージ」に基づき、「人づくり革命」と「生産性革命」を車の両輪として、少子高齢化という最大の長期的課題に立ち向かってまいります。
「人づくり革命」の財源には、二〇一九年十月に予定される消費税率十%への引上げによる増収分の一部等を活用します。これにより、二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成は困難となりますが、財政健全化の旗は決して降ろすことなく、プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかり堅持します。この目標の達成に向け、今年の「経済財政運営と改革の基本方針」において、具体的かつ実効性の高い計画を示すこととします。

 

(平成三十年度予算及び税制改正の大要等)
次に、平成三十年度予算及び税制改正の大要等を御説明申し上げます。
「新しい経済政策パッケージ」も踏まえ、平成三十年度予算におきましては、保育の受け皿拡大や地域の中核企業による設備・人材投資等の促進等の重要課題に重点化しております。同時に、一般歳出等について「経済・財政再生計画」の「目安」を達成し、公債の発行額を安倍内閣発足以来六年連続で減額するなど、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算としております。

歳出につきましては、一般歳出が約五十八兆九千億円であり、これに地方交付税交付金等約十五兆五千百億円及び国債費約二十三兆三千億円を加えた一般会計総額は、約九十七兆七千百億円となっております。

 

一方、歳入につきましては、租税等の収入は、約五十九兆八百億円、その他収入は、約四兆九千四百億円を見込んでおります。また、公債金は、約三十三兆六千九百億円であり、前年度当初予算に対し、約六千八百億円の減額を行っております。
次に、主要な経費について申し述べます。

 

社会保障関係費につきましては、持続可能な社会保障制度を構築する観点から、薬価制度の抜本改革等、様々な分野における改革に取り組むこととしております。また、「子育て安心プラン」を前倒し、保育の受け皿拡大等を推進することとしております。

 

文教及び科学振興費につきましては、教職員定数において効率化と必要な分野への充実を図るほか、幼児教育や高等教育の経済的負担の軽減、大学改革、安全・安心な学校の施設整備等を推進することとしております。また、科学技術イノベーションを促進することとしております。

 

地方財政につきましては、歳出特別枠を廃止するなど地方歳出を見直す一方、地方の税収増を反映し地方交付税交付金等を縮減しつつ、その一般財源の総額を適切に確保し、地方に最大限配慮しております。

 

防衛関係費につきましては、より重大かつ差し迫った脅威となった北朝鮮の核・ミサイル開発等に適切に対応し、中期防衛力整備計画に基づき所要の取組を講じるとともに、沖縄の基地負担軽減等のための在日米軍再編事業を着実に推進することとしております。

 

公共事業関係費につきましては、生産性向上のためのインフラ整備や豪雨・台風災害等を踏まえた防災・減災対策等への重点化・効率化を推進することとしております。

 

経済協力費につきましては、戦略的外交を後押しする観点から、自由で開かれたインド太平洋戦略等に重点化しつつ、ODAは予算・事業量ともに必要な額を確保しております。

 

中小企業対策費につきましては、地域の中核となる企業の支援や中小企業の事業承継支援を充実するほか、人材対策や資金繰り対策等にも万全を期すこととしております。

 

エネルギー対策費につきましては、再生可能エネルギーの導入に向けた研究開発を拡充するほか、省エネルギーの取組や国内資源の開発、海外資源の権益確保等を推進することとしております。

 

農林水産関係予算につきましては、米政策の改革を円滑に行うことができるよう、必要な支援を充実させるほか、林業の成長産業化や輸出力の強化等に取り組むこととしております。

 

国家公務員の人件費につきましては、給与改定や給与制度の総合的見直しのほか、退職手当の引下げ等を的確に予算に反映しております。

 

東日本大震災からの復興につきましては、復興のステージに応じた課題に対応するため、平成三十年度東日本大震災復興特別会計の総額を約二兆三千六百億円としております。

 

平成三十年度財政投融資計画につきましては、生産性向上に向けた事業者及び農業者の設備投資等の支援、物流ネットワークの核となる高速道路整備の加速等に取り組むなど、真に必要な資金需要に適切に対応するため、総額約十四兆四千六百億円としております。

 

国債管理政策につきましては、借換債等を含む国債発行総額が約百五十兆円と、依然として極めて高い水準にある中で、引き続き市場との緊密な対話に基づき適切に運営してまいります。

 

平成三十年度税制改正につきましては、働き方の多様化等を踏まえ、個人所得課税の見直しを行うとともに、デフレ脱却と経済再生に向け、賃上げ・生産性向上のための税制上の措置を講ずることとしております。さらに、中小企業の代替わりを促進する事業承継税制の拡充や観光促進のための税として国際観光旅客税の創設等を行うこととしております。このほか、国際課税制度の見直し、税務手続の電子化の推進やたばこ税の見直し等を行うこととしております。
なお、国会等から指摘のあった国有財産の管理処分手続につきましては、手続の明確化、売却価格の客観性の確保及び文書管理の徹底という方針で、財政制度等審議会の意見を踏まえ、見直しを行ってまいります。

 

(平成二十九年度補正予算の大要)
続いて、平成二十九年度補正予算の大要について申し述べます。
一般会計において、「生産性革命」・「人づくり革命」、災害復旧等・防災・減災事業、総合的なTPP等関連政策大綱実現に向けた施策等、総額約二兆七千百億円の歳出の追加を行うこととしております。また、国債整理基金特別会計への繰入として、約千九百億円を計上しております。これらについては、既定経費を約一兆二千四百億円減額するとともに、前年度剰余金を約三千七百億円、税外収入を約千億円計上するほか、建設公債を約一兆千八百億円発行することで対応することとしています。
この結果、平成二十九年度一般会計補正後予算の総額は、一般会計当初予算に対して歳入歳出ともに約一兆六千五百億円増加し、約九十九兆千百億円となります。
また、特別会計予算につきましても、所要の補正を行っております。

財政投融資計画につきましては、足下の旺盛な設備投資意欲に鑑み、二千八百億円を補正追加しております。

 

(むすび)
以上、財政政策等の基本的な考え方と、平成三十年度予算及び税制改正並びに平成二十九年度補正予算の大要等について御説明申し上げました。

経済の好循環をより確かなものとし、持続的な経済成長を実現するべく、今後もあらゆる政策手段を総動員していかなければなりません。そのためにも、経済再生と財政健全化を両立する本予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。
何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策等について、国民の皆様及び与野党の議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。