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確定申告手続きは「スマホ」と「マイナポータル連携」で便利に!

所得税の確定申告手続きの利便性向上の進展が著しい。国税庁では、令和5年6月に公表した「税務行政の将来像2023」に掲げる主要な3本柱の一つである「納税者の利便性向上」に向けた施策として、スマホなどの日常使いなれたツールから、簡単・便利に手続きを行うことができる環境を構築し、オンライン手続きの推進、「あらゆる手続きが税務署に行かずにできる社会」の実現に取り組んでいる。
本特集では、スマホとマイナポータル連携を活用することにより、便利になった所得税の確定申告手続きについて紹介する。
取材・文向山勇

確定申告はe-Tax利用がスタンダードに!
 所得税の確定申告はe-Taxの利用がスタンダードになっている。令和5年分の確定申告では、約7割の納税者がe-Taxを利用した確定申告を行っており、実に「3人に2人」の方がe-Taxを利用して申告するまでになっている。国税庁では、令和8年度におけるe-Tax利用割合を80%まで伸ばすことを目標とし、更なる利便性向上に取り組んでいる。
 このようにe-Tax利用が伸びている背景には、確定申告手続きを行う方にとって、e-Tax利用のメリットが非常に大きいことが挙げられる。まず、自宅から申告が可能であること。わざわざ税務署に出向く必要がない。特に利用者にとって身近なデバイスである「スマホ」でも申告書の作成が可能で、完成した申告書はそのまま送信ができる(詳しくは7ページ コラム1参照)。
 また、e-Taxの利用時間も、休日を含め24時間いつでも手続きが可能(メンテナンス時間を除く)となっている。時間の制約はほとんどなく、平日の日中になかなか時間が取れないサラリーマン層にとって魅力的なメリットである。
 そのほか、申告書の内容について、いつでもデータで確認できることや、確定申告に添付が必要な多くの書類が提出不要となること(一部の書類は除く)、還付申告の場合はe-Taxを利用すれば3週間程度で還付金を受け取ることができ、書面で申告した場合に比べて早期還付の恩恵がある(書面の場合は1か月~1か月半程度の時間がかかる)。
 そして、e-Taxによる確定申告手続きにおいて、特に注目したいのは、令和2年分の所得税確定申告から導入された「マイナポータル連携」機能だ。この機能が確定申告手続きの利便性を大きく引き上げている。確定申告が必要な方は、必ずチェックしておきたい機能だ。

マイナポータル連携でデータを自動入力・自動計算!
 「マイナポータル連携」は、マイナンバーカードを利用してe-Taxを行う際、マイナポータルを経由して、申告に必要な収入や控除に関するデータを一括取得し、申告書の該当項目に自動入力することができる機能だ。医療費控除やふるさと納税に係る寄附金控除にも対応しており、医療費の集計や各種収入・控除を入力する手間が大幅に削減される。非常に利便性が高く、これを利用しない手はない、といっても過言ではない。
 マイナポ―タル連携の利用者は年々、増加傾向。導入から4年目を迎えた令和5年分の確定申告では、同機能の利用者は190万人にも上っており、注目度の高さが窺える。
 マイナポータル連携は前述のとおり、令和2年分の年末調整・確定申告手続きから導入された機能だ。冒頭に紹介した「税務行政の将来像2023」では、今後、税務の分野においては、確定申告に必要なデータ(例えば、給与や年金の収入金額、医療費の支払金額など)を納税者が個別に入力することなく、自動的に申告データに取り込むことで、数回のクリックやタップで確定申告が完了する「書かない確定申告」(日本版記入済み申告書)の実現を目指している。マイナポータル連携機能の導入や導入以降の累次にわたる対象データの拡大の取組は、まさに税務行政の将来像の実現に向けた一環として位置付けられている。
 マイナポータル連携を利用して自動入力の対象となるデータは、生命保険料控除証明書を皮切りに、これまで、ふるさと納税に係る寄附金控除のデータや医療費通知情報、公的年金等の源泉徴収票や株式の特定口座年間取引報告書などに対応。令和5年分の確定申告からは、新たに、確定申告人員の過半数を占める給与所得者向けに、国税庁に「法定調書」としてオンラインで提出された給与所得の源泉徴収票のデータの自動入力が実現している。
 この点について、国税庁個人課税課は、「元来、『法定調書』は、国税当局において申告内容と事後的に突合し、申告内容の適正性を担保するためのツールとして位置付けられてきたもの。今回実施した、給与所得の源泉徴収票のデータの自動入力は、国税当局が保有する法定調書の情報を申告時に納税者に対して還元する初めての試みであり、『申告納税制度』の下で納税者がより簡単・便利・正確に自己申告することを可能とするだけでなく、申告誤り等の結果として事後的に是正されるリスクの軽減、更には当局の事務処理の効率化など官民双方のコスト削減に資するもの。今後とも、納税者利便の更なる向上を目指して、取組を進めていくこととしている。納税者の皆様に、ぜひ、マイナポータル連携をご利用いただき、その便利さを体験していただきたい。」と語る。
 現在、マイナポータル連携の対象データは図のとおりとなっており、一般的なサラリーマンが医療費控除や寄附金控除などの適用を受けるために確定申告を行う場合には、マイナポータル連携を利用することで、申告に必要な大半の入力が自動化されるため、「書かない確定申告」が概ね実現しているように感じられるケースも多いことだろう。
 なお、マイナポータル連携を利用するためにはマイナポータル等で事前準備が必要となる。事前準備は最初の1回のみの手続きであり、翌年以降の申告では、新たに取得するデータが増えない限り、原則、あらためて事前準備を行う必要はない。
 次頁では、サラリーマンの申告の例を用いて、<1>事前準備から<2>申告の流れを解説する。

給与所得者がマイナポータル連携を利用して確定申告するまでの流れ
 ここでは、年末調整された給与所得を有するサラリーマンが、確定申告手続きで医療費控除とふるさと納税の適用を受ける還付申告を行う例を用いて解説する。
 まず、「マイナンバーカード」と「マイナンバーカード読取対応のスマホ」を準備しよう。マイナンバーカードに格納された電子証明書のパスワードも用意が必要だ(詳しくは9ページ参照)。
 なお、令和6年分確定申告から、「マイナンバーカード」に代えてスマホ用電子証明書を利用することで、スマホにマイナンバーカードをかざして読み取る必要がなくなる(詳しくは8ページ コラム2参照)。
<1>マイナポータル連携のための事前準備
 スマホでマイナポータルアプリをダウンロードし、マイナポータルへアクセスする。
 初めて利用する方は、STEP1として、画面の案内に沿って、マイナポータルの利用者登録を行う。
 つぎに、STEP2として、マイナポータル内にある「確定申告の事前準備」ページから、取得したい控除証明書等を選択する。設例では、「医療費」、「ふるさと納税」、「給与」を選択する。
 STEP3として、画面の案内に沿って、マイナポータルとe-Tax、マイナポータルと民間送達サービスをそれぞれ連携するための操作を行う。
 STEP4として、設例では、ふるさと納税に係る寄附金控除データを連携するので、民間送達サービスと証明書等の発行企業とを連携させる。なお、発行企業のサイトで証明書等の電子交付サービスの申請を求められる場合があるが、画面の案内に沿って手続きを完了させる。
 STEP5として、給与所得の源泉徴収票の情報を取得するため、e-Taxのマイページへ遷移し、「情報取得希望」の手続きを行う。
 なお、医療費控除に必要な「医療費通知情報」は、特段の設定は不要だ。
 設例での事前準備は以上となる。事前準備を行ってから実際に証明書等のデータが連携可能となるまでには、数日を要する場合があるので、事前準備は早めに済ませておきたい。
<2>マイナポータル連携を利用した申告の流れ
 続いて、事前準備完了後の確定申告書の作成・e-Tax送信の手続きについて説明する。
 STEP1として、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」へアクセスし、申告書の作成を開始する。
 STEP2では、証明書等のデータを取得するために、マイナポータルと「連携する」を選択する。
 STEP3では、マイナポータルから連携された給与所得等の情報に誤りがないかを確認する。また、連携された情報以外に申告するものがある場合には、画面の案内に沿って、入力を行う。
 最後にSTEP4として、確定申告書をe-Tax送信すれば、確定申告手続きは完了する。
 なお、マイナポータル連携可能な証明書等の発行主体(発行元)の情報や、連携可能となる時期については、国税庁の特設サイトに掲載されている。また、マイナポータル連携に必要な事前準備やマイナポータル連携を利用した給与等の申告に関する解説動画等も用意されているので、併せて確認しておきたい。
 令和6年分の確定申告では、ぜひとも自宅からマイナポータル連携を利用したe-Taxを試していただき、その利便性の高さを実感してもらいたい。

Column1
所得税の全ての画面がスマホでも操作しやすい画面を提供!
 国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」では、スマホ申告の利便性を向上させるため、平成30年分の確定申告から、スマホでも操作しやすい「スマホ専用画面」を提供している。
 現状、住宅ローン控除をはじめとする一部の画面や過去年分の申告などはその対象から除かれているところ、令和7年1月からは、所得税の全ての画面でスマホでも操作しやすい画面が提供される。
 あわせて、パソコンの画面も、シンプルで見やすいデザインに統一する予定だ。
 この他、消費税や贈与税でも一部の画面でスマホでも操作しやすい画面を提供する。
写真 所得税の全ての画面がスマホでも操作しやすくなります。

Column2
e-Taxがスマホ用電子証明書にも対応!
 令和7年1月から、e-Taxでもスマホ用電子証明書の利用が可能となる。
 これまで、申告書の作成・e-Tax送信をするためには、マイナンバーカードを準備し、スマホにマイナンバーカードをかざして読み取る必要があった。令和7年1月からは、スマホ用電子証明書を利用すると、マイナンバーカードを読み取ることなく、申告書の作成・e-Tax送信が可能になる。
 スマホ用電子証明書を利用するには、スマホでマイナポータルアプリから、スマホ用電子証明書の利用申請・登録を行う必要がある。また、利用者証明用電子証明書については、設定したパスワードの代わりに、機種にもよるが、スマホの生体認証機能などのロック解除の機能を設定することも可能だ。
 なお、今回対応するのはAndroidのみとなっている。
写真 ご利用には、スマホでマイナポータルアプリからスマホ用電子証明書の利用申請・登録をする必要があります。
写真 スマホ用電子証明書の詳細はデジタル庁HPの特設ページへ

マイナポータル連携を利用したe-Tax申告を行うために必要なもの
 マイナポータル連携を利用したe-Tax申告を行う上で必要なものをあらためて確認しておこう。
 マイナポ―タル連携を利用したe-Tax申告を行うには、(1)マイナンバーカード、(2)マイナンバーカード読取対応のスマホ(又はICカードリーダライタ)、(3)マイナンバーカードに格納された電子証明書の2つのパスワードが必要になる。
 2つのパスワードとは「署名用電子証明書」のパスワード(英数字6~16文字)と「利用者証明用電子証明書」のパスワード(数字4桁)だ。いずれも、マイナンバーカードを市区町村の窓口で受け取った際に、利用者自身で設定したパスワードである。
 「署名用電子証明書」のパスワードは5回、「利用者証明用電子証明書」のパスワードは3回連続で間違えるとロックされるので注意が必要だ。
 なお、パスワードを忘れた場合やロックされた場合の対処方法については、公的個人認証サービスのポータルサイト(https://www.jpki.go.jp/jpkiidreset/howto/index.html)を参照されたい。
 最後になるが、マイナポータル連携やスマホ利用により、とりわけ、サラリーマンの申告手続きは各段にその利便性が増している。年明けの確定申告に向けて、まずは、各種の準備に取り掛かることをお勧めしたい。

図表 書かない確定申告マイナンバーカードでe-Tax
図表 マイナポータル連携の対象
図表 <1>マイナポータル連携のための事前準備
図表 <2>マイナポータル連携を利用した申告の流れ
図表 スマホ向け画面の例(住宅ローン控除の入力画面)
図表 パソコン画面もデザインを統一
図表 Before(現在)
図表 After(令和7年1月~)