主計局主計官 横山 好古
1.令和7年度防衛関係予算の全体像
令和7年度の防衛関係予算は、令和4年(2022年)12月16日の国家安全保障会議及び閣議において決定された「防衛力整備計画」等を踏まえて編成を行った結果、全体で8兆7,005億円(対前年度比+9.4%)を計上している*1。このうち、SACO関係経費*2、米軍再編関係経費*3を除く防衛力整備計画対象経費については、8兆4,748億円(対前年度比+9.7%)を措置している。(図表1:防衛関係予算の推移)
また、新規契約額については、8兆7,896億円(対前年度比▲9.2%)を計上しており、このうち防衛力整備計画対象経費については、8兆4,332億円(対前年度比▲9.9%)を措置している。(図表2:新規契約額の推移)
2.人的基盤の強化への取組
優れた自衛官を安定的に確保するため、令和6年12月に関係閣僚会議においてとりまとめられた「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」を踏まえ、自衛隊の人的基盤を強化することとしており、その内容は以下のとおりである。*4
(1)自衛官の処遇改善
一般曹候補生又は自衛官候補生として入隊後営舎内等で生活する自衛官に対する給付金の新設(採用後6年間で120万円)、自衛官任用一時金の引上げ(約12万円増の約34万円)、主要な野外演習に従事する隊員に支給する手当の新設、災害派遣等手当の引上げ、予備自衛官等に支給する手当の引上げ等を通じた処遇の改善(167億円)を実施。
(2)生活・勤務環境の改善
営舎内居室の個室化の推進、庁舎・隊舎の改修や修繕、備品や日用品等の整備、駐屯地・基地等における無線LAN環境の拡充、教育基盤や隊舎の女性用区画等の整備の推進、被服等の整備・更新、糧食の魅力化等(3,878億円)を実施。
(3)新たな生涯設計の確立
再就職に向けた職業訓練の充実、再就職先拡充のための広報の強化等(19億円)を実施。
(4)その他
募集広報のデジタル化・オンライン化の推進等(32億円)に必要な予算を措置。
3.令和7年度予算における主要事業
令和7年度予算は、防衛力の整備等に必要な事業を着実に推進しているところ、その主な内容は以下のとおりである。*5
(1)防衛力整備計画対象経費
ア スタンド・オフ防衛能力
○ 我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して、対空ミサイル等の脅威圏外から対処するスタンド・オフ防衛能力を抜本的に強化するた
め、12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)の取得(168億円)、極超音速誘導弾の開発(585億円)及び製造態勢の拡充等(2,391億円)を
実施。
○ スタンド・オフ防衛能力に必要な目標の探知・追尾能力の獲得のため、衛星コンステレーションの構築を開始(PFI方式)(2,832億円)。
イ 統合防空ミサイル防衛能力
○ イージス・システム搭載艦の整備に伴い、実射試験を含む各種試験の準備等(865億円)を実施。
○ このほか、弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速滑空兵器等の迎撃能力を強化するため、SM-3ブロックⅡA(弾道ミサイル防衛用迎撃
ミサイル)(744億円)、SM-6(長距離艦対空ミサイル)(104億円)、PAC-3MSEミサイル(435億円)、03式中距離地対空誘導弾(改善
型)(720億円)を取得。
ウ 無人アセット防衛能力
○ 情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング機能を強化するため、滞空型UAV「MQ-9B(シーガーディアン)」(415億円)、艦載型UAV
(小型)(40億円)を取得。
エ 領域横断作戦能力
【宇宙領域における能力強化】
○ 宇宙領域を活用した情報収集能力等の強化を図るため、衛星コンステレーションの構築(2,832億円)【再掲】を開始するとともに、現在運
用中のⅩバンド防衛通信衛星(きらめき2号)の後継機として、坑たん性や通信能力等が向上された次期防衛通信衛星の整備(1,238億円)
を実施。
【サイバー領域における能力強化】
○ サイバー攻撃等対処に係る状況把握・対処等をより迅速かつ的確に行うため、AIを活用した支援システムの整備(41億円)を実施。
【電磁波領域における能力強化】
○ 相手の通信機器やレーダーが発する電波を妨害し、相手の通信や索敵などの能力を低減または無効化する能力を強化するため、ネットワー
ク電子戦システム(NEWS)(改)の開発(47億円)を実施。
○ 電子妨害や電子防護に必要となる、電磁波に関する情報を収集する能力を強化するため、電波情報収集機RC-2(1機:457億円)を取得。
【陸海空領域における能力】
○ 機動戦闘車等と連携し、機動的に侵攻部隊対処を行うため、24式装輪装甲戦闘車(18両:220億円)、24式機動120mm迫撃砲(8両:85億
円)、共通戦術装輪車(偵察戦闘型)(6両:91億円)を取得。
○ 対潜戦能力の強化等各種海上作戦能力が向上した新型のFFM(3隻:3,148億円)、探知能力等が向上した潜水艦「たいげい」型潜水艦の9番
艦を建造(1隻:1,140億円)。
また、水中、水上目標の探知・識別能力等を強化した能力向上型P-1(2機:848億円)や搭載システム等の能力等を向上させた回転翼哨
戒機(SH-60L)(2機:293億円)を取得。
○ 我が国の航空戦力の質・量をさらに洗練・強化するため、戦闘機F-35A(8機:1,387億円)・戦闘機F-35B(3機:665億円)を取得する
ほか、戦闘機F-2の能力向上(8機:130億円)を引き続き推進。
このほか、最先端の戦闘機等のパイロットを効率的・効果的に育成するため、教育システムとして一体的に運用すべく、次期初等練習機
(T-6)及び地上教育器材を取得(66億円)。
オ 機動展開能力・国民保護
○ 南西地域等の広大な空域において戦闘機等が粘り強く戦闘を継続するために必要な空中給油・輸送機(KC-46A)(4機:2,231億円)を取
得するとともに、南西地域の島嶼部へ部隊等を輸送する海上輸送力を補完するため、車両及びコンテナの大量輸送に特化した民間船舶(4隻
:396億円)を確保(PFI方式)。
カ 持続性・強靱性
【各種弾薬の整備】
○ 継続的な部隊運用に必要な各種弾薬を確保(7,675億円)。
【装備品等の維持整備】
○ 部品不足等による非可動を解消し、保有装備品の可動数を最大化するため、十分な部品を確保し、確実に整備(22,247億円)。
【施設の強靱化】
○ 自衛隊施設について、部隊新編及び装備品導入等に伴う施設整備等(2,956億円)、火薬庫の整備(336億円)、主要司令部等の地下化・戦闘
機用の分散パッド・電磁パルス攻撃対策等(874億円)を行うとともに、老朽化対策及び耐震対策を含む防護性能の付与等のため、建物の
構造強化、施設の再配置・集約化等を推進(2,694億円)。
また、違法ドローンの探知・識別・対処を可能とする新たなドローン対処器材を導入(30億円)。
キ 研究開発
○ 防衛イノベーションや画期的な装備品等を生み出す機能を抜本的に強化するため、大学等に革新的・萌芽的な技術についての基礎研究を委
託・補助する安全保障技術研究推進制度(114億円)のほか、外部の研究者等を活用し、将来の戦い方を大きく変える機能・技術をスピード
重視で創出していくブレークスルー研究(201億円)*6を実施。
○ 発射プラットフォームの更なる多様化に向けた研究開発を推進するため、水中発射型垂直発射装置の研究(297億円)を実施するととも
に、多様化・複雑化する経空脅威に適切に対処するため、高出力マイクロ波(HPM*7)に関する研究(8億円)を実施。
○ 次期戦闘機に係る日英伊共同開発を推進するため、必要な資金をGCAP*8政府間機関(GIGO*9)に拠出し、機体及びエンジンの設計等
を実施(1,087億円)するほか、次期中距離空対空誘導弾の開発(59億円)を実施。
ク 防衛生産基盤
○ 国内の防衛生産・技術基盤を維持・強化する観点から、防衛装備品の安定的な調達に関するリスク(設備の老朽化、企業撤退等)への対応
を促進するため、防衛装備品の生産基盤強化のための体制整備事業(256億円)を実施。
○ 装備移転を安全保障上の観点から適切なものとすることを目的とし、防衛大臣の求めに応じ、企業が移転対象装備品の仕様及び性能の調整
を行うために必要な防衛装備移転円滑化のための基金に充てる補助金(400億円)を措置。
(2)米軍再編、基地対策等の推進
ア 米軍再編等関連軽費(2,257億円)
米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県をはじめとする地元の負担軽減を図るため、在日米軍の兵力態勢の見直し等についての具体的措置を着実
に実施。
○ 米軍再編関係経費[地元の負担軽減に資する措置](2,146億円)
・ 普天間飛行場の移設、空母艦載機の移駐等のための事業、嘉手納以南の土地の返還等を推進。
○ SACO関係経費(111億円)
・ 沖縄に関する特別行動委員会(SACO)の最終報告に盛り込まれた措置を着実に実施。
イ 基地対策等関連経費(5,248億円)
防衛施設と周辺地域との調和を図るため、基地周辺対策を着実に実施するとともに、在日米軍の駐留を円滑かつ効果的にするための施策を推進。
○ 基地周辺対策経費(1,381億円)
・ 自衛隊の行為や防衛施設の設置等により発生する障害の防止等を図るため、住宅防音や周辺環境整備を実施。
○ 同盟強靱化予算(在日米軍駐留経費負担)(2,274億円)
・ 特別協定等に基づき、在日米軍従業員の給与の負担、提供施設の整備、訓練資機材の調達等を実施。
○ 施設の借料、補償経費等(1,592億円)
・ 防衛施設用地等の借上や水面を利用して訓練を行うことによる漁業補償等を実施。
4.効率化・合理化への取組
令和7年度においては、防衛力整備を効率化・合理化することにより、▲2,653億円のコスト縮減を図ることとしている。
(1)装備品の運用停止・用途廃止
[縮減見込額:▲7億円]
陳腐化等により重要度の低下した装備品の運用停止、用途廃止を実施。
○ 空自U-125Aの用途廃止(▲7億円)
(2)装備品の計画的・安定的・効率的な取得
[縮減見込額:▲259億円]
長期契約も含めた装備品のまとめ買い等により、企業の予見可能性を向上させ、効率的な生産を促し、価格低減と取得コストの削減を実現するとともに、また、維持整備に係る成果の達成に応じて対価を支払う契約方式(PBL*10)等を含む包括契約を拡大。
○ 陸自CH-47J・JA用部品に係るPBL(▲129億円)
○ 海自MCH-101の機体維持等に係る包括契約(▲70億円)
○ 空自F-2搭載機器の長期契約による一括調達(▲33億円)
(3)自衛隊独自仕様の絞り込み
[縮減見込額:▲2億円]
モジュール化・共通化や民生品の使用により、自衛隊独自仕様を絞り込み、取得に係る期限を短縮するとともに、ライフサイクルコストを削減。
○ 陸自気象観測装置の更新(▲2億円)
(4)事業に係る見直し
[縮減見込額:▲957億円]
費用対効果の低いプロジェクトを見直す他、各プロジェクトのコスト管理の徹底、民間委託等による部外力の活用を拡大。
○ 部品の交換による陸自誘導弾の長寿命化(▲463億円)
(5)工数・工程等の精査
[縮減見込額:▲1,427億円]
装備品等について、工数・工程等や関連経費の精査の取組を通じ、価格を低減。
5.今後の課題
防衛力整備計画においては、令和5年度から令和9年度までの5年間における計画実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額を43兆円程度、新規契約額を43.5兆円程度と定めている。あわせて、令和9年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源、及び、計画を賄う財源の確保については、歳出・歳入両面において所要の措置を講ずることとされている。
こうした点を踏まえ、令和7年度においては、引き続き歳出改革や税外収入の確保等を図ることとしたほか、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置として、法人税・たばこ税について所要の措置を講じるとともに、所得税については、与党税制改正大綱において、令和5年度税制改正大綱※等の基本的方向性を踏まえて引き続き検討することとされた。
財政当局としては、防衛力整備計画等を踏まえて確保される財源を最大限効率的に活用していくため、引き続き予算編成等を通じて各事業の内容を精査しつつ、効率的・効果的な防衛体制の確立に貢献していくこととしたい。
※令和5年度税制改正大綱(令和4年12月16日)
第一 令和5年度税制改正の基本的考え方等
6.防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
わが国の防衛力の抜本的な強化を行うに当たり、歳出・歳入両面から安定的な財源を確保する。税制部分については、令和9年度に向けて
複数年かけて段階的に実施することとし、令和9年度において、1兆円強を確保する。具体的には、法人税、所得税及びたばこ税について、
以下の措置を講ずる。
(略)
(2)所得税
所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下
げるとともに、課税期間を延長する。延長期間は、復興事業の着実な実施に影響を与えないよう、復興財源の総額を確実に確保するため
に必要な長さとする。
廃炉、特定復興再生拠点区域の整備、特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた具体的な取組みや福島国際研究教育機構の構築
など息の長い取組みをしっかりと支援できるよう、東日本大震災からの復旧・復興に要する財源については、引き続き、責任を持って確
実に確保することとする。
(略)
以上の措置の施行時期は、令和6年以降の適切な時期とする。
*1) 防衛省情報システム関係経費のうちデジタル庁に計上する314億円を含む。
*2) SACO関係経費とは、沖縄に関する特別行動委員会(SACO:Special Action Committee on Okinawa)最終報告(平成8年12月2日)に盛り込まれた措置を実施するために必要な経費を指す。
*3) 米軍再編関係経費とは、「在日米軍の兵力構成見直し等に関する政府の取組について」(平成18年5月30日閣議決定)及び「平成22年5月28日に日米安全保障協議委員会において承認された事項に関する当面の政府の取組について」(平成22年5月28日閣議決定)に基づく再編関連措置のうち、地元の負担軽減に資する措置を実施するために必要な経費を指す。
*4) 「(1)自衛官の処遇改善」、「(2)生活・勤務環境の改善」は人件費(手当)を含む。
*5) 予算額は「(2)米軍再編、基地対策等の推進」を除き契約額ベース。なお、初度費(専用治工具費や初度設計費等)は含まない。
*6) 評価手法を確立し、成果の見込みの薄い研究については、途中段階であっても早期に中止を判断できる仕組みを構築。
*7) HPM:High Power Microwave
*8) GCAP:Global Combat Air Programme
*9) GIGO:GCAP International Government Organization
*10) PBL:Performance Based Logistics
1.令和7年度防衛関係予算の全体像
令和7年度の防衛関係予算は、令和4年(2022年)12月16日の国家安全保障会議及び閣議において決定された「防衛力整備計画」等を踏まえて編成を行った結果、全体で8兆7,005億円(対前年度比+9.4%)を計上している*1。このうち、SACO関係経費*2、米軍再編関係経費*3を除く防衛力整備計画対象経費については、8兆4,748億円(対前年度比+9.7%)を措置している。(図表1:防衛関係予算の推移)
また、新規契約額については、8兆7,896億円(対前年度比▲9.2%)を計上しており、このうち防衛力整備計画対象経費については、8兆4,332億円(対前年度比▲9.9%)を措置している。(図表2:新規契約額の推移)
2.人的基盤の強化への取組
優れた自衛官を安定的に確保するため、令和6年12月に関係閣僚会議においてとりまとめられた「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」を踏まえ、自衛隊の人的基盤を強化することとしており、その内容は以下のとおりである。*4
(1)自衛官の処遇改善
一般曹候補生又は自衛官候補生として入隊後営舎内等で生活する自衛官に対する給付金の新設(採用後6年間で120万円)、自衛官任用一時金の引上げ(約12万円増の約34万円)、主要な野外演習に従事する隊員に支給する手当の新設、災害派遣等手当の引上げ、予備自衛官等に支給する手当の引上げ等を通じた処遇の改善(167億円)を実施。
(2)生活・勤務環境の改善
営舎内居室の個室化の推進、庁舎・隊舎の改修や修繕、備品や日用品等の整備、駐屯地・基地等における無線LAN環境の拡充、教育基盤や隊舎の女性用区画等の整備の推進、被服等の整備・更新、糧食の魅力化等(3,878億円)を実施。
(3)新たな生涯設計の確立
再就職に向けた職業訓練の充実、再就職先拡充のための広報の強化等(19億円)を実施。
(4)その他
募集広報のデジタル化・オンライン化の推進等(32億円)に必要な予算を措置。
3.令和7年度予算における主要事業
令和7年度予算は、防衛力の整備等に必要な事業を着実に推進しているところ、その主な内容は以下のとおりである。*5
(1)防衛力整備計画対象経費
ア スタンド・オフ防衛能力
○ 我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して、対空ミサイル等の脅威圏外から対処するスタンド・オフ防衛能力を抜本的に強化するた
め、12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)の取得(168億円)、極超音速誘導弾の開発(585億円)及び製造態勢の拡充等(2,391億円)を
実施。
○ スタンド・オフ防衛能力に必要な目標の探知・追尾能力の獲得のため、衛星コンステレーションの構築を開始(PFI方式)(2,832億円)。
イ 統合防空ミサイル防衛能力
○ イージス・システム搭載艦の整備に伴い、実射試験を含む各種試験の準備等(865億円)を実施。
○ このほか、弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速滑空兵器等の迎撃能力を強化するため、SM-3ブロックⅡA(弾道ミサイル防衛用迎撃
ミサイル)(744億円)、SM-6(長距離艦対空ミサイル)(104億円)、PAC-3MSEミサイル(435億円)、03式中距離地対空誘導弾(改善
型)(720億円)を取得。
ウ 無人アセット防衛能力
○ 情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング機能を強化するため、滞空型UAV「MQ-9B(シーガーディアン)」(415億円)、艦載型UAV
(小型)(40億円)を取得。
エ 領域横断作戦能力
【宇宙領域における能力強化】
○ 宇宙領域を活用した情報収集能力等の強化を図るため、衛星コンステレーションの構築(2,832億円)【再掲】を開始するとともに、現在運
用中のⅩバンド防衛通信衛星(きらめき2号)の後継機として、坑たん性や通信能力等が向上された次期防衛通信衛星の整備(1,238億円)
を実施。
【サイバー領域における能力強化】
○ サイバー攻撃等対処に係る状況把握・対処等をより迅速かつ的確に行うため、AIを活用した支援システムの整備(41億円)を実施。
【電磁波領域における能力強化】
○ 相手の通信機器やレーダーが発する電波を妨害し、相手の通信や索敵などの能力を低減または無効化する能力を強化するため、ネットワー
ク電子戦システム(NEWS)(改)の開発(47億円)を実施。
○ 電子妨害や電子防護に必要となる、電磁波に関する情報を収集する能力を強化するため、電波情報収集機RC-2(1機:457億円)を取得。
【陸海空領域における能力】
○ 機動戦闘車等と連携し、機動的に侵攻部隊対処を行うため、24式装輪装甲戦闘車(18両:220億円)、24式機動120mm迫撃砲(8両:85億
円)、共通戦術装輪車(偵察戦闘型)(6両:91億円)を取得。
○ 対潜戦能力の強化等各種海上作戦能力が向上した新型のFFM(3隻:3,148億円)、探知能力等が向上した潜水艦「たいげい」型潜水艦の9番
艦を建造(1隻:1,140億円)。
また、水中、水上目標の探知・識別能力等を強化した能力向上型P-1(2機:848億円)や搭載システム等の能力等を向上させた回転翼哨
戒機(SH-60L)(2機:293億円)を取得。
○ 我が国の航空戦力の質・量をさらに洗練・強化するため、戦闘機F-35A(8機:1,387億円)・戦闘機F-35B(3機:665億円)を取得する
ほか、戦闘機F-2の能力向上(8機:130億円)を引き続き推進。
このほか、最先端の戦闘機等のパイロットを効率的・効果的に育成するため、教育システムとして一体的に運用すべく、次期初等練習機
(T-6)及び地上教育器材を取得(66億円)。
オ 機動展開能力・国民保護
○ 南西地域等の広大な空域において戦闘機等が粘り強く戦闘を継続するために必要な空中給油・輸送機(KC-46A)(4機:2,231億円)を取
得するとともに、南西地域の島嶼部へ部隊等を輸送する海上輸送力を補完するため、車両及びコンテナの大量輸送に特化した民間船舶(4隻
:396億円)を確保(PFI方式)。
カ 持続性・強靱性
【各種弾薬の整備】
○ 継続的な部隊運用に必要な各種弾薬を確保(7,675億円)。
【装備品等の維持整備】
○ 部品不足等による非可動を解消し、保有装備品の可動数を最大化するため、十分な部品を確保し、確実に整備(22,247億円)。
【施設の強靱化】
○ 自衛隊施設について、部隊新編及び装備品導入等に伴う施設整備等(2,956億円)、火薬庫の整備(336億円)、主要司令部等の地下化・戦闘
機用の分散パッド・電磁パルス攻撃対策等(874億円)を行うとともに、老朽化対策及び耐震対策を含む防護性能の付与等のため、建物の
構造強化、施設の再配置・集約化等を推進(2,694億円)。
また、違法ドローンの探知・識別・対処を可能とする新たなドローン対処器材を導入(30億円)。
キ 研究開発
○ 防衛イノベーションや画期的な装備品等を生み出す機能を抜本的に強化するため、大学等に革新的・萌芽的な技術についての基礎研究を委
託・補助する安全保障技術研究推進制度(114億円)のほか、外部の研究者等を活用し、将来の戦い方を大きく変える機能・技術をスピード
重視で創出していくブレークスルー研究(201億円)*6を実施。
○ 発射プラットフォームの更なる多様化に向けた研究開発を推進するため、水中発射型垂直発射装置の研究(297億円)を実施するととも
に、多様化・複雑化する経空脅威に適切に対処するため、高出力マイクロ波(HPM*7)に関する研究(8億円)を実施。
○ 次期戦闘機に係る日英伊共同開発を推進するため、必要な資金をGCAP*8政府間機関(GIGO*9)に拠出し、機体及びエンジンの設計等
を実施(1,087億円)するほか、次期中距離空対空誘導弾の開発(59億円)を実施。
ク 防衛生産基盤
○ 国内の防衛生産・技術基盤を維持・強化する観点から、防衛装備品の安定的な調達に関するリスク(設備の老朽化、企業撤退等)への対応
を促進するため、防衛装備品の生産基盤強化のための体制整備事業(256億円)を実施。
○ 装備移転を安全保障上の観点から適切なものとすることを目的とし、防衛大臣の求めに応じ、企業が移転対象装備品の仕様及び性能の調整
を行うために必要な防衛装備移転円滑化のための基金に充てる補助金(400億円)を措置。
(2)米軍再編、基地対策等の推進
ア 米軍再編等関連軽費(2,257億円)
米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県をはじめとする地元の負担軽減を図るため、在日米軍の兵力態勢の見直し等についての具体的措置を着実
に実施。
○ 米軍再編関係経費[地元の負担軽減に資する措置](2,146億円)
・ 普天間飛行場の移設、空母艦載機の移駐等のための事業、嘉手納以南の土地の返還等を推進。
○ SACO関係経費(111億円)
・ 沖縄に関する特別行動委員会(SACO)の最終報告に盛り込まれた措置を着実に実施。
イ 基地対策等関連経費(5,248億円)
防衛施設と周辺地域との調和を図るため、基地周辺対策を着実に実施するとともに、在日米軍の駐留を円滑かつ効果的にするための施策を推進。
○ 基地周辺対策経費(1,381億円)
・ 自衛隊の行為や防衛施設の設置等により発生する障害の防止等を図るため、住宅防音や周辺環境整備を実施。
○ 同盟強靱化予算(在日米軍駐留経費負担)(2,274億円)
・ 特別協定等に基づき、在日米軍従業員の給与の負担、提供施設の整備、訓練資機材の調達等を実施。
○ 施設の借料、補償経費等(1,592億円)
・ 防衛施設用地等の借上や水面を利用して訓練を行うことによる漁業補償等を実施。
4.効率化・合理化への取組
令和7年度においては、防衛力整備を効率化・合理化することにより、▲2,653億円のコスト縮減を図ることとしている。
(1)装備品の運用停止・用途廃止
[縮減見込額:▲7億円]
陳腐化等により重要度の低下した装備品の運用停止、用途廃止を実施。
○ 空自U-125Aの用途廃止(▲7億円)
(2)装備品の計画的・安定的・効率的な取得
[縮減見込額:▲259億円]
長期契約も含めた装備品のまとめ買い等により、企業の予見可能性を向上させ、効率的な生産を促し、価格低減と取得コストの削減を実現するとともに、また、維持整備に係る成果の達成に応じて対価を支払う契約方式(PBL*10)等を含む包括契約を拡大。
○ 陸自CH-47J・JA用部品に係るPBL(▲129億円)
○ 海自MCH-101の機体維持等に係る包括契約(▲70億円)
○ 空自F-2搭載機器の長期契約による一括調達(▲33億円)
(3)自衛隊独自仕様の絞り込み
[縮減見込額:▲2億円]
モジュール化・共通化や民生品の使用により、自衛隊独自仕様を絞り込み、取得に係る期限を短縮するとともに、ライフサイクルコストを削減。
○ 陸自気象観測装置の更新(▲2億円)
(4)事業に係る見直し
[縮減見込額:▲957億円]
費用対効果の低いプロジェクトを見直す他、各プロジェクトのコスト管理の徹底、民間委託等による部外力の活用を拡大。
○ 部品の交換による陸自誘導弾の長寿命化(▲463億円)
(5)工数・工程等の精査
[縮減見込額:▲1,427億円]
装備品等について、工数・工程等や関連経費の精査の取組を通じ、価格を低減。
5.今後の課題
防衛力整備計画においては、令和5年度から令和9年度までの5年間における計画実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額を43兆円程度、新規契約額を43.5兆円程度と定めている。あわせて、令和9年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源、及び、計画を賄う財源の確保については、歳出・歳入両面において所要の措置を講ずることとされている。
こうした点を踏まえ、令和7年度においては、引き続き歳出改革や税外収入の確保等を図ることとしたほか、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置として、法人税・たばこ税について所要の措置を講じるとともに、所得税については、与党税制改正大綱において、令和5年度税制改正大綱※等の基本的方向性を踏まえて引き続き検討することとされた。
財政当局としては、防衛力整備計画等を踏まえて確保される財源を最大限効率的に活用していくため、引き続き予算編成等を通じて各事業の内容を精査しつつ、効率的・効果的な防衛体制の確立に貢献していくこととしたい。
※令和5年度税制改正大綱(令和4年12月16日)
第一 令和5年度税制改正の基本的考え方等
6.防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
わが国の防衛力の抜本的な強化を行うに当たり、歳出・歳入両面から安定的な財源を確保する。税制部分については、令和9年度に向けて
複数年かけて段階的に実施することとし、令和9年度において、1兆円強を確保する。具体的には、法人税、所得税及びたばこ税について、
以下の措置を講ずる。
(略)
(2)所得税
所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下
げるとともに、課税期間を延長する。延長期間は、復興事業の着実な実施に影響を与えないよう、復興財源の総額を確実に確保するため
に必要な長さとする。
廃炉、特定復興再生拠点区域の整備、特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた具体的な取組みや福島国際研究教育機構の構築
など息の長い取組みをしっかりと支援できるよう、東日本大震災からの復旧・復興に要する財源については、引き続き、責任を持って確
実に確保することとする。
(略)
以上の措置の施行時期は、令和6年以降の適切な時期とする。
*1) 防衛省情報システム関係経費のうちデジタル庁に計上する314億円を含む。
*2) SACO関係経費とは、沖縄に関する特別行動委員会(SACO:Special Action Committee on Okinawa)最終報告(平成8年12月2日)に盛り込まれた措置を実施するために必要な経費を指す。
*3) 米軍再編関係経費とは、「在日米軍の兵力構成見直し等に関する政府の取組について」(平成18年5月30日閣議決定)及び「平成22年5月28日に日米安全保障協議委員会において承認された事項に関する当面の政府の取組について」(平成22年5月28日閣議決定)に基づく再編関連措置のうち、地元の負担軽減に資する措置を実施するために必要な経費を指す。
*4) 「(1)自衛官の処遇改善」、「(2)生活・勤務環境の改善」は人件費(手当)を含む。
*5) 予算額は「(2)米軍再編、基地対策等の推進」を除き契約額ベース。なお、初度費(専用治工具費や初度設計費等)は含まない。
*6) 評価手法を確立し、成果の見込みの薄い研究については、途中段階であっても早期に中止を判断できる仕組みを構築。
*7) HPM:High Power Microwave
*8) GCAP:Global Combat Air Programme
*9) GIGO:GCAP International Government Organization
*10) PBL:Performance Based Logistics