大臣官房総合政策課 山下 大輔/熊澤 美晴/伊藤 祐嗣/酒井 亮
本稿では、副業を取り扱うアンケート調査や税務統計で示されているデータを用いて、副業の実態を考察する。
はじめに
働き方の多様化や大企業の副業容認が普及し、副業者が増加傾向にあるという指摘が見られる。副業の就業形態が多岐にわたることから、副業者数を正確に把握することは難しく、実際に増えているのかについて定かではない(図表1 働き方の多様化について)。
副業の就業形態として、就業時間の拘束が少ないパートタイム労働や非正規労働などが選好される可能性が考えられる(図表2 パートタイム・非正規を調査する代表的な公的統計)。しかし、公的統計から双方のトレンドを長期で見ても、特に変化は見られない(図表3 非正規労働者比率とパートタイム労働者比率)。
そこで、副業を取り扱うアンケート調査や、税務統計を分析することにより、副業の実態について分析する(図表4 副業を扱う代表的なアンケート調査)。
(注)労働政策研究・研修機構は副業の調査結果として「副業者の就労に関する調査」と「副業者の就業実態に関する調査」の2種類を公表しているが、本稿では同一の調査として扱っている。
(出所)厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「労働力調査」、タイミーラボ「ギグワークとは?アルバイトなど派遣契約の違いやメリット&デメリットについて」、キテラボ「スキマバイトを企業が導入する際の注意点。労働条件の明示や就業規則の周知方法について」、総務省「就業構造基本調査」、労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査(2007),(2022)」「副業者の就業実態に関する調査(2017)」、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
アンケート調査(1) 就業構造基本調査
就業構造基本調査によると、10年前対比で、副業者数は4割強増加し、就業者数に占める副業者比率は約1.4%pt増加した(図表5 男女別副業者数と副業者比率の推移)。
年齢階層別の副業者数の推移をみると、40~64歳を中心に副業者数が多くなっていることが分かる一方、年齢階層別の副業者比率では、65歳以上の階層が2012~2022年にかけて大きく伸びていることが分かる(図表6 年齢階層別副業者数(上部)と副業者比率(下部)の推移)。
本業・副業の就業形態別の副業者数をみると、副業が正規の職員・従業員である副業者数よりも、副業が非正規の職員・従業員である副業者数の方が多くなっている(図表7 本業・副業の就業形態別の副業者数(2022年))。
(注)就業構造基本調査における副業者の推計方法は、図表28参照。
(出所)総務省「就業構造基本調査」
アンケート調査(2) インターネット調査
副業に関するインターネット調査の動向を見ると、就業構造基本調査とは異なる結果となっている。副業者の就労に関する調査の副業者比率は減少傾向であり、全国就業実態パネル調査では横ばい傾向となっている(図表8 副業者比率(副業者の就労に関する調査)、図表9 副業者比率(全国就業実態パネル調査))。
副業をしていると回答した人の年代別比率を見ると、各種統計によって年代別比率が異なっており、特に、就業構造基本調査において増加傾向にある高齢者の割合の差が目立つ。調査方法の違いなどが副業者数の集計結果へ影響している可能性がある。例えば、副業者の就労に関する調査においては、労働力調査の就労者全体の年代別比率とは違いが見られる(図表10 各種統計の年代別比率の推移)。
(注)副業者は、主な仕事以外に収入を伴う労働(副業・兼業)を1つ以上行っている者を指す。
(出所)労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査(2007),(2022)」「副業者の就業実態に関する調査(2017)」、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」、総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」
アンケート調査(3) 副業理由・就業形態
副業理由の調査結果を見ると、“生計維持”などの所得に関する理由が上位となっている。世帯月収が20万円未満の場合、副業者の収入が本業のみの人の収入を上回っており、生計維持のために副業が活用されていると考えられる(図表11 副業を行う理由、図表12 本業のみの人と副業者の月収に関するカテゴリ別割合)。
ただし、70代に注目すると、“時間にゆとり”や“友人・知人の頼み”、“社会貢献”などを理由とした副業が多い。高齢者については、社会とのつながりを重視して副業に取り組んでいる可能性が考えられる(図表11)。
副業の就業形態を見ると、全体的に“パート・アルバイト”や“フリーランス”などが多い傾向が確認される。仕事内容については本業と副業で関連しない場合が多い(図表13 本業と副業の就業形態組み合わせ、図表14 本業と副業の業務内容関連性)。
(出所)リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」、労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査(2022)」
税務統計(1) 民間給与実態統計調査
次に、税務統計から副業の分析を行う。本稿では「民間給与実態統計調査」、「申告所得税標本調査」を分析する。前者は源泉徴収税によるため雇用者の、後者は申告所得税によるため確定申告者の実態把握が可能(図表15 国税庁の統計調査)。
民間給与実態統計調査に関して、“乙欄”の適用者を「雇用者として副業収入を得る者」と仮定する。乙欄とは、源泉徴収において、1人の給与所得者が2か所以上の支払先から給与の支払を受けている場合に、その者の副業収入に適用される分類である(図表16 源泉徴収の「乙欄」について)。
乙欄適用者数の推移を見ると、感染症拡大により一時減少した後、足元は感染症拡大前と同程度まで回復。税務統計から見た雇用者としての副業者数は、均してみると横ばい圏と考えられる(図表17 乙欄適用者の人数推移)。他方、乙欄適用者が給与所得者総数に占める比率(乙欄適用者比率)と、労働力調査の非正規比率は比較的近しいトレンドであり、乙欄適用者には非正規雇用者が多く含まれている可能性がある(図表18 乙欄適用者比率と非正規比率の推移)。
(注)雇用者として副業収入を得る場合でも、乙欄適用者とならない可能性がある点には留意が必要。例えば、本業は自営業で副業が雇用者である場合、副業の勤め先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出することが多く、その場合は甲欄適用者となる。
(出所)国税庁「統計年報」「民間給与実態統計調査」「申告所得税標本調査」、総務省「労働力調査」、山澤(2020)「フリーランスの数をどう把握するか―シェアリングエコノミーの統計的把握」 内閣府経済社会総合研究所 季刊国民経済計算 第166号
税務統計(2) 申告所得税標本調査
「申告所得税標本調査」のデータを用いて、就業から得る所得が2つ以上申告されている場合の副収入を副業所得とみなす。具体的には、本業からの所得として給与所得・事業所得・不動産所得を想定し、それとは別に給与所得・事業所得・雑所得が申告されている場合に副業とみなす。このうち、雑所得については、令和2年分より、副業による収入区分を申告する“業務雑所得”が新設された(図表19 副業で想定される納税区分)。
業務雑所得の申告人数は、4年間で微増していることが確認される(図表20 雑所得の申告者数(延べ人数))。
給与所得・事業所得を副収入としている延べ人数を確認すると、足下では横ばいの推移であるものの、長期で見ると緩やかな増加傾向にあることが確認される(図表21 給与所得を副収入として申告している人数(延べ人数)、図表22 事業所得を副収入として申告している人数(延べ人数))。
(注)雑所得は、年金受給による申告が多くを占めるため、本業の集計対象から除いている。不動産所得は、不動産事業による収入が申告され得るものの、副収入での申告時には、家賃収入などの不労所得が多くなると想定されるため、副業の集計対象から除いている。
(出所)国税庁「申告所得税標本調査」
税務統計(3) 税務統計まとめ
民間給与実態統計調査と申告所得税標本調査を見ることで、幅広く副業の実態を捉えられる(図表23 税務統計で捉えられる副業のカバー範囲)。
ここまで推定してきた両税務統計の副業者数を合算した推移を見ると、感染症拡大前対比で横ばい圏である。就業構造基本調査が示す増加トレンドとは異なるが、副業者数の水準はどちらも直近で約330万人と近しくなっている(図表24 税務統計の推定副業者数(乙欄+給与所得+事業所得+雑所得)、図表25 就業構造基本調査 男女別副業者数と副業者比率の推移(再掲))。
トレンドの違いには、例えば税務統計で捕捉できない副業者の存在が影響を与えている可能性がある。近年増加しているスポットワーカーは「丙欄適用者」として源泉徴収される場合があり、その場合は民間給与実態統計調査の対象外となる(図表26 源泉徴収における甲欄、乙欄、丙欄の違い)。
(注)雑所得の数値は業務雑所得者数を指すが、2019年以前は公表値が存在しないため、参考として2020年の数値を横置き。
(出所)国税庁「民間給与実態統計調査」「申告所得税標本調査」
まとめ
就業構造基本調査、税務統計の推定副業者数(水準)は、直近でともに330万人程度であり、近しい結果だった。他方、推定副業者数の趨勢(トレンド)は、前者で増加、後者で横ばいと異なる結果だった(図表27 就業構造基本調査と税務統計の水準・トレンド)。
トレンドに差が生じる理由として、副業者の推計方法や対象の違いなどが考えられる。例えば就業構造基本調査はアンケート調査で副業の内容を自由記述で問うため、友人の頼みによる高齢者の副業など、規模の大小によらず幅広い副業者が含まれる(図表28 本稿における各統計の副業者の推計方法)。税務統計では、スポットワーカーやギグワーカーなどの多様化する副業者を捉え切れていない可能性がある(図表29 スポットワーク市場の拡大)。
よって、副業者数のトレンドは、幅を持って“横ばい”ないしは“緩やかな増加”であると考える。経済正常化、人手不足による労働需要の拡大や働き方の多様化が副業の増加を後押ししている可能性がある。ただし水準は、就業者数約6,800万人(25年4月労働力調査)に対して約330万人であり、副業がマクロ経済に与える影響はまだ限定的であるようだ(図表30 就業者全体に対する副業者の割合)。
(出所)総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」、国税庁「民間給与実態統計調査」「申告所得税標本調査」、労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査(2007),(2022)」「副業者の就業実態に関する調査(2017)」、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」、HRog「いまさら聞けない“スポットワーク”をまるごと解説!特徴や課題、大手5サービスを知ろう」、メルカリハロHP
本稿では、副業を取り扱うアンケート調査や税務統計で示されているデータを用いて、副業の実態を考察する。
はじめに
働き方の多様化や大企業の副業容認が普及し、副業者が増加傾向にあるという指摘が見られる。副業の就業形態が多岐にわたることから、副業者数を正確に把握することは難しく、実際に増えているのかについて定かではない(図表1 働き方の多様化について)。
副業の就業形態として、就業時間の拘束が少ないパートタイム労働や非正規労働などが選好される可能性が考えられる(図表2 パートタイム・非正規を調査する代表的な公的統計)。しかし、公的統計から双方のトレンドを長期で見ても、特に変化は見られない(図表3 非正規労働者比率とパートタイム労働者比率)。
そこで、副業を取り扱うアンケート調査や、税務統計を分析することにより、副業の実態について分析する(図表4 副業を扱う代表的なアンケート調査)。
(注)労働政策研究・研修機構は副業の調査結果として「副業者の就労に関する調査」と「副業者の就業実態に関する調査」の2種類を公表しているが、本稿では同一の調査として扱っている。
(出所)厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「労働力調査」、タイミーラボ「ギグワークとは?アルバイトなど派遣契約の違いやメリット&デメリットについて」、キテラボ「スキマバイトを企業が導入する際の注意点。労働条件の明示や就業規則の周知方法について」、総務省「就業構造基本調査」、労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査(2007),(2022)」「副業者の就業実態に関する調査(2017)」、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
アンケート調査(1) 就業構造基本調査
就業構造基本調査によると、10年前対比で、副業者数は4割強増加し、就業者数に占める副業者比率は約1.4%pt増加した(図表5 男女別副業者数と副業者比率の推移)。
年齢階層別の副業者数の推移をみると、40~64歳を中心に副業者数が多くなっていることが分かる一方、年齢階層別の副業者比率では、65歳以上の階層が2012~2022年にかけて大きく伸びていることが分かる(図表6 年齢階層別副業者数(上部)と副業者比率(下部)の推移)。
本業・副業の就業形態別の副業者数をみると、副業が正規の職員・従業員である副業者数よりも、副業が非正規の職員・従業員である副業者数の方が多くなっている(図表7 本業・副業の就業形態別の副業者数(2022年))。
(注)就業構造基本調査における副業者の推計方法は、図表28参照。
(出所)総務省「就業構造基本調査」
アンケート調査(2) インターネット調査
副業に関するインターネット調査の動向を見ると、就業構造基本調査とは異なる結果となっている。副業者の就労に関する調査の副業者比率は減少傾向であり、全国就業実態パネル調査では横ばい傾向となっている(図表8 副業者比率(副業者の就労に関する調査)、図表9 副業者比率(全国就業実態パネル調査))。
副業をしていると回答した人の年代別比率を見ると、各種統計によって年代別比率が異なっており、特に、就業構造基本調査において増加傾向にある高齢者の割合の差が目立つ。調査方法の違いなどが副業者数の集計結果へ影響している可能性がある。例えば、副業者の就労に関する調査においては、労働力調査の就労者全体の年代別比率とは違いが見られる(図表10 各種統計の年代別比率の推移)。
(注)副業者は、主な仕事以外に収入を伴う労働(副業・兼業)を1つ以上行っている者を指す。
(出所)労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査(2007),(2022)」「副業者の就業実態に関する調査(2017)」、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」、総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」
アンケート調査(3) 副業理由・就業形態
副業理由の調査結果を見ると、“生計維持”などの所得に関する理由が上位となっている。世帯月収が20万円未満の場合、副業者の収入が本業のみの人の収入を上回っており、生計維持のために副業が活用されていると考えられる(図表11 副業を行う理由、図表12 本業のみの人と副業者の月収に関するカテゴリ別割合)。
ただし、70代に注目すると、“時間にゆとり”や“友人・知人の頼み”、“社会貢献”などを理由とした副業が多い。高齢者については、社会とのつながりを重視して副業に取り組んでいる可能性が考えられる(図表11)。
副業の就業形態を見ると、全体的に“パート・アルバイト”や“フリーランス”などが多い傾向が確認される。仕事内容については本業と副業で関連しない場合が多い(図表13 本業と副業の就業形態組み合わせ、図表14 本業と副業の業務内容関連性)。
(出所)リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」、労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査(2022)」
税務統計(1) 民間給与実態統計調査
次に、税務統計から副業の分析を行う。本稿では「民間給与実態統計調査」、「申告所得税標本調査」を分析する。前者は源泉徴収税によるため雇用者の、後者は申告所得税によるため確定申告者の実態把握が可能(図表15 国税庁の統計調査)。
民間給与実態統計調査に関して、“乙欄”の適用者を「雇用者として副業収入を得る者」と仮定する。乙欄とは、源泉徴収において、1人の給与所得者が2か所以上の支払先から給与の支払を受けている場合に、その者の副業収入に適用される分類である(図表16 源泉徴収の「乙欄」について)。
乙欄適用者数の推移を見ると、感染症拡大により一時減少した後、足元は感染症拡大前と同程度まで回復。税務統計から見た雇用者としての副業者数は、均してみると横ばい圏と考えられる(図表17 乙欄適用者の人数推移)。他方、乙欄適用者が給与所得者総数に占める比率(乙欄適用者比率)と、労働力調査の非正規比率は比較的近しいトレンドであり、乙欄適用者には非正規雇用者が多く含まれている可能性がある(図表18 乙欄適用者比率と非正規比率の推移)。
(注)雇用者として副業収入を得る場合でも、乙欄適用者とならない可能性がある点には留意が必要。例えば、本業は自営業で副業が雇用者である場合、副業の勤め先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出することが多く、その場合は甲欄適用者となる。
(出所)国税庁「統計年報」「民間給与実態統計調査」「申告所得税標本調査」、総務省「労働力調査」、山澤(2020)「フリーランスの数をどう把握するか―シェアリングエコノミーの統計的把握」 内閣府経済社会総合研究所 季刊国民経済計算 第166号
税務統計(2) 申告所得税標本調査
「申告所得税標本調査」のデータを用いて、就業から得る所得が2つ以上申告されている場合の副収入を副業所得とみなす。具体的には、本業からの所得として給与所得・事業所得・不動産所得を想定し、それとは別に給与所得・事業所得・雑所得が申告されている場合に副業とみなす。このうち、雑所得については、令和2年分より、副業による収入区分を申告する“業務雑所得”が新設された(図表19 副業で想定される納税区分)。
業務雑所得の申告人数は、4年間で微増していることが確認される(図表20 雑所得の申告者数(延べ人数))。
給与所得・事業所得を副収入としている延べ人数を確認すると、足下では横ばいの推移であるものの、長期で見ると緩やかな増加傾向にあることが確認される(図表21 給与所得を副収入として申告している人数(延べ人数)、図表22 事業所得を副収入として申告している人数(延べ人数))。
(注)雑所得は、年金受給による申告が多くを占めるため、本業の集計対象から除いている。不動産所得は、不動産事業による収入が申告され得るものの、副収入での申告時には、家賃収入などの不労所得が多くなると想定されるため、副業の集計対象から除いている。
(出所)国税庁「申告所得税標本調査」
税務統計(3) 税務統計まとめ
民間給与実態統計調査と申告所得税標本調査を見ることで、幅広く副業の実態を捉えられる(図表23 税務統計で捉えられる副業のカバー範囲)。
ここまで推定してきた両税務統計の副業者数を合算した推移を見ると、感染症拡大前対比で横ばい圏である。就業構造基本調査が示す増加トレンドとは異なるが、副業者数の水準はどちらも直近で約330万人と近しくなっている(図表24 税務統計の推定副業者数(乙欄+給与所得+事業所得+雑所得)、図表25 就業構造基本調査 男女別副業者数と副業者比率の推移(再掲))。
トレンドの違いには、例えば税務統計で捕捉できない副業者の存在が影響を与えている可能性がある。近年増加しているスポットワーカーは「丙欄適用者」として源泉徴収される場合があり、その場合は民間給与実態統計調査の対象外となる(図表26 源泉徴収における甲欄、乙欄、丙欄の違い)。
(注)雑所得の数値は業務雑所得者数を指すが、2019年以前は公表値が存在しないため、参考として2020年の数値を横置き。
(出所)国税庁「民間給与実態統計調査」「申告所得税標本調査」
まとめ
就業構造基本調査、税務統計の推定副業者数(水準)は、直近でともに330万人程度であり、近しい結果だった。他方、推定副業者数の趨勢(トレンド)は、前者で増加、後者で横ばいと異なる結果だった(図表27 就業構造基本調査と税務統計の水準・トレンド)。
トレンドに差が生じる理由として、副業者の推計方法や対象の違いなどが考えられる。例えば就業構造基本調査はアンケート調査で副業の内容を自由記述で問うため、友人の頼みによる高齢者の副業など、規模の大小によらず幅広い副業者が含まれる(図表28 本稿における各統計の副業者の推計方法)。税務統計では、スポットワーカーやギグワーカーなどの多様化する副業者を捉え切れていない可能性がある(図表29 スポットワーク市場の拡大)。
よって、副業者数のトレンドは、幅を持って“横ばい”ないしは“緩やかな増加”であると考える。経済正常化、人手不足による労働需要の拡大や働き方の多様化が副業の増加を後押ししている可能性がある。ただし水準は、就業者数約6,800万人(25年4月労働力調査)に対して約330万人であり、副業がマクロ経済に与える影響はまだ限定的であるようだ(図表30 就業者全体に対する副業者の割合)。
(出所)総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」、国税庁「民間給与実態統計調査」「申告所得税標本調査」、労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査(2007),(2022)」「副業者の就業実態に関する調査(2017)」、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」、HRog「いまさら聞けない“スポットワーク”をまるごと解説!特徴や課題、大手5サービスを知ろう」、メルカリハロHP