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特集 令和6年度補正予算及び令和7年度予算について


主計局総務課 主計官 松本 圭介

1.令和6年度補正予算及び令和7年度予算編成の背景
 日本経済は、33年ぶりの高水準の賃上げと過去最大規模の設備投資が実現するなど明るい兆しが見られており、これを確かなものとし、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回り、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現していく必要がある。
(注1)令和6年度の実質GDP成長率は0.4%程度、名目GDP成長率は2.9%程度と見込まれており、令和7年度はそれぞれ1.2%程度、2.7%程度と見込まれている。
 同時に、財政は国の信頼の礎であり、我が国を取り巻く諸課題に的確に対応するため、歳出・歳入両面の改革を着実に推進し、日本の信用や国民生活を守るための財政基盤を平時より備えることが不可欠である。日本の財政は、債務残高対GDP比が世界最悪の水準にあるなど、引き続き厳しい状況にあることも踏まえ、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(令和6年6月21日閣議決定)で示された「経済・財政新生計画」の枠組みの下、早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、財政健全化に取り組んでいく。


2.令和6年度補正予算の概要
(1)令和6年度補正予算のポイント
 昨年11月22日に、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策~全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす~」が閣議決定された。
 この経済対策は、我が国経済が、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」に移行できるかどうかの分岐点にある中、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、豊かさを実感できる成長型経済への移行を確実にすることを目指すものであり、令和6年度補正予算はこれを実行するために編成された。国会における予算修正を経て、昨年12月17日成立した。
(注2)衆議院の予算修正により、予算総則において、一般会計予備費のうち1,000億円については能登地域の復旧・復興に要する経費に使用する旨が明記。

(2)令和6年度補正予算のフレーム
 令和6年度補正予算の歳出においては、経済対策の実行に係る経費として13兆9,310億円を計上している。このほか、国債整理基金特別会計への繰入れ、地方交付税交付金の増額等を行うとともに、既定経費を減額している。一方、歳入においては、税収について、直近までの収入実績や企業収益の動向等を勘案して3兆8,270億円の増収を見込んでいる。また、税外収入について、1兆8,668億円の増収を見込むほか、前年度剰余金1兆5,595億円を計上している。
以上によってなお不足する歳入について、公債を6兆6,900億円発行することとしている。
 この結果、令和6年度一般会計補正後予算の総額は、一般会計予算に対して歳入歳出ともに13兆9,433億円増加し、126兆5,150億円となる。
また、令和6年度の公債発行額は42兆1,390億円となる。


3.令和7年度予算の概要
(1)令和7年度予算のポイント
 令和7年度予算は、令和6年度経済対策・補正予算と合わせて、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行するための予算としている。
 本予算は、前述の経済財政状況等を踏まえ、「令和7年度予算編成の基本方針(骨太2024)」(令和6年12月6日閣議決定)に沿って編成が進められたものであり、具体的なポイントは以下の通りである。
【重要政策課題への対応】
 財源を確保しつつ複数年度で計画的に取り組んでいる重要政策課題である、(1)厳しい安全保障環境に対応するための防衛力の抜本強化、(2)「こども未来戦略」に基づくこども・子育て支援の本格実施、(3)「投資立国」の実現に向けたGX投資推進、AI・半導体産業基盤強化を着実に推進する。
 地方創生交付金の倍増や、内閣府防災担当の予算・定員の倍増など、重要政策に予算を重点配分する。
 薬価改定や高額療養費制度見直しなどの全世代型社会保障改革、教職調整額段階的引上げと教員の働き方改革といった重要課題に対応する。
【経済再生と財政健全化の両立】
 経済・物価動向に配慮しつつ、重要政策課題に対応する中で、財政健全化を着実に推進する。
(注3)平成20年度以降、17年ぶりに、当初予算で国債発行額が30兆円を下回っている。
 地方の一般財源総額を確保しつつ、臨時財政対策債の発行額をゼロとするなど、地方財政の健全化を推進する。
【「歳出の目安」における経済・物価動向への配慮】
 骨太2024等で示されている予算編成の考え方(いわゆる「歳出の目安」)に沿って、経済物価動向等に配慮しつつ、これまでの歳出改革努力を継続する中で、重要な政策に重点化している。
 社会保障関係費については、人口構造の変化に伴う増分に、年金スライド分や保育給付の上振れ相当分(令和6年人事院勧告の影響)を上乗せ(+2,500億円程度)している。
 非社会保障関係費については、近年の物価上昇率の変化を反映した令和6年度当初予算の「目安」(+1,600億円)と同水準を維持しつつ、公務員人件費の増により実質的に目減りしないよう、相当額を上乗せ(+1,400億円程度)している。
【経済・物価動向を反映した予算編成】
 令和7年度予算では、経済・物価動向を反映し、令和6年人事院勧告を踏まえた公務員・教職員・保育士の給与改善、公共工事の設計労務単価の引上げ、公立学校施設の補助単価の引上げ、取引適正化の取組の推進(下請Gメン、トラック・物流Gメン、建設Gメン)等を行う。また、令和6年度補正予算で措置した重点支援地方交付金を活用し、地方公共団体の公共調達の価格転嫁円滑化(労務費等)に対応する。

(2)令和7年度予算のフレーム
 令和7年度予算の一般歳出については、68兆2,452億円であり、これに地方交付税交付金等19兆784億円及び国債費28兆2,179億円を加えた一般会計総額は、115兆5,415億円となっている。
 歳入については、租税等の収入は78兆4,400億円、その他収入は8兆4,525億円を見込み、公債金は28兆6,490億円となっている。

(3)主要な経費の概要
 社会保障関係費については、薬価改定により、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保にも対応しつつ国民負担を軽減しているほか、高額療養費制度の見直しにより、制度のセーフティネットとしての持続可能性を確保しつつ現役世代を含む保険料負担を軽減するなど、様々な改革努力を積み重ねている。さらに、「こども未来戦略」に基づく「こども・子育て支援加速化プラン」の取組を本格的に進めていくために必要な予算を確保している。これらを含め、経済・物価動向等に配慮しつつ、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるとの方針に沿った姿を実現している。これらの結果、38兆2,778億円を計上している。
 文教及び科学振興費については、教師を取り巻く環境整備のため、学校における働き方改革を進めるとともに、教職員の給与及び定数について必要な措置を講じるほか、「科学技術立国」の観点から、AI・量子等の重要分野の研究開発を戦略的に推進するとともに、国際性の高い研究や若手研究者への支援を強化することとしている。これらの結果、5兆5,496億円を計上している。
 地方財政については、地方の一般財源総額を適切に確保しつつ、臨時財政対策債の発行額を制度創設以来初めてゼロとするとともに、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金償還額を増額するなど、地方財政の健全化を図ることとし、地方交付税交付金等として19兆784億円を計上している。
 防衛関係費については、厳しい安全保障環境の中で、防衛力整備計画に基づき、防衛力の強化を着実に進めるとともに、引き続き、防衛力を安定的に維持するための財源を確保することとしている。これらの結果、8兆6,691億円を計上している。
 公共事業関係費については、能登半島地震等の教訓を踏まえた制度改正や、規制・誘導手法の活用といったハード・ソフト一体となった取組などにより、防災・減災、国土強靱化を推進するとともに、地方創生や生産性向上に向けたインフラ整備等についても重点的に取り組んでいくこととしている。これらの結果、6兆858億円を計上している。
 経済協力費については、気候変動等のグローバルな課題解決や、台頭するグローバルサウス諸国との関係強化の観点から、ODAを効果的に実施していくこととしている。これらの結果、5,050億円を計上している。
 中小企業対策費については、価格転嫁対策、経営改善・事業承継支援など、持続的な賃上げに向けた環境整備等に取り組むこととしている。これらの結果、1,695億円を計上している。
 エネルギー関係予算については、GX経済移行債を発行し、カーボンニュートラル目標の達成に必要な民間のGX投資を支援するとともに、「AI・半導体産業基盤強化フレーム」に基づき、次世代半導体の量産化に向けた金融支援等を実施することとしている。これらの結果、一般会計において8,111億円を計上し、エネルギー対策特別会計において、2兆1,918億円を計上している。
 農林水産関係予算については、「食料・農業・農村基本法」の改正を踏まえ、食料安全保障の強化等に資する施策の充実・強化を図るとともに、林業・水産業の成長産業化に向けた生産基盤の強化、資源管理等に取り組むこととしている。これらの結果、2兆2,706億円を計上している。
 東日本大震災からの復興については、第二期復興・創生期間の最終年度において必要な復興施策を確実に実施するため、東日本大震災復興特別会計の総額を6,592億円としている。
 能登半島地震・豪雨災害からの復旧・復興については、引き続き、被災者の生活・生業の再建支援やインフラ復旧など、被災地のニーズに切れ目なく対応していく。


4.結び
 前述のとおり、令和7年度予算は、令和6年度経済対策・補正予算と合わせて、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行するための予算であり、関連法案と合わせて、国会でのご審議を経て速やかに成立することが期待される。
 我が国の経済状況は改善してきており、今は、この明るい兆しを本格的な足取りとし、コストカット型経済から高付加価値創出型経済への移行を実現できるかの重要な時期を迎えている。経済あっての財政との考え方の下、力強く経済再生を進める中で、財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいりたい。

(以上)

図表 令和6年度補正予算(第1号)の概要
図表 令和6年度一般会計補正予算(第1号)フレーム
図表 令和6年度補正後予算フレーム
図表 令和7年度予算フレーム(概要)