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特集 令和8年度政府経済見通しについて

内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官補佐(経済見通し担当) 左嵜 拓郎

1.政府経済見通しの概要
 令和8年1月23日に「令和8年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「政府経済見通し」という。)が閣議決定された。政府経済見通しは、(1)翌年度の経済財政運営に当たって政府がどのような基本的態度をとるのか、(2)そのような基本的態度に基づいて経済財政運営を行うことによって、経済はどのような姿になるのか、という2点について政府の見解を示した文書である。すなわち、足元の経済情勢を踏まえて翌年度の経済を予測するのはもちろんのこと、政府が経済財政運営の基本的態度に基づき実行する各種の施策による効果を織り込んだ経済見通しを示している。内閣府が作成の上、財務省の税収見積もり、延いては予算の前提として用いられたのち、予算の国会審議に先立って閣議決定されることで最終的に政府見解となる。
 今回の政府経済見通しでは、GDP成長率は、令和7年度は、実質で1.1%程度、名目で4.2%程度、令和8年度は、実質で1.3%程度、名目で3.4%程度を見込んでいる。

2.令和7年度の日本経済(実績見込み)

 日本経済は、賃上げ率が2年連続で5%を上回るなど、「デフレ・コストカット型経済」から、その先にある新たな「成長型経済」に移行する段階まで来た。
 景気は、米国の通商政策による影響が自動車産業を中心に見られるものの、緩やかに回復している。しかし、潜在成長力は伸び悩み、賃金の伸びは物価上昇に追いつかず、食料品を中心とした物価上昇により、個人消費は力強さを欠いている。
 こうした現状に対し、政府としては、まずは、生活の安全保障・物価高への対応、危機管理投資・成長投資による「強い経済」の実現、防衛力と外交力の強化を3つの柱とする「「強い経済」を実現する総合経済対策」(令和7年11月21日閣議決定。以下「総合経済対策」という。)を策定し、その裏付けとなる令和7年度補正予算(令和7年12月16日成立)を迅速かつ着実に執行し、総合経済対策の効果を広く波及させていくこととしている。
 令和7年度の日本経済は、今後も緩やかな回復を続け、実質GDP成長率は1.1%程度、名目GDP成長率は4.2%程度、消費者物価(総合)は2.6%程度の上昇率になると見込まれる。

3.令和8年度の経済財政運営の基本的態度

 続いて、政府経済見通しの前提となる経済財政運営の基本的態度については、下記の通り示している。
 『令和8年度は、安定的な物価上昇とそれを上回る持続的な賃金上昇が実現する「成長型経済」への転換を図るに当たり、将来世代への責任を果たす「責任ある積極財政」の考え方の下、経済財政運営を行う。戦略的な財政出動により官民が力を合わせ「危機管理投資」と「成長投資」を進めて社会課題を解決し、「暮らしの安全・安心」を確保するとともに、雇用と所得を増やし、潜在成長力を引き上げ、「強い経済」を実現していく。
 財政や社会保障の仕組みについても、物価と賃金の上昇に適切に対応した形への転換が求められる。また、歳出の質を高める行財政改革を徹底し、その一環として、制度とシステムの設計を併せて行うことにより効率的かつ効果的な国民への公共サービスの提供体制の構築を推進する。
 こうした中、経済成長を通じて税収を増やし、成長率の範囲内に債務の伸びを抑制し、政府債務残高対GDP比を引き下げていく。これにより、財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保するとともに、「強い経済」の実現と財政健全化を両立させていく。
 今後の強い経済成長と物価安定の両立の実現に向けて、適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である。政府は、引き続き、日本銀行と緊密に連携し、デフレに後戻りすることのない物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、一体となって取り組んでいく。日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。
 こうした一連の取組によって、政府は、経済成長の果実を広く国民に行き渡らせ、誰もが豊かさを実感し、未来への不安が希望に変わり、安心できる社会の実現を目指す。』

4.令和8年度の日本経済(見通し)

 最後に、以上のような政策態度に基づいて見込まれる令和8年度の日本経済の姿を概説する。
 令和8年度は、所得環境の改善が進む中で、各種政策効果も下支えとなり、個人消費が増加するとともに、危機管理投資・成長投資の取組が進展する中で、設備投資も増加するなど、引き続き、国内需要中心の経済成長となることが期待される。
 令和8年度の実質GDP成長率は1.3%程度、名目GDP成長率は3.4%程度、消費者物価(総合)は1.9%程度の上昇率になると見込まれる。
 ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動等の影響には、十分注意する必要がある。
(1)各項目の見通し
ア)実質国内総生産(実質GDP)
(i)民間最終消費支出
 物価上昇が徐々に落ち着く中で、所得環境の改善が進むとともに、各種政策効果も下支えとなり、増加する(対前年度比1.3%程度の増)。
(ii)民間住宅
 建築基準法改正に伴い前年度に生じた落ち込みから回復し、増加する(対前年度比1.3%程度の増)。
(iii)民間企業設備
 危機管理投資・成長投資の取組が進展する中で、企業の堅調な収益や高い投資意欲を背景に、増加する(対前年度比2.8%程度の増)。
(iv)政府支出
 高齢化等に伴う支出や総合経済対策に伴う支出により、増加する(対前年度比1.1%程度の増)。
(v)外需(財貨・サービスの純輸出)
 世界経済の緩やかな成長に伴い輸出が増加する一方で、国内需要の増加に伴い輸入が増加し、マイナス寄与となる(実質GDP成長率に対する外需の寄与度▲0.2%程度)。
(イ)実質国民総所得(実質GNI)
 海外からの所得増加が見込まれることにより、実質GDP成長率を上回る伸びとなる(対前年度比1.7%程度の増)。
(ウ)労働・雇用
 労働力人口がおおむね横ばいとなる中、経済の緩やかな成長に伴い労働需給は引き締まり、完全失業率は低下する(2.4%程度)。
(エ)鉱工業生産
 国内需要や輸出の増加に伴い、上昇する(対前年度比1.2%程度の上昇)。
(オ)物価
 消費者物価(総合)上昇率は、食料価格の上昇幅が前年度から縮小するとともに、総合経済対策によるエネルギー価格の抑制効果等も物価を押し下げる一方、需給バランスが改善する中で、基調的な物価は押し上げられ、1.9%程度となる。GDPデフレーターについては、対前年度比2.0%程度の上昇となる。
(カ)国際収支
 所得収支の黒字が続く中、経常収支の黒字はおおむね横ばいで推移する(経常収支対名目GDP比5.5%程度)。
 ただし、我が国経済は民間活動がその主体を成すものであること、また、国際環境の変化等には予見しがたい要素が多いことに鑑み、上記の諸計数は、ある程度幅を持って考えられるべきものである。

図表 主要経済指標
図表 (参考)令和7年12月25日経済財政諮問会議提出資料