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参議院財政金融委員会における額賀財務大臣の所信表明

(はじめに)

今後の財政政策等については、先般の財政演説において所信を申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信の一端として、今後取り組むべき課題等について申し述べます。

(我が国経済の状況と課題)

我が国経済は、バブル経済崩壊後の長い低迷から脱却したものの、このところ景気回復は足踏み状態にあります。サブプライム住宅ローン問題を背景とする米国経済の減速や原油価格の高騰等から、景気の下振れリスクが高まっていることに留意をする必要があります。政府としては、今後とも、日本銀行と一体となった取組を行うとともに、成長力強化への施策を早期に具体化するなど、物価安定の下での持続的成長を図ってまいります。なお、現在国際金融市場において不安定な動きが見られていますが、関係当局と密接に連絡を取りつつ、引き続き内外市場の動向、日本経済及び世界経済の動向を十分注視してまいります。

(平成20年度予算及び税制改正の大要)

平成20年度予算編成に当たっては、これまでの財政健全化の努力を緩めることなく、社会保障や公共事業など各分野において「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」、いわゆる「基本方針2006」で定められた歳出改革を、その2年目においても着実に実現し、歳出改革路線を堅持しております。

また、今回の予算編成においては、無駄の排除のため徹底した取組を行っております。随意契約の見直しや、会計検査院の指摘事項の反映を徹底・強化するとともに、予算執行調査の結果を前年度以上に反映させています。

一方で、成長力の強化、地域の活性化、国民の安全・安心といった課題に十分に配慮して予算の重点化を行い、いわば「改革と成長・安心の予算」としております。

この結果、一般歳出については47兆2,845億円と、前年度当初予算に比べ3,061億円の増となり、前年度当初予算に比べ、伸びを抑制しております。また、地方交付税交付金等について、前年度当初予算と比べ、6,820億円増加の15兆6,136億円としております。これらに国債費20兆1,632億円を合わせた一般会計総額は、前年度当初予算と比べ、1,525億円増加の83兆613億円としております。

一方、歳入面については、租税等の収入は前年度当初予算と比べ、870億円増加の53兆5,540億円を見込み、その他収入は4兆1,593億円を見込んでおります。

このように税収の伸びが小幅にとどまる中、歳出・歳入両面において最大限の努力を行い、新規国債発行額については、25兆3,480億円にとどめて4年連続の減額を実現しております。また、資産・債務改革、特別会計改革等を踏まえ、財政投融資特別会計の準備金のうち9.8兆円を国債の償還に充てることにより、国債残高を圧縮しており、こうした取組により、内外に我が国が財政健全化を進めていく姿勢を示すものとなっております。

平成20年度税制改正については、現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現する等の観点から、公益法人制度改革に対応する税制措置を講ずるとともに寄附税制の見直しを行うほか、法人関係税制、中小企業関係税制、金融・証券税制、土地・住宅税制、国際課税等について所要の措置を講じております。

さらに、揮発油税、地方道路税及び自動車重量税の税率の特例措置の適用期限を延長するなど、適用期限の到来する特別措置の延長、整理合理化等の所要の措置を講じております。

(我が国財政の現状と財政運営の基本的な考え方)

次に、我が国財政の現状と財政運営の基本的な考え方について申し述べます。

財政健全化は、安定した経済成長とともに、経済財政運営の車の両輪となるものであります。

平成20年度予算においては、「基本方針2006」等で定められた歳出改革路線を堅持し、各分野において歳出の抑制を図っておりますが、一般会計予算の歳入のうち約3割にあたる25兆円余りを公債発行で賄わざるを得ず、依然として財政は厳しい状況にあります。また、国・地方を合わせた長期債務残高は、平成20年度末には778兆円、対GDP比で148パーセントになると見込まれ、主要先進国の中で最悪の水準となっています。

今後、財政健全化に向けて、まずは、これまで累次にわたり国民の皆様にお示ししてきた目標である「2011年度における国・地方の基礎的財政収支の黒字化」を確実に実現するため、歳出・歳入一体改革を引き続き着実に進めてまいります。その上で、2010年代半ばに向け、債務残高の対GDP比率を安定的に引き下げることを目指します。そのため、引き続き「基本方針2006」等に沿って各分野の歳出改革を徹底してまいります。

一方で、必要な歳出までもが削られ、国民生活に影響が生ずる事態は避ける必要があり、歳出改革だけでは対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増については、安定的な財源を確保しなければなりません。このため、累次の政府の方針や先般の与党税制改正大綱の「基本的考え方」を踏まえ、消費税を含む税体系の抜本的な改革について、早期に実現を図ります。

(提出法律案の概要)

本国会に提出することを検討中の法案を含め、御審議をお願いすることを予定している財務省関係の法律案は、平成20年度予算に関連するもの5件、そのほか1件であります。うち5件については既に国会に提出をいたしております。

既に提出された各法律案の概要について、以下御説明いたします。

第一に、「平成20年度における公債の発行の特例に関する法律案」でございます。同法案は、平成20年度において、当初予算の歳入の約4分の1を占める特例公債の発行根拠を定めるものであります。

第二に、先ほど御説明いたしました平成20年度税制改正における諸措置を盛り込んだ「所得税法等の一部を改正する法律案」でございます。

第三に、国際競争力の強化のための通関手続の特例措置の拡充等や暫定税率等の適用期限の延長等を内容とする「関税定率法等の一部を改正する法律案」でございます。

第四に、輸出入・港湾に関連する業務を電算システムで一体的に処理できるよう措置すること、及び独立行政法人通関情報処理センターを特殊会社として民営化すること等を内容とする「電子情報処理組織による税関手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案」でございます。

第五に、国際開発協会の第15次増資に伴い、我が国が追加出資を行い得るよう所要の措置を定める「国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」でございます。

また、「国家公務員共済組合法の一部を改正する法律案」の提出を検討中であります。

税制改正等の予算関連法案については、国民の安全・安心を確保し、地域を活性化させ、成長力を強化する施策が含まれており、年度当初から円滑に実施されるよう、今年度内に成立させることが是非とも必要であります。速やかに御賛同いただきますよう、委員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

(むすび)

今後とも皆様のお力添えを得て、政策運営に最善を尽くしてまいる所存です。

峰崎委員長を始め委員各位におかれましては、御審議の程よろしくお願い申し上げます。