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2025年IMF・世界銀行グループ年次総会およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要

国際機構課長 池田 洋一郎/係長 安田 歩夢/係員 前田 珠実
開発機関課長 野元 隆章 /係長 後白 翼
国際調整室長 村口 和人 /係長 酒寄 晴佳

巻頭文
 2025年10月13日から10月18日にかけて、米・ワシントンにおいて、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世界銀行・IMF合同開発委員会(DC)等の国際会議が開催された。これらの会議は、第80回世界銀行グループ・IMF年次総会に合わせて開催されたものである。
 以下本稿では、各会議での議論の概要を紹介したい。

1 G7財務大臣・中央銀行総裁会議(2025年10月15日)
 今回のG7は、ウクライナ支援や世界経済に関する論点について議論が行われた。日本からは、加藤財務大臣、植田日銀総裁が出席した。
 ウクライナ支援のセッションにおいては、ウクライナのスビリデンコ首相、マルチェンコ財務大臣より同国の置かれた状況等について説明があった他、本会合に先立ち10月1日に発出されていたロシアへの圧力強化に関するG7財務大臣共同声明を受けた、各国の取組状況についてアップデートが行われた。
 世界経済については、日本から、中国が本会合の直前に公表したレアアースの広範な輸出制限措置に関し、日本としても強く懸念しており、G7は中国に対し、結束して対応していくべきこと、他方で、我々の対応が報復の連鎖を招くこととなれば世界の経済や市場に悪影響を与えかねないこと、こうした様々な動きが金融市場にもたらし得るリスクを注視し、為替レートの過度な変動や無秩序な動きに注意する必要があることなどを主張した。さらに、グローバル・インバランスについて、日本からは、IMFの客観的な分析と率直な提言を多とし、これに基づく主要国間の建設的な議論と、各国による改革実行を後押しする、多国間での対話の場の設定に期待することなどを指摘した。
 また、本年次総会においては、アフリカ諸国と太平洋及びカリブ海の島嶼国を招いたG7のアウトリーチイベントも開催され、加藤財務大臣が参加した。日本からは、国内資金動員、債務管理、災害リスクファイナンス及びクロスボーダー決済に関し、日本がこれまでアフリカや島嶼国において推進してきた取組みを紹介した。

2 G20財務大臣・中央銀行総裁会議(2025年10月15~16日)
 今回のG20は、南アフリカ議長下における4回目かつ最後の大臣・総裁級会議となった。日本からは、植田日銀総裁、三村財務官が出席した。初日のセッションでは、まず、世界経済に関する議論が行われた。日本は、世界経済は強靭性を示しているが、見通しは依然として不確実であり、ロシアによるウクライナ侵略は世界経済の重荷となっていることを指摘した。また、会合の前週に中国が発表した、レアアースの広範な輸出制限措置について、日本としても強く懸念している旨を述べたほか、貿易政策の転換が金融市場のみならず実体経済に与える影響にも注意が必要であることを指摘した。さらに、グローバル・インバランスは、関税ではなく、適切な国内政策を通じて対処されるべきであり、経常赤字国は財政健全化を行い、経常黒字国は非市場的政策・慣行を廃止していくべき旨、主張した。加えて初日には、国際金融に関する議論も行われた。日本からは、IMFは、あらゆるマクロクリティカルな国際収支ニーズに対応するコア・マンデートを堅持し、機能を引き続き強化すべきであること、脆弱な低所得国等への能力開発を含む支援は、IMFのコア業務の一つと位置付けるべきであることを強調した。また債務の透明性に関して、世界銀行主導のData Sharing Exerciseへの、全G20メンバーの参加を要請した。
 2日目のセッションでは、アフリカの開発課題及び金融セクターに関する議論が行われた。アフリカの開発に関しては、日本はアフリカの重要なパートナーであり、昨年8月に日本が主催したTICAD9(第9回アフリカ開発会議)において、民間セクター開発、債務持続可能性と透明性、及び国内資金動員等の課題について、アフリカ各国等と深く掘り下げた議論が行われたことなどを紹介した。また、アフリカ諸国が直面する課題の解決に向けたイニシアティブとして南アフリカ議長が提案した「アフリカ・エンゲージメント・フレームワーク」については、日本としても支持する旨を表明しつつ、既存の取組みを踏まえながら、今後もG20で協調してアフリカ支援に取り組んでいく旨、呼びかけを行った。金融セクターのセッションでは、G20で合意されたFSBによる金融規制勧告の実施の遅れについて、その根本的な原因分析が重要である点、また暗号資産・ステーブルコインに関しては、公正な競争環境の確保に向け、FSB勧告に沿った規制・監督の枠組みを各国・地域が実施できるよう、FSBによる更なる取組について期待する点などを強調した。マネーロンダリングやテロ資金供与のリスクへの対処に関しては、DeFiやpeer-to-peer取引に起因する新たなリスクへの対処について、FATF(金融活動作業部会)の継続的な取り組みを支持する旨、発言した。
 会合では、途上国債務問題に関して、G20各国の合意に基づく「債務持続可能性に関する閣僚宣言」が採択された。本宣言は、債務措置に係る「G20共通枠組」など、これまでのG20の取組を振り返りつつ、今後も更なる行動を進めていく決意を示したものである。本閣僚宣言において、日本がかねてより推進してきた、借り手・貸し手双方によるデータ共有の取組(Data Sharing Exercise:DSE)が、G20の大臣級合意文書に初めて記載されたことは、重要な進展である。同時に、2025年7月に採択されたG20財務大臣・中央銀行総裁声明を基本的に踏襲しつつ、一年間の議論の結果を南アフリカ議長がまとめた「議長総括」も発出された。
 このように、今回のG20では、国際情勢が一層複雑化する中、多くの議題について建設的な議論が交わされた他、日本にとっても重要な主要論点について合意や一定の方向性を見出すことができた。議長国が米国に交代した本年も、世界経済の主要課題に対しメンバー間で率直な意見交換を続けること、そして多国間協調を通じた課題解決の機運を高めることが求められる。日本としても、米議長を支えつつ、積極的に議論に貢献していく。

3 国際通貨金融委員会(IMFC)(2025年10月16日~17日)
 年次総会の終盤となる10月16日から17日にかけて、第52回国際通貨金融委員会(IMFC)*1が開催され、日本からは植田日銀総裁が出席した。会合では、世界経済の動向やIMFの各種政策、IMFの今後のあり方等について議論が行われた。
 日本は、世界経済への認識や為替に関する日本の立場を表明するとともに、サーベイランス・融資・能力開発といったIMFの主要業務において重視する点を述べた。また、IMFのクォータ及びガバナンスに係る将来的な議論を導くための一連の原則に盛り込むべきポイントとして、(1)クォータ見直しは、それ自体が目的ではなく、IMFがグローバル金融セーフティネット(GFSN)の中核として加盟国のニーズにより良く応えられるよう、その機能とガバナンスを改善するための手段であること、(2)1つのクォータが、加盟国の「資金アクセス」と、加盟国の「投票権」及びその基礎となる「出資額」の2つを規定する仕組みが、GFSNの中核としてIMFを適切に機能させる上で目的に適っているか再検証すること、(3)低所得国・脆弱国支援を、IMFのコア業務の一つと位置付けて強化するとともに、当該業務の安定的な資金基盤に資するガバナンスを構築すること、(4)IMFの意思決定プロセスを、より包摂的なものとすること、等を提案した。
 IMFCにおける議論の結果は、会合の後に議長国のサウジアラビアから「地政学以外の事柄については全メンバーで合意した」旨を記した『議長声明』として発出された。
 『議長声明』では、地政学に関して、「進行中の戦争及び紛争は、甚大な人道的犠牲をもたらし続けていると同時に、経済的にも多大なコストと重大な負のスピルオーバーを引き起こしている」とした上で、「持続可能な成長及び長期的安定のためには、戦争と紛争を終結させ、世界における恒久的な平和を確保することが依然として不可欠である」との文言を明記した。
 クォータについては、第16次クォータ一般見直しの下での増資への同意に係る国内承認に関し、更なる遅滞なく完了することへの期待を表明した。また、2025年4月のIMFC議長声明の付属文書(ディリヤ宣言)に基づき、2026年の春会合までにIMFのクォータ及びガバナンスに関する将来の議論を導くための原則策定に向けた作業を進めていることを確認した。

4 世界銀行・IMF合同開発委員会(DC)(2025年10月17日)
 世界銀行・IMF合同開発委員会では、「成長と雇用の基盤」をテーマに議論が行われた。雇用創出がテーマに据えられたのは、昨年4月に行われた同委員会から二回連続であり、世銀グループによる雇用創出の重点化や、その取組方針が、参加者によって歓迎された。本テーマに関し、バンガ世銀総裁は、人的資本及び物理的なインフラへの政府の投資の重要性等を説明した。
 以下、成果文書の概要について紹介したい。今回も、前回に引き続きコミュニケ発出の合意には至らず、議長声明としての発表となった。世銀グループによる雇用創出のために取組は同声明においても言及された。その上で、各国の債務の持続性、透明性、脆弱性の改善に向けて世銀がIMFや開発パートナーと引き続き連携することや、世銀が効果的で公平な国内資金動員を支援することが求められた。同様に、支援対象国への開発効果を最大化するための取組を続け、特に低所得国、脆弱国、紛争及び暴力の影響を受ける国、並びに小国に引き続き注力することが求められた。エネルギーについても言及され、アフリカ開発銀行や他のパートナーとともに、3億人に電力アクセスを提供する「ミッション300」を含めた取組が称賛された。また、世界銀行グループが調達制度を改定し、質を重視するアプローチや現地雇用の創出が重点化されたことにも言及された。所得水準が特に低い国に対する支援を行う国際開発協会(IDA)に対しては、昨年合意された第21次増資のもとでの支援実施に関する力強い進捗への期待が示された。
 日本国ステートメントでは、IDAに対する日本の貢献について、昨年6月に応募証書を寄託したことを報告し、日本以外の国々に対しては、プレッジに沿って速やかに国内手続きを終えるよう引き続き求めた。世銀の機能と役割に対する期待としては、世銀グループが国際開発金融機関の中核として効率的かつ効果的に機能することの重要性を述べた。また、開発支援に向けた公的資金が限られる中では、民間資金の動員が一層重要であるため、国際金融公社(IFC)及び多数国間投資保証機関(MIGA)が積極的な役割果たすことへの期待を述べるとともに、IFCが昨年6月に東京ビジネス・デベロップメントハブを設置したことを歓迎した。日本が特に重要視する地球規模課題については、国際保健、防災・インフラ、債務問題、太平洋島嶼国に関し日本と世銀が共同で実施する取組を紹介し、日本として支援を継続・強化していく旨を述べた。更に、日本企業との関係強化を念頭に、世銀の調達改革を歓迎すると共に、企業へのアウトリーチを強化するよう、要請した。最後に、昨年12月に退任した俣野弘MIGA前長官の下でのMIGAの活動が発展してきたことに深い敬意を表するとともに、新たに着任した山本力MIGA長官の下で、MIGAが開発支援に更に貢献することへの期待を示した。
 今回は、世銀での約40年間の勤務を終え、昨年11月に退任したアクセル・ヴァン・トロッツェンバーグ元上級専務理事が世銀幹部として出席する最後の開発委員会となった。彼の途上国の開発に対する長年の貢献に、この場を借りて敬意を表したい。

5 日米財務大臣会談(2025年10月15日)
 米国時間10月15日、加藤財務大臣は米国のベッセント財務長官と約30分間、会談を実施した。
 会談の冒頭、加藤財務大臣から、今般の日米の関税協議において合意した5,500億ドルの投資イニシアティブは、両国の経済安全保障の観点からも極めて重要であり、日米両国の利益となる戦略的投資の実現に向けた作業を共に加速化したい旨を述べた。また、為替については、為替政策に関する日米の共通認識等を文書の形としてまとめ、9月に発出した「日米財務大臣共同声明」の考え方を改めて確認をした。この他、両大臣間では、中国のレアアース輸出制限措置等、世界経済の幅広い課題に関して意見交換を行うとともに、二国間や多数国間の諸課題に対処するため、両国間の協力をさらに強化していくことを再確認した。

*1) 国際通貨金融委員会(IMFC)は、国際通貨および金融システムに関する諸問題について、IMF総務会に助言および勧告を行うことを目的として、1999年に前身であるIMF暫定委員会を常設化・改編することで設置された。通常春と秋の年2回開催。各IMF理事選出国・母体を代表する大臣級の委員25名から構成される(現在の議長はサウジアラビアのアルジャドアーン財務大臣。日本からは片山財務大臣がIMFC委員として参加)。