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特集 令和7年度財政投融資計画等について


理財局財政投融資総括課 課長 吉住 秀夫

1.令和6年度財政投融資計画の改定について
 昨年11月22日、「日本経済・地方経済の成長」「物価高の克服」「国民の安心・安全の確保」の3つを柱とする「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策(以下、「総合経済対策」という)」が閣議決定された。
この総合経済対策を踏まえ、令和6年度財政投融資計画補正を行うこととし、昨年12月9日に閣議に提出し、その内容を盛り込んだ補正予算が12月17日に国会にて成立した。
 この補正においては、総額1兆1,222億円(財政融資:10,660億円、産業投資:305億円、政府保証:257億円)を追加することしており、主な施策としては、
 ・日本政策投資銀行(3,100億円)
  地場産業事業者等が行う設備投資、AI・創薬・航空宇宙を中心としたスタートアップ等に対して、資金を供給。
 ・産業革新投資機構(105億円)
  地方大学発スタートアップなどに対して、リスクマネーを供給。
 ・国際協力機構(4,390億円)
  G7で協調して行うウクライナの財政・復興を支援するため、円借款を供与。
 ・自動車安全特別会計(空港整備勘定)(48憶円)
  滑走路誤進入に係る「注意喚起システム」の強化を含む羽田空港事故の再発防止などに対して、資金を供給。
などを盛り込んでいる。(資料1)
 また、令和6年度補正予算の成立等に伴って、地方公共団体が実施する事業にかかる資金の確保のため、地方公共団体に対する財政融資資金の貸付けを、1兆1,366億円追加することとした。

2.令和7年度財政投融資計画について
 昨年12月27日、令和7年度財政投融資計画(以下、「7年度計画」という)が予算政府案とあわせて閣議提出された。これは、令和6年8月末に要求を受けた後、総合経済対策も踏まえつつ、財政制度等審議会財政投融資分科会における議論を経て作成したものである。

(1)令和7年度財政投融資計画のポイント
 7年度計画の総額は、12兆1,817億円であり、前年度比で約1.2兆円減少した。
 一方で、産業投資額は、4,799億円と過去最大の規模となっており、成長型経済への移行に向けて、地方創生などの分野に資金を供給することとしている。(資料2)
 主な機関の取組として
 ・日本政策金融公庫(3兆1,608億円)
 (国民一般向け業務・中小企業者向け業務)
  地域の文化・芸術・スポーツを含む各分野での社会課題解決を目指す中小企業・小規模事業者への資金繰り支援を中心として、地方創生に
  向けた様々な取組を引き続き実施するため、必要な資金を供給。
 (農林水産業者向け業務)
  生産性向上を目的とした設備投資等の資金需要に的確に対応し、農林水産業を展開する地域の担い手等への支援、自然災害や社会的・経済
  的環境変化等の影響を受けた農林漁業者の経営の維持安定のために、必要な資金を供給。
 ・国際協力機構(1兆8,825億円)
  日本の高い技術・ノウハウを活用した質の高いインフラ輸出等の支援を行う「円借款」、気候変動対策推進・食料安全保障対応・金融包摂
  促進に資する取組等を支援する「海外投融資」により、開発途上国の社会経済の安定や、グローバルサウス諸国との連携強化の促進等に
  貢献するための資金を供給。
 ・国際協力銀行(1兆4,680億円)
  経済安全保障環境の変化やグローバルサウス諸国との関係強化のニーズ拡大を踏まえ、重要物資等のサプライチェーン強靱化、日本企業の
  国際競争力強化、諸外国におけるカーボンニュートラルに資する取組等を支援するための資金を供給。
 ・日本政策投資銀行(7,200億円)
  インフラ事業や製造業を中心に、民間資金だけでは十分な対応が困難な長期資金を供給。また、各地域において、地域金融機関との協働や
  情報発信等により潜在的な資金需要創出を図るとともに、GX推進、サプライチェーン強靱化・インフラ高度化、スタートアップ投資に
  係るリスクマネー供給を推進するなど、地方創生向けの資金を供給。
 ・地方公共団体(2兆2,699億円)
  住民生活に密着した社会資本整備や災害復旧等のニーズに対応するため、地方債計画に基づき、地方公共団体へ財政融資資金を供給。
などを盛り込んでいる。

(2)令和7年度財政投融資計画における「地方創生2.0重点イニシアティブ」の推進
 産業投資を活用して、新しい地方経済の創生につながる事業に対して優先的に資金供給を行う「地方創生2.0重点イニシアティブ」を推進し、7年度計画において、日本政策投資銀行等の4機関に対して、産業投資386億円を措置することとしている、これにより民間資金と併せ、事業規模1,040億円(政府保証分を含めると、1,882億円)の資金が供給される見込みである。事業例としては
・日本政策投資銀行
 脱炭素電源(風力発電など)拡大、デジタル・物流インフラ整備、地方発のスタートアップ育成
・産業革新投資機構
 ディープテック分野(iPS心筋細胞シートなど)の地方発のスタートアップ育成
・脱炭素化支援機構
 地熱発電の開発、食品廃棄物からのバイオガスの生成
・沖縄振興開発金融公庫
 沖縄県内における観光産業の振興・インフラの整備
を盛り込んでいる。(資料3)

以 上