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特集 令和7年度政府経済見通しについて


内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官補佐(経済見通し担当) 左嵜 拓郎

 令和7年1月24日に「令和7年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「政府経済見通し」という。)が閣議決定された。政府経済見通しは、翌年度の経済財政運営に当たって政府がどのような基本的態度をとるのか、及び、それを踏まえて経済はどのような姿になるのかを示した政府文書であり、内閣府が作成の上、財務省の税収見積もり、延いては予算の前提として用いられたのち、予算の国会提出と同時期に閣議決定されることで最終的に政府見解となる。
 今回の政府経済見通しでは、令和6年度の我が国経済は、内需は堅調である一方、財輸出の鈍化とサービス輸入の増加により外需がマイナス寄与となり、GDP(国内総生産)成長率は実質で0.4%程度、名目で2.9%程度と見込まれる。
 令和7年度については、物価上昇が落ち着く中、個人消費等の内需が増加し、GDP成長率は実質で1.2%程度、名目で2.7%程度と見込まれる。
 本稿では、令和7年度政府経済見通しの具体的な内容について紹介する。GDPの内訳項目等の詳細な見通しについては、文末の表 主要経済指標を参照されたい。

1.政府経済見通しの位置づけ
 政府経済見通しは、政府による公式な経済予測であるのみでなく、今後政策的に実現を目指していく経済の姿を示しているということができる。これは、政府経済見通しが、足元の経済情勢を踏まえて翌年度の経済を予測するのはもちろんのこと、我が国政府が経済財政運営の基本的態度に基づき実行する各種の施策による効果を織込んでいるためである。すなわち、政府経済見通しは、(1)翌年度の経済財政運営に当たって、政府がどのような基本的な態度をとるのか、(2)そのような基本的態度に基づいて経済財政運営を行うことによって、経済はどのような姿になるのか、という2点について、政府の公式見解を閣議決定により表明する。


2.令和6年度の日本経済(実績見込み)
 我が国経済は、現在、長きにわたったコストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」に移行できるかどうかの分岐点にある。
 こうした中、政府は、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとするため、日本経済・地方経済の成長、物価高の克服及び国民の安心・安全の確保を三つの柱とする「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」(令和6年11月22日閣議決定。以下、「総合経済対策」という。)を策定した。その裏付けとなる令和6年度補正予算を迅速かつ着実に執行し、総合経済対策の効果を広く波及させていく。
 令和6年度の我が国経済については、GDP成長率は実質で0.4%程度、名目で2.9%程度、消費者物価(総合)は2.5%程度の上昇率になると見込まれる。


3.令和7年度の経済財政運営の基本的態度
 続いて、政府経済見通しにおける翌年度の経済財政運営の基本的な態度について述べる。
 令和7年度の経済財政運営においては、引き続き、全ての世代の現在及び将来にわたる賃金・所得の増加を最重要課題とし、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとしていく。
 令和6年度補正予算と一体的に、かつ、足元の物価高、賃金や調達価格の上昇に対応しつつ、メリハリの効いた編成を行った令和7年度予算を着実に実行に移し、切れ目のない経済財政運営を推進する。
 具体的には、最低賃金の引上げ、価格転嫁等の取引適正化、人手不足に対応する省力化・デジタル化投資の促進、人への投資を含む三位一体の労働市場改革に取り組む。また、DX・GX、AI・半導体等の成長分野における官民連携投資など、「投資立国」の取組とともに、国民の資産形成を後押しする「資産運用立国」の取組を進め、我が国経済を高付加価値創出型の成長経済へと転換していく。
 この他、地方創生2.0、防災・減災及び国土強靱化等を始め、総合経済対策及び「経済財政運営と改革の基本方針2024」(令和6年6月21日閣議決定。以下「骨太方針2024」という。)に基づき政策対応を推進する。
 こうした政策対応を含め、当面の経済財政運営を推進していくに当たっては、デフレを脱却し、新たな経済のステージに移行することを目指して、「経済あっての財政」との考え方に立ち、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靱な経済・財政を作っていく。
 骨太方針2024を踏まえて策定した「EBPMアクションプラン2024」及び「改革実行プログラム2024」に基づき、EBPMやPDCAの取組を推進し、効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)を徹底する。
 政府は、引き続き、日本銀行と緊密に連携し、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、一体となって取り組んでいく。日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。


4.令和7年度の日本経済(見通し)
 最後に、以上のような政策態度を掲げたのちに見込まれる令和7年度の日本経済の姿を概説する。令和7年度は、総合経済対策の効果が下支えとなって、賃金上昇が物価上昇を上回り、個人消費が増加するとともに、企業の設備投資も堅調な動きが継続するなど、引き続き、民間需要主導の経済成長となることが期待される。
 令和7年度のGDP成長率は実質で1.2%程度、名目で2.7%程度、消費者物価(総合)は2.0%程度の上昇率になると見込まれる。
 ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動等の影響には、十分注意する必要がある。
 具体的な項目別の計数は以下の通りである。

(1)各項目の見通し
(ア)実質国内総生産(実質GDP)
(i)民間最終消費支出
  物価上昇を上回る賃金上昇が普及・定着する中、増加する(対前年度比1.3%程度の増)。
(ii)民間住宅投資
  総合経済対策の政策効果が下支えとなるものの、資材価格が高い水準で推移する中、実質値は減少する(対前年度比0.3%程度の減)。
(iii)民間企業設備投資
  企業の堅調な収益や高い投資意欲を背景に、総合経済対策の政策効果もあって、増加する(対前年度比3.0%程度の増)。
(iv)政府支出
  高齢化等に伴う支出増が見込まれる一方で、総合経済対策に基づく政府支出が前年度と同程度となる中で、物価上昇の影響から、実質値は
  おおむね横ばいとなる(対前年度比0.0%程度)。
(v)外需(財貨・サービスの純輸出)
  世界経済の緩やかな成長に伴い輸出が増加する一方で、国内需要の増加に伴い輸入が増加し、おおむね横ばいとなる(実質GDP成長率に
  対する外需の寄与度▲0.0%程度)。
(イ)実質国民総所得(実質GNI)
  実質GDP成長率と同程度の伸びとなる(対前年度比1.1%程度の増)。
(ウ)労働・雇用
  労働力人口がおおむね横ばいとなる中、経済の緩やかな成長に伴い労働需給は引き締まり、完全失業率は低下する(2.4%程度)。
(エ)鉱工業生産
  国内需要や輸出の増加に伴い、上昇する(対前年度比2.4%程度の上昇)。
(オ)物価
  消費者物価(総合)上昇率は、原材料価格など輸入コスト上昇の影響は一巡するものの、賃金上昇に
  伴う国内物価の緩やかな上昇が見込まれることから、2.0%程度となる。GDPデフレーターについては、対前年度比1.5%程度の上昇とな
  る。
(カ)国際収支
  所得収支の黒字が続く中、経常収支の黒字はおおむね横ばいで推移する(経常収支対名目GDP比
  4.9%程度)。

図表 (参考) 主な経済指標