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特集 令和4年度の事例集から紹介 全国財務局の地域連携の取組

財務局は各地域におけるニーズを踏まえながら、地域連携を推進している。その内容は地域連携事例集として公表しており、令和4年度は9分野・40の事例をまとめた。本特集では、その中から13事例を紹介する。
取材・文 向山 勇

財務局は、財務省の総合出先機関として、また、金融庁からの事務委任を受け、地域に根差し、財政や国有財産、金融等に関する施策を実施しています。その際、地域と連携しつつ、組織としての総合力を発揮して、地域貢献に取り組んでいます。また、財務省及び金融庁の施策を広報するとともに、地域の声や経済の実態を本省庁に伝達し、効果的な施策の形成に寄与することを使命としています。こうした機能を発揮することで、財務局は、各々の時代の要請の中で地域とつながり、地域と財務省・金融庁をつなぐ結節点となり、財政健全化や地域経済活性化に向けた施策を推進しています。加えて、地域の主体とのネットワークを形成し、活用することで、地域の課題解決等をサポートする「地域連携」の取組を推進するほか、地方公共団体等が行う地方創生を支援しています。
令和4年度は、各財務(支)局において、各地域で取り組む分野等を事前に広報し、積極的に地域連携を推進するとともに、各地域におけるニーズを踏まえながら、より地域に貢献できるよう取組を深化させるため、地域連携取組方針等の策定・公表を行いました。また、コロナ禍を経て、ウェブ会議や動画配信を積極的に活用するなど創意工夫を凝らし、地域の実情やニーズを把握し、課題解決に向けて様々な取組を行いました。


財政に関する取組

CASE01
地方公共団体との対話で把握した地域課題の解決サポート
北陸財務局
北陸財務局では、北陸3県(石川・富山・福井)全ての市町村長と毎年度、意見交換を実施している。また、財政融資資金の貸し手として地方公共団体の財務状況把握等を行っている。これらの機会に「地域の交通環境・公共交通の維持が課題であり財政負担にも影響している」との声を把握した。
課題解決に向けて、専門的な知見を有する国土交通省北陸信越運輸局に働きかけ、「地域公共交通と財政等課題解決に係るセミナー」をオンライン開催した。このセミナーで、同運輸局から地域公共交通の現状と課題解決に向けた施策等について説明があった。また、北陸財務局の連携協定先であり「地域公共交通」をテーマとしている金沢学院大学経済学部からバス需要の分析結果等について発表があった。
その結果、北陸3県16団体、新潟・長野両県12団体のほか、各運輸支局や他財務局(6局)など幅広い参加(約100アカウント参加)につながり、参加者から好評を得た。また、大学及び財務局のプレゼンス向上と連携強化にも寄与した。

参加者の声
●補助金関連の情報は予算査定等で重要なので大変参考になった。
●学生からの発表は、公務員とは違う視点があり興味深かった。
●若者が地域公共交通に関心を深める場になったことは大きな意義。

写真:金沢学院大学研究発表の様子


国有財産に関する取組

CASE02
国庫帰属財産の円滑な処理に向けた関係機関との連携拡大
四国財務局
令和2年6月に香川県内の家庭裁判所や弁護士会等の関係機関と「国庫帰属財産にかかる連絡会」を設置し、以後、定期的に開催している。令和5年3月に開催した第4回連絡会においては参加者を拡大し、対面での開催に加え、徳島・愛媛・高知の各県関係団体にオンライン配信を実施した。また、管内の国庫帰属財産の利活用の可能性について、香川県丸亀市と意見交換を行った。
その結果、第4回連絡会では、参加団体が当局を含め合計22団体に増加し、各団体間で更なる連携強化を図ることができた。また、香川県丸亀市との意見交換では、国庫帰属財産のほとんどが農地であることから、農地の利用促進に関する同市の取組について説明を受けた。今後、周辺環境に合わせた宅地化も視野に、地域の要望等について情報共有し、意見交換を継続していく。

写真:第4回連絡会の模様


金融に関する取組

CASE03
地域の基幹産業における中長期課題に対する取組
東海財務局
自動車産業はサプライチェーンの裾野が広く、かつ階層化され、階層ごとに取引金融機関の業態が異なる構造となっている。カーボンニュートラル(CN)を円滑かつ迅速に進めるためには、自動車産業界と金融機関の間で、また、階層縦断的な情報共有が不可欠である。東海財務局は、中堅・中小サプライヤーのCN対応をサポートする金融機関と自動車産業界が一体となって取り組むためのプラットフォーム(連絡会)を発足。製造現場のCO2等排出量削減対応を主テーマに開催している。
金融機関から出された課題や意見要望等に対し、連絡会では、完成車メーカー(OEM)から「自動車業界団体におけるOEM間での測定ルール共通化」の取組が紹介されたほか、OEMや上位サプライヤーによる説明会の実施状況等を紹介した。その結果、3次サプライヤー(Tier3)以下の層(図参照)の対応が十分に進んでいない状況が認められたため、金融機関においては、CO2等排出量の見える化や削減策の実行に伴い、必要となる資金繰り支援や財務改善支援等を的確に行う必要があることが分かった。


地域経済調査に関する取組

CASE04
地域経済情勢に関する情報共有
福岡財務支局佐賀財務事務所
佐賀財務事務所では、経済団体からの依頼を受け、経済団体の職員(経営指導担当者)向けに、当事務所が調査・公表している「佐賀県内経済情勢報告」や「法人企業景気予測調査」をはじめとした、佐賀県内の統計データの読み方・解き方に関する研修会を実施した。また、同団体からの依頼を受け、出前講座や講演を実施し、最新の調査等の結果について詳しく説明した。
その結果、出前講座の参加者からは、「統計データの見方などの理解が深まった」「今後の事業支援等の際に活用したい」などの声が寄せられた。また、講演の聴講者から「会員へも情報を還元したい」「統計等を踏まえ様々な視点で考える必要性を感じた」などの感想も聞かれた。
今後もこうした継続的な取組を通じて、地域の関係者と経済情勢に関する情報を共有していく予定。

写真:出前講座の様子
写真:講演の様子


広報相談に関する取組

CASE05
過疎地の小規模高校での財政教育プログラムの実施
北海道財務局及び旭川財務事務所
北海道では、過疎地の高校を中心に、進路希望に対応した教科・科目の開設が困難な小規模高校が増加している。令和3年4月、これらを一元的に支援し、オンラインで授業を行うこと等を目的とした、北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)が開設された。
同センターの公民科担当教諭等と連携し、これまで提供機会がなかった過疎地の小規模高校において、財政教育プログラム(財務局が小・中・高校生を対象に実施している国の予算編成を疑似体験する出前授業)を実施した。
その結果、北海道は広域で、かつ、過疎化した地域が多く存在するという特徴のある中で、都市部の高校と同様の教育環境を得たいという地域のニーズに応えながら、日本の財政に興味を持つ機会を拡大することができた。今後、遠隔授業が導入される学校の増加が見込まれており、同センターと引き続き連携し、ネットワークを活用しながら、過疎地の小規模高校での財政教育プログラムの提供機会を拡大していく予定。

写真:(左)豊富高校でのグループワークの模様。旭川財務事務所職員が訪問(令和4年11月9日)
写真:(右)T-baseでの配信の様子

CASE06
フューチャーデザインを活用した財政教育プログラムの展開
東北財務局盛岡財務事務所
盛岡財務事務所では、連携先である岩手県矢巾町がまちづくりに活用している「フューチャーデザイン(FD)」の考え方を財政教育プログラムに取り入れ、県内の中学・高校・大学等で展開し、若年層が将来世代の視点に立って日本の財政を考え、活発に議論する機会を創出した。
矢巾町と盛岡財務事務所は同町の財政状況に関する住民説明会を共同で開催するなど、以前から連携関係にあった。他方、同町では従来からまちづくりにFDの考え方を活用してきたところ、これを財政教育プログラムにも活用できるのではないか、との発想から実施に至った。令和3年10月の大学生向けを皮切りに、令和4年度以降は中学生、高校生にも順次展開。新聞記事などの各種メディアにも取り上げられている。盛岡財務事務所では、矢巾町から学んだノウハウを取り入れながらFDを活用した財政教育プログラムの実施先の拡大につなげていく。
フューチャーデザイン(FD)とは
「数十年先の未来からタイムマシンで飛来した未来人」という仮想の下、「将来世代がよりよく生きるため」という観点から思考・検討・議論する手法。

写真:グループワークの様子


経済安全保障に関する取組

CASE07
我が国の経済安全保障に関するセミナーを開催
九州財務局
九州財務局では、令和4年7月から新たな業務となった「対内直接投資審査制度」の周知活動として、管内の士業や金融機関等を訪問。その際「我が国の経済安全保障について知りたい」との声が多かったことから、広く参加者を募り、関係府省庁等の担当者を講師とした「経済安全保障セミナー in Kumamoto」を開催した。
内閣府、公安調査庁、熊本県警、財務省国際局、税関の担当者から、我が国の経済安全保障に係る対応状況や技術流出の実例を基に講演を実施(WEB+対面)。管内の士業、金融機関、半導体・精密機械関連企業、大学・高専、地方公共団体など約90名が参加した。セミナーの模様は、テレビで放送されたほか、地元紙や金融業界紙でも報道されるなど取組の周知につながった。
今後も関係府省庁等と連携し、効果的かつ相手方が理解しやすい制度周知になるよう説明方法を工夫していく。

参加者の声
●経済安全保障の全体像、守るべき対象の広がり等を学ぶことができてよかった。
●半日という短い時間だったが、とても有意義なセミナーだった。

写真:セミナーの様子


金融リテラシー向上や金融犯罪被害防止に向けた取組

CASE08
まちの“文化祭”への参加
~将来を担う子どもたちに新しいカルチャーを~
北海道財務局
札幌市民の地域文化への関心を高め、子どもたちの健全な育成等につなげることを目的として、まちの文化祭イベント「カルチャーナイト」が開催されている。同イベントの趣旨に賛同した北海道財務局の若手有志メンバーが「北斗七星PT」を結成し、高校生を対象に、お金や将来のことを考えるきっかけとして、『YOMANABI 夜に学ぶお金の知識』を開催した。
定員を上回る23名が参加し活発な議論が行われるなど、若年層における金融経済に対する関心の高さがうかがえた。講座は「知識の定着」と「主体的な学習」を目指した構成で、特に「資産形成ゲーム」において、参加者が楽しみながら株式取引の疑似体験ができるという若手プロジェクトチームならではの工夫を加えたことで、参加者から好評を得た。

参加者の声
●普段学べないことが経験できて、将来役に立つと思った。

写真:講座の様子

CASE09
高校生・大学生に「金融」×「財政」出前講座を実施
沖縄総合事務局
沖縄総合事務局は、学生をはじめ地域の幅広い世代へ、金融リテラシー向上のための金融経済教育の推進や財政広報に取り組んでいる。本件は、「金融」講座、「財政」講座に加え、相手方のニーズを踏まえ「金融」と「財政」をミックスした出前講座を実施したもの。
「金融」講座では、成年年齢引下げに係る金融リテラシーをテーマに、クレジットカードの仕組み、利用上のメリットや留意点、金融トラブル防止策等について説明。「財政」講座では、財政の役割や現状、年金や医療など身近な事例を交えて社会保障制度の意義等を説明。社会課題について様々な視点から考えることの大切さを説明した。
令和4年度は、延べ8高校・4大学で計1,759名を対象に出前講座を実施した。多くの学生から「財政・金融リテラシーについて理解できた」と回答があり、学生の財政・金融に対する理解向上に貢献することができた。

写真:出前講座の様子


災害に関する取組

CASE10
熊本駅周辺地域帰宅困難者対応訓練の実施
九州財務局
九州財務局は熊本地方合同庁舎の維持・管理を行っている。同庁舎において、大規模災害時に熊本駅周辺で発生が予想される帰宅困難者への支援体制を検証するため、九州財務局は関係団体と共同で対応訓練を実施した。熊本駅周辺地域帰宅困難者対策協議会(JR九州など駅周辺団体で構成)が主催し、物資・施設の提供を行う熊本市と九州財務局が共催の立場で参加した。
訓練を通じ、合同庁舎の災害対応能力の向上が図られたほか、災害時における帰宅困難者への支援体制を検証することで、地域防災に資することとなった。
今後も引き続き、「熊本駅周辺地域帰宅困難者対策協議会」に参加し、地域防災への貢献や合同庁舎の災害対応能力の向上に努めていく。

写真:避難訓練の様子


地方創生支援に関する取組

CASE11
島しょ部の課題解決に向けた取組
関東財務局東京財務事務所
東京財務事務所は、島しょ部(八丈町)の関係者と有識者をつなぎ、課題解決に向けた「東京活性化サロンin八丈島」を令和4年4月に開催した(八丈町商工会との共催)。東京活性化サロンは、地域経済を活性化することを目的とした、中小企業・金融機関・士業団体・支援機関・自治体・政府関係機関等の異業種交流を支援するプラットフォーム。今回のサロンでは、地元事業者が地域課題を説明し、これに関する講演を有識者が実施。地域の関係者と有識者をつなぐことで、地域課題の解決に貢献した。
同サロン実施後も、地域の関係者と有識者との間で、課題解決に向けた取組が進んでいる。引き続き地域のつなぎ役として課題解決をサポートしていく。

写真:サロンの様子

CASE12
大阪・関西万博開催に向けた機運醸成の取組
近畿財務局
近畿財務局では大阪・関西万博について、「開催に向けての機運が高まっていない」との課題を聴取し、取組を検討。取組に当たっては対象へアンケートを実施するなど、内容の充実を図った。
「万博活用キックオフ・シンポジウム」には、約60名が参加。パネルディスカッション等で出た意見、万博会場内外での取組、情報収集の方法等をまとめ、シンポジウム後に金融機関へ配付した。また、「万博deじもと魅力発信セミナー」には、現地、オンライン併せて約80名が参加。現地参加者のみを対象とした名刺交換会でも盛んに意見交換が行われた。
実施内容
■万博活用キックオフ・シンポジウム(R5.2.24)
金融機関の万博への協力機運を醸成するため、万博に取り組むキーパーソンが一堂に集うシンポジウムを開催。
■万博deじもと魅力発信セミナー(R5.3.20)
自治体を対象にトークセッション・交流会等を通じて参加者の連携を図り、機運醸成につなげるセミナーを実施。
■第3回関西交通ネットワーク大商談会(R5.5.30)
管内金融機関の取引先と高速道路SA・PAのテナント事業者の商談会を開催。商談会を通じて参加事業者の万博や金融機関に対する要望を聴取、今後の取組につなげていく予定。

写真:万博活用キックオフ・シンポジウムの様子
写真:万博deじもと魅力発信セミナーの様子

CASE13
異業種交流型職員研修
「ACTION2050カーボンニュートラルMATSUE」を開催
中国財務局松江財務事務所
松江財務事務所は、松江市と共催で、地元一般企業も交え、異業種交流型職員研修「ACTION2050カーボンニュートラルMATSUE」を実施。官民の若手・中堅職員24名がカーボンニュートラルをテーマとして、地域課題解決のための政策を検討。令和4年10月31日のキックオフイベントを皮切りに、計5回のワークショップを開催したほか、共感を呼ぶ政策とするため、有識者による講演やアドバイスを受ける機会を設けて、アイデアのブラッシュアップを重ねた。
その結果、令和4年12月27日に、松江市長へ5つの政策提言を実施した。当政策提言については、同市長の指示の下、市の関係部署が事業化に向けて検討を開始している。松江財務事務所としては、市の検討状況やニーズを把握した上で、財務局のネットワークをフルに活用し、今後も情報提供や関係先との連携等を通じて、松江市をはじめとした地域のステークホルダーと関係を強化していく。

5つの政策提言の内容
1. カーボンニュートラル×未来の公民館の在り方
2. 松江版Jクレジット
3. 大根島でエコツーリズム
4. 松江版MaaS
5. クリーン電力の地産地消

写真:研修の様子


今後の取組について
財務局は地域の様々な主体と連携・協働し、地域課題の解決に向けて創意工夫を凝らしながら、社会の変化に伴う新たなニーズに対応していくことで、希望ある社会を次世代に引き継ぐべく、地域経済の発展に貢献し、地域住民の皆様にとって役立つ組織となることができるよう、引き続き地域と積極的に連携してまいります。
なお、地域連携事例集は、財務省財務局のホームページで公開しています。令和4年度は、9つのカテゴリー、40事例を紹介しています。また、財務局ごとの地域連携事例や取組方針等も同ホームページから閲覧できます。
(大臣官房地方課)
https://lfb.mof.go.jp/renkei/jireisyu.html

図表 財務局の地域連携の取組
図表 実施した研修会等
図表 講座の構成
図表 東京活性化サロンの枠組み