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私たちは歩み続ける、月への挑戦を決してあきらめない

株式会社ispace 代表取締役 CEO & Founder 袴田 武史


ispaceは2010年9月の設立以来、地球と月が一つのエコシステムになる世界を目指す「Expand our planet. Expand our future.~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」を長期ビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業です。
地球でのより豊かで持続的な生活は、人工衛星を中心とした宇宙インフラ無しでは成立し得なくなっています。通信、農業、交通、金融、環境維持など様々な産業が宇宙インフラに依存し、今後IoTや自動運転などの発展に伴いその重要性は更に高まっていきます。私たちは宇宙インフラを持続的かつ効率的に構築していくための鍵として、一番大きなコストである輸送コストを大幅に削減できる宇宙資源の活用に着目しています。
月に存在する貴重な水資源を活用して宇宙インフラを構築し、人類の生活圏を宇宙に拡大することで、宇宙インフラを軸とした経済が地球に住む人々の生活を支え、持続性のある世界を実現する。これが究極の目標であり、水資源探査はその目標への出発点と信じています。
民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」は、私たちが2024年までに行う2回の月探査ミッションを統括するプログラムです。昨年12月に米国フロリダから月へ打ち上げたランダー(月着陸船)によって、今年の4月26日に民間企業として世界初の月面着陸に挑戦しました。
着陸シーケンスの終盤、ランダーは月面高度約5kmにまで接近しましたが、高度測定には異常が生じており、低速での降下運用を続けたものの、月面着陸には至りませんでした。推進系の燃料が尽きた時点でランダーの姿勢制御を含む動力降下制御が止まり、月面に自由落下をしたと考えられます。
私たちは今回、10段階のマイルストーンを設定し、Success 8まで成功を収めることができました。月面着陸及び通信の確立はSuccess9に当たり、達成こそできなかったものの、着陸シーケンス中のデータも含め月面着陸ミッションを実現するうえでの貴重なデータやノウハウなどを獲得することができました。これは、今後の月面探査を進める上で大きな飛躍であり、日本のみならず、世界の民間企業による宇宙開発を進展させる布石になると強く信じております。重要なのは、この知見と学びをミッション2以降にしっかりとフィードバックし、経験を活かすことです。私たちはすでにHAKUTO-Rのミッション2(2024年)と、続く2025年のミッション3を同時並行で開発を進め、継続性を維持できる経営基盤を有しています。経営基盤の確立のため、継続的な資金調達や日本、米国及びルクセンブルク3か国での体制確保に努めてきました。今後も一層の強化を図っていきます。
ビジョンの実現には多くの課題を解決する必要があります。重要なのは技術のみならず、金融、法律、政策、科学、教育、環境保全など、社会システムからデザインしていく必要があり、そのためには、様々なステークホルダーが関心を持ち、参加し、地球レベルの協働が不可欠です。この大きなシステムとして機能させる考え方を私は留学先のジョージア工科大学の大学院で会得しました。
いまや宇宙産業でも、スタートアップによるブレークスルーが生まれ、多分野との融合によるイノベーションが加速しています。私たちも積極的に様々な分野と融合し、その全体像を捉えて最適化するシステム的思考を重視しています。日本が誇る高品質のモノづくり、協調的なリーダーシップで世界をリードし、人類の生活を支えていく宇宙規模の生活圏の構築に貢献していきます。地球と月がひとつのエコシステムとなり、地球での生活がより豊かで持続的に発展していく世界を、様々なプレイヤーとともに創っていきます。
私たちは今後も、不確定なリスクを恐れず、挑戦の歩みを決して止めません。これからも温かい応援をいただければ幸いです。