このページの本文へ移動

令和7年度 内閣・内閣本府等、デジタル庁、復興庁及び外交関係予算について


主計局主計官 松本 千城

1.概観
(1)内閣・内閣本府等関係予算
 内閣・内閣本府は政府の重要施策に関する企画立案・総合調整の機能を担っており、その所掌は、地方創生や防災をはじめ、沖縄振興、サイバーセキュリティ対策、宇宙政策のほか、北方対策、海洋政策など、極めて広い分野にわたっている。また、消費者庁、金融庁、公正取引委員会などの外局等も有している。このような幅広い分野における諸課題への対応のため、内閣・内閣本府等の7年度予算は、全体として8,743億円を計上している*1。

(2)デジタル庁予算
 デジタル庁は、デジタル社会実現の司令塔として、国民の利便性の向上や行政の効率化等を実現するため、国、地方公共団体、事業者等によるデジタル化の取組を牽引する役割を担っている。
 7年度予算では、政府の情報システム関係予算とデジタル庁の運営・政策経費として、デジタル庁全体で4,752億円を計上している。うち、政府の情報システム関係予算として、4,573億円を一括計上している。

(3)復興庁予算
 復興庁は、東日本大震災からの復興に関する事業の円滑かつ迅速な遂行を図るため、東日本大震災からの復興に関する施策の企画立案・総合調整等を行っている。各省庁所掌の予算については、復興に関する行政各部の事業を統括・監理する一環として、復興庁が所管する一括計上予算として東日本大震災復興特別会計に計上している。復興庁の7年度予算は、「第2期復興・創生期間」の最終年度目において、被災地の復興に必要な取組を確実に実施するため、4,864億円*2を計上している。

(4)外交関係予算
 7年度の外務省予算については、厳しい国際情勢を踏まえ、安全保障対応や、邦人保護・危機管理といった外交基盤強化に係る予算を重点的に措置し、総額7,617億円*3を計上している。
 ODA関係については、厳しい財政状況に配慮しつつ、台頭するグローバルサウス諸国との関係強化等を図るため、独立行政法人国際協力機構(JICA)の支払前資金も活用し無償資金協力の稼働資金を確保するともに、JICA運営費交付金等を増額している。


2.内閣・内閣本府等関係予算
 内閣・内閣本府等関係予算の主な項目は以下のとおりである*4。

(1)新たな地方創生施策(「地方創生2.0」)の推進(内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局、内閣府地方創生推進事務局)
 7年度予算では、「地方こそ成長の主役」との考え方に基づき、新たな地方創生施策(「地方創生2.0」)を推進するため、「新しい地方経済・生活環境創生交付金」を2,000億円計上し、地方公共団体の自主性と創意工夫に基づき、「産官学金労言」における議論を踏まえた地域独自の取組を強力に支援することとしている。
 その際に、小規模自治体も交付金を十分に活用できるよう、地域の独自の取組を計画から実施まで国がサポートするなど、地方創生に向けた支援を改善・強化することとしている。

(2)防災対策の推進(政策統括官(防災担当))
 8年度中の「防災庁」の設置に向けた体制整備の一環として、災害対応力の強化、事前防災の徹底に向けて内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面で大幅に拡充している。
 具体的には、関係省庁による事前防災対策を推進するため「事前防災対策総合推進費」を創設するとともに、大規模災害発生時のプッシュ型支援に要する経費をあらかじめ予算化している。また、災害時に活用可能なキッチンカー・トレーラーハウス等に係る登録制度の創設に要する経費を計上している。

(3)沖縄振興予算(内閣府沖縄担当部局)
 沖縄振興策を総合的・積極的に推進する観点から、公共事業関係費、沖縄振興一括交付金、沖縄科学技術大学院大学、沖縄振興特定事業推進費等について所要額を計上している。
 また、これまで沖縄振興特別推進交付金において実施していた事業の一部を個別事業化し、「駐留軍用地跡地先行取得事業」(68億円)、「沖縄離島住民交通コスト負担軽減事業」(31億円)、「沖縄農林水産物条件不利性解消事業」(20億円)等を創設している一方、沖縄健康医療拠点整備が昨年度で完了したことを受け、全体では総額2,642億円(対前年度▲36億円)となっている。

(4)政府機関等のサイバーセキュリティ強化(内閣サイバーセキュリティセンター)
 昨今のサイバー空間を巡る深刻な脅威に対応するため、「国家安全保障戦略」を踏まえつつ、政府機関等におけるサイバーセキュリティを強化することとしている。
 具体的には、政府関係機関に対するサイバー攻撃等の不正な通信の常時監視機能の強化や、高度なサイバー攻撃の検知・分析・対処能力向上のための脅威ハンティング等を実施するための経費として、115億円*5を計上している。

(5)宇宙開発利用に関する施策(内閣府宇宙開発戦略推進事務局)
 測位の精度や信頼性向上等を可能とする実用準天頂衛星システムについて、7機体制を整備し、11機体制に向けた開発を推進するための経費として、169億円を計上している。

(6)海洋政策(内閣府総合海洋政策推進事務局)
 海洋開発等重点戦略に基づき、海洋状況把握(MDA)の能力強化や管轄海域保全のための国境離島の状況把握等、海洋の開発・利用に関する重要ミッションに係る取組を推進するための経費として、4.3億円を計上している。


3.デジタル庁予算
 7年度のデジタル庁予算については、情報システム関係予算を一括計上しているほか、デジタル庁の運営経費等を計上している。
 デジタル庁予算の主な項目は以下のとおりである。

(1)情報システム関係予算(一括計上)
 デジタル庁は、各府省が共通して利用する情報システムの整備・運用をしている。例えば、各府省間ネットワーク・業務基盤(ガバメントソリューションサービス:GSS)や、政府共通のクラウドサービス(ガバメントクラウド)の整備・運用を行っている。また、マイナポータルやベースレジストリなどを整備し、個人・事業者向けの行政サービスのオンライン化も推進している。
 これらのデジタル庁自らが執行するシステムの経費については、足元での運用コストを適切に踏まえることなどにより、抑制を図っている(デジタル庁システム等1,139億円)。
 この他、各府省は、国の情報システムの整備・管理の基本方針等に基づき、デジタル庁の一元的なプロジェクト監理のもとで個別の情報システムの整備・運用を実施しており、これらもデジタル庁に一括計上されている。(各府省システム等3,434億円)。

(2)デジタル庁の運営に関する経費
 デジタル社会の実現に向けた司令塔として、各府省システムの一元的なプロジェクト監理といったデジタル庁の役割の更なる発揮に向け、デジタル庁の体制強化を実施することとしている。これにより、常勤職員(行政定員)として約590人(+45人)、非常勤職員(民間専門人材)として約730人(+117人)、7年度末合計約1,320人となる見込みである。こうした体制強化を含め、デジタル庁の運営経費として、167億円を計上している。

(3)デジタル庁の政策に関する経費
 情報システムの整備・運用とあわせて、デジタル庁としてマイナンバーカードの利便性と安全性に関する広報や、新技術(Web3.0・AI等)に関する調査研究などに取り組むための経費として、12億円を計上している。


4.復興庁予算
 7年度の復興庁予算については、地震・津波被災地域では、心のケア等の被災者支援などきめ細かい取組を着実に推進するとともに、原子力災害被災地域では、帰還・移住等の促進など本格的な復興・再生に向けた取組を推進するなど、復興のステージに応じたきめ細やかな取組を継続して進めるものとなっている。
 復興庁予算の主な項目は以下のとおりである*6。

(1)被災者支援総合交付金
 復興の進展によって生じる、「心身のケア」、「コミュニティ形成・再生」、「住宅・生活再建の相談支援」及び「心の復興」等の課題に対応するため、地方公共団体等における被災者支援の取組を一体的に支援するための経費として、77億円を計上している。

(2)福島再生加速化交付金
 福島の復興・再生を加速するため、長期避難者への支援から帰還環境の整備など復興のステージが進むにつれて生じる新たな課題やニーズにきめ細かく対応する施策を一括して支援するための経費として、599億円を計上している。

(3)福島国際研究教育機構関連
 「創造的復興の中核拠点」となる福島国際研究教育機構の運営等を支援するための経費として、165億円*7を計上している。

(4)各省庁所掌予算の一括計上
 各省庁所掌の予算については、被災地からの要望にワンストップで対応するため、被災地の要望を復興庁において一元的に受理し、これを踏まえ、復興事業に必要な予算を復興庁が一括して要求し、予算を計上している。(4,008億円)
 また、執行段階では、復興庁が各省庁へ事業の実施に関する計画等を通知し、予算の配分を行っている。


5.外交関係予算
(1)外務省予算
 外務省予算の主な項目は以下のとおりである。
ア.厳しさと複雑さを増す安全保障環境への対応強化
 東シナ海や南シナ海での緊張・ロシアによるウクライナ侵略・中東情勢緊迫化など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境への対応力を強化するための予算を計上している。具体的には以下の予算等が含まれる。
[政府安全保障能力強化支援(OSA)]
81億円(6年度50億円)
 同志国の安全保障上の能力・抑止力向上のため、軍等に沿岸監視レーダー等の資機材提供やインフラ整備支援等を行うOSAのための予算を拡充している。
[情報戦への対応]
312億円(6年度298億円)
外務省の情報セキュリティを強化するとともに、偽情報対策として、その認知的影響の分析と効果的な対抗発信につなげるため、世論誘導目的の可能性のある情報の監視・検出等の実施に必要な経費を計上している。
※デジタル庁一括計上分を含む。
イ.邦人保護・危機管理等の外交基盤を強化
 厳しい安全保障環境においては、我が国にとって望ましい世界秩序の維持・構築のため外交力を最大限に発揮するとともに、海外で活動する邦人の安全を確保することが一層重要であり、外交実施体制等を強化するための予算を計上している。具体的には以下の予算が含まれる。
[在外公館の機能強化]
287億円(6年度272億円)
 現地外交の要となる在外公館について、公邸料理人の制度改善を含む機能強化に必要な経費を計上している。
[在外公館の職員待遇改善]
104億円(6年度95億円)
 現地での情報収集や分析を行う職員等の待遇改善に必要な経費を計上している。
[在外公館の警備体制強化]
101億円(6年度96億円)
 戦乱地や危険地等における在外公館の警備体制強化に必要な経費を計上している。
[日本人学校の安全対策強化]
16億円(6年度10億円)
 現地の日本人学校の安全対策強化に必要な経費を計上している。
ウ.戦略的・効果的なODAを実現
 ODAは、気候変動等のグローバルな課題解決や、台頭するグローバルサウス諸国との関係強化等の観点から、引き続き重要な外交手段である。厳しい財政事情にも配慮しつつ、効果的・効率的に実施することが重要であり、それらの実施に必要な予算を計上している。具体的には以下の予算等が含まれる。
[無償資金協力・技術協力]
 無償資金協力は、返済義務のない資金を供与するものであり、主に、所得水準の低い国を対象としている。医療・保健、食糧援助といった基礎的生活分野への支援や、地雷除去、環境保全等の取組への支援、経済発展のために必要な道路・橋梁の建設等インフラ整備への支援、災害や難民援助にかかる緊急人道支援など、多岐にわたる支援を実施している。
 技術協力は、感染症対策や気候変動対策といった途上国の開発課題に対処すべく、日本の技術や知見を相手国の技術者等に伝えることを目的として、JICAが専門家の派遣や研修員の受入れ等を行うものである。
7年度予算においては、無償資金協力について、予算措置額(1,514億円)とJICA内の支払前資金の再活用を合わせ、実質的な稼働資金を確保している。技術協力については、JICA運営費交付金等を1,484億円計上し、物価高や円安の環境に配慮しつつ、JICAの体制強化のため人件費等の足腰予算を重点的に措置している。
※無償資金協力については、外務省からJICAに交付済であるものの未だ執行されていない資金(支払前資金)が存在している。財政制度等審議会での提言も踏まえ、進捗の見通しが立たない案件に係る資金については他の案件への有効活用ができるよう、柔軟性のある制度に見直すことで、7年度は50億円程度が活用可能となる見込み。
※この他の無償資金による国際協力として、同志国の安全保障上の能力・抑止力向上を目的としたOSAを81億円計上している(再掲)。
[国際機関等への拠出]
国際機関等への拠出については、国連分担金等、条約等に基づく支払い義務があるもの(分担金・義務的拠出金)と、政策的判断に基づき任意に拠出するもの(任意拠出金)から構成される。国際機関等の活動の成果・影響力、日本の外交政策上の有用性・重要性、組織・財政マネジメント及び日本人職員・ポストの状況等を踏まえつつ、メリハリのある予算としている。
 7年度予算では、ODAとして、分担金・義務的拠出金を405億円(6年度304億円)、任意拠出金を133億円(6年度236億円)、それぞれ計上している。

(2)政府全体におけるODA予算
 日本政府全体のODA事業量は、外務省以外の他省庁も含む一般会計予算に加え、出資・拠出国債を用いた国際機関への資金貢献やJICAによる円借款等によって構成されており、近年増加傾向にある。
 7年度は、ロシア凍結資産を活用したウクライナ支援として4,719億円の円借款や、低所得国支援を行う国際機関である国際開発協会(IDA)への4,257億円(うち7年度分は1,717億円)の出資(出資国債による貢献)を実施する予定であり、ODA事業量は39,038億円規模で前年度より拡大する見込みとなっている。
※ODA事業量は、円借款等・ODA予算(当初+前年度補正)・国際機関向け拠出国債等発行額の合計額。

図表 【資料1:内閣・内閣本府等、デジタル庁、復興庁及び外交関係予算】
図表 【資料2:令和7年度 内閣・内閣本府等予算のポイント(概要)】
図表 【資料3:令和7年度 デジタル庁予算のポイント(概要)】
図表 【資料4:令和7年度 東日本大震災復興特別会計予算フレーム】
図表 【資料5:令和7年度 東日本大震災復興特別会計予算の概要(総額6,592億円)】
図表 【資料6:令和7年度 外交関係予算のポイント(概要)】

*1) 警察庁、こども家庭庁を除く。
*2) 東日本大震災復興特別会計の7年度歳出額6,592億円のうち、復興加速化・福島再生予備費(財務省所管:800億円)及び震災復興特別交付税(総務省所管:659億円)等を除いた復興庁所管計上分の予算額である。
*3) デジタル庁一括計上分を含む。
*4) 内閣府予算のうち、総合科学技術・イノベーション会議関係の予算、警察庁予算、こども家庭庁予算、公共事業関係費等は、内閣係以外の係において査定がなされている。ここでは、内閣係の担当分野における「主な項目」について紹介している。
*5) デジタル庁一括計上分を含む。
*6) 復興庁予算について、復興係が担当するのは復興庁が自ら執行する予算であり、他省庁に移し替えて執行される予算は、それぞれの省庁の担当係が査定を行う。ここでは、主に復興係が査定を行う項目について記述する。
*7) 各省庁所掌予算(104億円)及び一般会計予算(2億円)を含む。