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国際物流と貿易の未来を考える「学生フォーラム」

関税局関税課税関調査室

 2025年2月25日、財務省関税局・横浜税関は、国際物流と貿易の未来を考える「学生フォーラム」を横浜税関本関において開催し、参加した学生が、国際物流と貿易分野に係るテーマで事前に行ったグループ研究の内容を発表しました。
 国際物流、貿易や税関行政に係る認知度・理解度の向上を目的とした積極的な広報事業である本フォーラムは、2023年3月7日に税関発足150周年事業として初めて開催し、今回が3回目の開催となりました。
 今回のフォーラムには、合計101名から成る23グループから参加登録があり、多くのグループから登録があったため、書面審査により予選会を実施し、本選で発表する10グループを選出しました。
 フォーラム当日は、発表する10グループと予選会参加の7グループから67名の学生が参加しました。全体としては、学生に加え、審査員、学生の指導教授、フォーラムの共催団体・協力団体及び関税局・横浜税関職員なども含め約130名が参加しました。
 本誌では、フォーラム当日の模様について紹介します。

1 フォーラム当日の模様(2025年2月25日)
(1)施設見学(午前)
 横浜税関に集合した学生は、オリエンテーション終了後、2グループ(バス4台)に分かれて、施設見学の会場である横浜税関コンテナ検査センターとAPMターミナルズジャパン(港湾運営会社)に向かいました。
 横浜税関コンテナ検査センターでは、コンテナ貨物の税関検査の流れ、検査機器や不正薬物の摘発事例などを見聞きしました。
 APMターミナルズジャパンでは、ターミナルの役割などの説明を受けるとともに、海外から到着した海上貨物が船舶から積み下ろされ、大型クレーンで仕分けされたのち、国内に配送されていく様子を見学しました。
 海上貨物を取り扱う現場の様子を見学した学生が、税関職員や事業者の職員に対して積極的に質問するなど、関心の高さが窺えました。

(2)研究発表会(午後)
 研究発表会の冒頭、山崎翼横浜税関長が主催者を代表して挨拶し、「海港以来166年もの歴史と伝統のあるこの横浜税関で学生フォーラムが開催されることを嬉しく思う。貿易を取り巻く環境が大きく変化するなかで、研究活動やフォーラムの発表を通して学生の皆さんに貿易や国際物流について関心を持っていただき、学びの機会にしていただけたら幸い。発表後には懇親会も予定しており、大学の垣根を越えて参加者同士の交流を図っていただくと同時に、税関職員や共催団体・協力団体の職員とも関わりを持っていただき、皆さんの学生生活のなかで思い出に残るフォーラムになることを期待している。」と述べました。
 続いて、審査員長の長谷川聰哲中央大学名誉教授を始めとする審査員の方々に挨拶をいただき、メインイベントの研究発表会に移りました。研究発表は12分間、その後、審査員との質疑応答を3分間とし、各グループは予め用意したプレゼンテーション資料をスクリーンに投影し、工夫を凝らした発表を行いました。
 発表のテーマは、サプライチェーン、越境EC(通販貨物)、輸出入促進、通関士業界など分野は様々で、いずれも学生ならではの柔軟な着眼点を持ち、興味を引くテーマについて深く研究されており、非常にレベルの高い発表となりました。近年、税関分野でも注目されている時宜を捉えたテーマや、鋭い提案など、学生フォーラム事務局としても学生の皆さんの調査能力や研究能力の高さに驚かされました。
 また、審査員からの鋭い質問にも、研究結果を元に自分の思っていることを堂々と回答していました。

コラム
 審査員6名のうち3名を学識経験者として、前回から引き続き、中央大学 長谷川聰哲名誉教授に審査員長を、青山学院大学 岩田伸人名誉教授((公財)日本関税協会理事、日本貿易学会所属)に審査員をお願いし、また、新たに上智大学経済学部 蓬田守弘教授(日本国際経済学会副会長)に審査員をお願いしました。
 更に、共催団体より、前回から引き続き、(一社)日本通関業連合会 岡藤正策会長、輸出入・港湾関連情報処理センター(株) 平松均代表取締役社長に審査員をお願いしたほか、横浜税関 山崎翼税関長も審査員として参加しました。

(3)輸出入・港湾関連情報処理センター(NACCSセンター)、横浜税関の業務説明、若手職員等との交流会、特別保存室の見学
 学生とより年齢の近い関税局の若手職員で構成された「かもめプロジェクトメンバー(※)」がフォーラムの準備段階から関与し、フォーラム当日のロジ面のサポートや学生との交流会に参加しました。施設見学会の施設を事前に見学し、学生に有意義な時間を過ごしてもらうにはどのように見学してもらえば良いか等、検討しました。
 当日は、「かもめプロジェクトメンバー」がパネルディスカッションという形で、職場での業務内容や現在の職業を選んだ経緯などを話し、学生の皆さんから広く質問を募集しました。また、その他にもNACCSセンター、横浜税関から業務説明を行い、税関の現場や関連企業で働く魅力などについて説明いただきました。
 さらに、横浜税関特別保存室の見学会では、旧税関長室や特別会議室を見学し、学生達は横浜税関の歴史に触れていました。
(※)関税局内(関税中央分析所・税関研修所を含む。)の若手職員から意見を求め、柔軟な発想により様々な事業を企画・運営することを目
   的として設置。

(4)結果発表
 審査の結果、最優秀賞に輝いたのは「デミニマス商業的利用による制度破壊」をテーマに発表した高崎経済大学経済学部のグループ。続いて、優秀賞は「二国間水素貿易の促進要因」をテーマに発表した学習院大学経済学部のグループと「人権保護を目的とした政策が経済に与える影響」をテーマに発表した中央大学経済学部のグループとなりました。
 特別賞が「国際海上コンテナ輸送費における安定化に向けて」をテーマに発表した学習院大学経済学部のグループに、敢闘賞が残りの発表グループに授与されました。

【参考】入賞グループの発表内容
 ○最優秀賞
 ・高崎経済大学経済学部(グループ名「梅島ゼミナール」)
  中国発越境EC企業によって、デミニマスを利用して大量の低価格の貨物が輸入され、各国で少額貨物にかかる制度の見直しや廃止が起
  こっていることを紹介。現状の課題から、制度の公平性と効率性の両立を図ること、また、労働環境の改善や製品の安全基準への対応が
  必要であることを説明。
 ○優秀賞
 ・学習院大学経済学部(グループ名「山田班」)
  近年、世界的に注目を集める水素エネルギーについて、日本の水素貿易が不安定である現状を踏まえて、新たな調達先としてASEANに
  着目し、FDIの活用や日本の水素拠点の整備によって安定した貿易が実現されると説明。
 ・中央大学経済学部(グループ名「サターン」)
  タイでのビジネスと人権に関する行動計画(NAP)の策定後に貿易額が減少することを明らかにし、タイへの現地調査によってその要因
  を説明するとともに、NAPへの法的拘束力の附帯やコスト負担の軽減を図ることで、実効性のあるタイNAPになることを説明。
 ○特別賞
 ・学習院大学経済学部(グループ名「東班」)
  世界の貿易量の9割を占める海上輸送について、海上コンテナ輸送費の変動が経済活動に大きな影響を及ぼすことを説明。コンテナ製造国
  分散、輸出需要過多解消、海賊発生抑制の観点から政策を提言し、安定したコンテナ輸送を実現できることを提言。

コラム
 表彰式画像の左側が『カスタム君』、右側が『タリフ』となります。
○『カスタム君』は、麻薬探知犬をモデルとした税関イメージキャラクター。
 名前は、英語で税関をCUSTOMS(カスタムス)ということから名付けられました。
○『タリフ』は、横浜通関業会の公式キャラクター『ハマの通関士 タリフ&シンコック』の1キャラクター。
 外国と我が国とを結ぶサプライチェーンの中で、通関士の専門的知識を生かし、輸出入貨物の通関手続をスピーディに処理する貿易取引のエキスパート。幸運を呼ぶ吉鳥で、ヨーロッパでは知恵の象徴とされているフクロウの仲間。

2 フォーラム全般を通して
 フォーラムの開催は、今回が3回目でした。学生フォーラム事務局としても前回、前々回の開催状況を確認しながら試行錯誤しつつ、より良いフォーラムとするために尽力してきました。関係者含め約130名もの皆さんにご参加いただいた大規模なイベントであり、準備作業において困難な場面もありましたが、共催である横浜税関から多大なるご協力をいただき、無事に終えることができました。学生の皆さんからは、「税関の意義や貿易の実態について深い理解をすることができた。」、「新しい視点を得ることができた。」などの声を聞くことができ、改めてフォーラムの反響の大きさを実感しました。
 今回のフォーラムは共催団体・協力団体、審査員、学生及び教員の皆さん並びに共催である横浜税関の御助力に支えられて開催できたフォーラムだと感じています。ご参加いただいた皆様には本誌をお借りし、心より感謝申し上げます。

コラム
 フォーラム開催の約半年前(2024年9月)に参加募集チラシを税関HPへ掲載し、X(旧Twitter)も活用しつつ、また、個別に過去参加した学校の教授の皆さんや日本貿易学会及び日本国際経済学会の協力もいただきながら参加者募集を行いました。
 研究を進める中での学生からの相談は随時受け付け、助言させていただきました。
 また、事前の職場見学会として、共催団体・協力団体からの希望を募り、(公財)日本関税協会のパートナーとして知的財産の保護に積極的に取り組んでいる事業者及びNACCSセンターを見学していただきました。