このページの本文へ移動
「魅力溢れて世界に羽ばたけ!」-技術と人間性の二刀流で切り開くキャリア-

ヴァイオリニスト&指揮者 西谷 国登(にしたに くにと)

 毎年、世界中の音楽大学や教育機関から、多くの音楽を学ぶ学生が卒業しますが、その多くが音楽以外の道へ進んでしまう現実があります。もちろん、音楽を通じて培った経験が他の分野で活かされることは素晴らしいことです。しかし、長年の努力を重ねて学んだ音楽を、楽器を諦めざるを得ない状況が一般化していることに、私は違和感を感じて来ました。
 私の目標は、魅力的な演奏家として生計を立てられる音楽家を育成し、彼らが世界で活躍し、世界的に文化貢献することです!かつての音楽大学は、楽器の技術指導に専念することに集中した機関でしたが、現在では「音楽で生計を立てる方法」を学ぶカリキュラムが欧米を中心に広まっています。私の留学先であるニューヨーク大学でも、音楽学生が名刺作成や自己紹介の練習、ウェブサイトの立ち上げなど、実践的なビジネストレーニングを受講できるクラスがあり斬新でした。それらを活かし、私自身もヴァイオリン演奏活動に加えて、指揮や運営、CDや教本の制作、レッスン活動など、多岐にわたる活動を行っています。
 しかし、私はこれだけでは十分だとは思いません。特に世界的に活躍する有名な演奏家たちを見て感じたのは、「魅力的な人間性」が不可欠であるということです。どの職業でも同様ですが、楽器の技術を磨くだけでなく、他者から好まれる魅力的な人間性を持つことが大切です。独自の技術を活かし、音楽で生計を立てるためにも、その時々にふさわしい魅力的な振る舞いを心がけることが重要だと感じます。
 そのためには、音楽家としての付き合いやポジティブな考え方、精神的な訓練、さらにSNSの使い方を学ぶ授業や講座が音楽教育機関において必須だと考えます。性格は育った環境に左右される部分もありますが、教育を通じて良好なコミュニケーションを取り、謙虚に振る舞う力を身につけることは可能です。楽器の技術と同様に、人間性も学び強化すべきだと思います。これを軽んじていて成功する奏者は、多くないでしょう。
 では、どうすれば魅力的な演奏家を育成できるのでしょうか。それは、成功したい分野の尊敬すべき人物と親密な関係を築くことが一番の近道です。ヴァイオリニストとして成功したいなら、その道で成果を上げた人に師事し、直接その姿を観察することです。先人の知恵に学び、目標に近づくための環境を整えることが大切です。
 「類は友を呼ぶ」「朱に交われば赤くなる」と言われるように、良い環境に身を置くことで自分自身も成長することができます。そして、私自身が大切にしている母の教え「恋と願いはよくせよ!」という言葉もまた、常に目標を持ち続ける力強い教訓です。強く願い続けることで、必ずしも目標が完全に叶うとは限りませんが、その目標に近づくことは確実です。
 私は、魅力を持った日本人音楽家たちが、一人でも多く羽ばたき、世界で大いに活躍できることを心から願っています!

写真 撮影・井村重人