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特集 Future TALK 〇〇さんと日本の未来とイマを考える

眞鍋 かをりさん(タレント)編

令和5年6月15日(金)開催(対談者の肩書は同日現在)


はじめに

原田広報室長 皆さんよろしくお願いします。本企画では、財政や税の役割とその現状等について、読者の皆さまにわかりやすく伝えられるよう、様々な分野の方をお招きして、財政等にも触れながら、未来やイマについてトークをしてもらいます。
第七回として、タレントの眞鍋かをりさんをお招きして、財務省の関税局・恵﨑室長、主計局・高橋主査、関谷補佐と対談をしてもらいます。
眞鍋さんには、日ごろ気になっている点など、子育て世代の観点からもお話しいただければと思います。

眞鍋かをりさん どうぞよろしくお願いします。皆さんのお仕事内容がまだあまり想像できておらず、基本的なところも含めて是非お聞かせいただければと思います。また、皆さんも子育て世代にもなるかと思いますので、ワークライフバランスの観点からも色々教えていただきたいです。
写真1: 左から二人目が眞鍋かをりさん


財務省の業務について

眞鍋かをりさん まず皆さんの業務についてお伺いしてもよろしいでしょうか。財務省の仕事について少し理解したうえで、働き方などのお話を聞ければと思います。

恵﨑室長 関税局の恵﨑です。海外旅行から帰国される際に税関を通られると思いますが、関税局では、全国の9税関をまとめる仕事をしています。輸入の際に税関で関税を集めていますので、税を集める機能をもつ財務省に税関組織が組み込まれていると考えています。また、不正薬物等を取り締まることにより国民の安全安心を守る役目も担っています。去年は税関発足150周年を迎えました。
税関にはカスタム君という、麻薬探知犬をモチーフにしたマスコットキャラクターもいます。

眞鍋かをりさん キャラクターがいるんですね。税関については、働いている同級生がいるので知っていたのですが、財務省の組織だとは知りませんでした。

高橋主査 主計局の高橋です。主計局には省庁ごとの予算担当がいて、私は総務省の予算を担当しています。予算を要求する相手省庁との折衝等を通じて予算案を作る業務をしています。
また、以前は関税局で麻薬やテロ関連物資の密輸を取り締まる業務を担当していたこともあります。

関谷補佐 主計局の関谷です。私は給与共済課というところで、省庁別の予算ではなく、公務員全体の給与予算等を担当しています。
最近では、円安の影響によって海外出張の旅費や在外公館で働く人たちの給料が大きく影響を受けていたので、その対応がホットな業務でした。

眞鍋かをりさん 主計局の業務は、まさに「ザ・財務省」という感じで財務省のイメージそのものの仕事ですね。なるほど、いろいろな省庁の予算があるので、それぞれの担当があるということですね。
為替についてもそうですが、皆さんそれぞれ高い専門性を持っていて、そうすると職業病といいますか、普段の生活の中でも、仕事の関連で考えてしまうことがありそうですね。

関谷補佐 私も以前関税局にいたこともあり、その時に関税制度や経済連携交渉の仕事もしていたので、物を見た時に「この品目の関税率は何%だな」と考えてしまうこともありました。

恵﨑室長 約9,000品目のモノ全てに関税率が設定されています。流行りの品物をみると関税率が気になってしまうというのは職業病的にありますね(笑)。

眞鍋かをりさん 関税率といえば、私はチーズが好きで、チーズに関する資格を持っているのですが、チーズには重量税ではなく輸入に係る輸送費も含めた価格に対する従価税が課されるため、ヨーロッパから輸入されたチーズを国内で買うとものすごく高くなるとか、ヨーロッパとの協定で、十数年かけて段階的に税率が下がっていくということなどを勉強しました。

恵﨑室長 お詳しいですね! まさに、私が日英経済連携交渉を担当していた際に、チーズの関税を含めた交渉に携わりました。英国が誇る世界三大ブルーチーズの一つ、スティルトンチーズを巡っては交渉が難航しましたが、結果、交渉が成立して、自分でも見かけたときには買って食べています。美味しいですよね(笑)。

眞鍋かをりさん チーズ業界では、英国のチーズは良い工房さんが増えていて、注目度がとても上がっています。安く買うことができるのは嬉しいです。
こうやってお話を聞いてみて、これまで財務省の仕事と聞くと、数字を見て緻密な仕事をされているようなイメージだったのですが、とても多岐にわたってお仕事をされているということが分かってイメージがすごく変わりました。
写真2: 眞鍋 かをりさん


役所の役割について

眞鍋かをりさん 予算を扱っている主計局などは、政治家の方に説明をされたり、国会での答弁に関わったりするというイメージがあります。

恵﨑室長 国会では基本的に大臣等の政務が答弁をするのですが、その案を作ったり、国会審議の現場において大臣等が詳細な制度についての質問などを受けて、補佐が必要な場合に対応するということがあります。

眞鍋かをりさん まさにそんなイメージを持っています。私は仕事で、政治家の方々とお話しする機会も多いのですが、政治家の方と役所ではどういった役割分担になっているのでしょうか。

恵﨑室長 国民の代表者は国会議員なので、役所は国会での審議をサポートしています。非常にざっくりした話をすると、予算や税法といった政策は、民間企業に置き換えると商品のようなものだと思います。国民という顧客に対してどういう商品を売るのが良いかということを、世の中のニーズをきちんと踏まえた上で提案して、顧客(国民)の代表である政治家がその決定をするといったところでしょうか。

関谷補佐 民間企業で言うと、意思決定をする社長が様々なことを検討すると思いますが、検討の土台となるデータや案を持って行くのは各部署の役目かと思います。データを踏まえて決断をする社長が政治家、データとその解釈、対応案を提供するのが役所、このような役割分担だと思います。
役所から出されたデータや数字も踏まえつつ、それ以外にも国民の思いなど様々な要素を全部考慮して最終的に決定するのが政治の役割ではないかと思います。

眞鍋かをりさん 皆さんは、普段表に出ていくわけではないですが、自分が関わった案件に関するニュースや国民の反応について気にされたりするのでしょうか。

高橋主査 もちろん、あらゆる施策に関わらせていただく中で、各施策により実際にどういった反応が世の中で起きているか、どのように受け止められているかということは常に気にしています。

恵﨑室長 最近、外国からの観光客が増える中で、空港で入国手続きのために行列ができているとSNSでも話題になってしまい、税関でもすぐに対応をとりました。

眞鍋かをりさん 今の話を聞いて少しほっとしました。私たちからすると皆さんは普段顔が見えませんが、そのようにちゃんと声を気にして吸い上げて対応してくださっているんですね。
虐待防止の活動に関わっているのですが、以前、子どもに関する予算を大幅に増額してほしいという皆さんの声を内容に含んだ意見書を厚生労働省に提出する活動を行いました。最後は財務省が予算を付けるかどうかだと思いますが、実際に翌年予算も増えたので、そういったプロセスを経て財務省の皆さんにきちんと声が届いたということなんだなと感じました。

高橋主査 財務省には様々な意見が集まってきますが、具体的に多くの方からこういう意見があるという声を頂けると、要望された施策の必要性を判断するための材料として強く受け取ることができます。
そうした世の中の意見を踏まえて、他方であらゆる施策の要望をすべて実現できるほど財政に余裕があるわけではない中、様々な施策の優先順位をどのようにするかを議論することになります。

眞鍋かをりさん 声が届いていると思っていなかったので、こうやって直接話を聞いて、ここまで届いているんだということが実感できました。
写真3: 関税局総務課 政策推進室長 恵﨑 恵
写真4: 主計局 主査(総務係担当) 高橋 実枝


ワークライフバランスについて

眞鍋かをりさん 皆さんのお仕事が少し理解できたところで、違う視点で伺いたいのですが、皆さん、子育てしながらどのように仕事との両立をしているのでしょうか。以前、厚生労働省の方と話をしたときには、男性の意識は変わっていて子育てへの関心は高まっているものの、聞いた職員が男性だったこともあり、一応自身も参加しているもののやっぱりメインは妻だというケースが多かったです。

高橋主査 回っているかどうかと聞かれると正直てんやわんやで何とか生きているという感じではありますが、夫やベビーシッターさんも含めて役割分担しながらどうにかやっています。男性側の育児参加については育児を「手伝っている」とか言ってしまう男性がいたら結構な殺意を覚えますよね。(笑)自分も当事者という意識を持っているかどうかがものすごく重要なことだなと思います。

関谷補佐 私は、夫も含めて実家が遠いので、子育てを両親に頼むことは難しいです。自分と夫とベビーシッターさんで交代して子育てを乗り切っています。眞鍋さんはどうされているんですか?

眞鍋かをりさん 私は両親にも手伝ってもらいます。ご両親が遠いとなかなか難しいところもありますよね。
ベビーシッターといえば、一時期、接待交際費としてキャバクラに支払う費用が税制上の必要経費として認められるのに、ベビーシッター代は認められないのかということが、個人事業主さんを中心に話題になったこともありました。

高橋主査 確かに、個人事業主の方、特にシングルマザーで働かれている方等からすると、仕事をしていくためにベビーシッターを利用することは必要不可欠な場面も多いと思いますので、それこそ必要経費といえますよね。

関谷補佐 同じ関連では、以前、ベビーシッター利用のための助成金が課税対象かどうかといった議論があり、霞が関でも声をあげる女性がいました。政策を立案する側に当事者、女性がいることでできることもあるのだと思います。

眞鍋かをりさん やはり当事者がいないと、本気で頑張ってくれる人がおらず、生まれないこともありますよね。

高橋主査 財務省の中も徐々に変わってきているところかな…という感触ですが、職員の中にも共働きも増えていますし、多様な職員が活躍するようになってきているとは思います。

眞鍋かをりさん 職場には、託児所などもあったりするんですか。

高橋主査 はい。私も育休明けに利用していました。財務省は定期人事異動が7月なのですが、保育園に空きが出るのは年度替わりの4月頃しかないので、その意味で職場の保育園は4月でなくても入れて、非常に助かりました。

恵﨑室長 それも職場内のアンケートを基にして実現したものです。他にも、省内には女性休養室というものがあります。

高橋主査 男性だと休憩時間に自分の席で寝て休憩したりしているのですが、女性はなかなかしづらいので、特に体調が優れない時等はそういった休養室があると非常にありがたいです。
先ほどの職場内アンケートは、数年前から始めている「財務省再生プロジェクト」の一環で行われたのですが、当初はコンプライアンスの確保を軸にやっていましたが、併せて組織の働き方の改善、組織風土づくり等、総合的に財務省という職場を良くする活動に取り組み続けています。
本活動の取組により、コロナ禍も相まって、ここ数年で財務省のテレワーク環境は劇的に改善されました。必要な場合には自宅から仕事ができるという選択肢が増えるという点において女性職員の活躍の幅も広がったように思います。


財務省の組織風土について

眞鍋かをりさん 子ども関係の支援は異次元の対応と言われていますが、親目線でいえば嬉しい部分もあるものの、やはり財源とセットで考えないといけないものなのでしょうか。
また、こうした点も含めて、省内ではいろいろな意見の違いというものも、あるものですか。

関谷補佐 支援を持続可能なものにしていくためにも、財源とセットで議論をすることは重要だと思います。
また、意見については、比較的言いやすい環境ができていると思っていて、若い人でも一理あるなと思われれば、しっかりと耳を傾けられます。昔から議論好きの役所だと言われていますが、昔は今より、上司の言った内容にはあまり意見を言い難い場面もあったかもしれませんが。

眞鍋かをりさん かなり民主的な職場になっているんですね。
財務省にはブラックなイメージもありましたが、先ほどのコンプライアンスの確保も含めて、時代の変化に応じて変わってきているんだなと感じます。ちなみに、ママ友とかとお話ししていて、そういった面で「財務省」について、世間とのギャップを感じることはありますか?

恵﨑室長 難しいことをやっている人、みたいに思われてしまうことはあります。自分としてはとても普通な感じではあるのですが…(笑)

眞鍋かをりさん 話しているとすごく普通であることを実感できます。財務省が牛耳っているみたいなイメージが世間では流れていますが、こんなにざっくばらんにお話しできると思っていませんでした(笑)。

高橋主査 確かに、悪役みたいに描かれることが多く、財務省の人間って一体どんな奴らなんだと思われていることが多いですが、実際働いている人間は実はこんな普通な感じでして。主計局の主査になると数千億円という単位の予算を担当させていただくことにもなりますが、やっていることは結局沢山の人や相手省庁に話を聞いて議論を積み重ねながら一つ一つ決めていくという仕事です。

眞鍋かをりさん これまで政策に関わって、それによって社会が良くなっているようなことを実際に実感できたことはありますか?

恵﨑室長 以前、企業の設備投資を促進する税制の設計に関わったことがあります。その次の年に現場の仙台国税局に出向したのですが、笹かまぼこを製造する会社に話を聞いた際、古くなったかまぼこ製造機を、その税制が適用されるから新しくしようかなという話をしていて、自分が関わった仕事が「企業や人の行動を変えているんだな」と実感してやりがいを感じました。

眞鍋かをりさん なるほど。歳をとるごとに、結婚したり子どもが生まれたり、社会との関わりが増え、自身も国民として、政策について実感するシーンが増えていきますよね。
例えば、税金や保険料は若いころはとられているだけみたいな実感ではありますが、病気になったり、介護があったり、社会に支えられているということを、セーフティネットを実際に利用する側として実感するような気がします。
子育てもそうですが、一つひとつが大切でも、あちこちから「ちょーだいちょーだい」という声が寄せられる中で、それを決めていくのは大変ですよね。

高橋主査 今の仕事をやらせていただく中で、あらゆる政策には意義があって、それぞれの立場にとってはそれぞれの正義があるんだなということを感じます。難しく絶対的な正解はない中で、議論して決めていくしかないのだと思います。

関谷補佐 そうですね。「それは要らないだろう」というものはそうあるものではなく、当事者にとっては全て切実で、全部必要なのだけれどその優先順位をどうつけていくのかということだと思います。

眞鍋かをりさん 財務省にはあまり女性のイメージはなかったのですが、財務省で働くことは女性にとってもお勧めでしょうか? 新しく入省してくる方にも女性は多いのでしょうか。

関谷補佐 最近は実際に女性職員が増えてきている中、そのこと自体が財務省の雰囲気を変えていて、周りの人の意識も変わってきており、組織としても変わらざるを得ないことに繋がるのだと思います。

恵﨑室長 お金のことをやっている、というと難しく聞こえるかもしれませんが、税や予算を始めとして生活に密着した内容の仕事が多いので、そういった面で女性にとっても想像力が働きやすく、面白い分野の仕事が多いのではないでしょうか。

眞鍋かをりさん そうした職員の皆さんが、皆さんのように子育てして戻ってきて働いていける組織になっていくといいですね。
写真5: 主計局給与共済課課長補佐 関谷 遥香


おわりに

原田室長 本日はお集まりいただき、本音かつ面白いお話をお聞かせいただきありがとうございました。また次回、違った切り口でもお話を聞ければと思います。
写真6: 一番右が眞鍋かをりさん

図1. 税関イメージキャラクター「カスタム君」民全般を対象とした経済・財政についてのアンケート調査」の紹介」