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第150回国会における宮澤大蔵大臣の財政演説

 

平成十二年十一月十日

 

   今般、先に決定されました「日本新生のための新発展政策」を受けて、平成十二年度補正予算(第一号、特第一号及び機第一号)を提出することとなりました。その御審議をお願いするに当たり、当面の財政政策等の基本的考え方について所信を申し述べますとともに、補正予算の大要について御説明いたします。

 

(最近の経済情勢と「日本新生のための新発展政策」等)
 まず、最近の経済情勢と先に決定されました「日本新生のための新発展政策」について申し述べます。
 我が国経済の現状を概観いたしますと、各種の政策効果もあって、緩やかな改善が続いており、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが続いております。しかしながら、依然として雇用情勢は厳しく、個人消費も概ね横ばいの状態が続いております。
 国際経済情勢を見ますと、世界経済は、総じて見れば引き続き拡大基調にあるものの、米国やアジアの経済の動向、原油価格の動向などを注視する必要があると考えております。
 政府は、このような状況の下、公需から民需への円滑なバトンタッチに万全を尽くし、景気の自律的回復に向けた動きを本格的回復軌道に確実につなげるとともに、我が国経済の二十一世紀における新たな発展基盤の確立を目指すとの観点から、経済対策として、「日本新生のための新発展政策」を決定いたしました。
 本対策においては、まず、日本新生プランの具体化を図る見地から、IT革命の推進、環境問題への対応、高齢化対応、都市基盤整備の四分野に重点を置き、二十一世紀の社会の基盤となる施設の整備や技術開発の推進等を行うとともに、国民のIT利用技能向上のための施策を講じることとしております。また、これらと併せ、生活基盤充実・防災・災害復旧のための施策や中小企業等金融対策、住宅金融対策等についても必要な措置を講じ、全体としては事業規模十一兆円程度の事業を早急に実施することとしております。さらに、本対策においては、活力ある社会を築くための規制改革や企業活動の活性化のための法制度の整備等についても取り組むこととしております。
 税制につきましては、平成十三年度改正において、現下の経済情勢等を踏まえ、企業の組織再編成に係わる税制など、真に有効かつ適切な措置について検討を行い結論を得るとともに、株式譲渡益課税について、これまでの経緯を踏まえつつ、株式市場に関連する様々な見地から検討し、平成十三年度改正の中で早急に結論を得ることとしております。
 

 なお、財政構造改革につきましては、まず、財政の透明性の確保を図り、効率化と質的改善を進めながら、明るい兆しの見えてきた我が国の景気回復を一層確かなものとし、その上で、二十一世紀の我が国経済社会のあるべき姿を展望し、税制の在り方、社会保障の在り方、更には中央と地方との関係まで視野に入れて取り組んでまいります。

 

(平成十二年度補正予算(第一号、特第一号及び機第一号)の大要)
 
次に、今般提出いたしました平成十二年度補正予算(第一号、特第一号及び機第一号)の大要について御説明いたします。
 まず、歳出面においては、経済対策関連として、社会資本整備費二兆五千億円、IT関連特別対策費九百六十四億円、災害対策費三千七百七億円、中小企業等金融対策費七千六百四十億円、住宅金融・雇用等対策費千二百九億円を計上することとしております。このほか、地方交付税交付金を増額するとともに、義務的経費の追加等特に緊要となったやむを得ない事項等について措置し、併せて、既定経費の節減等を行うこととしております。
 他方、歳入面においては、租税について最近までの収入実績等を勘案して一兆二千三百六十億円の増収を見込むとともに、前年度の決算上の純剰余金一兆五千百三億円を計上し、さらに、その他収入の増加を見込んでおります。
 なお、決算上の純剰余金については、国債の追加発行を極力抑制するとの観点から、財政法第六条に基づく国債整理基金への繰入れを行わないこととしております。この剰余金の処理につきましては、別途「平成十一年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案」を提出し、御審議をお願いすることとしております。
 以上によってなお不足する歳入について、やむを得ざる措置として公債の追加発行一兆九千八百八十億円を行うこととしております。今回の措置により、平成十二年度の公債発行額は三十四兆五千九百八十億円となり、公債依存度は三十八・五パーセントとなります。
 これらの結果、平成十二年度一般会計補正後予算の総額は、当初予算に対し歳入歳出とも四兆七千八百三十二億円増加し、八十九兆七千七百二億円となります。
 以上の一般会計補正等に関連して、特別会計予算及び政府関係機関予算についても所要の補正を行うこととしております。
 財政投融資計画については、経済対策を実施するため、この補正予算において、日本育英会、中部国際空港株式会社等九機関に対し、総額三百四十億円を追加することとしております。
 以上、平成十二年度補正予算の大要について御説明いたしました。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。