お客様の癒しの空間 ワンチームで
株式会社菊の井東京店 料亭部料理長
山口 篤史
株式会社菊の井東京店、代表取締役の村田吉弘に師事し、もうすぐ20年になります。京都の本店はミシュラン三つ星を15年連続で頂いており、赤坂店もミシュラン二つ星を18年連続で頂いております。私共は、お客様の笑顔が溢れるお店作りをすることを念頭に置いております。その為に、日々緊張感を持って、するべき仕事は同じでも、ただ毎日同じことの繰り返しではいけないと考えて仕事に臨んでおります。
大将(村田)がよく私達に言うことは、お客様にお越し頂いて初めて私達の仕事が成り立つ、ということです。私達の仕事では、広告、客引き、営業はしていません。じっと待って、お越し頂いた方に満足して頂き、次のご予約に結び付けるしかないのです。その為に優秀な帳場がいます。お店の事を知らないお客様にとっては、お店の顔とも言うべき帳場の電話対応で全てが決まります。対応が悪いとお叱りを受けた事もございますが、ミーティングで話し合い、問題点を共有・改善することで、今では電話対応の際の印象がすごく良かったから、美味しいお料理をいただけると期待を膨らませてきました、とお褒めの言葉を頂くこともございます。
また、大将は見て覚えるという仕事の在り方は古いとよく仰います。見て覚えるという事は、真似をしているけど何をしているかわからないまま仕事をしているだけで、何が大事なのかポイントをわかっていないので、無駄が多いです。早く仕事を覚えてもらうには、ちゃんと言葉で伝える。報告、相談、連絡を密にし、即戦力になる人材を作る事でお店は良くなると。当店では、京都の本店と同じお料理を提供しており、お出汁を引くお水も、京都の本店と同じ井戸水を運んで使用しています。京都の地下には、水瓶のように地下水が流れており、硬度は20~25度と低いそうです。私も入社当初はなんで水まで運んでるんやろ?と思っていましたが、水が変わるだけでお出汁の味わいが違うのです。調味料、レシピも本店と一緒、料理のレシピが本店で変われば、東京店のレシピも変わります。美味しいお料理は何処にでもありますし、安いとは言えない金額を払ってお召し上がりになる料理が美味しいのは、お客様にとっては当然の事です。
大将は、料理、設えは殆ど記憶には残らないと言います。私たちが大事にしているのは、お料理をお伝えする際の情感、雰囲気、緊張感であり、いくら美味しい料理がそこにあっても、その店の印象を決めるのは「人」に因る部分が非常に大きいと考えているからです。特に清潔感や身だしなみは非常に厳しく指導しております。どんなに美しい料理でも、店や従業員に清潔感が無いと、食事する側もいい気はしません。また、清潔であることに加え、温和な表情であることや話し方が上手であること、これが一番です。お客様の前に立つ時は、口角を上げて笑顔でハキハキとした大きな声で説明するように皆で心掛けております。後輩にも、もし自分がお客様だったら、どのような店員だったら素敵だと感じるのか、お客様の立場になって考え、接客して下さいと伝えています。
大将は、常日頃より「お客様に満足して帰っていただけるように」と言っております。お店に足を運んでいただくお客様のご期待に恥じぬよう、従業員一同、心を尽くして日々励んでおります。