主計局総務課主計官 松本 圭介/企画係長 三浦 駿人/前 企画係 片岡 龍之介
1.はじめに
我が国経済が、デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンスを迎えている中、令和7年度予算では、日本経済を「成長型の新たな経済ステージ」へと移行させるため、政府一丸となって、大胆な政策展開を図ることが求められている。
持続的・構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大、少子化対策・こども政策の抜本的強化を含めた新たなステージへの移行に向けた取組の加速、さらには、防衛力の抜本的強化を始めとした我が国を取り巻く環境変化への対応など、我々が挑戦すべき重要な政策課題は多岐に渡るが、これらの分野に必要な予算が重点的に振り向けられるよう、全体を通じて、メリハリ付けを意識しながら、予算編成に臨むことが重要である。
また、「経済財政運営と改革の基本方針2024」*1(以下「基本方針2024」という。)において、「歳出構造を平時に戻すとともに、成長と分配の好循環を拡大させる」とされており、令和7年度予算においては、我が国が直面する重要かつ困難な課題に的確に対応しつつ、これまでの歳出改革努力を継続していくことにより、経済成長と財政健全化の両立に向けた取組を着実に進めていくことが不可欠である。
2.令和7年度概算要求基準の基本的な考え方
令和7年度予算においては、「基本方針2024」に基づき、経済・財政一体改革を進めながら、歳出全般にわたり、施策の優先順位を洗い直し、無駄を徹底して排除しつつ、予算の中身を大胆に重点化していく方針である。
このような基本的な考え方の下、「令和7年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」*2(以下「令和7年度概算要求基準」という。)が本年7月29日に閣議了解されたところである。
令和7年度概算要求基準の大要は、以下のとおりである。
1)地方交付税交付金等、年金・医療等、防衛力整備計画対象経費、裁量的経費及び義務的経費については、前年度までの仕組みと同じとし、防衛力整備計画対象経費については、「防衛力整備計画」*3を踏まえ、所要の額を要求することとしている。「こども未来戦略」*4で示された「こども・子育て支援加速化プラン」の施策については、同戦略に基づいて要求することとしている。
2)その上で、「基本方針2024」における「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という方針に則る観点から、「基本方針2024」及び「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画2024改訂版」*5(以下「新しい資本主義実行計画2024改訂版」という。)等を踏まえた重要政策については、「重要政策推進枠」として別途要望を可能としているほか、物価高騰対策、賃上げ促進環境整備対応等を含めた重要政策については、必要に応じて、「重要政策推進枠」や事項のみの要求も含め、適切に要求・要望を行い、予算編成過程で検討することとしている。
令和7年度概算要求基準のイメージは下図 令和7年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針についてのとおりであり、その具体的内容については3.以降で説明する。
3.要求・要望について
(1)年金・医療等
年金・医療等に係る経費については、前年度当初予算額に、高齢化等に伴ういわゆる自然増(4,100億円)を加算した範囲内で要求することとしている。
年金・医療等に係る経費について、「新経済・財政再生計画 改革工程表」及び「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」に沿って着実に改革を実行していくことを含め、合理化・効率化に最大限取り組み、「基本方針2024」等における「予算編成においては、2025年度から2027年度までの3年間について、…これまでの歳出改革努力を継続する。その具体的な内容については、日本経済が新たなステージに入りつつある中で、経済・物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程において検討する」との考え方を踏まえつつ、その結果を令和7年度予算に反映させることとしている。
(2)防衛力整備計画対象経費
「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」(令和5年法律第69号)第1条第3項に規定する防衛力整備計画対象経費については、「防衛力整備計画」を踏まえ、所要の額を要求することとしている。
(3)地方交付税交付金等
地方交付税交付金等については、「経済・財政新生計画」との整合性に留意しつつ、要求することとしている。
(4)義務的経費
義務的経費については、前年度当初予算額の範囲内で要求することとしている。その上で、聖域を設けることなく抜本的な見直しを行い、可能な限り歳出の抑制を図ることとしている。
なお、義務的経費を削減した場合には、同額を裁量的経費に振り替えて要求できる仕組みとしている。
(5)その他の経費
その他の経費(裁量的経費)については、前年度当初予算額の90%(「要望基礎額」)の範囲内で要求することとしている。
(6)重要政策推進枠
令和7年度予算においては、持続的・構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大、少子化対策・こども政策の抜本的強化を含めた新たなステージへの移行に向けた取組の加速、防衛力の抜本的強化を始めとした我が国を取り巻く環境変化への対応など、重要政策課題に対応する等のため、「基本方針2024」及び「新しい資本主義実行計画2024改訂版」等を踏まえた重要な政策について、「重要政策推進枠」を設け、前年度当初予算におけるその他の経費に相当する額と要望基礎額の差額に100分の300を乗じた額及び義務的経費が(4)の額を下回る場合にあっては、当該差額に100分の300を乗じた額の合計額の範囲内で要望できる仕組みとしている。
4.予算編成過程における検討事項
令和7年度予算編成過程においては、施策の安定性・継続性にも留意しつつ、施策・制度の抜本的見直しや各経費間の優先順位の厳しい選択を行うことにより真に必要なニーズにこたえるため精査を行う。要求・要望は賃金や調達価格の上昇を踏まえて行うものとし、予算編成過程において適切に反映することとしている。
その上で、物価高騰対策、賃上げ促進環境整備対応等を含めた重要な政策については、必要に応じて、「重要政策推進枠」や事項のみの要求も含め、適切に要求・要望を行うこととし、予算編成過程において検討を加え、「基本方針2024」で示された方針を踏まえ措置することとしている。
*1) 令和6年6月21日閣議決定。
*2) 本文は、以下の財務省ウェブサイトから参照可能。
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/fy2025.html
*3) 令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定。
*4) 令和5年12月22日閣議決定。
*5) 令和6年6月21日閣議決定。