お久しぶり・・・の方は、きっともう少なくて、初めましての方ばかりかもしれません。スズキが、ちびっこ1号・2号とのよしなしごとを、そこはかとなくかきつくってお届けしていた連載を終えたのは、2015年6月。もう、10年近くも前ですね。
その間、子育てをとりまく世間の事情は、しかるべく変わったことも、そっちに行くの?と思うことも、驚くほど変わらないことも、それぞれあるわけですが、総じてみれば、女性でも男性でも、子どもを産むにしても産まないにしても、選択肢は増えた。そのことで、従来の課題を解決しきる前に、さらに次の課題が出てくる悩ましさもありますが、昔のままよりはいいのでしょう。
スズキは、周囲の多大なるサポートのおかげで、時代の流れより少しだけ早めに、財務省で働きながら、子どもたちを育ててきました。10年前の連載当時はマイノリティでしたから、財務省で働きながら子育てするって、例えばこういうこと、と発信する意義があったように思っていましたが、今では、そういう方も増え、子どもを持つも持たぬも含めたone of themですから、スズキの話を紹介する意義は、低下したかもしれません。
でも、この前、2号が、問わず語りに「中学受験の話。」をしていまして。
今年も、シーズン佳境ですね。前回の受験率、首都圏では、過去最高の18%だったとか。地域差もあるので、1号や2号のクラスはもっと多かった気がします。
その中に、自らの意思で中学受験したい!と言っている立派な子が、どれほどいるのかわかりませんが、学童クラブは小3で一区切り。小4はまだ、家の鍵を持たせて、毎日、1人で自宅に留守番させるには、心許ない。事件事故の心配もそうだし、平穏な1日でも、積極的に宿題や勉強をする子はたぶん少数派で、ゲームやスマホ三昧になってしまいかねない。
そんなとき、とりあえず、預けてもらえれば、勉強させますよ的な塾の勧誘に、どこか負い目を持ちながら働く親たちは、とても心惹かれてしまうのではないでしょうか。周りの子が塾に行き始めると、なんとなく一緒に、と拡がったりして・・・。
こうして特に都市部では、足を踏み入れがちな中学受験の世界。ただ、経験者の方はお気づきのように、現実は、塾がいうほど甘くなく、しっかり親も試されます。少なくとも、モチベーションの維持(というかフラストレーションの発散)と、大量の宿題やテストの進行管理とか。
中学受験特有のヒエラルキー的なモノを感じたのは、スズキ自身が中学受験をしていないからかもしれませんが、スズキにとって、その特殊な世界を生きるちびっこたちの進行管理をするのは容易ではありませんでした。まして、内容に踏み込んでのフォローなんて、とてもムリ。反抗期とも重なって、スズキの場合、親子間の摩擦が、最も大きくなった時期だったと思います。
自己表現が得意な2号は、どちらかと言えば中学受験に向いている気質だったように思いましたが、コロナ起因の事情も色々あって、ヒエラルキー的な結果には、あまり結びつかなかったかもしれません。
それでも、小学校のときは、親の都合で参加できなかったサッカーを部活でやったり、文化祭を楽しんだり、仲のいい友達ができたり、2号も、それなりに中学生活を楽しんでいたと思います。
その後、再び受験をする道を選び、別の高校に進んだ2号ですが、曰く、「中学受験は、つらかった。」と。
「小6の秋の模試で、成績が急に下がったでしょ?あのとき、ほんとは受験を止めたかった。でも、親にそう言うなんて、ほんとムリだった。」「成績が下がったのは、自分が受験をナメてたからだけど。でも、小学生だからさ。受験しない友だちは、好きに遊んでて、僕も一緒に遊びたかったたし、そこまで受験に必死になれなかった。」
「中学受験に比べて、高校受験は、自分でやろうと思ったことだから、モチベーションが違った。」「今振り返れば、中学受験での積み重ねがあったからこそ、高校受験の結果につながったと感じてはいるけど。」
「ただ、中学受験を止めたいって、親に言えなかったことは・・・僕はなんとか乗り切れたけど、乗り切れない子もいるはず。小学生なんだから。だから、本人が止めたいって思ったら、それがどんなに受験の直前だったとしても、止めたいって言い出せる状況にしてあげるべきだ。それだけは伝えたい!」とのこと。
ここでの連載終了後もスズキ、実は場所を移して子育て日記を続けてきました。なぜなら、たとえ限られた時間でも、その時々の想いで、子どもたちと向き合っているはずなのに、それを子どもたちに伝えられないばかりか、時の経過とともに自分でも想いを忘れてしまうから。
2号の話を聞いて、受験の頃の日記を見たら・・・なんだか余裕のなさそうなスズキがいました。
小6は進行管理も複雑で、みんなが必死になる中、成績を上げるのは至難になって、本人も周りも、神経をすり減りがち。でも、当時のスズキ、自分の余裕のなさを自覚していたか、疑わしい。その結果、2号を追い詰めることになったのは、明らかに失格だと後悔しても、先たたず。
ただ、2号が、そんなことを感じていて、時が経ってから、こんなふうに自己分析して振り返るなんて、想像してなかった。受験というのは、子どもたちにとって、大切な節目であるけれど、あくまで通過点なんだなぁ。
スズキが学んだことは、結局、仕事と子ども、自分、家族、その他、全部はムリだってこと。だから、自分の中の優先順位を考えておかないと、どこかでひずみが生じてしまう。
今どき、こういうとブラックな印象になりかねなくて表現が難しいのですが、わが社には、いつも全力で仕事のことを考えられる「キラキラ」した人たちが、一定数います。ここぞの仕事は、彼らに支えられていると思う。
でも、スズキには、というか、スズキの場合は、子どもたちがいて。子どもたちがいるから、とまでいうと、言い訳がましいのだけれど、でもやっぱり、「キラキラ」メンバーと同じようには働けなかった。いや、働かなかった。
当初、想像していたよりずっと長い育児期間。その間に重なり続ける経験不足。結果、スズキは今でも、判断に迷うし、自信がないことも多くて、「キラキラ」メンバーのようにはいきません。
だけど。今、子育てと仕事の両立で、毎日、気を張りつめている方々に伝えたい。
仕事は、多少のことは後で補う機会をもらえることがあります。もしくは、補ってくれる同僚がいます(深謝)。さらに、時が経てば、自分が補う側にまわり、恩返しの機会もあります(貸借の相手がズレても問題なし!)。
だから、今、自分ができることを、借りられる手は借りながら、ひとつずつやればいいと思います。むしろ、常に少しは余力を残して、子どもや自分の突発事態に備えてほしい。子どもたちって、本当によく親のことを見ていて、親の張りつめた気持ちは、子どもからも余裕を奪ってしまうから。
もうひとつ、子どもたちは、2度と小さくならないから、ぜひ今を大切に。
ちびっこだった1号・2号も、気づけば、元ちびっこになっていて。特に、スズキにとって1号は、独立後の歴史そのものと言っても過言ではないけれど、この度1号、ついに20歳を迎えました。
身体が大きくなっても、スズキには、ちびっこの時代の面影が強い。時間も忘れて、ちびっこ時代の写真に見入っていると、「ただいまー」という、低い声で現実に戻ります。
もうあと何回、「おかえり」って言えるのかなと、急にしんみりする、今日この頃。表で裏で、支えてくださった方々に、心から感謝いたします。