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特集 令和6年度財政投融資計画について


理財局財政投融資総括課長 大江 亨

1.令和5年度財政投融資計画の改定について

昨年11月2日、低物価・低賃金・低成長に象徴される「コストカット型経済」から脱し、「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」に日本経済を移行させるための「デフレ完全脱却のための総合経済対策(以下、「総合経済対策」という)」が閣議決定された。この総合経済対策においては、財政投融資も活用し、成長力の強化・高度化に資する国内投資の促進や、国民の安全・安心の確保等の取組を推進する政策が盛り込まれた。
これを踏まえ、令和5年度財政投融資計画補正を行うこととし、昨年11月10日に閣議提出するとともに、その内容を盛り込んだ補正予算が11月29日に国会にて成立した。この計画補正においては、株式会社日本政策投資銀行によるサプライチェーン強靱化・インフラ高度化やGX等に向けた金融支援、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構による物流革新の実現に向けた金融支援、株式会社国際協力銀行による重要な資源確保等のための金融支援等、総額8,860億円の財政投融資計画を追加することとした。(資料1)
また、令和5年度補正予算の成立に伴い地方公共団体が実施する事業にかかる資金の確保のため、地方公共団体に対する財政融資資金の貸付けを9,014億円追加することとした。

2.令和6年度財政投融資計画について

昨年12月22日、令和6年度財政投融資計画(以下、「6年度計画」という)が予算政府案とあわせて閣議提出された。これは、令和5年8月末に要求を受けた後、総合経済対策も踏まえつつ、財政制度等審議会財政投融資分科会における審議を経て作成したものである。

(1)令和6年度財政投融資計画のポイント

6年度計画の総額は、13兆3,376億円であり、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況変化等を受け、前年度比で減少した。(資料2)
6年度計画では、成長力強化に向けた重要分野(賃上げ、スタートアップ、GX、サプライチェーン強靱化等)への投資や、国際環境の変化に対応するための海外投融資(日本企業の海外展開支援、天然資源確保等)等に重点的に資金を供給することとしている。なお、積極的なリスクマネー供給を図った結果、「産業投資」の規模は過去最大となった。(資料3)

(2)令和6年度財政投融資計画の主な施策

【成長力強化に向けた重要分野への投資】

  • 日本政策金融公庫(4兆75億円)
    賃上げに取り組む中小・小規模事業者への金融支援により構造的賃上げの実現に向けた環境整備を促進するとともに、スタートアップの資金需要に的確に対応し、成長を後押し。
    スマート農業等の生産性向上に向けた取組を後押ししつつ、農林水産業者の資金需要に的確に対応する。
  • 日本政策投資銀行(7,350億円)
    インフラ・製造業への長期資金供給に加え、サプライチェーン強靱化・インフラ高度化やGX、スタートアップに対して重点的にリスクマネーを供給する。
  • 住宅金融支援機構(2,663億円)
    住宅金融支援機構が発行するグリーン債に対して政府保証を付与することによる省エネ性に優れた住宅の普及促進等を行う。
  • 産業革新投資機構(800億円)
    スタートアップ向け投資、大企業・中堅企業向け成長・事業再編投資、民間ファンドへのLP出資により我が国の産業競争力強化に資するリスクマネー供給を行う。
  • 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(671億円)
    鉄道建設等事業、船舶共有建造事業等のほか、物流効率化を推進するため、物流拠点施設や、物流DX・GX案件への出融資を行う。
  • 脱炭素化支援機構(250億円)
    再生可能エネルギー事業や、脱炭素に資する新技術への出資等に取り組む。

【国際環境変化に対応するための海外投融資】

  • 国際協力機構(1兆6,420億円)
    開発途上国の社会経済の安定や、グローバル・サウス諸国との連携強化のため、日本の高い技術・ノウハウを活用した質の高いインフラ輸出等を支援する。
  • 国際協力銀行(1兆1,040億円)
    JBIC法改正による業務拡充を踏まえ、サプライチェーン強靱化の取組を行うとともに、引き続き、地球環境保全を目的としたGXの取組を支援する。
  • エネルギー・金属鉱物資源機構(852億円)
    天然ガスやレアメタル等の金属鉱物資源の安定的な供給に向けた取組のための出資等を行う。
  • 海外交通・都市開発事業支援機構(925億円)
    スマートシティ等の都市開発事業や日本企業のノウハウを活かした物流倉庫事業等への支援を行う。
  • 海外通信・放送・郵便事業支援機構(600億円)
    海外におけるデータセンター整備・運営等のデジタルインフラや、ICTサービス事業への支援を行う。

【その他】

  • 地方公共団体(2兆3,258億円)
    地方債計画に基づき、住民生活に密着した社会資本整備や、国が責任を持って対応する災害復旧等の分野を中心に、地方公共団体へ財政融資資金を供給する。
  • 福祉医療機構(2,102億円)
    産後ケア施設への融資制度等を新設するなど、社会福祉施設や医療施設の整備に関する資金需要に的確に対応する。