金融環境の変遷と企業財務に関する分析
大臣官房総合政策課 倉又 廉/本野 大幹/大村 直人/横山 修平/前 大臣官房総合政策課 日沖 駿介
1.はじめに
本稿は、中長期的な金融環境の変遷について述べた上で、企業財務がどのように変容してきたかについて論じる。
帝国データバンクのアンケート調査によれば、金融環境の変遷は、支払利息の増減や物価の変動などプラスの面とマイナスの面の両方があるように見受けられる。具体的には、企業の債務償還能力に与える影響に着目した。分析に用いたデータおよびベンチマークについて、データは法人企業統計の個票データ等を、ベンチマークは営業利益を支払利息で割ったものであるインタレスト・カバレッジ・レシオ(以下「ICR」という。)を用い*1、短期的な利払い能力を確認し、また中長期的な借入力を分析するために借入金を総資産で割った借入金依存度を見ていく。なお、企業財務は個別性がかなり高いため、金融環境の変化より企業財務全体にどういう影響があるかということを包括的に捉えることは難しいのであるが、企業規模別・産業別に分析することで、個別性を一定程度考慮している。
2.金融環境の長期的な変遷
まず、金融環境の長期トレンドについて説明する。貸出約定金利の動向については、中小企業の主な借入先と考えられる地域金融機関の貸出金利は量的・質的金融緩和のもと、長期短期ともにこれまで低下傾向で推移してきた。近年、中長期の国債金利は上昇しているが、金融機関の貸出態度の指標である長期貸出平均約定金利への影響は限定的であるということが示唆されている。また、2024年3月のマイナス金利解除の前後では、住宅ローンや中小企業向け融資の基準金利となる短期プライムレート(短プラ)について、足元では変化がなかったことが、日銀より説明されている*2。
資金繰り判断DI*3については、リーマンショック及びコロナ禍において二度悪化したものの、足元は緩和基調で推移していることが確認できる。貸出態度判断DI*4は、リーマンショック時から緩和傾向にあるものの、足元については、緩和基調のトレンドに鈍化が見られる。また、貸出運営スタンスDI*5は振れを伴いつつも積極化基調で推移をしてきたものの、コロナ禍後の動きは積極化基調の動きが鈍化していることが確認できる。コロナ禍において実施された実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)等への対応が一服したほか、物価高や人手不足による経営環境の不透明感の高まりが背景である可能性がある。また、銀行貸出残高・件数を企業規模別に見ると*6、コロナ禍においては貸出残高が増加していることが確認できるが、件数については特に中堅中小企業においてそれほど伸びていない。また、足もとは大企業・中小企業について貸出しの残高・件数ともに増加基調にあることが確認できる。
以上のことから、日本の長期的な金融環境は、リーマンショックやコロナ危機等により振れを伴いつつも、総じて緩和的に推移している。
3.金融環境の変化によるICRへの影響の分析
ここからは、ICRを用いた長期推移の分析を行う。図表3 ICRの長期推移は、法人企業統計の2003年度から2022年度までの個票データを用いて、業種および企業規模別に営業利益を支払利息で割って求めたICRの長期推移を表したものである。面の色分けで年度ごとのパーセンタイル値を表しており、例えば90パーセンタイル値であれば、上位10%に位置する企業の値を示している。なお、資本金10億円以上を大企業、1億円以上10億円未満を中堅企業、1億円未満を中小企業と定義している。
まず、ICRの長期的な推移について、大企業は業種ごとに程度の差は見られるものの、2003年度から2022年度にかけてリーマンショックやコロナ禍においては一時的に低下しているが、長期的に見ると上昇方向で推移している。特に90パーセンタイル値の企業群については上昇幅が各業種ともに大きくなっていることが確認できる。中堅企業においては、ICRの水準自体は大企業に比べれば低いといえるが、長期的に上昇方向に推移をしている点、また上位層の拡大幅が大きくなっている点については、大企業と同様の傾向となっている。
他方で、中小企業については、中央値はいずれの業種も0から1程度と低い水準となっている。長期的な推移を見ても中央値に大きな変動はない。一方、各業種における90パーセンタイル値の企業群における上昇幅は、業種によって程度の差が大きく生じていることを確認できる。
次に営業利益が赤字、すなわちICRが0より小さい値になっている企業数の構成比を見てみよう。業種ごとに企業規模別の3つに分けて0未満の構成比を示している。いずれの業種についても、傾向として中小企業、中堅企業、大企業の順にICRが0未満の企業割合が大きくなっている。特にリーマンショックやコロナ禍においては0未満の企業数が各業種ともに拡大していることが確認できる。しかしながら、長期的にICRが0未満の企業の割合が縮小しているような動きは確認できない。
これらのことから、緩和的な金融環境の長期的なトレンドに沿って、大企業、中堅企業、一部の中小企業を中心に企業財務は改善してきたものの、企業財務が著しく悪化していた企業への影響は限定的であったことが示唆される。
次に、ICRが、営業利益ROA/(借入金利×レバレッジ比率)として表すことができることを活用し、当該3要素がICRの変動にどの程度影響したかを確認していく。
まず営業利益ROA*7について、2006年度と2022年度の企業分布を業種別で比較した。全体を見ると、多くの業種において営業利益ROAが2006年度比概ね横ばいで推移している。業種別に見ると、建設業と卸業・小売業で若干の改善が見られること、製造業(素材)、製造業(加工)、不動産業、運輸業・郵便業、などの業種で若干の悪化が見られる。
続いて法人企業統計の平均借入金利*8の推移について説明する。全ての業種において低下方向で推移していることが確認できる。業種による差はあるものの、平均借入金利の低下幅は中央値で見ると概ね0.5から1.0%程度となっている。
借入金依存度*9についても、いずれの業種においても低下方向で推移していることが確認できる。特に借入金依存度が高い業種としては不動産業、運輸業・郵便業、サービス業などが挙げられる。
続いて、ICRに対する各要素の寄与度分解を見ていく。伸び率の寄与度を対数化により試算したものであり、2022年度は2006年度に比べて各業種においてICRが改善している。いずれの業種においても平均借入金利の低下が営業利益ICR*10の上昇に大きく寄与していることが見て取れる。他方で、運輸業・郵便業については他の業種に比べて営業利益ROA*11の悪化幅が大きく、ICRの押し下げ要因になっている。
ここからは過去2006年前後に資金繰り判断DI等の金融環境に関する指標がピークを迎えた後に、企業貸出などにどのような影響があったのかを確認する。まず貸出平均約定金利について、短期プライムレートや国債金利などは上昇が見られるが、貸出平均金利は、短期長期ともにやや強含む動きが見られるものの大きな上昇は確認できない。
銀行貸出への影響として、利鞘設定DI*12は上位中位の格付で上昇が見られる。また、貸出残高と貸出件数については、大企業・中堅企業において緩やかな景気回復があった中、リスクテイク機能を回復した金融機関が前向きな融資姿勢に転換したことで貸出残高貸出件数ともに上昇傾向にあることが見て取れる。ただし、中小企業については変化が相対的に小さいことも確認できる。
続いて、2005年から2007年の業種別のヒストグラムの推移を確認する*13。図表11 企業財務への短期影響のそれぞれの上段は、平均借入金利のヒストグラムの推移、下段がICRのヒストグラムの推移となっている。例として製造業(素材)を見ると、上段の平均借入金利は、2007年にかけて0%から1%あたりの構成比が減少しているのに対して、1%から2%程度の金利の構成比が増加しており、全体として企業分布が上昇方向に推移したことが伺える。一方で下段のICRについては、特段大きな変動は確認できない。他の業種においても同様の傾向が見られ、2006年から2007年にかけて企業の借入金利水準に一定の上昇圧力が生じたことが示唆されるものの、景気回復等を背景とした企業の財務体質の改善により、短期的な利払い能力(ICR)への影響は限定的であった可能性があると考えられる。
4.おわりに
以上から、日本の長期的な金融環境は、リーマンショックやコロナ危機等により振れを伴いつつも、総じて緩和的に推移しており、長期的な傾向では企業財務は改善傾向にあることが読み取れる。他方で、コロナ禍等を経て利益水準の低下の傾向が見受けられる「不動産業」、「運輸業・郵便業」、「サービス業」や、相対的に借入金依存度が高く、利益水準が低位である「中小企業」について、今後の金融環境の変遷における影響を注視する必要がある。
図表1 金融環境の動向
図表2 企業借入及び銀行貸出の動向
図表4 ICRが0未満の企業数の構成比
図表5 営業利益ROAの推移
図表6 平均借入金利の推移
図表7 借入金依存度の推移
図表8 ICR(営業利益ベース)の寄与度分解(2006⇒2022年度)
図表9 貸出平均約定金利への短期影響
図表10 銀行貸出への影響
*1) 厳密にはICR=(営業利益+受取利息・配当金等)÷(支払利息、社債利息等)だが、本分析においてはデータ制約の都合上、ICR=(営業利益÷支払利息)と定義している。
*2) 令和6年4月2日、第3回経済財政諮問会議議事要旨を参照。
*3) 資金繰り判断D.I.=「楽である」とした回答金融機関構成比 ―「苦しい」とした回答金融機関構成比
*4) 貸出態度判断D.I.=「緩い」とした回答金融機関構成比 ―「厳しい」とした回答金融機関構成比
*5) 貸出運営スタンスD.I.=「過去3ヶ月間において、「企業向け(規模別)」、「個人向け」の貸出運営スタンスをどのように変化させたか。」を主要銀行にヒアリングしたもの。(「積極化」とした回答金融機関構成比+0.5×「やや積極化」とした回答金融機関構成比)―(「慎重化」とした回答金融機関構成比+0.5×「やや慎重化」とした回答金融機関構成比)
*6) 規模別貸出残高=四半期ごとに国内銀行による規模別貸出金残高から前年同期比を算出、規模別貸出件数=半期ごとに国内銀行による規模別貸出件数から前年同期比を算出
*7) 営業利益ROA=営業利益÷総資産
*8) 平均借入金利とは、有利子負債(銀行等、保険、ノンバンク、個人借入等を含む借入金、社債、CP 等を含む総額)に対する支払利息の割合のことを言い、一般的な金利とは異なることに留意。
*9) 借入金依存度=金融機関借入額÷総資産
*10) ICR(営業利益ベース)=営業利益÷支払利息
*11) ROA(営業利益ベース)=営業利益÷総資産
*12) 利鞘設定D.I.=「拡大」と回答した金融機関構成比 ―「縮小」と回答した金融機関構成比。「過去3ヶ月間において、「企業向け」のうち、格付別(上位・中位・下位)にみた利鞘設定をどのように変化させたか」を主要銀行にヒアリングしたもの。
*13) 各業種の企業分布は全規模(大企業、中堅企業、中小企業合算)ベース
大臣官房総合政策課 倉又 廉/本野 大幹/大村 直人/横山 修平/前 大臣官房総合政策課 日沖 駿介
1.はじめに
本稿は、中長期的な金融環境の変遷について述べた上で、企業財務がどのように変容してきたかについて論じる。
帝国データバンクのアンケート調査によれば、金融環境の変遷は、支払利息の増減や物価の変動などプラスの面とマイナスの面の両方があるように見受けられる。具体的には、企業の債務償還能力に与える影響に着目した。分析に用いたデータおよびベンチマークについて、データは法人企業統計の個票データ等を、ベンチマークは営業利益を支払利息で割ったものであるインタレスト・カバレッジ・レシオ(以下「ICR」という。)を用い*1、短期的な利払い能力を確認し、また中長期的な借入力を分析するために借入金を総資産で割った借入金依存度を見ていく。なお、企業財務は個別性がかなり高いため、金融環境の変化より企業財務全体にどういう影響があるかということを包括的に捉えることは難しいのであるが、企業規模別・産業別に分析することで、個別性を一定程度考慮している。
2.金融環境の長期的な変遷
まず、金融環境の長期トレンドについて説明する。貸出約定金利の動向については、中小企業の主な借入先と考えられる地域金融機関の貸出金利は量的・質的金融緩和のもと、長期短期ともにこれまで低下傾向で推移してきた。近年、中長期の国債金利は上昇しているが、金融機関の貸出態度の指標である長期貸出平均約定金利への影響は限定的であるということが示唆されている。また、2024年3月のマイナス金利解除の前後では、住宅ローンや中小企業向け融資の基準金利となる短期プライムレート(短プラ)について、足元では変化がなかったことが、日銀より説明されている*2。
資金繰り判断DI*3については、リーマンショック及びコロナ禍において二度悪化したものの、足元は緩和基調で推移していることが確認できる。貸出態度判断DI*4は、リーマンショック時から緩和傾向にあるものの、足元については、緩和基調のトレンドに鈍化が見られる。また、貸出運営スタンスDI*5は振れを伴いつつも積極化基調で推移をしてきたものの、コロナ禍後の動きは積極化基調の動きが鈍化していることが確認できる。コロナ禍において実施された実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)等への対応が一服したほか、物価高や人手不足による経営環境の不透明感の高まりが背景である可能性がある。また、銀行貸出残高・件数を企業規模別に見ると*6、コロナ禍においては貸出残高が増加していることが確認できるが、件数については特に中堅中小企業においてそれほど伸びていない。また、足もとは大企業・中小企業について貸出しの残高・件数ともに増加基調にあることが確認できる。
以上のことから、日本の長期的な金融環境は、リーマンショックやコロナ危機等により振れを伴いつつも、総じて緩和的に推移している。
3.金融環境の変化によるICRへの影響の分析
ここからは、ICRを用いた長期推移の分析を行う。図表3 ICRの長期推移は、法人企業統計の2003年度から2022年度までの個票データを用いて、業種および企業規模別に営業利益を支払利息で割って求めたICRの長期推移を表したものである。面の色分けで年度ごとのパーセンタイル値を表しており、例えば90パーセンタイル値であれば、上位10%に位置する企業の値を示している。なお、資本金10億円以上を大企業、1億円以上10億円未満を中堅企業、1億円未満を中小企業と定義している。
まず、ICRの長期的な推移について、大企業は業種ごとに程度の差は見られるものの、2003年度から2022年度にかけてリーマンショックやコロナ禍においては一時的に低下しているが、長期的に見ると上昇方向で推移している。特に90パーセンタイル値の企業群については上昇幅が各業種ともに大きくなっていることが確認できる。中堅企業においては、ICRの水準自体は大企業に比べれば低いといえるが、長期的に上昇方向に推移をしている点、また上位層の拡大幅が大きくなっている点については、大企業と同様の傾向となっている。
他方で、中小企業については、中央値はいずれの業種も0から1程度と低い水準となっている。長期的な推移を見ても中央値に大きな変動はない。一方、各業種における90パーセンタイル値の企業群における上昇幅は、業種によって程度の差が大きく生じていることを確認できる。
次に営業利益が赤字、すなわちICRが0より小さい値になっている企業数の構成比を見てみよう。業種ごとに企業規模別の3つに分けて0未満の構成比を示している。いずれの業種についても、傾向として中小企業、中堅企業、大企業の順にICRが0未満の企業割合が大きくなっている。特にリーマンショックやコロナ禍においては0未満の企業数が各業種ともに拡大していることが確認できる。しかしながら、長期的にICRが0未満の企業の割合が縮小しているような動きは確認できない。
これらのことから、緩和的な金融環境の長期的なトレンドに沿って、大企業、中堅企業、一部の中小企業を中心に企業財務は改善してきたものの、企業財務が著しく悪化していた企業への影響は限定的であったことが示唆される。
次に、ICRが、営業利益ROA/(借入金利×レバレッジ比率)として表すことができることを活用し、当該3要素がICRの変動にどの程度影響したかを確認していく。
まず営業利益ROA*7について、2006年度と2022年度の企業分布を業種別で比較した。全体を見ると、多くの業種において営業利益ROAが2006年度比概ね横ばいで推移している。業種別に見ると、建設業と卸業・小売業で若干の改善が見られること、製造業(素材)、製造業(加工)、不動産業、運輸業・郵便業、などの業種で若干の悪化が見られる。
続いて法人企業統計の平均借入金利*8の推移について説明する。全ての業種において低下方向で推移していることが確認できる。業種による差はあるものの、平均借入金利の低下幅は中央値で見ると概ね0.5から1.0%程度となっている。
借入金依存度*9についても、いずれの業種においても低下方向で推移していることが確認できる。特に借入金依存度が高い業種としては不動産業、運輸業・郵便業、サービス業などが挙げられる。
続いて、ICRに対する各要素の寄与度分解を見ていく。伸び率の寄与度を対数化により試算したものであり、2022年度は2006年度に比べて各業種においてICRが改善している。いずれの業種においても平均借入金利の低下が営業利益ICR*10の上昇に大きく寄与していることが見て取れる。他方で、運輸業・郵便業については他の業種に比べて営業利益ROA*11の悪化幅が大きく、ICRの押し下げ要因になっている。
ここからは過去2006年前後に資金繰り判断DI等の金融環境に関する指標がピークを迎えた後に、企業貸出などにどのような影響があったのかを確認する。まず貸出平均約定金利について、短期プライムレートや国債金利などは上昇が見られるが、貸出平均金利は、短期長期ともにやや強含む動きが見られるものの大きな上昇は確認できない。
銀行貸出への影響として、利鞘設定DI*12は上位中位の格付で上昇が見られる。また、貸出残高と貸出件数については、大企業・中堅企業において緩やかな景気回復があった中、リスクテイク機能を回復した金融機関が前向きな融資姿勢に転換したことで貸出残高貸出件数ともに上昇傾向にあることが見て取れる。ただし、中小企業については変化が相対的に小さいことも確認できる。
続いて、2005年から2007年の業種別のヒストグラムの推移を確認する*13。図表11 企業財務への短期影響のそれぞれの上段は、平均借入金利のヒストグラムの推移、下段がICRのヒストグラムの推移となっている。例として製造業(素材)を見ると、上段の平均借入金利は、2007年にかけて0%から1%あたりの構成比が減少しているのに対して、1%から2%程度の金利の構成比が増加しており、全体として企業分布が上昇方向に推移したことが伺える。一方で下段のICRについては、特段大きな変動は確認できない。他の業種においても同様の傾向が見られ、2006年から2007年にかけて企業の借入金利水準に一定の上昇圧力が生じたことが示唆されるものの、景気回復等を背景とした企業の財務体質の改善により、短期的な利払い能力(ICR)への影響は限定的であった可能性があると考えられる。
4.おわりに
以上から、日本の長期的な金融環境は、リーマンショックやコロナ危機等により振れを伴いつつも、総じて緩和的に推移しており、長期的な傾向では企業財務は改善傾向にあることが読み取れる。他方で、コロナ禍等を経て利益水準の低下の傾向が見受けられる「不動産業」、「運輸業・郵便業」、「サービス業」や、相対的に借入金依存度が高く、利益水準が低位である「中小企業」について、今後の金融環境の変遷における影響を注視する必要がある。
図表1 金融環境の動向
図表2 企業借入及び銀行貸出の動向
図表4 ICRが0未満の企業数の構成比
図表5 営業利益ROAの推移
図表6 平均借入金利の推移
図表7 借入金依存度の推移
図表8 ICR(営業利益ベース)の寄与度分解(2006⇒2022年度)
図表9 貸出平均約定金利への短期影響
図表10 銀行貸出への影響
*1) 厳密にはICR=(営業利益+受取利息・配当金等)÷(支払利息、社債利息等)だが、本分析においてはデータ制約の都合上、ICR=(営業利益÷支払利息)と定義している。
*2) 令和6年4月2日、第3回経済財政諮問会議議事要旨を参照。
*3) 資金繰り判断D.I.=「楽である」とした回答金融機関構成比 ―「苦しい」とした回答金融機関構成比
*4) 貸出態度判断D.I.=「緩い」とした回答金融機関構成比 ―「厳しい」とした回答金融機関構成比
*5) 貸出運営スタンスD.I.=「過去3ヶ月間において、「企業向け(規模別)」、「個人向け」の貸出運営スタンスをどのように変化させたか。」を主要銀行にヒアリングしたもの。(「積極化」とした回答金融機関構成比+0.5×「やや積極化」とした回答金融機関構成比)―(「慎重化」とした回答金融機関構成比+0.5×「やや慎重化」とした回答金融機関構成比)
*6) 規模別貸出残高=四半期ごとに国内銀行による規模別貸出金残高から前年同期比を算出、規模別貸出件数=半期ごとに国内銀行による規模別貸出件数から前年同期比を算出
*7) 営業利益ROA=営業利益÷総資産
*8) 平均借入金利とは、有利子負債(銀行等、保険、ノンバンク、個人借入等を含む借入金、社債、CP 等を含む総額)に対する支払利息の割合のことを言い、一般的な金利とは異なることに留意。
*9) 借入金依存度=金融機関借入額÷総資産
*10) ICR(営業利益ベース)=営業利益÷支払利息
*11) ROA(営業利益ベース)=営業利益÷総資産
*12) 利鞘設定D.I.=「拡大」と回答した金融機関構成比 ―「縮小」と回答した金融機関構成比。「過去3ヶ月間において、「企業向け」のうち、格付別(上位・中位・下位)にみた利鞘設定をどのように変化させたか」を主要銀行にヒアリングしたもの。
*13) 各業種の企業分布は全規模(大企業、中堅企業、中小企業合算)ベース