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国際物流と貿易の未来を考える「学生フォーラム」

関税局関税課税関調査室


2024年3月11日、財務省関税局は、国際物流と貿易の未来を考える「学生フォーラム」を東京税関本関において開催し、参加した学生が、国際物流と貿易分野に係るテーマを設定しグループ研究した内容を発表しました。
国際物流、貿易や税関行政に係る認知度・理解度の向上を目的とした広報事業である本フォーラムは、2023年3月7日に税関発足150周年事業として初めて開催し、今回が2回目の開催となりました。
今回、フォーラムに参加したチーム・学生は、20チーム・78名であり、前回の16チーム・55名を超える多くの学生からの参加登録があったため、初めての試みとして予選会を開催し、本選で発表する10チームを選出しました。
フォーラム当日は、発表する10チームと予選会参加の8チームから67名の学生が参加しました。全体としては、学生に加え、審査員、学生の指導教授、フォーラムの共催団体・協力団体及び関税局若手職員なども含め約130名が参加しました。
本誌では、フォーラム当日の模様等について紹介します。

1. フォーラム当日の模様(2024年3月11日)

(1)職場見学(午前)

東京税関に集合した学生は、オリエンテーション終了後、2グループ(バス4台)に分かれて、職場見学会場である東京税関東京外郵出張所とフェデックス エクスプレス(通関業者・保税倉庫業者)に向かいました。
東京外郵出張所では、国際郵便物の税関検査の流れ、検査機器や発見された知的財産侵害物品などを見学しました。
フェデックス エクスプレスでは、海外から到着した航空貨物の税関への輸入申告業務や倉庫に搬入後、輸入許可された航空貨物がコンベアで自動仕分けされ、国内に配送されていく様子を見学しました。
国際郵便物や航空貨物を取り扱う現場の様子を見学した学生が、税関職員や事業者の職員に対して積極的に質問するなど、関心の高さが窺えました。


(2)研究発表会(午後)

研究発表会の冒頭、江島関税局長が共催団体を代表して挨拶し、「研究活動やフォーラムでの発表を通じて、現下の課題や将来像について学び合うとともに、税関業務や通関の実態について理解を深め、税関職員や共催団体・協力団体の職員と学生の皆さんとの交流を通じて、楽しく学ぶことを目的として企画した。発表後には交流会や懇親会も予定しており、学校の垣根を越えて参加者同士の交流を深めていただき、皆さんにとって有意義で思い出に残るフォーラムとなることを期待している。」と述べました。
続いて、審査員長の長谷川聰哲 中央大学名誉教授を始めとする審査員の方々に挨拶をいただき、メインイベントの研究発表会に移りました。研究発表は12分間、その後、審査員との質疑応答を3分間とし、各チームは予め用意したプレゼンテーション資料をスクリーンに投影し、工夫を凝らした発表を行いました。
発表のテーマは、サプライチェーン強靭化、越境EC(通販貨物)、港湾、チーズの貿易自由化など分野は様々で、いずれも学生ならではの柔軟な着眼点を持ち、興味を引くテーマについて深く研究されており、非常にレベルの高い発表となりました。近年、税関分野でも注目されている時宜を捉えたテーマや、鋭い提案など、学生フォーラム事務局としても学生の皆さんの調査能力や研究能力の高さに驚かされました。
また、審査員からの鋭い質問にも、研究結果を元に自分の思っていることを堂々と回答していました。


コラム

昨年の反省点、共催・協力団体からいただいた助言等を踏まえ、審査員6名のうち学識経験者を3名としました(前回は1名)。審査員長は、前回に引き続き、中央大学 長谷川聰哲名誉教授にお願いし、新たに青山学院大学 岩田伸人名誉教授((公財)日本関税協会 理事、日本貿易学会 所属)、慶應義塾大学 遠藤正寛教授(日本国際経済学会 所属)に審査員をお願いしました。
また、共催団体より、(一社)日本通関業連合会 岡藤正策会長、輸出入・港湾関連情報処理センター(株) 平松均代表取締役社長に審査員をお願いしたほか、財務省関税局 奈良井功総務課長も審査員として参加しました。


(3)若手職員との交流会

学生とより年齢の近い関税局の若手職員で構成された「かもめプロジェクトメンバー(※)」がフォーラムの準備段階から関与し、フォーラム当日のロジ面のサポートや学生との交流会に参加しました。特に交流会の内容の企画立案を担当し、学生に有意義な時間を過ごしてもらうためにはどのような内容とすれば良いか等、検討しました。
当日は、「かもめプロジェクトメンバー」及び輸出入・港湾関連情報処理センター(株)の若手職員が、事前に学生から聞き取った質問事項を活用して、座談会という形で学生との交流会を実施しました。学生の皆さんは、若手職員の職場での経験や、現在の職業を選んだ経緯などを興味深く聞いていました。
(※)関税局内(関税中央分析所・税関研修所を含む。)の若手職員から意見を求め、柔軟な発想により様々な事業を企画・運営することを目的として設置。


(4)結果発表

審査の結果、最優秀賞に輝いたのは「サプライチェーン強靭化に向けた輸入統計のあり方」をテーマに発表した亜細亜大学国際関係学部のチーム。続いて、優秀賞は「チーズの貿易自由化と生産者保護」をテーマに発表した中央大学経済学部のチームと、「日本の水素技術における海外市場開拓の可能性」をテーマに発表した津田塾大学総合政策学部のチームとなりました。
特別賞として、「日本の弓道文化を世界へ」をテーマに発表した福知山公立大学地域経済学部のチーム、残りの発表チームには敢闘賞が授与されました。


【参考】入賞チームの発表内容

  • 最優秀賞
  • 亜細亜大学国際関係学部(チーム名「久野ゼミ」)
     パンデミックや地政学的リスクによる、国外供給網途絶・突発的な物資の供給不足に対応するため、サプライチェーンの強靱化の必要性を提唱。現状の課題から、輸入統計の公開のリアルタイム化・特定重要物資のHSコードの細分化を行うことで、サプライチェーンの強靱化が達成できると説明。
  • 優秀賞
  • 中央大学経済学部(チーム名「とろけるチーズ班」)
     多くの国からチーズの輸入の自由化が進展しているにもかかわらず、EUからの輸入だけが大きく増加している理由、輸入量が増加しているにもかかわらず、国内生産が減少していない要因について説明。

  • 津田塾大学総合政策学部(チーム名「ゆきのこ」)
    近年、脱炭素とエネルギー安定供給とを両立するエネルギーとして注目を集める水素エネルギーについて、現状・課題を分析し、課題を踏まえた提案を提示し、今後の実用化について説明。
  • 特別賞
  • 福知山公立大学地域経済学部(チーム名「林として弓」)
    弓道で使用される弓具は、動物の羽や皮を使用する製品が多く、各国の輸入規制によって購入できないものもある。日本最古の武道である弓道を世界へ発信するにあたっての、各国の輸入規制と品目分類の課題について説明。


コラム

優勝チームからは、所属大学HPの中で「研究発表会に参加するにあたり強い想いを抱いて、研究と発表準備を進めてきた。その過程では、リサーチを進め、その成果を人前で発表することの楽しさと難しさ、そして最後まであきらめず改善し続けることの大切さを改めて学んだ。様々な形で御支援をいただいた主催者の皆さまや指導教授に心から感謝申し上げる。」とのコメントをしていただきました。


2. フォーラム全般を通して

フォーラムの開催は、今回が2回目であり、伸びしろの多いイベントです。学生フォーラム事務局としても前回の開催状況を確認しながら試行錯誤しつつ、より良いフォーラムとするために尽力してきました。第1回と比較して開催規模が大きくなっており、準備作業において困難な場面もありましたが、学生の皆さんからは、「非常に有意義なフォーラムで参加して良かった」、「国際物流や貿易について考える良い契機になった」、「自分の進路を考えるヒントをもらった」などの声を聞くことができ、改めてフォーラムの反響の大きさを実感しました。
今後、フォーラムの知名度を上げていくためには、継続して開催し、地道な広報活動や関係団体・教授の皆さまの紹介などを通じた周知が重要です。
今回のフォーラムは共催団体・協力団体、審査員、学生、教員の皆さんの協力なくしては成功できず、皆さまの御助力に支えられて開催できたフォーラムだと感じています。ご参加いただいた皆様には本誌をお借りし、深く感謝申し上げます。


コラム

フォーラム開催の約半年前(2023年9月)に参加募集チラシを税関HPへ掲載し、X(旧Twitter)も活用しつつ、また、個別に前回参加した学校の教授の皆さんや日本貿易学会及び日本国際経済学会の協力もいただきながら参加者募集を行いました。
フォーラムへの参加を希望する学生を対象としたオンライン説明会の開催、研究を進める中での学生からの相談は、随時受け付け対応しました。
また、事前の職場見学会として、共催団体・協力団体からの希望を募り、輸出入・港湾関連情報処理センター(株)、(公財)日本関税協会のパートナーとして知的財産の保護に積極的に取り組んでいる事業者を見学していただきました。
是非、皆さまの周りの方々にも同フォーラムを紹介いただけますと幸いです。