このページの本文へ移動
アフリカにおける新しい産業としての芸術~日本人アーティストの視点から
 
画家・アートプロデューサー 鈴木  掌(すずき  つかさ)
 
 
世界中に存在する「小さなアーティスト」たちに、アートで人生を切り開くチカラを与えるためのプロジェクト「heART -ヒーアート-」をライフワークとして活動する。主な拠点はルワンダと日本。
先祖に即身仏がいる家系に生まれ、専門学校にてファッションを学び助手教員となり、アフリカ・ルワンダにて洋裁を5年間指導。(青年海外協力隊:2011年~13、外務省日本NGO連携無償資金協力事業:2013~15)
2016年帰国後、絵画制作を本格的に指導。蛍光色を含む色彩豊かなポップアート的な作品を生み出している。ルワンダ時代に絵の具がなくて始めた「珈琲画」の分野でも多数のワークショップを行っている。
「バチンダムホロロ ウムドゥグドゥ ウアマホロ」。美しく安全なルワンダの首都キガリにてバイクタクシーの運転手にこう伝えれば、私が滞在している地域まで来ることができます。ゴミ一つない綺麗なリゾート地のような立派な舗装道路から、土埃が舞うデコボコの細道の先にある場所に。
私とルワンダの関係は2011年に始まり、青年海外協力隊そして外務省NGOとして洋裁を障害者やシングルマザーたちに教えました。その後日本に帰国しましたが、最近は年2回程度ルワンダに滞在し、芸術(絵画)に基づく社会活動を始めています。例えば子供たち数十人を集めた絵のワークショップ。半日の間、子供たちは集中して独創的なカラフルな絵を生み出し、この絵を私が購入し日本で販売しています。日々の生活に困るだけでなく、これからの人生をどうしていいかわからない、お金というものの意味がわからない、また学校にも行っていないため手に職もつけられない子供たちに、自分が無から生み出した作品から大人の日当の数倍もの収入が得られることを実感してもらっています。親をはじめ周りの大人たちにあまり気にしてもらえない彼ら一人一人に向き合い、それぞれの作品を評価してあげることで、みな自分に自信がもてるようにもなります。買い取った作品は日本において購入金額の10倍くらいの値段で販売されるほか、商品のラベルに採用されたりもしています。この売り上げは次回ルワンダ滞在時に彼らの住む地域に還元しています(実ビジネスを通じた自立支援としてのカフェの創業・運営など)。
今後はこれをさらに拡張し、アフリカ各国を回り同様の絵画ワークショップを開催して才能の育成および作品の購入を進め、最終的にはアフリカを代表するような美術館を創設しようと考えています。ダイヤや石油、レアメタルといった自然資源に(のみ)依存し、先進国による少なからぬ搾取が続くアフリカにおいて、芸術が全く新しい大きな産業の柱となるよう活動していくつもりです。
今年8月には首都キガリのL’Institut français(日本でいうところの日仏学院)でのストリートダンスコンテストでライブペインティングをしましたが、芸術に携わるルワンダ人の多くがフランスでの活動を夢見るなど、文化におけるフランスのプレゼンスはルワンダ国内のさまざまな場面において確立されています。一方、現在日本企業はほとんど進出しておらず、残念ながら日本のプレゼンスがあまりありません。私自身は一人の日本人として、これまでルワンダで200人以上に洋裁を教え、また数十人の子供たちの絵を継続的に購入することなどで彼らの人生そして社会に少なからず影響を与えてきたとは思います。しかし、今後これらの活動が私個人を超えたもっと大きな「うねり」となるために、日本政府や企業による文化・芸術のサポート(ギャラリーなどの創出、教育、プロモーション活動)があればありがたいと考えています。これはインフラ等のODAなどに比べてお金がかかりませんが、ルワンダに確実なインパクトを与えることが可能だと信じています。また日本人アーティストたちが次々とルワンダを訪れてコラボレーションすることで、草の根レベルでの連帯感も生まれていくことでしょう。このような活動において私が長年のあいだ培ってきた少なからぬ人脈と信頼を活用していただければと願っております。