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特集 令和6年度社会保障関係予算のポイント

主計局主計官(厚生労働係、社会保障総括担当) 端本 秀夫

主計局主計官(厚生労働、こども家庭係担当)  松本 圭介


1.令和6年度社会保障関係費の全体像

令和6年度の社会保障関係費は、前年度(36.9兆円程度)から+8,500億円程度の37.7兆円程度となった。経済・物価動向等を踏まえつつ、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分におさめる方針に沿って計上(年金スライド分を除く高齢化による増は+3,700億円程度、年金スライド分の増は+3,500億円程度、消費税増収分を活用した社会保障の充実等による増は1,200億円程度)。
※ 高齢化による増にカウントされない、65歳未満の人口の減少に伴う社会保障関係費の減は、▲700億円程度(医療:▲200億円程度、保育給付等:▲500億円程度)


2.令和6年度診療報酬・薬価等改定

診療報酬改定については、現場で働く幅広い方々の賃上げとして、令和6年度にベア2.5%(定期昇給分を入れれば4.0%)、令和7年度にベア2.0%(同3.5%)を実現するための措置を講ずる(改定率+0.89%程度(*))。また、財務局等による機動的調査で判明した診療所の良好な経営状況等を踏まえ、診療所を中心に管理料や処方箋料等の再編等による効率化・適正化を行う(改定率▲0.25%)。こうしたメリハリのある改定を行うことで、改定率を+0.88%(国費822億円)とする。
* 看護職員、リハビリ専門職等の医療関係職種の賃上げ:+0.61%
40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げ:+0.28%程度
※ 国費822億円のうち、254億円は消費税財源(社会保障の充実)により対応。
薬価等については、イノベーションの更なる評価や後発医薬品等の安定供給確保に対応しつつ、市場実勢価格を反映する等により▲1.00%(国費▲1,202億円)とする。


3.令和6年度介護報酬、障害福祉サービス等報酬改定

(介護報酬改定)
介護報酬改定については、介護現場で働く方々の処遇改善を着実に行いつつ、サービス毎の経営状況の違いも踏まえたメリハリのある対応を行うことで、改定率は全体で+1.59%(国費432億円)とする。
上記+1.59%のうち、介護職員の処遇改善分として+0.98%を措置(令和6年度にベア2.5%、令和7年度にベア2.0%を実現するために必要な水準)。その上で、賃上げ税制を活用しつつ、介護職員以外の処遇改善を実現できる水準として、その他の改定率+0.61%を措置。
このほか、改定率の外枠として、処遇改善加算の一本化による賃上げ効果や、光熱水費の基準費用額の増額による介護施設の増収効果として+0.45%相当の改定が見込まれ、合計すると+2.04%相当の改定となる。
※ 国費432億円のうち、245億円は消費税財源(社会保障の充実)により対応。後述の第1号保険料の見直しなどを財源として活用。
(障害福祉サービス等報酬改定)
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定については、障害福祉分野の人材確保のため、介護並びの処遇改善を行うとともに、介護との収支差率の違いも勘案しつつ、新規参入が増加する中でのサービスの質の確保・向上を図る観点から、経営実態を踏まえたサービスの質等に応じたメリハリのある報酬設定を行うことにより、改定率は全体で+1.12%(国費162億円)とする。なお、改定率の外枠で処遇改善加算の一本化の効果等があり、それを合わせれば改定率+1.5%を上回る水準となる。


4.こども・子育て政策の抜本強化

「こども未来戦略」(令和5年12月22日閣議決定)において、予算規模3.6兆円(国・地方合計)に及ぶ政策強化の具体策である「加速化プラン」と、それを安定的に支える財源確保の枠組みを決定。スピード感を持って実行に移し、今後3年間(令和8年度まで)にその大宗を実施していく方針。
令和6年度予算においては、歳出改革や既定予算の最大限の活用により財源を確保しつつ、以下の項目を中心に施策の充実を図り、「加速化プラン」3.6兆円のうち1.3兆円程度(約3割強)を実現。

(1)「加速化プラン」のスピード感ある実行ア 児童手当の抜本的拡充

3,558億円(拡充分)(総額:1兆5,246億円)
(一部、事業主拠出金)【年金特別会計】
(注)公務員分除く
  • 所得制限の撤廃、高校生年代までの支給期間の延長、多子加算について第3子以降3万円(※)、とする抜本的拡充を行う。
 ※ 多子加算のカウント方法については、現在の高校生年代までの扱いを見直し、大学生に限らず、22歳年度末までの上の子について、親等の経済的負担がある場合をカウント対象とする。
  • これら、抜本的拡充のための所要の法案を今期通常国会に提出し、令和6年10月分から実施する。その際、支払月を年3回から隔月(偶数月)の年6回とし、拡充後の初回支給を令和6年12月とする。
  • 拡充後の財源構成については、令和8年度から創設されるこども・子育て支援納付金(仮称)を財源の一つとして位置づけることとし、現行制度における財源構成も踏まえつつ、以下のとおりとする(令和10年度以降の本則ベース)。
      • 3歳未満被用者:支援納付金3/5、子ども・子育て拠出金2/5、
      • 3歳未満非被用者:支援納付金3/5、公費2/5(国4/15、地方2/15)、
      • 3歳以上被用者・非被用者:支援納付金1/3、公費2/3(国4/9、地方2/9)
  • 支援納付金充当分(3,476億円)について、支援納付金が満年度化するまでの間の財源不足には、必要に応じて、「こども・子育て支援特例公債」(仮称)を発行して充てることとし、令和6年度予算においては、インボイス制度導入に伴う消費税増収相当額の活用等により、発行額は2,219億円。

イ 妊娠・出産時からの支援強化

  • 出産・子育て応援交付金
    569億円(5年度:295億円)〔満年度化〕
  • 伴走型相談支援
    56億円(5年度:50億円)
    • 妊娠時から出産・子育てまで一貫した伴走型相談支援と、妊娠届出・出産届出を行った妊婦等に対する経済的支援(計10万円相当)を一体として実施。
  • 妊婦に対する遠方の分娩取扱施設への交通費及び宿泊費支援
    5億円(新規)
    • 遠方の分娩取扱施設で出産する必要がある妊婦に対して、当該分娩取扱施設までの移動にかかる交通費及び宿泊費の助成を行う。

ウ 幼児教育・保育の質の向上等【年金特別会計】

  • 4・5歳児の職員配置基準の改善 118億円(拡充分)
    • 制度発足以来75年間一度も改善されてこなかった4・5歳児の職員配置基準については、令和6年度から30対1から25対1への改善を図り、それに対応する加算措置を設ける。また、これと併せて最低基準の改正を行う。
  • 保育士・幼稚園教諭の処遇改善
    764億円(拡充分)(一部、事業主拠出金)
    • 民間給与動向等を踏まえた更なる保育士等の処遇改善として、人事院勧告を踏まえた公定価格の引上げを実施(人件費の改定率は+5.2%)。
※ 令和5年度予算における改定率は+2.1%(所要額:305億円)
  • こども誰でも通園制度(仮称)
 (5年度補正91億円)
    • 本格実施を見据えた試行的事業について、令和5年度補正予算で措置し、令和5年度からの開始も可能とする。
    • 令和8年度の本格実施後は、支援納付金を財源の一つとして位置づけることとし、その財源構成については、本制度が現物給付であり、地域によって提供体制の整備状況が異なることから、類似する現行制度も踏まえ公費により一部を負担し、支援納付金1/2・公費1/2(国1/4・都道府県1/8・市町村1/8)とする(令和10年度以降の本則ベース)。

エ 子ども・子育て拠出金(事業主拠出金)の使途拡大【年金特別会計】

「加速化プラン」を支える財源のうち既定予算の活用として、事業主拠出金の最大限の活用を図ることとし、現行料率(0.36%)の範囲内で使途を拡大。
  • 放課後児童クラブの常勤職員の配置改善
    173億円(新規)
    • 放課後児童クラブの安定的な運営を図る観点から運営費において、現行の補助基準額に加え、「常勤の放課後児童支援員を2名以上配置した場合」の補助基準額を創設。
  • 病児保育事業の基本単価分の引上げ
    8億円(拡充分)
    • 病児保育に係る保育士等の職務の特殊性等を踏まえ、基本分単価を引き上げ。
※ 0~2歳児に係る保育給付について、人事院勧告を踏まえた処遇改善に必要な額の半分に対応 345億円(上記の保育士・幼稚園教諭の処遇改善の内数)

オ 多様な支援ニーズへの対応 526億円(拡充分)

こどもの貧困、児童虐待防止、障害児・医療的ケア児支援など多様な支援ニーズを有するこども・子育て世帯への支援について、支援基盤や自立支援の拡充に重点を置いて対応を強化するとともに、今後のニーズの増大にも対応し、必要な支援を確実に提供。
※ 令和5年度補正予算において、学習支援や食事支援などを前倒しで措置(84億円)
(主な施策)
  • 児童扶養手当の拡充
    35億円(拡充分)
    • 所得制限の見直し(年収ベース・こどもが1人の場合)
      • 全部支給の所得限度額:160万円→190万円
      • 一部支給の所得限度額:365万円→385万円
    • 多子加算の見直し
      • 第3子以降の加算額(現行6,250円)を第2子の加算(10,420円)と同額まで引き上げる。(注)加算額は、令和5年度の全部支給の場合の額
※ 給付額について、物価上昇に応じて適切に引き上げる。
※ 児童扶養手当の受給に連動した支援策(給付金や貸付など)について、所得が上がって手当の受給対象から外れた場合でも、1年間をめどに利用可能にする。
  • 改正児童福祉法(令和6年4月施行)に基づく政策強化
    73億円(拡充分)
    • こども家庭センターの全国展開による市町村の包括的な相談体制の整備
    • 里親支援センターの創設による里親等支援の強化 等
  • こども若者シェルターの確保
    2億円(新規)
    • 虐待等で家庭等から孤立したこども・若者のための安全な居場所を確保し、相談支援等を実施
  • こどもの補装具費支給制度の所得制限の撤廃
    4億円(拡充分、厚生労働省計上)
    • 所得制限を撤廃し、現在、全額自己負担となっている年収1,200万円以上の世帯も支援の対象とする。

カ 共働き・共育ての推進

  • 育児休業給付の増
    8,555億円(5年度:7,625億円)【労働保険特別会計】
    • 男性育休の取得促進等に伴う育児休業給付の支給額の増加
  • 育児休業給付を支えるための財政基盤の強化
    1,069億円(5年度:95億円)
    • 国庫負担について、令和6年度から現行の1/80から本則の1/8に引き上げる
※「社会保障の充実」枠の一部を財源として充当
    • 保険料率は、当面は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の保険財政の悪化に備えて、本則料率を令和7年度から0.5%に引き上げる改正を行うとともに、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整する仕組みを導入
  • 育児休業を支える体制整備を行う中小企業への支援
    175億円(5年度:97億円)【労働保険特別会計】
    • 業務を代替する周囲の社員への応援手当の支給に関する助成を強化する(育児休業中の手当支給:最大125万円)
※ 両立支援等助成金(育休関連のコース)


(2)こども家庭庁予算

令和6年度のこども家庭庁予算52,832億円に育児休業給付の令和4年度からの増分(+1,255億円)を加えた額は、令和4年度のこども家庭庁予算(46,871億円)との比較で+7,216億円の増加(+15%)。
※ 「加速化プラン」を実施することにより、国のこども家庭庁予算(2022年度4.7兆円)は約5割増加すると見込まれる。(「こども未来戦略」(令和5年12月22日閣議決定))
※ こども家庭庁の下に、2025年度に、こども・子育て支援特別会計(いわゆる「こども金庫」)を創設し、既存の年金特別会計子ども・子育て支援勘定及び労働保険特別会計(育児休業給付)を統合しつつ、こども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進める。
令和6年度における社会保障関係費等の歳出の目安の下での歳出改革による公費節減効果は国・地方で0.19兆円程度(令和5年度は0.18兆円程度)。

(参考)「こども未来戦略」における実質的な社会保険負担軽減効果
「こども未来戦略」においては、「高齢化等に伴い、医療・介護の給付の伸びが保険料の賦課ベースとなる雇用者報酬の伸びを上回っており、このギャップにより、保険料率は上昇している。若者・子育て世帯の手取り所得を増やすためにも、歳出改革と賃上げによりこのギャップを縮小し、保険料率の上昇を最大限抑制する」としている。
こうした中、「加速化プラン」の財源として、既定予算の最大限の活用等を行うほか、歳出改革による公費節減及び支援金制度の構築により確保していくこととされている。
支援金については、「歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築する」とされており、所要の法律案を今期通常国会に提出予定。
「実質的な社会保険負担軽減効果」については、2023年度分及び2024年度分は合計0.33兆円程度となる。

5.全世代型社会保障の実現等

今般閣議決定された「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」や「改革工程表2023」等に沿って、以下の項目を中心に全世代型社会保障の実現等に向けて進めていく。

(1)働き方に中立的な社会保障制度等の構築

  • いわゆる「年収の壁」については、社会全体で労働力を確保するとともに、労働者自身も希望どおり働くことのできる環境づくりに向けて、当面の対応策である「年収の壁・支援強化パッケージ」を着実に実行する。また、「年収の壁」を意識せずに働くことが可能となるよう、制度の見直しに取り組む。


(2)医療制度改革

  • イノベーションの更なる評価等を行うため、長期収載品の保険給付の在り方の見直しとして、選定療養の仕組みを導入し、後発医薬品の上市後5年以上経過したもの又は後発医薬品の置換率が50%以上となったものを対象に、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とすることとし、令和6年10月より施行する。
  • 薬剤自己負担の見直し項目である「薬剤定額一部負担」「薬剤の種類に応じた自己負担の設定」「市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直し」について、引き続き検討を行う。

(3)介護制度改革

  • 第1号保険料に係る見直しについては、被保険者間の所得再分配機能を強化するため、国の定める標準段階の多段階化、高所得者の標準乗率の引上げ、低所得者の標準乗率の引下げを行う。その際、制度内での所得再分配機能に係る対応が強まることを踏まえ、低所得者の負担軽減に活用されている公費の一部(国費191億円)について、現場の従事者の処遇改善をはじめとする介護に係る社会保障の充実に活用する。
  • 利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直しについては、以下の内容につき、引き続き早急に、介護サービスは医療サービスと利用実態が異なること等を考慮しつつ、改めて総合的かつ多角的に検討を行い、第10期介護保険事業計画期間の開始(2027年度~)の前までに、結論を得る。
ア 利用者負担の「一定以上所得」(2割負担)の判断基準について、以下の案を軸としつつ、検討を行う。
(a)直近の被保険者の所得等に応じた分布を踏まえ、一定の負担上限額を設けずとも、負担増に対応できると考えられる所得を有する利用者に限って、2割負担の対象とする。
(b)負担増への配慮を行う観点から、当分の間、一定の負担上限額を設けた上で、(b)よりも広い範囲の利用者について、2割負担の対象とする。その上で、介護サービス利用等への影響を分析の上、負担上限額の在り方について、2028年度までに、必要な見直しの検討を行う。
イ アの検討にあたっては、介護保険における負担への金融資産の保有状況等の反映のあり方や、きめ細かい負担割合のあり方と併せて早急に検討を開始する。
  • 介護老人保健施設及び介護医療院の多床室の室料負担の見直しについては、介護給付費分科会における議論を踏まえ、一部の施設(介護老人保健施設においては「その他型」及び「療養型」、介護医療院においては「Ⅱ型」)について、新たに室料負担(月額8千円相当)を導入する。その上で、引き続き、在宅との負担の公平性、各施設の機能や利用実態等を踏まえ、更なる見直しを含め必要な検討を行う。
  • 全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)に基づき、給付と負担の在り方の不断の見直しの観点から、ケアマネジメントに関する給付の在り方や、軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方等について、第10期介護保険事業計画期間の開始までの間に(令和8年度予算編成過程等において)検討を行い、結論を得る。
  • 介護施設の人員配置基準の見直しについては、介護給付費分科会の議論を踏まえ、ICT機器の活用等により、ケアの質の確保や職員の負担軽減等が行われていると認められる介護付き有料老人ホームにおける人員配置基準を特例的に柔軟化することとされた。引き続き、その他の介護施設(特別養護老人ホーム等)についても、今後の実証事業によって、介護付き有料老人ホームと同様に、介護ロボット・ICT機器の活用等による人員配置基準の特例的な柔軟化が可能である旨のエビデンスが確認された場合は、期中でも、人員配置基準の特例的な柔軟化を行う方向で、更なる見直しの検討を行う。

(4)医療機関、介護施設等の経営情報の更なる見える化

  • 医療法人の経営情報に関するデータベースについて、医療法人の会計年度が原則4月から翌年3月までとされており、2024年3月に決算を迎える医療法人からの報告状況等を踏まえ、必要な対応について検討を行う。
  • 介護サービス事業者の経営情報に関するデータベースについて、2024年4月からの施行に向けて取り組むとともに、職種別の給与総額等について継続的に把握できるような対応について検討を行う。
  • 障害福祉サービス等事業者や、幼稚園・保育所・認定こども園等の経営情報に関するデータベースについても、速やかに検討を進め、必要な措置を講じる。

6.その他各歳出分野における取組

各歳出分野において、メリハリ付けを行いつつ、必要な予算を措置。

(1)医療

ア ドクターヘリの導入促進、ドクターカーの活用促進

   95億円(5年度:87億円)
    • ドクターヘリの運行に必要な経費を確保するとともに、ドクターカーの活用促進に向けた検討を行う。

イ 被用者保険への支援の拡充

   1,250億円(5年度:820億円)
    • 医療保険制度改革に際し、他の制度における企業負担を勘案して、令和6年度から特例的に、健康保険組合への支援を430億円追加。そのうち、企業の賃上げ努力に配慮した拠出金負担軽減補助に230億円、健康保険組合連合会が実施する高額医療交付金事業に対する財政支援の制度化に100億円、特別負担調整への国費充当の拡大に100億円を措置。


(2)介護

ア 地域支援事業の推進等

   1,804億円(5年度:1,933億円)
    • 地域包括ケアシステムの実現に向けて、高齢者の社会参加・介護予防に向けた取組、配食・見守り等の生活支援体制の整備、認知症の人への支援の仕組みづくり、在宅医療と介護の連携等を一体的に推進。
    • 直近の執行実績等を踏まえ、予算を縮減。
※ 今後、高齢者の地域における自立した日常生活の支援や社会参加を促進する観点から、介護予防・日常生活支援総合事業の充実を図るための見直しを検討。

イ 地域医療介護総合確保基金(介護分)

   524億円(公費)(5年度:734億円(公費))
    • 介護施設の整備や介護人材の確保等に向けて必要な事業を支援。
※ 令和5年度補正予算において、別途、介護分野へのICT・ロボットの導入等による生産性向上や経営の協働化等を通じた職場環境の改善を支援するため、351億円を措置。
※ 本基金のほか、「介護事業所における生産性向上推進事業」(1.4億円)等により、テクノロジーの導入や生産性の向上を推進。行政事業レビューにおける指摘を踏まえ、介護におけるデジタル技術の活用の加速化に向けた見直しを実施。

ウ インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金)

   300億円(5年度:350億円)
    • 保険者機能の強化に向け、市町村や都道府県による取組の客観的な評価結果に応じて交付金を交付し、予防・健康づくり等を充実させる財政的インセンティブを与えることにより、保険者等による高齢者の自立支援・重度化防止等を推進。
※ 保険者機能強化に向けた実効性の高い仕組みとする観点から、評価指標の整理・縮減、アウトプット・アウトカム指標への配点の重点化を図るなど、見直しを実施。

エ 認知症関連施策の推進

   134億円(5年度:128億円)
  〈一部科学技術振興費における対応〉
    • 令和元年6月に政府においてとりまとめられた「認知症施策推進大綱」や、令和5年6月に成立した「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」に基づき、認知症施策を総合的かつ計画的に推進。
※ 一部アと重複。
    • 令和6年度は、以下の取組等を拡充。
      • 共生社会の実現に向けた本人発信支援や地域づくり支援、認知症の人やその家族の相談支援体制と若年性認知症の人への支援体制の推進
      • 認知症に対する早期発見・早期診断及び治療・進行抑制、介護方法、社会的課題の実態調査など、認知症施策推進のための研究等の推進
      • 認知症疾患医療センターにおけるアルツハイマー病の新規治療薬の適正な使用体制の整備の推進

(3)年金

  • 年金国庫負担
    129,898億円(5年度:125,615億円)
    • 基礎年金国庫負担(2分の1)等について措置。
    • 足もとの物価等の状況を勘案し、令和6年度の年金額改定率を2.9%と見込んで計上。


(4)障害者支援等

  • 地域生活支援事業等
    505億円(5年度:507億円)
    • 地方公共団体において、意思疎通支援などの障害者の地域生活を支援する事業について、基幹相談支援センター・地域生活支援拠点等整備促進事業の創設などの充実を行いつつ、地域の特性や利用者の状況に応じて実施。

(5)労働市場改革の推進

ア 非正規雇用労働者の処遇改善等(一般会計・労働保険特別会計)

  〈一部中小企業対策費における対応〉
   1,436億円(5年度:1,183億円)
    • 非正規雇用労働者の企業内のキャリアアップを促進するため、正社員化の取組を実施した事業主に対する包括的な助成など、非正規労働者の処遇改善等を実施。
※ キャリアアップ助成金:1,106億円  等
    • 最低賃金の継続的な引上げに向けた支援策については、労働保険特別会計の既存の助成金の賃上げ加算の設定等の関連施策を推進する方策について検討を行うとともに、業務改善助成金の在り方について必要な見直しを行う。
※ 業務改善助成金:8億円(5年度補正:180億円)  等

イ リ・スキリングによる能力向上支援(一般会計・労働保険特別会計)

   619億円(5年度:614億円)
    • 成長分野の業務や、一定の技能を必要とする未経験分野への就職を希望する就職困難者を雇い入れる事業主への支援による、成長分野への労働移動の円滑化の支援等を実施。
※ 特定求職者雇用開発助成金:143億円  等

ウ 労働移動の円滑化等(一般会計・労働保険特別会計)

   619億円(5年度:614億円)
    • 成長分野の業務や、一定の技能を必要とする未経験分野への就職を希望する就職困難者を雇い入れる事業主への支援による、成長分野への労働移動の円滑化の支援等を実施。
※ 特定求職者雇用開発助成金:143億円  等

(6)その他

ア 生活保護費負担金

   28,354億円(5年度:28,301億円)
    • 被保護世帯の子どもが高等学校等卒業後に就職する際の新生活の立上げ費用に対する支援を創設。
    • 就労自立給付金の算定方法を見直し、就労・増収等を通じた自立の取組を強化。


イ 生活困窮者の自立支援

   531億円(5年度:545億円)
 〈一部デジタル庁計上分を含む〉
    • 生活困窮者自立支援法に基づき、生活困窮者に対する包括的な相談支援や就労支援等を実施。
    • 自立相談支援事業及び就労準備・家計改善支援事業における補助体系を見直し、支援実績に応じた自治体への適切な支援を行うとともに、支援の質の向上を推進。


ウ 重層的支援体制整備事業の実施

   555億円(5年度:352億円)
    • 介護、障害、子ども・子育て、生活困窮の相談支援や地域づくりを一体的に行う包括的な支援体制を構築するとともに、多様な参加支援の推進等を行う重層的支援体制整備事業の実施を促進するほか、都道府県による市町村への後方支援、国による人材養成研修等を実施。

エ 困難な問題を抱える女性への支援

   26億円(5年度:23億円)
    • 「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(令和6年4月施行)に基づき、女性相談支援員による支援体制の強化や、女性自立支援施設への通所による支援のモデル事業等を実施。

オ 自殺総合対策の推進

   39億円(5年度:37億円)
  〈一部その他の事項経費における対応〉
    • 地域の実情に応じ地方公共団体や民間団体が実施するSNS等の相談対応や「子ども・若者の自殺危機対応チーム」の設置を支援するとともに、指定調査研究等法人において子どもの自殺に関する情報収集・調査分析等の体制を強化。

カ 「全ゲノム解析等実行計画2022」の推進

   190億円の内数(5年度:181億円の内数)
  〈科学技術振興費における対応〉
    • 令和4年9月に策定された「全ゲノム解析等実行計画2022」を着実に推進するため、がん・難病患者の全ゲノム解析等を実施するとともに、それによって得られたデータを活用した創薬・治療法の開発が進められるよう、情報基盤を構築。

キ 「女性の健康」ナショナルセンター機能の構築

   22億円(5年度:-)
    • 女性の健康や疾患について、病態の解明と予防及び治療に向けた研究を推進するため、国立研究開発法人国立成育医療研究センターにおいて、「女性の健康」に関する司令塔機能を担い、女性の体とこころのケアなどの支援等に関するモデル的な取組の均てん化を行う。


図表 一般歳出及び社会保障関係費の推移
図表 2024年度予算について
図表 令和6年度社会保障関係費の全体像
図表 令和6年度診療報酬・薬価等改定
図表 大臣折衝事項(令和5年12月20日 財務大臣、厚生労働大臣合意)
図表 診療所における収益・費用・利益の状況
図表 令和6年度介護報酬改定・障害福祉サービス等報酬改定
図表 大臣折衝事項(令和5年12月20日 財務大臣、厚生労働大臣合意)
図表 「加速化プラン」の施策・規模感
図表 こども・子育て政策の強化(加速化プラン)の財源の基本骨格(イメージ)
図表 こども・子育て政策の強化
図表 全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)
図表 第1号保険料に関する見直しの成案(標準9段階から標準13段階への見直し)
図表 歳出改革による公費節減(こども未来戦略)
図表 大臣折衝(6.「こども未来戦略」における実質的な社会保険負担軽減効果)