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特集 令和6年度 文教及び科学振興費について


主計局主計官 寺﨑 寛之

1.概要

(1)一般会計の令和6年度の文教及び科学振興費は、5兆4,716億円(令和5年度当初予算比+558億円、+1.0%)を計上している。このうち、文教関係費は4兆624億円、科学技術振興費は1兆4,092億円である。
また、一般会計の文部科学省所管予算は、5兆3,384億円(令和5年度当初予算比+443億円、+0.8%)を計上している。このうち、文教関係費は4兆563億円、科学技術振興費は8,947億円、その他が3,875億円である。

(2)令和6年度の文教及び科学技術予算の編成においては、
・ 学校における働き方改革を加速化するとともに、教育の質の向上を図るため、教員業務支援員の全小中学校への配置や小学校高学年における教科担任制を前倒し
・ 高等教育の負担軽減のため、修学支援新制度(授業料等減免及び給付型奨学金)について、多子世帯や理工農系の学生等の中間層(世帯年収約600万円まで)に対象を拡大(社会保障関係費として予算措置)
・ 私学助成について、経営改革や連携・統合に取り組む大学への支援を強化することで、予算を重点化するとともに、令和8年度からは、定員充足率や経営状況等が基準に満たない大学に「経営改革計画」の策定を求め、私学助成を適正化
・ 研究力向上に向けて、若手研究者支援や基礎研究強化を戦略的に実施、AI・量子等の重要分野における研究開発や宇宙分野等の大型プロジェクトを推進
することとしている。


2.文教予算

2-1.小中学校教育

義務教育費国庫負担金(15,216億円⇒15,627億円(+2.7%))

  • 小学校高学年の理科・算数等の教科における教科担任制の前倒し等を行うため、2,050人の教職員定数を改善。
  • 令和3年の義務標準法の改正を踏まえた小学校5年生の35人以下学級の実現(+206人)、平成29年の義務標準法の改正を踏まえた通級指導や日本語指導が必要な児童生徒への対応等に係る教員の基礎定数化(+439人)を反映。
  • その他、少子化の進展による自然減(▲4,811人)、加配定数見直し(▲550人)、国庫負担金の算定方法見直し(▲1,600人相当)を反映し、差引では▲4,266人相当の減。(別途、特例定員(+4,331人)を措置。)
  • 上記に加え、令和5年人事院勧告や教職員の昇給等の影響額を適切に反映することで、全体で対前年度比+412億円を措置。


補習等のための指導員等派遣事業(91億円⇒121億円(+33.0%))

教員の事務負担軽減のため、学習プリント等の準備や来客・電話対応等をサポートする教員業務支援員を全小中学校へ配置(12,950人→28,100人)するほか、学校における働き方改革の効果を確実なものとするため、補習授業対応等といった学校教育活動を支援する学習指導員を引き続き配置(11,000人)する。また、副校長・教頭の学校マネジメント等にかかる業務をサポートする支援員を新たに配置(1,000人)する。


スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置拡充(82億円⇒84億円(+2.9%))

※この他、令和5年度補正予算で7億円を計上
いじめや不登校など、様々な課題を抱える児童生徒への支援に向けた相談体制を充実する観点から、
  • スクールカウンセラーの配置について、引き続き全小中学校への配置(27,500校)、スーパーバイザーの配置(67人)に加え、いじめ・不登校・貧困・虐待対策のための重点配置を拡充(7,200校→10,000校)するとともに、オンラインを効果的に活用した広域的な支援体制を整備(67箇所)
  • スクールソーシャルワーカーについても、引き続き全中学校区への配置(10,000中学校区)、スーパーバイザーの配置(67人)に加え、いじめ・不登校・貧困・虐待対策のための重点配置を拡充(9,000校→10,000校)するとともに、オンラインを効果的に活用した広域的な支援体制を整備(67箇所)
すること等により、教育相談体制を整備する。


切れ目ない支援体制整備充実事業(35億円⇒42億円(+19.7%))

特別な支援を必要とする子供への切れ目ない支援体制の整備等を行う地方公共団体等を支援するため、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」も踏まえ、医療的ケア看護職員の配置支援について、3,740人から4,550人に拡充する。


地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化事業(5億円(新規))

地域のニーズに対応した質の高い教師を安定的に確保するため、大学と教育委員会の連携のもと、大学入試における「地域教員希望枠」を活用した大学入学前から採用までの一貫した取組を支援する。


学校を核とした地域力強化プラン(77億円⇒76億円(▲0.2%))

学校・家庭・地域の連携・協働体制を構築し、地域の多様な関係者の参画による地域の特色を活かした教育活動を支援するため、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)と地域学校協働活動を一体的に推進する。


公立学校施設整備(災害復旧費を除く)(687億円⇒683億円(▲0.5%))

※この他、令和5年度補正予算で1,558億円を計上
※スポーツ関係予算と一部重複がある
安全・安心な教育環境を構築するため、学校施設整備を推進する。この他、学びの多様化学校又は夜間中学を設置する自治体に対する支援を拡充(補助率1/2(令和9年度まで))する。



2-2.幼児教育

「幼保小の架け橋プログラム」開発、幼児教育の質向上(8億円⇒9億円(+10.8%))

幼保小の接続期や地域全体の幼児教育の質向上に向け、学びや生活の基盤を育む「幼保小の架け橋プログラム」の開発・実践や、幼児教育アドバイザーの配置等を通じ、複数の施設類型が存在する域内全体の幼児教育推進体制の活用を支援する。



2-3.高校教育

高等学校等就学支援金交付金等(4,129億円⇒4,090億円(▲0.9%))

高校生等の授業料に充てるため、引き続き、年収910万円未満の世帯の生徒等を対象に高等学校等就学支援金を支給する。


高校生等奨学給付金(148億円⇒147億円(▲0.1%))

低所得世帯における授業料以外の教育費負担を軽減するため、高校生等奨学給付金により支援を実施する。令和6年度においては、非課税世帯の第1子への給付額の拡充(+5,000円)を行う。



2-4.高等教育(大学等)

2-4-1.高等教育の無償化(修学支援新制度)等

授業料等減免及び給付型奨学金(5,311億円⇒5,438億円(+2.4%))

※社会保障関係費として計上
消費税財源を活用し、低所得世帯の大学生等に対して、授業料・入学金の減免及び給付型奨学金を支給する。
令和6年度より、「こども未来戦略」(令和5年12月22日 閣議決定)等に基づき、多子世帯や理工農系の学生等の中間層(世帯年収約600万円)に対象を拡大する。(授業料等減免:2,864億円、給付型奨学金:2,573億円、地方分も合わせて5,908億円)


2-4-2.国立大学法人運営費交付金等

国立大学法人運営費交付金(10,784億円⇒10,784億円(▲0.0%))

少子化の影響等により、今後も高等教育機関への入学者数の減少が予測される中、国立大学も含め、大学は組織改革、経営改革について、積極的・戦略的に判断していく必要があるため、メリハリ付けの強化により、自らが意欲的に改革に取り組む大学を支援する。
具体的には、大学改革のインセンティブとなるよう各国立大学の意欲的な教育研究組織の改革に関する取組について、自助努力に関する評価の厳格化とあわせて、最も評価の高い取組に対して支援を強化する。

国立大学経営改革促進事業(50億円⇒52億円(+3.4%))

学長のリーダーシップに基づく経営改革を加速するため、地域の中核となる大学が強みのある分野の研究力を強化し、博士課程教育の質向上にも波及させる取組や、トップレベルの教育研究を目指す大学がリソースの重点投資により研究力を向上させる取組等を支援する。


2-4-3.私学助成

私立大学等経常費補助(2,976億円⇒2,978億円(+0.1%))

私立大学の厳しい経営環境を踏まえ、定員未充足の大学への配分の見直しによる財源を活用し、経営改革や連携に取り組むモデル校を重点支援(20億円)。経営改善につながった好事例は横展開しつつ、令和8年度からは、定員充足率や経営状況等が基準に満たない大学に「経営改革計画」の策定を求め、私学助成の適正化を図る。


私立高等学校等経常費助成費等補助(1,020億円⇒1,012億円(▲0.8%))

幼稚園教諭の処遇改善を引き続き支援するとともに、外部人材の活用等により教育の質向上に取り組む高校等への支援や、特別な支援が必要な幼児数の増加への対応を実施する。


2-4-4.国立高等専門学校

国立高等専門学校機構運営費交付金(628億円⇒629億円(+0.1%))

高専教育の高度化のため、半導体等の成長分野のカリキュラム化や、実践的スタートアップ教育等により、人材育成体制を強化するとともに、海外で活躍できる技術者の育成支援等により高専の国際化を促進する。


2-4-5.高度専門人材の育成等

大学の国際化によるソーシャルインパクト創出支援事業(18億円(新規))

大学が核となって地域と共に国際化を図ることにより、高度グローバル人材の育成・定着とその基盤となる人材が活躍できる共生社会の実現に向けた環境構築等を行う大学を支援する。


高度医療人材養成拠点形成事業(21億円(新規))

※この他、令和5年度補正予算で140億円を計上
医学生及び医学系大学院生に対して、大学病院を活用したティーチング・アシスタント等として教育研究に参画する機会を創出する取組や、教育支援者等の活用による大学病院での診療参加型臨床実習の充実に係る取組を支援することにより、高度な臨床・研究能力を有する医師養成を促進する。


大学の世界展開力強化事業(13億円⇒13億円(▲1.0%))

※この他、令和5年度補正予算で10億円を計上
戦略的に重要な国・地域との間で単位の相互認定等による質保証を伴った学生交流等を推進し、国際教育連携やネットワーク形成を支援する世界展開力強化事業について、教育研究力の高い大学を多く有するEU諸国との大学を軸とした人的交流を強化し、日本の大学教育のグローバル展開力を強化する。


3.科学技術予算

3-1.研究力向上に向けた人材育成・研究費支援

科学研究費助成事業(科研費)(2,377億円⇒2,377億円(同額))

※この他、令和5年度補正予算で654億円を計上
基礎から応用まで、全ての分野にわたる、研究者の自由な発想に基づく研究を支援する。子育て世代の研究者がより積極的に研究に復帰・参画できる環境を整備するため、「研究活動スタート支援」の応募要件を緩和するとともに、若手研究者への支援を強化する。


戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)(437億円⇒437億円(+0.1%))

イノベーションの源泉となる基礎研究を推進するため、国が定めた戦略目標の下、組織・分野を越えた体制を構築して行う研究を支援する。優秀な若手研究者のステップアップ等を推進する観点から、若手研究者支援を充実する。


特別研究員制度(162億円⇒163億円(+1.0%))

優れた若手研究者に対して研究に専念する機会を提供するため、「特別研究員」として採用し、研究奨励金を支給。博士後期課程在学者を対象とするDCについて、博士後期課程最終年度における博士論文等の成果創出に専念できるよう、採用期間中に優れた研究成果を上げ、更なる進展が期待される者に対して新たに特別手当を付与する。



3-2.AI・量子など重点分野の研究の戦略的推進

生成AIモデルの透明性・信頼性の確保に向けた研究開発拠点形成(7億円(新規))

※この他、令和5年度補正予算で42億円を計上
生成AIモデル(基盤モデル)の透明性・信頼性を確保するため、国立情報学研究所(NII)に研究拠点を設け、アカデミアを中心としてオープンに生成AIモデルの研究を推進する。


科学研究向け基盤モデルの開発・共用(TRIP-AGIS)(17億円(新規))

※この他、令和5年度補正予算で122億円を計上
理化学研究所を中核として、生命・医科学分野、材料・物性科学分野におけるデータ整備や科学研究向け基盤モデル(科学基盤モデル)の開発等を実施する。


光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)(42億円⇒45億円(+5.4%))

量子コンピュータや量子計測・センシング、次世代レーザーなどの研究開発を推進し、国産量子コンピュータ次世代機の開発を加速させるとともに、量子技術を活用して社会課題解決や新産業創出等を担う人材の育成を推進する。



3-3.大型プロジェクトの推進

宇宙・航空分野の研究開発(1,560億円⇒1,553億円(▲0.5%))

※この他、令和5年度補正予算で2,101億円を計上
  • H3ロケット等の開発
    国際競争力を強化し、自立的な衛星打上げ能力を確保する観点から、次期基幹ロケット(H3ロケット等)の開発・高度化等を着実に推進する。
  • アルテミス計画に向けた研究開発等
    アルテミス計画への参画に伴い、月周回有人拠点(Gateway)への物資補給、月面での移動手段としての有人与圧ローバ等について研究開発等を進める。また、火星衛星の由来や原始太陽系の形成過程の解明に貢献するための火星衛星探査計画(MMX)等の宇宙科学・探査衛星の開発を着実に推進する。


原子力分野の研究開発(1,470億円⇒1,474億円(+0.3%))

(うち、エネルギー対策特別会計へ繰入1,080億円)
※この他、令和5年度補正予算で220億円を計上
日本原子力研究開発機構が保有する原子力施設の安全強化とバックエンド対策(廃止措置、廃棄物処理・処分等)や、原子力の基礎基盤研究とそれを支える人材育成を着実に推進する。


3GeV高輝度放射光施設(NanoTerasu)の整備・共用等(38億円(新規))

※この他、令和5年度補正予算で3億円を計上
官民地域パートナーシップの下で整備が進められ、令和6年度から共用が開始する3GeV高輝度放射光施設(NanoTerasu)の運用・利用促進を行うとともに、利用環境のDXを推進する。


ポスト「富岳」の次世代計算基盤に向けた調査研究(10億円⇒10億円(同額))

スーパーコンピュータ「富岳」の後に続く次世代計算基盤の開発に向けて、関連技術の動向等を踏まえたフィージビリティ・スタディを行い、研究開発課題の抽出や、システム概念設計、求められる機能・性能等について検討を促進する。


大型放射光施設SPring-8の高度化(SPring-8-Ⅱ)に向けた研究開発(3億円(新規))

1990年代から我が国の研究力強化と生産性向上に貢献してきた大型放射光施設SPring-8の高度化に向けて、プロトタイプ製作による技術実証を実施する。


4.スポーツ関係予算

4-1.地域スポーツ環境の総合的な整備・充実

運動部活動の地域連携・地域移行の推進(25億円⇒27億円(+10.8%))

※文化部活動を含めると令和5年度は28億円、6年度は32億円(+13.4%)
※この他、令和5年度補正予算で14億円(文化部活動を含めると15億円)を計上
休日の部活動の段階的な地域移行を進めるため、全国で実証事業を実施し、地域の実情に応じた多様な地域移行の方策や関係者間の連携について実践・検証するとともに、地域移行に資する学校施設の改修や中学校における部活動指導員の配置等を支援する。


アスリートの派遣等による体育授業等の充実・高度化の促進(1億円⇒2億円(+61.3%))

アスリートとの直接交流を通じ、スポーツの意義を感じて子どもたちが自ら運動する意欲を喚起する教育手法の展開など、質の高い教育活動を進めていくため、アスリートの派遣を希望する学校等がスムーズに派遣を受けられる仕組みを構築する。


4-2.持続可能な競技力向上体制の確立

競技力向上事業(101億円⇒102億円(+1.5%))

2024年パリ大会などの国際競技大会等における日本代表選手のメダル獲得に向け、各競技団体が行う日常的・継続的な強化活動を支援するほか、2028年ロサンゼルス大会等で活躍が期待される次世代アスリートの発掘・育成などの戦略的な取組に対する支援を実施する。


ハイパフォーマンス・サポート事業(12億円⇒15億円(+26.5%))

※この他、令和5年度補正予算で12億円を計上
スポーツ医・科学、情報等によるトップアスリート活躍のための専門的かつ高度な支援を実施するとともに、2024年パリ大会及び2026年ミラノ・コルティナ大会において、アスリート等が最終準備を行うための医・科学、情報等サポート拠点を設置する。


先端技術を活用したHPSC基盤強化事業(3億円⇒4億円(+29.6%))

ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)が行うスポーツ医・科学支援機能を発展させ、スポーツ医・科学、情報等の知見に基づくコンディショニングサポートを行う上で必要なデータの計測等を場所や時間を問わずに行うことのできる仕組みについて実証研究等を実施する。


5.文化庁予算

5-1.継承の危機に瀕する文化財保護の緊急強化

適切な修理周期による文化財の継承の推進(250億円⇒250億円(▲0.3%))

※この他、令和5年度補正予算で196億円を計上
国宝・重要文化財(建造物・美術工芸品)や史跡等を積極的に活用しながら次世代に確実に継承できるよう、適切な修理・整備や、防災・防火対策等に対する支援を実施する。また、文化財保護・活用のための寄付の受け皿を整備する。



5-2.グローバル展開やデジタル化などによる文化芸術活動の充実

現代的課題に対応した劇場・音楽堂等の総合的な機能強化の推進(27億円(新規))

※この他、令和5年度補正予算で関連事業10億円を計上
劇場・音楽堂等における実演芸術の創造発信や人材養成、普及啓発、施設間のネットワーク形成や子供の鑑賞機会を提供する取組などへの支援を通じ、劇場・音楽堂等における地域の核及び芸術の拠点としての機能を強化する。


メディア芸術の創造・発信プラン(7億円⇒9億円(+23.6%))

マンガ、アニメ、ゲーム等のメディア芸術分野におけるクリエイター等の育成のほか、全国の所蔵館等におけるアーカイブ化の取組を支援する。また、セル画等の中間生成物の収集・保存・活用に係るモデル事業を実施する。



5-3.文化振興を支える拠点等の整備・充実

国立文化施設の機能強化等(324億円⇒323億円(▲0.3%))

※この他、令和5年度補正予算で20億円を計上
我が国の文化芸術の創造及び伝承・保存の中核であり、文化観光の拠点である国立文化施設の機能を充実・強化する。

図表.令和6年度 文部科学省予算(一般会計)
図表.令和6年度 主要経費「文教及び科学振興費」(一般会計)