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第170回国会における中川財務大臣の財政演説

平成20年9月29日

今般、先に決定されました「安心実現のための緊急総合対策」を受けて、平成20年度補正予算を提出することとなりました。その御審議をお願いするに当たり、補正予算の大要について御説明いたします。

(最近の経済情勢と安心実現のための緊急総合対策)

まず、最近の経済情勢と、「安心実現のための緊急総合対策」について申し述べます。

我が国経済は、バブル経済崩壊後の長い低迷から脱却し、持続的な景気回復を続けてまいりましたが、このところ弱含みを見せております。

また、我が国経済を取り巻く情勢を概観いたしますと、米国をはじめ、欧州や新興国など世界経済全体において成長が鈍化してきております。国際金融市場が動揺するとともに、資源・食料価格も歴史的に見て高い水準にあるなど、世界経済の先行きは不透明感を増しております。

こうした経済情勢の下、資源・食料価格の動向により、価格の転嫁が困難な立場にある中小企業や、賃金が十分に上がらない雇用者の皆様などは、大きな影響を受けておられると承知しております。

新たな価格体系への移行期において、国民の皆様が感じておられる「痛み」や「不安」に対処するとともに、将来にわたり日本経済をより強固なものとするため、政府は、8月29日、「安心実現のための緊急総合対策」を決定いたしました。

本対策においては、第一に、生活者の不安の解消を目指すこととしております。そのため、非正規雇用対策等の推進などによる生活・雇用の支援を行うとともに、高齢者医療の円滑運営対策の充実や医療体制の確保などの医療・年金・介護の強化を図ります。また、「新待機児童ゼロ作戦」の集中・重点実施など、子育て・教育の支援を実施することとしております。

第二に、「持続可能社会」への変革を加速するため、省エネ・新エネ設備等の導入加速などにより低炭素社会の実現に向けた取組を進めるとともに、学校等耐震化などの住まい・防災対策を推進いたします。また、省エネ・省資源型への構造転換を促進すること等により、強い農林水産業を創出いたします。

第三に、新価格体系への移行と成長力強化のため、原材料価格高騰対応等緊急保証の導入と政府系金融機関が行うセーフティネット貸付の拡充による総額9兆円規模の事業を実施し、中小・零細企業の資金繰りに万全の対策を講じます。併せて、下請事業者対策の強化等を通じて中小・零細企業の活力向上を目指します。

税制改正に関わる施策については、特別減税の実施を含め、本年の税制全般にわたる抜本的改革の検討と併せて結論を得ることとしております。

なお、地方公共団体がこの緊急総合対策に取り組み、地域の活性化を実現させるために必要な経費を措置するとともに、道路特定財源に関する地方の減収分についても、適切に財源措置することとしております。

(平成20年度補正予算(第一号、特第一号及び機第一号)の大要)

次に、今般提出いたしました平成20年度補正予算の大要について御説明いたします。

今回の補正予算は、財政健全化路線の下、真に必要な対策に財源を集中し、旧来型の経済対策とは一線を画するとの緊急総合対策の基本的な考え方を踏まえ、財政規律を維持し、特例公債は発行しないことを基本方針とし、既存の歳出を見直す中で最大限の経費の節減を行った上で編成しました。

まず、歳出面においては、緊急総合対策関連として、「生活者の不安の解消」について3,518億円、「住まいと防災対策」について7,296億円、「低炭素社会の実現と強い農林水産業創出」について1,881億円、「中小企業等の活力向上」について4,469億円及び「地方公共団体に対する配慮」について916億円の合計1兆8,081億円を計上しております。併せて、国債整理基金特別会計への繰入を計上する一方、既定経費の節減等を行っております。

他方、歳入面においては、前年度の決算上の剰余金6,319億円を計上し、さらに、税外収入の増加を372億円見込んでおります。

以上によってなお不足する歳入については、やむを得ざる措置として3,950億円の公債の追加発行を行うこととしております。その際、建設公債に限って追加発行を行うこととしております。今回の措置により、平成20年度の公債発行額は25兆7,430億円となり、公債依存度は30.6パーセントとなります。

これらの結果、平成20年度一般会計補正後予算の総額は、当初予算に対し歳入歳出とも1兆641億円増加し、84兆1,255億円となります。

以上の一般会計補正等に関連して、特別会計予算及び政府関係機関予算についても所要の補正を行うこととしております。

また、財政投融資計画については、緊急総合対策を実施するため、この補正予算において1,778億円を追加することとしております。

以上、平成20年度補正予算の大要について御説明いたしました。何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。