Future Designと経済、そして、成長
高知工科大学 フューチャー・デザイン研究所、所長経済・マネジメント学群、教授
小谷 浩示
Future Design(FD)とは、人や組織が「将来世代の視点」に立ち、唯一無二の人生や組織の進むべき道(ビジョン・ミッション・ストラテジー)を自ら設計し、継続的に実行する事を促す思考・行動介入の方法です。同時に、FD介入が人々の自己充足、持続可能性、将来可能性を如何に高めるか、明らかにする研究・教育・実践分野でもあります。現代のグローバル資本主義社会では、あらゆる主体が成功や利益の為に差異化し続ける事を求められています。更に、AIやITの急速な進展により「人間にしか創造出来ない価値」を生み出す事が重要になりました。AI・IT・他者に代替されない「自分だからこそ出来る何か」を見出す事が、個人、組織、国家にも強く求められています。FDはこの問いに対して人の可能性への大きな希望を示す取り組みだとも考えています。
私は実験経済学・環境経済学を専門とし、FD研究と教育に10年以上取り組んできました。当初、学術的評価が十分ではありませんでした。が、次第に研究者の間で認知され、現在では主要経済学雑誌でも題名に「Future Design」を含む論文が査読・掲載される段階に至っています。ある査読者から「将来世代の利益や権利の為に行動する主体が現在の市場や政府には存在しない、この事こそFDが必要とされる根本理由ではないか」とのコメントを貰い、私自身、大きな感動で身震いしました。
初期のFD研究では、現代の意思決定の中に将来世代の視点を組み込む制度や仕組みの導入、つまり、「将来世代の自分事化」とその効果を実験検証してきました。結果、決定や行動が大きく改善される事を確認しています。一方、高知県の教育現場(大学、高校、中学等)や教員・企業研修でのFD実践を通じ、多くの人が将来世代の自分事化以前に「自分自身の将来の自分事化」を出来ていない、と云う事に気付きました。自分の未来へ向けたビジョン、ミッション、ストラテジーが無い状態です。主体的に未来をデザインする機会と教育が社会の中で不足しているのかもしれません。
FD研究・教育の目標は、より多くの人が独自の未来ビジョンを持ち、ミッション(課題)を認識し、それら達成に向け能動的に継続して実行出来る様になる事です。新しいビジョンを見出し・決断し、そこへ継続実行する事は人間にしか生み出せない価値だと思っています。独自のビジョンを持つ事で、人と組織は生産性・創造性・自己充足・持続可能性・将来可能性を高めて行く、更に、個人のビジョンが組織や国家のビジョンと調和すれば、日本は持続可能性を確保しながらも力強く成長出来る筈です。
私は日本サッカーファミリーの一員です。サッカー日本代表はここ数十年で本当に強くなり成長しました。日本代表の個々の選手は欧州で揉まれながら、サッカー選手として独自のビジョンを持っています。但し、一旦試合になればチームの勝利の為にチームと個人のビジョンを調和させながら能動的にプレーしています。その調和にこそ、日本が日本である所以があると思うのです。サッカーの舞台で日本代表が輝き多くの人に希望と夢を与えている様に、政府・企業リーダーの皆様には、日本の発展と成長に向けた何処の国も掲げていない独自の経済ビジョン、新しい課題認識、それら達成への政策・公約を掲げ継続実行し、日本と世界の人々に「日本は自己充足、持続可能性、将来可能性に溢れている」と云う希望と夢を示して欲しい、と考えています。

