SMART CITY TOYAMA~コンパクトシティ政策とスマートシティ政策の融合~
富山市企画管理部 スマートシティ推進課 課長代理 中村 圭勇
1.はじめに
富山市は、日本海側のほぼ中央に位置し、水深1,000mの「海の幸の宝庫」富山湾から標高3,000m級の北アルプス立山連峰まで標高差4,000mの多様な地勢と雄大な自然を誇り、また、古くから「くすりのまち」として全国にその名が知られるように、薬業をはじめとする様々な産業と高度な都市機能、そして、多様な文化と歴史を併せ持つ日本海側有数の中核都市として発展してきました。
本市では、これまで「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を政策の中心に据え、公共交通の活性化、公共交通沿線地区への居住推進、中心市街地の活性化などに取り組み、2012年にはOECD(経済協力開発機構)がコンパクトシティ政策の世界先進5都市として本市を取り上げるなど、本市のまちづくりは国内外から高く評価されております。
写真: 日本海側有数の中核都市 富山市
2.コンパクトなまちづくりの“深化”
一方で、近年は、本格的な人口減少や少子・超高齢化の急速な進行により、約12万haもの広大な市域を有する本市においては、中山間地域をはじめとする都市の郊外部において、経済社会活動の担い手不足や地域コミュニティの機能低下などの地域課題が顕在化しており、持続可能で将来世代に責任が持てる都市経営が求められています。
こうしたことから、本市では、これまで推進してきたコンパクトシティ政策をさらに“深化”させるため、デジタル技術やデータを利活用し、地域課題や市民の困りごとを解決することで、市民生活の質および利便性の向上を図るスマートシティ政策に取り組み、コンパクトシティ政策をスマートシティ政策で補完・融合することにより「富山市版スマートシティ」の実現を目指すこととしました。
写真: 富山市のコンパクトシティ政策
3.富山市スマートシティ推進ビジョン
本市では、令和4年11月に「富山市スマートシティ推進ビジョン」を策定しました。このビジョンは「富山市版スマートシティ」の実現のため、今後取り組むスマートシティ政策の基本理念(「コンパクト&スマート」「市民(利用者)中心主義」「ビジョン・課題フォーカス」)や方向性を定めたものであり、同時に産学官民が共有し、共に行動するための指針ともなるものであります。
デジタル技術やデータの活用はあくまで“手段”であり、スマートシティ政策に取り組む“目的”は市民生活の質および利便性の向上であることから、市民にとっての「ありたい暮らし」とは何かを把握するため、市内3ヶ所、計6回の市民ワークショップを開催し、参加した延べ119名の市民による約2,700の意見を基にビジョンを策定しました。
今後はこのビジョンを市民の皆さまや企業・団体等に周知し、共有することで、産学官民が一体となって「富山市版スマートシティ」を推進していきたいと考えています。
写真: SMART CITY TOYAMAのロゴマーク
4.産学官民が共創するスマートシティ
スマートシティは行政だけで実現できるものではありません。デジタル技術やデータ利活用のノウハウを有する企業や研究機関、そして何より市民の参画が必要不可欠です。
特に、スマートシティ関連サービスは多くの市民が関心を持ち、実際に使ってみることでサービス品質が向上すると考えられます。したがって、「富山市版スマートシティ」では、市民が真に求めるサービスで、その効果を実感しやすいものから優先的に取り組むこととしています。
令和5年度の当初予算では「スマートシティ推進ビジョン特別枠」として44事業を計上するとともに、その中で、町内会等の電子回覧板アプリ導入を支援する「電子回覧板導入支援事業」やスマホを使ってネットスーパーを利用できるよう支援する「スマホ買物支援事業」など、市民の困りごとを解決する事業の拡充を図ったほか、交通不便エリアを対象として行う「自動運転車両実証実験」や「AIオンデマンド交通システム導入事業」、通院不便エリアを対象として行う「中山間地域オンライン診療・服薬指導実証実験」など、地域課題を解決するための実証実験にも積極的に取り組むこととしております。
また、産学官がこれまで以上に連携しながらスマートシティに取り組んでいくため、推進組織として「富山市スマートシティ推進プラットフォーム」を設置することとしています。
さらに、本市は平成30年に市内の居住人口の98.9%をカバーする「富山市センサーネットワーク」を構築し、IoTデータの収集環境を無償提供することで民間企業主導の実証実験を促すとともに、令和2年には未来共創拠点施設「Sketch Lab(スケッチラボ)」を整備し、産学官民の共創にも試行的に取り組んでいます。
こうした本市特有のリソースも活用しながら、市民ニーズに合致したスマートシティ関連サービスの創出を図るとともに、コンパクトシティ政策とスマートシティ政策が融合した「富山市版スマートシティ」の実現を目指してまいります。
写真: 未来共創拠点施設「Sketch Lab」
「富山市版スマートシティ」の今後に期待が高まる
地方創生コンシェルジュ
北陸財務局富山財務事務所長 長谷川 正浩
富山市は、「コンパクトシティ」の先進地として、国内外から高い評価を受けています。実際に、公共交通の活性化が沿線地区への居住に繋がるなどの好循環もあり、富山市人口の社会増が続くなどの成果が現れています。
そのコンパクトシティの深化としての「富山市版スマートシティ」は、データサイエンスを活用した産官学連携の事業として注目を集めているところです。少子・高齢化などの問題が顕著となっている中山間地域をはじめとする郊外部においても、便利で安心できる持続可能なまちづくりが更に発展していくことを期待しています。
「小さくても、みんなが笑顔で、幸せを感じるまち」琴平町
企画防災課 主幹 森本 卓也
1.琴平町の概要
琴平町は、香川県のほぼ中央に位置し、人口約8,000人、面積は8.47km2と香川県内で面積・人口ともに2番目に小さな町です。小さな町ですが、讃岐のこんぴらさんで有名な「金刀比羅宮」には、古より多くの参拝客が訪れており、その門前町として栄え、四国を代表する全国有数の観光地です。
2.四国金毘羅ねぷた祭り
こんぴら歌舞伎は天保6年(1835年)に建設された現存する日本最古の芝居小屋で、昭和60年(1985年)から絶え間なく公演されてきましたが新型コロナウイルス感染症の影響で令和4年は中止となりました。このため、こんぴら歌舞伎を愛する全国の方々や町民の方々から悲しみの声が上り、町として、代替イベントが必要であると考えていました。
そこで、「暫(しばらく)」をはじめとした歌舞伎の演目が題材となることもあり、首都圏など県外での運行実績もある弘前ねぷたとコラボし、中止となった「第36回四国こんぴら歌舞伎大芝居」の演目の一つである「義賢最期」を題材に新たに描き下ろした、高さ約8mのねぷたの町内夜間運行を実施し、琴平町のにぎわい創出に取り組むこととしました。
令和4年5月27日(金)・28日(土)に、弘前市首都圏キャンペーン実行委員会主催により、「四国金毘羅ねぷた祭り」が行われました。青森県弘前市の重要無形民俗文化財である「弘前ねぷたまつり」で実際に運行されるものと同様のねぷたを琴平町内で夜間運行するとともに、町内に歌舞伎の「幟(のぼり)」や「金魚ねぷた」を展示し、関連イベント等を実施するというものです。
開催にあたり、主に4つの工夫を行いました。1つ目は、より観光客に楽しんでもらうために、高さ約8mのねぷたを主要な場所で回転させてパフォーマンスを行うこと。2つ目は、幻の「第36回四国こんぴら歌舞伎大芝居」の演目の一つである「隅田川続悌(すみだがわごにちのおもかげ)」を題材に、地元琴平高校の生徒と琴平町役場の若手職員が共同で「組ねぷた」を制作し、本場弘前高校の生徒が作成した「組ねぷた」と一緒に運行すること。3つ目は、町内の園児等に曳き手として参加してもらうこと。4つ目に、旧来より弘前ねぷたの笛奏者と交流のあった尽誠学園の太鼓部の学生に囃子として参加してもらうことです。
こうした工夫もあり、2日間で約3万人もの方が琴平を訪れました。これからも、琴平町に来てよかった、楽しかったと思っていただけるよう、にぎわい創出に取り組んでいきたいと思います。
写真: 旧金毘羅大芝居(金丸座)
写真: JR琴平駅と約8mのねぷた
3.電子地域通貨KOTOCA
令和3年12月15日からスマホアプリやカードを利用した電子地域通貨のキャッシュレス決済サービスKOTOCAを導入し、町民全員約8,600人に5,000コトカを給付し、町内の加盟店で利用してもらいました。主な目的としては、新型コロナウイルス感染症で低迷している琴平町経済への対策として、町内におけるお金の地域内循環を促すことで地域経済を活性化させるとともに、観光事業の推進、非接触の推奨による新型コロナウイルス感染症対策等を積極的に展開することです。
こうして開始したKOTOCA事業ですが、本町は高齢化率が約40%と高くデジタルに慣れていない方も多いことから、導入当初は利用者や加盟店舗の方からKOTOCAは利用しにくいなどといった声が多く寄せられていました。そのようなご意見を基に、高齢者向けの無料のスマートフォンサロンや、国の事業を活用したスマートフォン教室を開催し、デジタルに慣れ親しんでいただく機会を作りました。また、町内外を問わず多くの方にKOTOCAを利用してもらうために、国の第2弾マイナポイント事業や香川県県民生活支援事業へ参画しました。こうした取組の結果、当初10人程度であったアプリの会員数は、現在約1,500人まで増加しました。
また、行政の苦手分野である新規加盟店への営業活動については、外部人材のサポートを受けながら行った結果、KOTOCA加盟店数を136店舗から162店舗へ増加させることに成功しました。この外部人材のサポート導入により、職員が普段接する機会のない営業スキルを持った方とコミュニケーションを図ることでスキルアップが図られたほか、地道な店舗訪問活動などで、新規の加盟や今まで利用のなかった既存加盟店での利用があり、新たな経済循環のきっかけに繋がっています。
さらに、加盟店については、行政側から積極的にアプローチしていきました。令和4年度は、加盟店との意見交換会を3回開催したことや、加盟店へ直接訪問してKOTOCAの利用状況をヒアリングするなどコミュニケーションを絶やさないように努めました。その結果、ご意見ご要望に基づいた様々な改善を行うことができ、加盟店との信頼関係が築け、KOTOCA利用額の増加につながっていると感じています。
今後も、利用者目線に立ち、加盟店とのコミュニケーションを密にしながらKOTOCA事業を継続し、地域経済の活性化に取り組んでいきたいと思います。
写真: コトカカード
4.最後に
わが町では、第5次琴平町総合計画における基本理念として「小さくても みんなが笑顔で 幸せを感じるまち」を掲げています。この実現に向け、町に関係するすべての人が笑顔で満足できるまちづくりへの取組を進めていきます。
写真: 琴平町の風景
「伝統」と「革新」でまちを元気に!
地方創生コンシェルジュ
四国財務局総務部総務課企画調整官 田中 慎一
琴平町には、金刀比羅宮や金丸座など魅力的な伝統文化が残されており、多くの観光客が訪れます。コロナ禍では、観光客が減少し歌舞伎も中止となる中、歌舞伎の演目を活かした「四国金毘羅ねぷた祭り」を地元住民も参加して開催するなど、素晴らしい工夫がみられました。また、電子地域通貨「KOTOCA」を発行し、外部人材のノウハウも取り入れながら地域経済の活性化のためにDXといった技術革新にも取り組んでいます。地方創生のための創意工夫がぎっしりと詰まった、魅力ある町にこれからも注目し、お力添えができればと思います。
官民連携のまちづくりで目指す人と自然の共生
甲佐町企画課 課長 荒田 慎一
1.甲佐町の概要
熊本県のほぼ中央、熊本市の南方約20kmに位置する本町は、南北に清流「緑川」が貫流しており、緑豊かな山々、清らかな川の流れ、肥沃な大地など自然の恵みを十分に受け、農業を中心に文教の町としても発展してきました。
気軽に川とふれあえる「津志田河川自然公園」、加藤清正が川狩りを楽しむために設置した茶屋を起源とする「甲佐町やな場」、国指定天然記念物の「麻生原のキンモクセイ」をはじめとする数多くの観光資源は、町民をはじめ訪れる多くの人々の心をいやしています。
現在、第7次町総合計画に基づき「自然環境を活かし、文化と交流が育む暮らしやすい安全・安心なまちをつくります」を基本理念に掲げ、緑川をはじめとする自然や人とのふれあいを大切にしながら、まちを活性化するため農・商・工業・観光が互いに連携しながらまちづくりを進めています。
写真: 甲佐町やな場
2.こうさてんプロジェクト
甲佐町に寄贈され、民俗資料館として利用していた築140年の古民家。平成28年の熊本地震により半壊となり、一時、取壊しの案が出ていましたが、まちづくりに活かすプロジェクト「こうさてんプロジェクト」が立ち上がり、多様で幅広い人の参加型ワークショップにより再建されました。
「甲佐」の地名になぞらえた「こうさてん」には、町内外の人たち、世代を超えた人たちの交流拠点にしようという思いが込められています。
平成29年度は、古民家の利活用基本コンセプトを決めるため、ワークショップを10回開催(延べ参加者数は200人)。集約した声を整理、大学の先生方の知見もいただき『出会って何かが生まれる甲佐コミュニティ』として、「地域内外の交流拠点(宿泊)」、「商店街の賑わい創出(食べる)」、「移住定住促進(集う)」の3つを備えた改修プランが決定しました。
改修工事についても、ワークショップ形式で行い、平成30~31年度に13回(24日間)開催し445人の参加がありました。町内外、幅広い世代の方々からご参加いただき、終日の共同作業や昼食等の時間を共有し、参加者同士の交流も深まりました。
令和2年10月に、1棟貸しの宿泊所や古民家レストラン、ワークショップなどに利用できる多目的交流スペースからなる「古民家交流拠点施設」として、オープンしました。管理運営については、地元の若者らでつくる一般社団法人パレットが行っており、甲佐町の食材を使ったイタリアンを味わえるレストランは、町内外の来場者でにぎわいをみせています。
写真: 古民家交流拠点施設(「宿屋kugurido」など)
3.官民連携による地方創生推進
甲佐町における古民家等の歴史的資源活用のため、町と前述の(一社)パレット、地元の銀行や商工会等4者及び古民家再生を手掛ける兵庫県の企業「NOTE(ノオト)」の6者で「甲佐町における歴史的資源を活用した地域活性化及び地方創生推進に関する連携協定」締結し、(一社)パレットを中心に取組みを行っています。
町との連携としては、「古民家交流拠点施設」及びグランピング施設として再整備を行った、「井戸江峡交流拠点施設」の指定管理者として(一社)パレットが管理運営しており、観光事業において相互に連携しながら取り組んでいます。アウトドアブームもありますが、「井戸江峡交流拠点施設」においては、当初目標とした宿泊者数を大幅に超え、年間3,000人を超える方が利用されています。
また、町の観光拠点である「甲佐町やな場」の営業運営においても、事業共同体として(一社)パレットが参画しており、初の冬季営業を始め、通年で甲佐町を訪れてもらえる仕組みづくりを行っています。
写真: 井戸江峡交流拠点施設(「COMMON IDOE」)
4.更なる関係人口増を目指して
令和4年度に熊本地震からの復興のシンボルとして整備を進めてきた一級河川緑川沿いに位置する「熊本甲佐総合運動公園」(通称:Kパークこうさ)が全面完成しました。天然芝・人工芝のサッカーコート、野球場、ソフトボール場、テニスコート8面、外周ランニングコース、グラウンドゴルフ場などを有し、緑川を軸とした地域の活性化、町民の健康増進、体力向上の場となっています。また、各種目の大会やイベントを誘致し、町内外から様々な世代が集う水辺拠点として地域交流の促進を図っていきます。
また、文化財として、令和3年10月に国史跡に指定された「陣ノ内城跡」があり、保存と活用に係る計画を現在策定中です。保存・保護はもちろんですが、ひとが集まる管理・運用に向け整備を行い、甲佐町の歴史的魅力に厚みを加えるとともに、更なる関係人口の増加を図っていきます。
写真: Kパークこうさ
継続した官民の協力なタッグに期待
九州財務局理財部金融調整官付上席調査官 多田 路央
豊かな自然や、熊本市の中心市街地にも比較的近いなど、恵まれた地域の特徴を活かし、甲佐町では、官民が連携し、スピード感をもって地域活性化に取り組まれています。こうした取組がマスコミに取り上げられることも増え、甲佐町のファンになる方が増加中です。
今後は、各地に点在する交流拠点や観光資源が面的なつながりを持ち、関係人口が増加する中で、町全体がより盛り上がっていくことを期待しています。
富山市企画管理部 スマートシティ推進課 課長代理 中村 圭勇
1.はじめに
富山市は、日本海側のほぼ中央に位置し、水深1,000mの「海の幸の宝庫」富山湾から標高3,000m級の北アルプス立山連峰まで標高差4,000mの多様な地勢と雄大な自然を誇り、また、古くから「くすりのまち」として全国にその名が知られるように、薬業をはじめとする様々な産業と高度な都市機能、そして、多様な文化と歴史を併せ持つ日本海側有数の中核都市として発展してきました。
本市では、これまで「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を政策の中心に据え、公共交通の活性化、公共交通沿線地区への居住推進、中心市街地の活性化などに取り組み、2012年にはOECD(経済協力開発機構)がコンパクトシティ政策の世界先進5都市として本市を取り上げるなど、本市のまちづくりは国内外から高く評価されております。
写真: 日本海側有数の中核都市 富山市
2.コンパクトなまちづくりの“深化”
一方で、近年は、本格的な人口減少や少子・超高齢化の急速な進行により、約12万haもの広大な市域を有する本市においては、中山間地域をはじめとする都市の郊外部において、経済社会活動の担い手不足や地域コミュニティの機能低下などの地域課題が顕在化しており、持続可能で将来世代に責任が持てる都市経営が求められています。
こうしたことから、本市では、これまで推進してきたコンパクトシティ政策をさらに“深化”させるため、デジタル技術やデータを利活用し、地域課題や市民の困りごとを解決することで、市民生活の質および利便性の向上を図るスマートシティ政策に取り組み、コンパクトシティ政策をスマートシティ政策で補完・融合することにより「富山市版スマートシティ」の実現を目指すこととしました。
写真: 富山市のコンパクトシティ政策
3.富山市スマートシティ推進ビジョン
本市では、令和4年11月に「富山市スマートシティ推進ビジョン」を策定しました。このビジョンは「富山市版スマートシティ」の実現のため、今後取り組むスマートシティ政策の基本理念(「コンパクト&スマート」「市民(利用者)中心主義」「ビジョン・課題フォーカス」)や方向性を定めたものであり、同時に産学官民が共有し、共に行動するための指針ともなるものであります。
デジタル技術やデータの活用はあくまで“手段”であり、スマートシティ政策に取り組む“目的”は市民生活の質および利便性の向上であることから、市民にとっての「ありたい暮らし」とは何かを把握するため、市内3ヶ所、計6回の市民ワークショップを開催し、参加した延べ119名の市民による約2,700の意見を基にビジョンを策定しました。
今後はこのビジョンを市民の皆さまや企業・団体等に周知し、共有することで、産学官民が一体となって「富山市版スマートシティ」を推進していきたいと考えています。
写真: SMART CITY TOYAMAのロゴマーク
4.産学官民が共創するスマートシティ
スマートシティは行政だけで実現できるものではありません。デジタル技術やデータ利活用のノウハウを有する企業や研究機関、そして何より市民の参画が必要不可欠です。
特に、スマートシティ関連サービスは多くの市民が関心を持ち、実際に使ってみることでサービス品質が向上すると考えられます。したがって、「富山市版スマートシティ」では、市民が真に求めるサービスで、その効果を実感しやすいものから優先的に取り組むこととしています。
令和5年度の当初予算では「スマートシティ推進ビジョン特別枠」として44事業を計上するとともに、その中で、町内会等の電子回覧板アプリ導入を支援する「電子回覧板導入支援事業」やスマホを使ってネットスーパーを利用できるよう支援する「スマホ買物支援事業」など、市民の困りごとを解決する事業の拡充を図ったほか、交通不便エリアを対象として行う「自動運転車両実証実験」や「AIオンデマンド交通システム導入事業」、通院不便エリアを対象として行う「中山間地域オンライン診療・服薬指導実証実験」など、地域課題を解決するための実証実験にも積極的に取り組むこととしております。
また、産学官がこれまで以上に連携しながらスマートシティに取り組んでいくため、推進組織として「富山市スマートシティ推進プラットフォーム」を設置することとしています。
さらに、本市は平成30年に市内の居住人口の98.9%をカバーする「富山市センサーネットワーク」を構築し、IoTデータの収集環境を無償提供することで民間企業主導の実証実験を促すとともに、令和2年には未来共創拠点施設「Sketch Lab(スケッチラボ)」を整備し、産学官民の共創にも試行的に取り組んでいます。
こうした本市特有のリソースも活用しながら、市民ニーズに合致したスマートシティ関連サービスの創出を図るとともに、コンパクトシティ政策とスマートシティ政策が融合した「富山市版スマートシティ」の実現を目指してまいります。
写真: 未来共創拠点施設「Sketch Lab」
「富山市版スマートシティ」の今後に期待が高まる
地方創生コンシェルジュ
北陸財務局富山財務事務所長 長谷川 正浩
富山市は、「コンパクトシティ」の先進地として、国内外から高い評価を受けています。実際に、公共交通の活性化が沿線地区への居住に繋がるなどの好循環もあり、富山市人口の社会増が続くなどの成果が現れています。
そのコンパクトシティの深化としての「富山市版スマートシティ」は、データサイエンスを活用した産官学連携の事業として注目を集めているところです。少子・高齢化などの問題が顕著となっている中山間地域をはじめとする郊外部においても、便利で安心できる持続可能なまちづくりが更に発展していくことを期待しています。
「小さくても、みんなが笑顔で、幸せを感じるまち」琴平町
企画防災課 主幹 森本 卓也
1.琴平町の概要
琴平町は、香川県のほぼ中央に位置し、人口約8,000人、面積は8.47km2と香川県内で面積・人口ともに2番目に小さな町です。小さな町ですが、讃岐のこんぴらさんで有名な「金刀比羅宮」には、古より多くの参拝客が訪れており、その門前町として栄え、四国を代表する全国有数の観光地です。
2.四国金毘羅ねぷた祭り
こんぴら歌舞伎は天保6年(1835年)に建設された現存する日本最古の芝居小屋で、昭和60年(1985年)から絶え間なく公演されてきましたが新型コロナウイルス感染症の影響で令和4年は中止となりました。このため、こんぴら歌舞伎を愛する全国の方々や町民の方々から悲しみの声が上り、町として、代替イベントが必要であると考えていました。
そこで、「暫(しばらく)」をはじめとした歌舞伎の演目が題材となることもあり、首都圏など県外での運行実績もある弘前ねぷたとコラボし、中止となった「第36回四国こんぴら歌舞伎大芝居」の演目の一つである「義賢最期」を題材に新たに描き下ろした、高さ約8mのねぷたの町内夜間運行を実施し、琴平町のにぎわい創出に取り組むこととしました。
令和4年5月27日(金)・28日(土)に、弘前市首都圏キャンペーン実行委員会主催により、「四国金毘羅ねぷた祭り」が行われました。青森県弘前市の重要無形民俗文化財である「弘前ねぷたまつり」で実際に運行されるものと同様のねぷたを琴平町内で夜間運行するとともに、町内に歌舞伎の「幟(のぼり)」や「金魚ねぷた」を展示し、関連イベント等を実施するというものです。
開催にあたり、主に4つの工夫を行いました。1つ目は、より観光客に楽しんでもらうために、高さ約8mのねぷたを主要な場所で回転させてパフォーマンスを行うこと。2つ目は、幻の「第36回四国こんぴら歌舞伎大芝居」の演目の一つである「隅田川続悌(すみだがわごにちのおもかげ)」を題材に、地元琴平高校の生徒と琴平町役場の若手職員が共同で「組ねぷた」を制作し、本場弘前高校の生徒が作成した「組ねぷた」と一緒に運行すること。3つ目は、町内の園児等に曳き手として参加してもらうこと。4つ目に、旧来より弘前ねぷたの笛奏者と交流のあった尽誠学園の太鼓部の学生に囃子として参加してもらうことです。
こうした工夫もあり、2日間で約3万人もの方が琴平を訪れました。これからも、琴平町に来てよかった、楽しかったと思っていただけるよう、にぎわい創出に取り組んでいきたいと思います。
写真: 旧金毘羅大芝居(金丸座)
写真: JR琴平駅と約8mのねぷた
3.電子地域通貨KOTOCA
令和3年12月15日からスマホアプリやカードを利用した電子地域通貨のキャッシュレス決済サービスKOTOCAを導入し、町民全員約8,600人に5,000コトカを給付し、町内の加盟店で利用してもらいました。主な目的としては、新型コロナウイルス感染症で低迷している琴平町経済への対策として、町内におけるお金の地域内循環を促すことで地域経済を活性化させるとともに、観光事業の推進、非接触の推奨による新型コロナウイルス感染症対策等を積極的に展開することです。
こうして開始したKOTOCA事業ですが、本町は高齢化率が約40%と高くデジタルに慣れていない方も多いことから、導入当初は利用者や加盟店舗の方からKOTOCAは利用しにくいなどといった声が多く寄せられていました。そのようなご意見を基に、高齢者向けの無料のスマートフォンサロンや、国の事業を活用したスマートフォン教室を開催し、デジタルに慣れ親しんでいただく機会を作りました。また、町内外を問わず多くの方にKOTOCAを利用してもらうために、国の第2弾マイナポイント事業や香川県県民生活支援事業へ参画しました。こうした取組の結果、当初10人程度であったアプリの会員数は、現在約1,500人まで増加しました。
また、行政の苦手分野である新規加盟店への営業活動については、外部人材のサポートを受けながら行った結果、KOTOCA加盟店数を136店舗から162店舗へ増加させることに成功しました。この外部人材のサポート導入により、職員が普段接する機会のない営業スキルを持った方とコミュニケーションを図ることでスキルアップが図られたほか、地道な店舗訪問活動などで、新規の加盟や今まで利用のなかった既存加盟店での利用があり、新たな経済循環のきっかけに繋がっています。
さらに、加盟店については、行政側から積極的にアプローチしていきました。令和4年度は、加盟店との意見交換会を3回開催したことや、加盟店へ直接訪問してKOTOCAの利用状況をヒアリングするなどコミュニケーションを絶やさないように努めました。その結果、ご意見ご要望に基づいた様々な改善を行うことができ、加盟店との信頼関係が築け、KOTOCA利用額の増加につながっていると感じています。
今後も、利用者目線に立ち、加盟店とのコミュニケーションを密にしながらKOTOCA事業を継続し、地域経済の活性化に取り組んでいきたいと思います。
写真: コトカカード
4.最後に
わが町では、第5次琴平町総合計画における基本理念として「小さくても みんなが笑顔で 幸せを感じるまち」を掲げています。この実現に向け、町に関係するすべての人が笑顔で満足できるまちづくりへの取組を進めていきます。
写真: 琴平町の風景
「伝統」と「革新」でまちを元気に!
地方創生コンシェルジュ
四国財務局総務部総務課企画調整官 田中 慎一
琴平町には、金刀比羅宮や金丸座など魅力的な伝統文化が残されており、多くの観光客が訪れます。コロナ禍では、観光客が減少し歌舞伎も中止となる中、歌舞伎の演目を活かした「四国金毘羅ねぷた祭り」を地元住民も参加して開催するなど、素晴らしい工夫がみられました。また、電子地域通貨「KOTOCA」を発行し、外部人材のノウハウも取り入れながら地域経済の活性化のためにDXといった技術革新にも取り組んでいます。地方創生のための創意工夫がぎっしりと詰まった、魅力ある町にこれからも注目し、お力添えができればと思います。
官民連携のまちづくりで目指す人と自然の共生
甲佐町企画課 課長 荒田 慎一
1.甲佐町の概要
熊本県のほぼ中央、熊本市の南方約20kmに位置する本町は、南北に清流「緑川」が貫流しており、緑豊かな山々、清らかな川の流れ、肥沃な大地など自然の恵みを十分に受け、農業を中心に文教の町としても発展してきました。
気軽に川とふれあえる「津志田河川自然公園」、加藤清正が川狩りを楽しむために設置した茶屋を起源とする「甲佐町やな場」、国指定天然記念物の「麻生原のキンモクセイ」をはじめとする数多くの観光資源は、町民をはじめ訪れる多くの人々の心をいやしています。
現在、第7次町総合計画に基づき「自然環境を活かし、文化と交流が育む暮らしやすい安全・安心なまちをつくります」を基本理念に掲げ、緑川をはじめとする自然や人とのふれあいを大切にしながら、まちを活性化するため農・商・工業・観光が互いに連携しながらまちづくりを進めています。
写真: 甲佐町やな場
2.こうさてんプロジェクト
甲佐町に寄贈され、民俗資料館として利用していた築140年の古民家。平成28年の熊本地震により半壊となり、一時、取壊しの案が出ていましたが、まちづくりに活かすプロジェクト「こうさてんプロジェクト」が立ち上がり、多様で幅広い人の参加型ワークショップにより再建されました。
「甲佐」の地名になぞらえた「こうさてん」には、町内外の人たち、世代を超えた人たちの交流拠点にしようという思いが込められています。
平成29年度は、古民家の利活用基本コンセプトを決めるため、ワークショップを10回開催(延べ参加者数は200人)。集約した声を整理、大学の先生方の知見もいただき『出会って何かが生まれる甲佐コミュニティ』として、「地域内外の交流拠点(宿泊)」、「商店街の賑わい創出(食べる)」、「移住定住促進(集う)」の3つを備えた改修プランが決定しました。
改修工事についても、ワークショップ形式で行い、平成30~31年度に13回(24日間)開催し445人の参加がありました。町内外、幅広い世代の方々からご参加いただき、終日の共同作業や昼食等の時間を共有し、参加者同士の交流も深まりました。
令和2年10月に、1棟貸しの宿泊所や古民家レストラン、ワークショップなどに利用できる多目的交流スペースからなる「古民家交流拠点施設」として、オープンしました。管理運営については、地元の若者らでつくる一般社団法人パレットが行っており、甲佐町の食材を使ったイタリアンを味わえるレストランは、町内外の来場者でにぎわいをみせています。
写真: 古民家交流拠点施設(「宿屋kugurido」など)
3.官民連携による地方創生推進
甲佐町における古民家等の歴史的資源活用のため、町と前述の(一社)パレット、地元の銀行や商工会等4者及び古民家再生を手掛ける兵庫県の企業「NOTE(ノオト)」の6者で「甲佐町における歴史的資源を活用した地域活性化及び地方創生推進に関する連携協定」締結し、(一社)パレットを中心に取組みを行っています。
町との連携としては、「古民家交流拠点施設」及びグランピング施設として再整備を行った、「井戸江峡交流拠点施設」の指定管理者として(一社)パレットが管理運営しており、観光事業において相互に連携しながら取り組んでいます。アウトドアブームもありますが、「井戸江峡交流拠点施設」においては、当初目標とした宿泊者数を大幅に超え、年間3,000人を超える方が利用されています。
また、町の観光拠点である「甲佐町やな場」の営業運営においても、事業共同体として(一社)パレットが参画しており、初の冬季営業を始め、通年で甲佐町を訪れてもらえる仕組みづくりを行っています。
写真: 井戸江峡交流拠点施設(「COMMON IDOE」)
4.更なる関係人口増を目指して
令和4年度に熊本地震からの復興のシンボルとして整備を進めてきた一級河川緑川沿いに位置する「熊本甲佐総合運動公園」(通称:Kパークこうさ)が全面完成しました。天然芝・人工芝のサッカーコート、野球場、ソフトボール場、テニスコート8面、外周ランニングコース、グラウンドゴルフ場などを有し、緑川を軸とした地域の活性化、町民の健康増進、体力向上の場となっています。また、各種目の大会やイベントを誘致し、町内外から様々な世代が集う水辺拠点として地域交流の促進を図っていきます。
また、文化財として、令和3年10月に国史跡に指定された「陣ノ内城跡」があり、保存と活用に係る計画を現在策定中です。保存・保護はもちろんですが、ひとが集まる管理・運用に向け整備を行い、甲佐町の歴史的魅力に厚みを加えるとともに、更なる関係人口の増加を図っていきます。
写真: Kパークこうさ
継続した官民の協力なタッグに期待
九州財務局理財部金融調整官付上席調査官 多田 路央
豊かな自然や、熊本市の中心市街地にも比較的近いなど、恵まれた地域の特徴を活かし、甲佐町では、官民が連携し、スピード感をもって地域活性化に取り組まれています。こうした取組がマスコミに取り上げられることも増え、甲佐町のファンになる方が増加中です。
今後は、各地に点在する交流拠点や観光資源が面的なつながりを持ち、関係人口が増加する中で、町全体がより盛り上がっていくことを期待しています。