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特集 Future TALK 〇〇さんと日本の未来とイマを考える

藤井サチさん(モデル・タレント)編


はじめに
阪井広報室長 よろしくお願いします。本企画では、財政や税の役割等について、読者の皆さまにわかりやすく伝えられるよう、様々な方をお招きして、財政等にも触れながら、日本の未来やイマについてトークをしてもらいます。
記念すべき第十回では、モデルであり、コメンテータとしても活躍されている藤井サチさんをお招きして、財務省の国際局・城田参事官、内閣官房に出向中の大沢補佐、厚生労働省に出向中の道上補佐と対談をしてもらいます。
藤井さんには、日ごろ気になっている社会課題や、財務省の仕事などに関する疑問点などについてお話しいただければと思います。
それでは、藤井サチさん、よろしくお願いします。

藤井サチさん よろしくお願いします。本日初めて財務省にお邪魔させてもらいました。完全に私のイメージですが、財務省はできるだけ税を多くとるところというイメージがあって(笑)。今日は、財務省ってどんなところで、日本ってどんな状況にあるのかお話しできればと思っています。

写真1: 中央が藤井サチさん


財務省の仕事について
藤井サチさん 改めまして、財務省ってどんな仕事をされているところなのでしょうか。

城田参事官 国際局の城田です。財務省のなかにはいくつも局がありますが、組織全体で、ミッション・ステートメントがありまして、「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」ということを意識して仕事をしています。
例えば予算や税制についても、10年先、20年先の日本を考えたときにどういうところに本当にお金が必要なんだろうとか、どういう人たちに税の負担を求めてそれを分配していくのがいいのかというのを考えて、制度設計などをしています。

大沢補佐 内閣官房の大沢です。直前は主税局で法人税の担当をしていました。税では、必要な金額を、どなたから、どういった形で、どれくらい頂く必要があるのかを踏まえ、制度設計を行っていくこととなります。新しい制度を作ったり、既存の制度を変更する際には、社会全体への影響を見極めながら決める必要がありますが、多くの関係者との議論があって初めて形作ることができます。例えば私が担当していた法人税で言うと、研究開発を後押しする特別措置がありますが、その制度が企業の研究開発を実際に後押しするものとなるよう、企業の方などとしっかりお話をしながら設計をしています。

藤井サチさん そうなんですね。財務省ってすごく俯瞰しているようなイメージがありましたが、意外と現場などを見ながらリアルなことを現実的に見ているんですね。

道上補佐 厚生労働省の道上です。藤井さんの仰るとおりで、財務省の仕事はどれも経済状況など実態をしっかりと見ながら考えていく必要があるものばかりです。省内には、マクロ経済政策を担当、分析するような部署もあります。

藤井サチさん マクロ経済…難しい…。

大沢補佐 難しいですよね(笑)。仕事では組織内外の方と日本はどうあるべきかたくさん議論をするのですが、財政となると身近な暮らしとは離れてしまう印象もあります。藤井さんも街でお茶を飲みながら「今年の税制改正は…」とか友達と話さないのではないでしょうか。

藤井サチさん 私はめちゃめちゃ気になります!友人などとも、防衛費の話や、それに伴った増税の話、社会保険料が上がるけど給料は上がらなくて手取りが少なくなってしまうことなど、社会についていろんな話をします。
こういった話について、Z世代は意外とものすごく関心があると思います。やっぱり、少し上の世代の苦労を見てきているので、自分自身の人生について考える人がかなり多くて、自分の幸せも、良い環境があってこそだと、お金についてシビアに考えています。私は今26歳なのですが、結婚する友達も出てきていて、子育てにかかる費用とかを見て、「今は無理だ」とかの声を聞きます。こうしたリアルな問題に直面して、たとえば出産助成金のことを考えたりする中で、日本経済や財政とかが自分事になって、「どうなるんだろう」と興味を持っているんだと思います。
私も数年前までは、正直偉い人が勝手にやってくれているんだなと思っていましたが、こうした問題を身近に目にするようになってから興味を持つようになりました。

城田参事官 政治や社会に興味を持った時にどうするかって難しいですが、何かされますか?

藤井サチさん 選挙にいこう!ということしかないです。私はコメンテータの仕事もしていますが、偉そうなことを言うだけでは社会はなにも変わらないと考えています。若い人たちの投票率が少しでも上がるように、せっかく表に出る仕事をさせてもらっているので、貢献できればと考えています。
私が社会問題に興味を持った背景はこのような感じですが、みなさんが何で財務省に入られたのかも教えてほしいです。

道上補佐 私は、日本で様々な課題が山積する中で、「自分に何ができるんだろう」と考え、財政を通じて幅広い分野に携われる財務省の仕事を選びました。
いま若い人たちに社会課題に関心を持ってもらえているのはすごく心強いですが、その対応策がよく分からないブラックボックスで決まっているように見えていないか気になっています。私自身、霞が関で働き始めた頃、あらゆる政策についてこんなにも丁寧な議論を積み重ねて決められているのかと驚いた記憶があります。どういった議論が行われているのか、予算でいえば使い道が具体的にどういう風になっていて、なぜそうなったのか等をもう一段階ブレイクダウンして伝えていけたらいいのかなと思っています。

藤井サチさん まさに私もそう思っています。最初のイメージに戻りますが、「財務省は税を少しでも多く集めるところ」といった浅いイメージだと、増税なども全て財務省が決めていて、私たちのことを考えてくれているのかなって疑問に思っていました。今皆さんと少し話してみて、全てを財務省が決めているわけではないんだなとわかってよかったですが…。
最近のいろんな決定も、どう決まっているのかが不透明だと、信用していいものかわかりません。
そうした観点では、財務省の意思決定のプロセスはどうなっているのでしょうか。

城田参事官 私の部署では途上国の開発支援の業務を行っています。世界中のいろんな国についての担当者がいて、各担当者がその国についての足元の事情を一番よく知っている形になります。その担当も国益等を色々と考えるわけですが、地域の中での関係、他国との関係、開発政策以外の分野との関係等日本の国益としてはどうなんだろうとか、より広い着眼点での議論を重ねて決めていきます。

大沢補佐 多くの政策は、財務省の外の方も含めて、その政策に関係する方々と幅広く議論して決めていきます。例えば、税制を変えることになると、かなりの人に大きな影響を与えるので、まず、どうやれば公平か、どうやれば適切か、さらに関係者からどういう意見が出るか、丁寧に検討します。その過程で、部内で制度に詳しい方、理論に強い方も含めて、何度も相談します。その上で、他の省庁や民間の方々とオープンに議論を行って、ようやく最終的な結論にたどり着くことができます。

藤井サチさん 少し角度が変わるかもしれないですけど、財務省のなかで女性の比率はどのくらいなのでしょうか。国民の半分は女性だけど、国のことをほとんど男性が決めているっていうのはなんか不思議だなって思うので…。

道上補佐 最近はだいぶ女性の採用が増えていて、10年目くらいまでの職員だと大体3割くらいが女性です。

城田参事官 私が入ったころはまだまだ少なかったです。採用が増えるようになってはいますが、幹部層はまだ男性が多いかなという印象です。ちなみに私の今の部屋はほぼ半々ですね。

藤井サチさん そうなんですね。人口比的にも若者の意見が通りづらくなっている中で、多様な意見をどうやって聞いてもらえるかなと思ったときに、意思決定の場に女性が増えることも一つ挙げられるのかなというのも思っています。

城田参事官 もちろん増えた方がいいと思います。身の回りのことを決めるのが政府ですが、身の回りでどういった問題を抱えているのかは、男性女性で気づきも違ったりするので、女性が増えて欲しいなと思います。

藤井サチさん そうですよね。もっと国に携わる仕事をしたいっていう女性が増えたらいいなと思います。

大沢補佐 ちなみに組織で働くこととの対比で伺うのですが、モデルのお仕事は、どのような感じなのでしょうか。

藤井サチさん タレントのお仕事は個人事業主なので、自分で切り開いていかないと!という意識はありますね。その意味では、公務員の組織としての意思決定プロセスはすごいなあと思います。
もちろん、マネージャーの方をはじめ多くの方のサポートがあったうえで成り立つのが私たちの仕事ではありますが。

写真2: 藤井 サチさん
写真3: 国際局開発政策課 参事官 城田 郁子
写真4: 内閣官房内閣感染症危機管理統括庁 参事官補佐 大沢 暁子


財政や社会保障の情報発信について
藤井サチさん もう一つ気になることがあって、将来の不安の一つとして、年金ってもらえるのかな、と友達と話すことがあるのですが…。

道上補佐 確かに、政府や制度への不安を漠然と持っていて、その象徴として年金を挙げられる方は多いですよね。年金については、少子高齢化が進む中で、現役世代の負担が増えすぎないような制度改正が行われていますし、5年に1度将来の見通しをお示しして、必要な見直しもしているのですが…。
私たちの情報発信の課題かもしれませんが、年金や医療などの保険料は、使用される目的が決まっているので、保険料を支払うことにより必要な時に給付を受けられる権利を得ているものであると受け止めてもらいたいなと思います。
最近取り上げられることの多い「年収の壁」と呼ばれるものも、パート・アルバイトの方が、一定の年収を超えると社会保険料を払わないといけなくなるため働くことを控えてしまう現象なのですが、厚生年金に入ると将来貰える年金が増えるということが知られていないと感じています。
社会保険だけでなく税も同じですが、支払ったものが給付や公共サービスといった形で返ってくる、こういった負担と受益の関係をしっかり伝えていく必要があるのかなと考えています。

藤井サチさん たしかにそういった情報は、発信も難しく、受け手側のリテラシーも必要でなかなか伝わりづらいかもしれませんね。
そもそも、SNSやネットにたくさんある情報と、ネット上にはない情報もあるじゃないですか。皆さんみたいな方が、メディアに出て説明してくれたらいいのに…。私だったら絶対に聞きに行きます!いろんな政策もそうですが、現場にいる方のリアルな説明はすごくほしいなと思います。

阪井室長 情報発信の話が出たので。藤井さんから見て、財務省がもっとこうしたらいいのでは、というような点はありますか。

藤井サチさん 財務省は本当にお堅いイメージがあるので、身近な人が働いているんだと思ってもらえるようにSNSを活用して楽しい現場を伝えるだけでも、若者には印象が変わると思います。やっぱり私もそうですが、財務省の皆さんはエリートで、財務省という場所もあまり何をしているところかわからないお堅いところ、というイメージがあると思うので。
あと、私のような人にどう分かりやすく伝えるか、は大事ですよね。伝えたいことをどうやって分かりやすく伝えるのかというのは、私もコメンテータとしての課題です。

道上補佐 分かりやすさを重視して情報を絞ると、制度上は配慮していたとしても、変な方向に受け止められて、誤解が生まれてしまうことも懸念しています。そのさじ加減は本当に悩ましいですね。

藤井サチさん そういう時は画像や相関図などで示してあるとイメージができますし、正しく伝わりやすいのではないでしょうか。漢字とか難しい言葉が並べられていると「あっ」となって敬遠しちゃうし、読むのにも時間がかかってしまいます。

写真5: 厚生労働省年金局年金課 課長補佐 道上 友里香


日本の課題とミライについて
藤井サチさん 財務省に入られてから、日本に対する意識とか気持ちって変わったりしましたか?

城田参事官 色々な政策の担当をしてきましたが、そうした各分野の社会実態について知ることを通じて、日本という国のあり方についての自分の認識は、変わったというよりは深みが出てきた感じでしょうか。

藤井サチさん なるほど、思いが変わったわけではなく深まったと。そうした中で、これからの日本はどういった国になっていくと良くて、そのための課題はどのようなことがあるのでしょうか。

城田参事官 私自身としては、個々の人が生きていくうえで将来の設計をしやすいような、あるいは、自分がやりたいと思うことを躊躇なくできるような環境がいいなと思います。だから今の世の中を渦巻いているモヤモヤとか不安感が実は一番の課題なのかなと思ったりしています。

大沢補佐 私は全ての人が何度でもチャレンジできる社会を作りたいと思います。会社や社会全体の動きがすごく速くなっている一方で、人生の中でライフステージごとの変化も大きくなっていると思います。そうした変化に合わせて、何度でもチャレンジができて、一人ひとりの能力が最大限に発揮できる社会になったらいいな、そうしたチャレンジの背中を押す仕組みができたらいいな、と思って日々仕事をしています。

道上補佐 制度は、社会の在り方を映しているとも言われます。様々な選択肢が尊重される時代、生き方も働き方も多様になってきていることを踏まえ、制度を変えていけるといいなと思います。
若い世代ほど色んな生き方があっていいよねという想いが強いと感じていて、そういう方がどんどん現役世代として増えていく一方で、制度だけが取り残されるというのがあってはいけないなと。
皆さんの生活の前提となっている既存の制度を変えるのはすごく労力がかかりますし、一筋縄にはいかない難しさもあります。それでも、よく議論して着地点を探していけると良いなと思っています。

城田参事官 こうした決定には、世代間の考え方の差があったりする中で、非常に時間がかかります。その意味では、少子高齢化をはじめとしたみんながわかっている課題を迅速に解決できてこなかったということも反省点・課題なのかもしれません。
ですので、Z世代の皆さんが関心を持って自ら投票しようと思っているのは心強いです!

藤井サチさん なるほど。私も表に出る仕事を通じて、より一層若者の政治への関心を高めていけるように頑張ります。皆さんも頑張ってください!


おわりに
阪井広報室長 本日はありがとうございました。藤井さんの問題意識や社会に関する疑問などをお話しいただき大変盛り上がったのではと思います。また次回、違った切り口でお話を聞ければと思います。

写真6: 右から二番目が藤井サチさん