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『じゃわめぐ』ねぶた 遥かな縄文
函館税関 青森税関支署長大門  和也

1.青森市の概要
 青森税関支署が所在する青森市は、青森県のほぼ中央に位置する県庁所在地であり、県内最多の人口約26万人を擁し、平成18年10月には県内初の中核市に指定されています。
 平成22年12月の東北新幹線全線開通に伴い新青森駅が開業、更に平成28年3月には北海道新幹線が開通し新函館北斗駅まで延伸するなど、北東北地域における産業、経済、行政、文化の中心として更なる発展が期待されています。
 気候は、夏が短く、冬が長く涼しいことから、春から秋にかけて快適に過ごすことができるとされていますが、温暖化の影響か近年夏場はかなり暑くなっています。
 冬は、多くの雪が降り、人口約30万人規模の都市にあっては世界でも有数の豪雪都市といわれています。
 八甲田連峰や陸奥湾など美しい自然に囲まれており、四季折々の景観やりんご、カシス、ナマコやホタテなど豊富な食材にも恵まれています。

2.青森港の発展
 青森港は、西に津軽半島、東に下北半島、中央部に夏泊半島があり、陸奥湾の最奥部に位置していることから、波高は1年の90%が0.5m以下で北方の地方港では抜群の静穏度を誇る天然の良港です。
 歴史を紐解くと、津軽藩二代藩主信枚(のぶひら)公が、寛永2年(1625年)に当時の善知鳥(うとう)村を青森村と命名し開港したのが始まりとされています。その後商港として発展し、明治24年東北本線及び明治27年奥羽本線の開通、明治41年から昭和63年まで活躍した青函連絡船の就航などを経て今日まで北海道への表玄関として、また東北地方北部における物流の拠点として重要な役割を果たしてきました。
 開港から今年で400年を迎えることから、様々なイベントが企画されているようです。

3.青森税関支署の沿革
明治32年(1899年) 青森港に税関監視署設置
明治39年(1906年) 青森港が開港に指定され、函館税関青森出張所を設置
木材(枕木)や林檎などを輸出し石油や漁獲品などを輸入
明治42年(1909年) 新庁舎(青森市新濱町30番20号)に移転
明治45年(1912年) 函館税関青森税関支署に昇格
昭和18年(1943年) 税関官制が廃止となり海運局に統合 青森税関支署は塩釜海運局の支局になる
昭和21年(1946年) 青森税関支署再開 大湊出張所と鯵ヶ沢監視署を設置
昭和28年(1953年) 鰺ヶ沢監視署廃止
昭和42年(1967年) 大湊監視署(当時)廃止
平成7年(1995年) 青森空港に青森空港分室を設置 同年、青森空港出張所に昇格
平成17年(2005年) 青森港湾合同庁舎へ移転
写真 昭和21年 税関再開当時の青森税関支署(出典:青森市民図書館歴史資料室)
写真 現在の青森税関支署(青森港湾合同庁舎)

4.ねぶた祭り
 青森と聞いてまず連想するのは、なんといっても「青森ねぶた祭り」ではないでしょうか。昭和55年に国の重要無形民俗文化財に指定され、東北三大祭りの一つに数えられており(他に秋田竿灯、仙台七夕)、毎年曜日を問わず8月2日から7日まで開催され、期間中100万人以上の観光客が訪れます。
 戦国武将、歌舞伎の名場面、日本や中国の故事、青森の伝説をモチーフとした迫力満点の「山車灯籠(だしとうろう)」、笛、鉦、太鼓の勇壮な祭囃子、「跳人(はねと)」と呼ばれる踊り手が、特徴的なハネト衣装を着飾り「ラッセラー、ラッセラー」という掛け声を発しながら飛び跳ねる光景は、まさに血沸き肉躍るという表現に相応しい祭りです。津軽弁ではこのぞくぞくする、血が騒ぐ、心躍る、震える感情を『じゃわめぐ』と表現します。(標準語のざわめく、ざわつくとはちょっとニュアンスが違います。)
 また、祭りの期間中に来られない方には、青森駅のすぐそばに、青森市文化観光施設「ねぶたの家 ワ・ラッセ」があり、ねぶた祭りの歴史や、前年優秀賞等を受賞した現物そのままの大型ねぶたが常設され、通年にわたりねぶた祭りの魅力を余すことなく体感することができ、そちらも一見、いえ必見の価値はあります。是非とも目の当たりにし、『じゃわめいで』頂ければと思います。

5.三内丸山遺跡
 三内丸山遺跡は、平成4年から始まった発掘調査で、縄文時代前期から中期の大規模な集落跡や多くの竪穴対物跡、掘立柱建物跡、多くの土器や石器などが出土したことをきっかけに遺跡の保存が決定されました。また令和3年7月には「北海道・北東北の縄文遺跡群」として世界文化遺産に登録されています。遺跡には巨大な掘立柱の建物や竪穴式住居などがいくつも復元されており縄文時代の情景や暮らしぶりなどを感じることができるエリアとなっています。
写真 三内丸山遺跡(出典:青森市ホームページ)

6.マルク・シャガール「アレコ」の展示
 青森県立美術館には、20世紀を代表する画家、マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の背景画が展示されています。第1幕《月光のアレコとゼフィラ》、第22幕《カーニヴァル》、第3幕《ある夏の午後の麦畑》、第4幕《サンクトペテルブルクの幻想》全4点を見ることができます。第3幕《ある夏の午後の麦畑》だけは、アメリカのフィラデルフィア美術館の所蔵のものであり、同館から長期借用し展示しています。また当美術館は、この借用している背景画の展示にあたり、函館税関から保税展示場の許可を得ています。

7.ソウルフード
 青森市民のソウルフードといえば、以前は「ホタテ貝味噌焼き」、「煮干しラーメン」が有名でしたが、近年は「味噌カレー牛乳ラーメン」がトレンドとなっています。
 札幌から来青した佐藤清氏(故人)が青森市に開いた「味の札幌」で、このお店の常連客(主に中高生)の間で、ラーメンにケチャップやマヨネーズなどを入れて食べることが流行り、その流れでお客から「味噌ラーメンにカレーとミルク」を入れてとのリクエストがあったことから、試しに作ってみたところたいへん美味しく、裏メニューとしてデビューさせました。
 その後、お客の要望が多くなり、正式なメニューとなったようです。最近では、テレビ番組でも取り上げられ、全国的にも知られようになりました。
コシのある麺に「味噌のコク」、「カレーの風味」、「牛乳のまろやかさ」がマッチした美味しいラーメンです。
 現在、青森市内には、5店舗がその味を引き継いでおり、青森駅周辺にも数店舗ありますし、青森空港のフードコートにも店舗がありますので、機会がありましたら是非お試しください。
写真 噂のソウルフード(出典:青森市ホームページ)

8.八甲田山
 青森市の南側に位置し、大岳を主峰として高田大岳、井戸岳、赤倉岳、前嶽、田茂萢岳など18の山々が連なる総称です。日本100名山にも入っている標高1,585mの八甲田山が全国的に知られるきっかけとなったのは、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、映画にもなった「八甲田雪中行軍遭難事件」で青森市に駐屯する陸軍第8師団歩兵第5連隊が八甲田山雪中行軍の途中で遭難した事件です。そのような事件が起きる過酷な厳冬期もありますが、春の「雪の回廊」をはじめ、夏の新緑、秋の紅葉、そして冬の樹氷と四季折々の景観が楽しめる魅力的な山でもあります。また火山ということもあり、全国的に豪雪地帯としても知られる酸ヶ湯(すかゆ)温泉をはじめとし源泉かけ流しの良質な温泉が点在しています。
写真 青森空港から望む八甲田山

9.おわりに
 駆け足で青森市を紹介してきましたが、まだまだ紹介しきれない魅力的な観光地、食材等たくさんありますので、是非とも青森に一度と言わず何度でも足をお運びいただき、自然豊かな青森を体感してみてはいかがでしょうか。
 税関も港、空港関連の官庁として、微力ながらその発展に貢献して参りたいと考えています。
○参考文献
青森市のホームページ、青森港国際化推進協議会ホームページ


歴史と自然と工業の調和するまち倉敷市
神戸税関 水島税関支署総務課長 長谷川  貴彦

1.はじめに
 倉敷市は、岡山県の南部に位置する人口約47万人のまちです。気候は、温暖な瀬戸内海式気候で、年間を通じて天気や温度が安定しており、雨や雪が少なく日照時間が長いのが特徴です。
 倉敷市といえば、市内中心部の白壁の街並みが残る「倉敷美観地区」が有名かと思いますが、南部には瀬戸内海に面する水島港に、西日本有数の工業地帯「水島コンビナート」を抱える重工業の盛んなまちでもあります。また北部や南東部には豊かな自然が広がり、安定した気候と高梁川の豊かな水量を生かし、桃やブドウの産地となっている他、レンコンやごぼうの栽培が盛んな地域もあり、まさに歴史と自然と工業が調和するまちとなっています。更に倉敷市最南端には、本州と四国を結ぶ「瀬戸大橋」が架かり交通の要所でもあります。
写真 (瀬戸大橋)

2.水島税関支署と水島港
 水島税関支署は、倉敷市の南側の工業地帯の一角にあり、瀬戸内海地域の中心に位置する水島港の玄関口に所在しています。昭和36年(1961年)6月に宇野税関支署の水島分室として設置され、翌年4月に水島出張所に昇格、昭和47年(1972年)5月に宇野税関支署から独立し支署となりました。岡山県西部の5市(倉敷市、総社市、高梁市、新見市、浅口市)4郡(都窪郡、加賀郡、小田郡、浅口郡)を管轄しています。
 当支署の眼前に広がる水島港は、戦後に整備された重化学工業地帯から成る「水島地区」と、北前船の時代から商港として古くから栄えた「玉島地区」に分かれており、二つの異なった性格を持った港です。
写真 (水島税関支署)
写真 (支署から見た水島港)
(1)水島地区
 水島地区の生い立ちは古く約400年前の豊臣秀吉による備中高松城への水攻めが行われた天正時代の干拓からと言われています。この地区の工業化への歩みは大東亜戦争が勃発した昭和16年(1941年)、軍の命令による三菱重工業水島航空機製作所(現在の三菱自動車工業(株)水島製作所)誘致から始まり、県事業として地先海面の埋め立てによる工業用地の造成及び港湾施設整備が、その後の水島港発展の基礎となりました。
(2)玉島地区
 玉島地区は、江戸時代の初期、備中松山藩主の水谷勝隆により石船が横付けできる港を整備したのがはじまりと言われており、江戸時代から明治時代にかけて千石船(北前船・高瀬舟)の寄港地として栄え、玉島発展に大きく貢献しました。しかし、明治24年(1891年)の鉄道開通などにより、明治末には北前船の姿が消えると共に玉島港も衰退していきましたが、昭和42年(1967年)以降進められた玉島E地区造成事業により商業港としての基盤が整備され、現在ではコンテナ船航路も整備され、鉱産品、化学工業品、金属機械工業品、農水産品などで中四国地方トップの貨物量を誇っています。
写真 (水島港全景)
(3)岡山県の税関発祥の地
 現在、玉島地区の街中に「岡山県税関発祥の地」と記された石碑が建っています。この場所は、かつて税関の監視署があった場所ですが、現在は一般家庭となっており、軒先にひっそりと建っています。昭和16年(1941年)に税関監視署は廃止されましたが、当時玉島税関監視署は玉島税務署に併置されていて、職員は署長の外1名だけでした。玉島港の発展に伴って出入りする船舶が増加し、多忙を極めていたようです。
写真 (岡山県税関発祥の地石碑)

3.倉敷市の名所
 数ある倉敷市の名所のうち、代表的なものをご紹介します。
(1)倉敷美観地区
 倉敷市を代表する観光地である美観地区は、江戸時代初期の寛永19年(1642年)幕府の直轄地「天領」に定められ、周辺一帯の政治の中心地として栄えました。
 今も同所を流れる倉敷川は、当時から川舟で瀬戸内海と往来できる運河として、物資の運搬に利用されていたため、物資の集積地として賑わい、商業の中心として発展しました。倉敷川沿いに立ち並ぶ白壁やなまこ壁の屋敷や蔵は江戸時代からほとんど姿を変えることなく残されており、明治時代以降の洋風モダンな建物や美術館も加わったことで、倉敷美観地区独特の雰囲気ある街並みとなっています。
 昭和44年(1969年)に倉敷市の条例に基づき美観地区に指定され、昭和54年(1979年)に重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
 現在では国内外からの観光客が年間約300万人訪れ、美しい景観を撮影しながらの散策や、江戸時代に物資を運んだ川舟を再現した「くらしき川舟流し」の体験が人気を集めています。岡山県の旬なフルーツを使ったパフェを提供する人気店や、岡山県のお土産を取り扱う店も多数あり、景観と同時に食や買い物を楽しむことができます。
写真 (倉敷美観地区)
写真 (川舟流し)
(2)水島コンビナート
 水島港湾岸沿いに立ち並ぶ水島コンビナートは、総面積約2500haの工業地帯に、石油精製、鉄鋼生産、自動車など220以上の企業が集まる日本有数の重化学コンビナートです。昼間は工場からの粉塵や、煙突からの噴煙といった工業地帯ならではの一面がありますが、夜になっても煌々と灯りを放ち不夜城の如く稼働し続けるコンビナートの夜景は迫力満点です。特に「鷲羽山スカイライン水島展望台」からの展望は、大迫力の工業夜景を眼下に眺めることができ「日本夜景遺産」に登録されています。
写真 (水島コンビナート)
写真 (水島展望台からの夜景)
(3)鷲羽山
 鷲羽山は、倉敷市の最南端である児島半島の先端にある瀬戸内海国立公園の代表的な景勝地です。鷲が羽を広げた姿に似ていることから、その名前がつけられたようです。瀬戸内海に面する鷲羽山は、海抜僅か133mですが、展望台からは天気が良ければ瀬戸内海の青い海に浮かぶ無数の島々や、全長約10kmの瀬戸大橋の全景、対岸の香川県の中心都市まで広く見渡すことができます。鷲羽山には展望台が数か所ありますが、麓から山頂にかけて遊歩道が整備されているので、それぞれの展望台の景色を楽しむことができます。昼間の景色も良いですが、人工の瀬戸大橋と、自然の島々が点在する瀬戸内海の間に沈む夕日は特に絶景で「日本の夕日百選」にも選ばれています。
写真 (鷲羽山展望台からの眺望)
(4)児島ジーンズストリート
 昭和40年(1965年)に倉敷市児島において日本で初めて国内で縫製されたジーンズが誕生したことから児島は「国産ジーンズ発祥の地」と言われています。児島地区の中心地にある約400mの通りには、地元ジーンズメーカーが軒を連ねています。
 「ジャパンデニム」のオリジナリティー溢れるジーンズが購入できるとあって、最近では海外からも多くの観光客が訪れています。周辺には魅力的なショップやカフェが揃っており、1日中楽しめるエリアとなっています。
写真 (ショップリスト)
写真 (児島ジーンズストリート)

4.おわりに
以上、倉敷市についてご紹介しましたが、まだまだ紹介しきれなかった魅力的な場所がたくさんあります。
岡山県を旅行される際には、ぜひ倉敷市にお立ち寄りください。