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国内初となる全線新設LRT ライトラインの歩み
宇都宮市建設部LRT整備課協働広報室 主事 郡司  佳菜子

はじめに
 宇都宮市では、100年先も持続的に発展できる「スーパースマートシティ」の実現を目指し、その土台であるコンパクトなまち(拠点)が階層性のある公共交通でつながった「ネットワーク型コンパクトシティ(以下「NCC」)」の形成を進めています。これを支える総合的な公共交通ネットワークの要として芳賀・宇都宮LRT(以下「ライトライン」)の整備を行ってきました。令和5年8月、全線新設のLRTとしては国内初となるJR宇都宮駅東側のライトラインが開業し、令和6年11月には利用者が600万人に達するなど、想定以上の多くの方にご利用いただいています。
写真1 開業1周年記念イベント

1.公共交通ネットワークの構築に向けた取組
 本市は、NCCを支える公共交通ネットワークの構築に向け、南北方向の鉄道とあわせ、「ライトライン」を東西方向の基軸として、各拠点間を結ぶ幹線・支線からなるバス路線や、それぞれの地域において日常生活の移動を面的にカバーする地域内交通の整備などに取り組んでいます。

2.東西基幹公共交通「ライトライン」について
(1)「計画」から「実現」までの道のり
 ライトラインは、本市東部地域に立地する工業団地への通勤者の増加による慢性的な交通渋滞の社会問題化に伴い、栃木県と本市の出資により設立された宇都宮市街地開発組合が、平成5年度に新たな交通システムを検討したことに始まります。
 平成25年3月には、「東西基幹公共交通の実現に向けた基本方針」を策定し、その中で、ライトラインを「NCC」の公共交通ネットワークの東西の基軸として導入することや、本市東部地域における慢性的な渋滞の緩和や公共交通空白・不便地域の解消などの効果発現が期待できることから、JR宇都宮駅から東側の約12kmの区間から優先的に整備に取り組むこと、行政が軌道や停留場等の施設・車両などを整備・保有し、民間等の営業主体が運行や日常の維持管理業務を担う「公設型上下分離方式」を採用することとしました。同年10月には、隣接する芳賀町からの要望を受けて、JR宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地付近までの約14.6kmの整備に取り組むこととし、平成28年9月に軌道運送高度化実施計画の認定、平成30年3月に工事施行認可の取得、同年5月に着工しました。
 そして令和5年8月、JR宇都宮駅東側のライトラインが開業し、令和6年8月にはたくさんの方に祝福されながら、開業1周年を迎えました。
写真2 鬼怒通りの整備前と整備後
(2)ライトラインの特徴と事業概要
 ライトラインは、定時性や速達性など、基幹公共交通にふさわしい機能のほか、鉄道やバスなど他の交通との円滑な連携や、停留場と車両に段差がなくバリアフリーな設計により誰もが乗り降りしやすい工夫が図られています。
 全長は30m以下の規定に基づき29.520m、定員は国内の低床式車両の中で最大級となる159人と高い輸送力があり、JR宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地付近までの暮らしに便利な所(駅、商業施設)、住む所や働く所(工業団地)など多くの人が集まる場所を結ぶ、全19停留場からなる約14.6kmを走行しています。そのうち5停留場は乗り継ぎ利便性の向上を図るため、交通結節点(トランジットセンター)として整備を行いました。
写真3 ライトラインと停留場
(3)ライトラインの整備効果
 ライトライン開業から3か月後の令和5年11月に実施したアンケート調査では、開業前に75.7%だった外出率が、約5.7ポイント増の81.4%となったほか、沿線内における40歳以上の一日当たりの平均歩数が349歩増加するなど、健康増進が期待される結果となりました。
 また、開業した宇都宮駅東側のライトライン沿線では、平成24年と令和5年を比較して、住宅地の地価が約11%、人口が約8%上昇したほか、高層建築物の建築確認件数が増加し、マンションの建設による土地利用の高度化が図られるなどの効果が発現しています。
 さらに、ライトライン沿線の清原工業団地では、ライトライン開業前後に1,100億円を超える民間投資が公表され、産業拠点としての充実・強化が図られています。

3.JR宇都宮駅西側区間の整備
 JR宇都宮駅西側については、令和4年8月に大谷観光地付近までを、引き続き調査・検討を進める「検討区間」とし、NCCの形成の効果を早期に発現させるため、JR宇都宮駅から教育会館付近までを、着実に整備を進める「整備区間」としました。
 今後は、JR宇都宮駅西側の早期開業を目指し、軌道運送高度化実施計画の策定に必要な各種調査・検討や関係機関との協議・調整を迅速に進めていきます。

4.おわりに
 ライトライン開業からの1年間、線路等の定期的な点検や専門家との意見交換、運行案内板の設置、ダイヤ改正、停留場周辺の駐車場増設、新たなトイレ整備と、様々な改善・改良に取り組んできました。今後とも、皆さんの声を一つずつお聞きしながら、ライトラインがより安全・安心で便利な乗り物となるよう取り組んでまいります。
図1 JR宇都宮駅西側ライトラインの整備区間(宇都宮駅東口停留場~宝木町1丁目・駒生1丁目付近〈教育会館付近〉)


公共交通を活用したまちづくり
芳賀町企画課 課長補佐兼みらい創生係長 髙松  克孔

1.芳賀町の概要
 芳賀町は、栃木県南東部に位置しており、自然豊かな環境と住みやすさが特徴の町です。町中央部には、米どころとして知られる水田地帯が形成されており、「にっこり」などの梨は、町を代表する特産品で県内有数の生産地として有名です。また、町内の工業団地には100社を超える企業が立地しており、多くの雇用を創出しています。2023年8月、JR宇都宮駅と芳賀町をつなぐ「芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)が開業し、交通の利便性が大きく向上しました。2024年11月には累計利用者数が600万人に到達し、多くの方にご利用いただいています。
写真1 LRT開業
写真2 にっこり

2.芳賀・宇都宮LRT沿線の整備と公共交通網の最適化
 芳賀・宇都宮LRTの開業により、沿線の地価上昇や人口増加、慢性的な渋滞の改善が図られたほか、外出率や交流機会が増加するなど、ライフスタイルの変化もみられています。芳賀・宇都宮LRTの効果をさらに活かすため、(1)芳賀・宇都宮LRT沿線の整備(2)シティプロモーションの充実(3)公共交通網の最適化に取り組みます。
(1)芳賀・宇都宮LRT沿線の整備
 芳賀・宇都宮LRT沿線のかしの森公園は、芳賀・宇都宮LRTの開業以降、多くの皆さまにご来園いただいていており、地域振興・観光振興に資するポテンシャルを有しています。民間企業や各種団体等と連携した様々な体験や各種イベントなどに活用できる場として再整備の検討を進めています。
写真3 かしの森公園イベント
(2)シティプロモーションの充実
 芳賀・宇都宮LRTにより高まったJR宇都宮駅からのアクセス性を活かし、芳賀・宇都宮LRTと芳賀町の特色を組み合わせた新たな体験型コンテンツ(L×haga)をスタートさせます。農業体験、温泉、バーベキューなどの芳賀町の魅力をPRし、関係人口・交流人口・定住人口の増加を図ります。
写真4-1 農業体験
写真4-2 グリーンツーリズム
(3)公共交通網の最適化
 町内立地企業等と連携し、芳賀・宇都宮LRTトランジットセンター周辺を核とした多様なモビリティの実証事業を始めています。AIなどの最新技術を導入した移動手段を提供することで、町民の皆さまや芳賀・宇都宮LRTを利用して芳賀町に訪れる皆さまにとって快適な移動環境を実現します。

3.まとめ
 芳賀・宇都宮LRTが開業し、バス路線の再編や交通結節点であるトランジットセンターの整備を行ったことで、様々な交通手段の連携が図られ、町内の交通環境が向上しました。さらに、地域特性に応じた多様な交通手段が効果的・効率的につながる公共交通の最適化を図るとともに、公共交通を活かしたまちづくりを進めています。
 本町は今、大きく変わろうとしています。利便性の高まった公共交通を利用し、変わりつつある芳賀町にぜひお越しください。
持続可能な利便性の高い交通ネットワークの構築へ
地方創生コンシェルジュ
関東財務局宇都宮財務事務所長 山下  実
宇都宮市と芳賀町は、ライトライン、鉄道、バス路線、デマンド交通などの多様な交通手段の維持・充実を図るとともに、交通手段間が円滑に乗り継ぎ・乗り換えできる環境を整備することなどを盛り込んだ「芳賀・宇都宮地域公共交通計画」を共同で策定しております。
同市町の連携した取り組みにより、同計画の基本理念である「持続可能な利便性の高い交通ネットワークの構築」が達成され、全国のモデルとなることを期待しております。
なお、ライトライン整備には財政融資資金を活用いただいており、地域活性化のお役に立てたことを光栄に思っております。


名古屋城・三の丸地区のまちづくり
東海財務局管財部管財総括第2課 国有財産総括専門官 宮川  和久

1.はじめに
 愛知県・名古屋市を代表する観光地である名古屋城。
 現在、その観光資源を活かし、愛知県や名古屋市による取組をはじめ、国有地の有効活用、官民連携による合同庁舎整備、名古屋城三の丸地区まちづくり構想(以下、三の丸まちづくり構想)の策定など、当地区の魅力向上に向けた取組が進められています。
 今回は、愛知県や名古屋市の取組をはじめ、国有財産を活用した事例を含めて各種取組をご紹介します。
写真 名古屋城・三の丸地区の地図(地理院地図を加工して作成)

2.名古屋城について
 1615年、名古屋城は徳川家康によって建てられました。黄金の鯱を頂き、史上最大の延床面積を誇った天守、絢爛豪華な本丸御殿、さらに鉄壁の守りを固めた要塞としての機能を備え、城郭として旧国宝第一号に指定された名城でした。
 戦災で焼失後も、国内屈指の城郭として国の特別史跡に指定され、復元された本丸御殿などが、往時の姿を鮮やかに伝えてくれます。
写真 戦災消失前の天守(提供:名古屋城総合事務所 所蔵)
写真 復元された本丸御殿(提供:名古屋城総合事務所)

3.国有地の有効活用
 名古屋城を中心とした総合公園である名城公園は、財務局において名古屋市へ国有地の無償貸付を行っています。当敷地を活用し、以下の賑わい創出等の取組が進められています。
〇金シャチ横丁
 名古屋市では、2013年に策定した「金シャチ横丁基本構想」に基づき、順に整備を進め、2018年に第1期事業として、飲食施設を中心に、「伝統、正当」の義直ゾーンと、「新風、変化」の宗春ゾーンを開業しました。
 現在、第2期整備として、多目的休憩所や博物館ゾーンの整備に向けた調査検討が進められています。
写真 金シャチ横丁(出典:名古屋城ウェブサイト)
〇IGアリーナ(愛知県新体育館)
 愛知県では、国際的なスポーツ大会などを誘致するとともに、大相撲名古屋場所の開催など現体育館が担ってきた伝統や歴史を更に発展させていく愛知・名古屋のシンボルとなる施設として、愛知県新体育館の整備を進めています(2025年7月オープン予定)。
 また、2026年に愛知県を中心に行われるアジア競技大会及びアジアパラ競技大会の会場としても使用される予定です。
写真 IGアリーナ(愛知県新体育館)※イメージ図(提供:IGアリーナ)

4.名古屋第4地方合同庁舎の整備
 名古屋三の丸地区は、国・県・市の庁舎が集積し、大半が築50年以上で老朽化しているため、同地区のまちづくりに向けた議論が活発化しています。
 こうした中、名古屋第4地方合同庁舎をPFI手法により整備し、緑地等による周辺環境との調和や名古屋城や金シャチ横丁へと続く通りとして喫食・イベントスペースをつくるなど、賑わい創出にも寄与することを目指しています(2026年3月竣工予定)。
 また、財務局では、国の庁舎等の総括機関として、移転する各省各庁のほか、移転に伴い発生する庁舎跡地や空きスペースについて、市や県とも調整しています。
 具体的には、農林総合庁舎敷地は、市において、金シャチ横丁第2期整備の博物館敷地として活用される予定です。また、中部経済産業局庁舎の空きスペースには、国・県において、県庁西庁舎の長寿命化改修工事に伴う仮庁舎としての利用が検討されています。
写真 第4地方合同庁舎※イメージ図(出典:中部地方整備局ウェブサイト)
写真 三の丸地区拡大図(地理院地図を加工して作成)

5.三の丸まちづくり構想の策定
 三の丸地区は、緑豊かな官庁街として形成されていますが、地区内の多くの建物が老朽化している中、第4合同庁舎の整備をきっかけに、三の丸地区のあるべき姿について、より一層の検討が必要とされています。
 こうした中、名古屋市において、名古屋の新たな顔として地区を成長・発展させていくにあたり、新たな潮流等を踏まえ、「三の丸まちづくり構想」を策定するため、2024年度より有識者懇談会を開催しています。
 当構想は、バックキャストでめざすまち(概ね30年後)を実現するためのアクションを明確にし、まちづくりを進めるための指針としての役割を担う予定です。
 財務局においても、国の庁舎等の総括機関として、関係者との意見交換等を継続してまいります。

6.おわりに
 庁舎整備やまちづくりの取組は、短期間で解決できるものではありません。多くの関係者が長年にわたって良好な関係を築き、継続的に取り組んできた結果、これらの取組に繋がっています。
 財務局では、今後とも関係者との意見交換等を通じて地域のニーズを的確に把握し、地域のまちづくりや賑わい創出等の取組に貢献してまいります。
※ 本稿の作成にあたっては、中部地方整備局、東海農政局、中部経済産業局、愛知県、名古屋市の協力を得た。
図表 まちづくり構想の役割(出典:名古屋市ウェブサイト)


DXで拓く地方の未来
都城市デジタル統括課・主幹 佐藤  泰格

1.都城市の概要
 都城市は、宮崎県の県西部、鹿児島県との県境に位置する人口約16万人、面積653.3km2の都市です。都城市は農業産出額4年連続日本一を誇っており、5年に一度開催される和牛のオリンピックとも言われる全国和牛能力共進会で、宮崎牛が内閣総理大臣賞を獲得し続けていること、そして、黒霧島の銘柄で有名な焼酎売上高日本一の霧島酒造があることから、「肉と焼酎のふるさと」と銘打ち、ふるさと納税を通じて市の魅力を全国に発信しており、ふるさと納税受入額は全国最多である過去5回の日本一となっています。
 また、令和5年度は人口減少対策に取り組み、移住応援給付金や子育て施策の拡充を進めた結果、13年ぶりの人口増を実現することができました。
 そのほかにも、閉店したショッピングモールをリノベーションした市立図書館やリニューアルオープンし、肉と焼酎の販売拠点となっている道の駅都城NiQLL(ニクル)なども話題となっており、地方創生に積極的な自治体としても知られています。
写真 道の駅都城NiQLL

2.マイナンバーカード普及促進
 前述した様々な施策に加えて、都城市はマイナンバーカードについて、デジタル時代のインフラになるとの思いを持って、制度開始時から普及促進に努めてきました。
 タブレットを活用した申請補助を全国初で導入し、ショッピングセンターにブースを設置するとともに、職場などへの出張申請補助に取り組むなどで、全国トップクラスの保有枚数率を継続してきました。最終的には、申請したいけれども役所に行くことが難しい個人宅への出張を実現するため、申請補助専用車「マイナちゃんカー」も導入しています。
写真 マイナちゃんカー

3.マイナンバーカード利活用
 マイナンバーカード普及促進を進めるだけではなく、利活用にも積極的に取り組んでいます。民間サービスでオンライン化が進んでおり、自治体の手続きも追随していくものと考えています。その際に重要なのは、オンライン上における本人確認であり、それを実現するのがマイナンバーカードです。
 そのため、都城市では行政手続きのオンライン化推進を宣言しており、令和6年度末までに原則として全ての手続きをオンライン化することとしています。また、ふるさと納税のワンストップ特例申請について、マイナンバーカード活用によりオンライン化したアプリ「IAM」(アイアム)を民間企業と開発し、300万ダウンロードを超える大ヒットアプリとなっています。その他、電子母子手帳サービスや職員の出退勤管理など、マイナンバーカード活用の場を次々と広げています。
 また、救急業務の迅速化・円滑化の実証事業や医療費助成・予防接種・母子保健にかかる情報連携の実証事業や介護DX(被保険者証関係)の先行実施事業など、国の実証事業へも熱心に参画しています。
写真 ワンストップ特例申請アプリ「IAM」

4.DXによる地域変革
 マイナンバーカード利活用に端を発し、都城市では、市民の幸福及び市の発展のために、他自治体に先駆けてDXを推進しています。令和2年度から4年間で立ち上げたデジタル関連新規事業は150を超えています。例えば、デジタル庁が構想するシステムである「窓口DXSaaS」を活用した書かないワンストップ窓口や、スマートキーを活用した公共施設予約システムは市民から好評を博しています。また、生成AIを自治体のネットワーク環境で使うことができるプラットフォーム「ZEVO」(ゼヴォ)も民間企業との共同開発で、全国で初めてリリースをしています。
 DXで意識しているのは、民間企業との共創です。対話をしながら、地域課題を解決できるシステムの開発や導入に努めています。共創を進めた結果、「IAM」や「ZEVO」などを共同開発した民間企業は、大阪市から都城市に本店を移転、事務所を建設し、150人以上を雇用するなど、地域経済にも好影響を与えています。
 今後、地方は様々な課題に直面していくことが見込まれていますが、引き続きDXを推進し、都市部と変わらない価値を生みだしていくことで、真の地方創生を実現していきたいと考えています。
写真 書かないワンストップ窓口

更なる地域活性化に期待
地方創生コンシェルジュ九州財務局宮崎財務事務所 総務係長兼企画係長 甲斐  隆司
 広大な都城盆地の中にあり、清冽な地下水と豊かな自然に恵まれる都城市において、マイナンバーカードの普及促進(交付率は全国の市区で初めて95%を達成)やDXの推進(日本DX最高賞を受賞)、人口減少対策(13年ぶりに人口増を実現)など、様々な取組を実施しているほか、道路などのインフラ整備も進んでいます。
 これらの取組により、さらに地域が元気になることを期待しています。