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令和6年度概算要求基準の概要

主計局総務課主計官 有利  浩一郎


1.はじめに
我が国が「時代の転換点」とも言える内外の歴史的・構造的な変化と課題に直面する中、令和6年度予算では、新時代にふさわしい経済社会の創造に向け、政府一丸となって、大胆な政策展開を図ることが求められている。
構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大、こども・子育て政策の抜本的な強化を含めた「新しい資本主義」の加速、さらには防衛力の抜本的な強化を始めとした我が国を取り巻く環境変化への対応など我々が挑戦すべき重要な政策課題は多岐に渡るが、これらの分野に必要な予算が重点的に振り向けられるよう、全体を通じて、メリハリ付けを意識しながら、予算編成に臨むことが重要である。
また、令和6年度予算においては、「骨太方針2023」において、「歳出構造を平時に戻していくとともに、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないように取り組む」とされている。我が国が直面する重要かつ困難な課題に的確に対応しつつ、これまでの歳出改革努力を継続していくことにより、経済成長と財政健全化の両立に向けた取組を着実に進めていくことも不可欠である。


2.令和6年度概算要求基準の基本的な考え方
令和6年度予算においては、「経済財政運営と改革の基本方針2023」*1(以下「基本方針2023」という。)、「経済財政運営と改革の基本方針2022」*2(以下「基本方針2022」という。)及び「経済財政運営と改革の基本方針2021」*3(以下「基本方針2021」という。)に基づき、経済・財政一体改革を着実に進めながら、歳出全般にわたり、施策の優先順位を洗い直し、無駄を徹底して排除しつつ、予算の中身を大胆に重点化していく方針である。
このような基本的な考え方の下、「令和6年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」*4(以下「令和6年度概算要求基準」という。)が本年7月25日に閣議了解されたところである。
令和6年度概算要求基準の大要は、以下のとおりである。
1)地方交付税交付金等、年金・医療等、裁量的経費及び義務的経費については前年度までの仕組みと同じとしつつ、新たに防衛力整備計画対象経費の分類を設け、「防衛力整備計画」*5を踏まえ、所要の額を要求することとした。
2)その上で、「基本方針2023」における「重要な政策の選択肢をせばめることがないよう」にするという方針に則る観点から、「基本方針2023」、「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画2023改訂版」*6(以下「新しい資本主義実行計画2023改訂版」という。)等を踏まえた重要政策については、「重要政策推進枠」として別途要望を可能としているほか、物価高騰対策等を含めた重要政策については、必要に応じて、「重要政策推進枠」や事項のみの要求も含め、適切に要求・要望を行い、予算編成過程で検討することとしている。
令和6年度概算要求基準のイメージは下図 令和6年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針についてのとおりであり、その具体的内容については3.以降で説明する。


3.要求・要望について
(1)年金・医療等
年金・医療等に係る経費については、前年度当初予算額に、高齢化等に伴ういわゆる自然増(5,200億円)を加算した範囲内で要求することとしている。
年金・医療等に係る経費について、「新経済・財政再生計画 改革工程表」に沿って着実に改革を実行していくことを含め、合理化・効率化に最大限取り組み、「基本方針2021」等における「新経済・財政再生計画」において示された「社会保障関係費については、基盤強化期間においてその実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す方針とされていること、経済・物価動向等を踏まえ、その方針を継続する」との考え方を踏まえつつ、その結果を令和6年度予算に反映させることとしている。

(2)防衛力整備計画対象経費
本年度新たに追加した枠組みであり、「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」(令和5年法律第69号)第1条第3項に規定する防衛力整備計画対象経費については、「防衛力整備計画」を踏まえ、所要の額を要求することとしている。

(3)地方交付税交付金等
地方交付税交付金等については、「新経済・財政再生計画」との整合性に留意しつつ、要求することとしている。

(4)義務的経費
義務的経費については、前年度当初予算額の範囲内で要求することとしている。その上で、聖域を設けることなく抜本的な見直しを行い、可能な限り歳出の抑制を図ることとしている。
なお、義務的経費を削減した場合には、同額を裁量的経費に振り替えて要求できる仕組みとしている。

(5)その他の経費
その他の経費(裁量的経費)については、前年度当初予算額の90%(「要望基礎額」)の範囲内で要求することとしている。

(6)重要政策推進枠
令和6年度予算においては、構造的賃上げの実現、官民連携による投資の拡大、こども・子育て政策の抜本的な強化を含めた新しい資本主義の加速や防衛力の抜本的な強化を始めとした我が国を取り巻く環境変化への対応など、重要な政策課題に対応するため、「基本方針2023」、「新しい資本主義実行計画2023改訂版」等を踏まえた重要な政策について、「重要政策推進枠」を設け、前年度当初予算におけるその他の経費に相当する額と要望基礎額の差額に100分の300を乗じた額及び義務的経費が(4)の額を下回る場合にあっては、当該差額に100分の300を乗じた額の合計額の範囲内で要望できる仕組みとしている。


4.予算編成過程における検討事項
令和6年度予算編成過程においては、施策の安定性・継続性にも留意しつつ、施策・制度の抜本的見直しや各経費間の優先順位の厳しい選択を行うことにより、真に必要なニーズに応えるため精査を行う。その上で、物価高騰対策等を含めた重要な政策については、必要に応じて、「重要政策推進枠」や事項のみの要求も含め、適切に要求・要望を行うこととし、予算編成過程において検討を加え、「基本方針2023」で示された方針を踏まえ措置する。
また、「こども未来戦略方針」*7で示された「こども・子育て支援加速化プラン」の内容の具体化については、予算編成過程で検討することとしている。

*1) 令和5年6月18日閣議決定。
*2) 令和4年6月7日閣議決定。
*3) 令和3年6月18日閣議決定。
*4) 本文は、以下の財務省ウェブサイトから参照可能。
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2024.html
*5) 令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定
*6) 令和5年6月16日閣議決定
*7) 令和5年6月13日閣議決定