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瀬戸内の恵みと歴史にふれあう街

広島南税務署 総務課長 大本 啓司


はじめに
広島南税務署は、昭和42年6月に広島東税務署から分割して設置されました。当初仮庁舎で事務を開始し、昭和43年3月に庁舎が建設され現在に至っています。
広島県の西南部に位置しており、広島市南区(広島駅前周辺の一部を除く)と広島市の海上約7.5km南に位置する江田島市の2市を管轄しています。
管轄区域の総面積125.66km2のうち84%が島しょ部であることが特色の一つです。


陸と海 人が行き交いふれあう南区
広島市南区は、広島の陸の玄関である広島駅と海の玄関である広島港を有し、旅客と物流の拠点となっています。
主要産業は自動車製造関連事業であり、沿岸部はマツダ株式会社の協力企業などで構成される工業集積度の高い地域です。
また、大学や高等学校など学校施設が多く、文教地区としての一面も持っています。広島大学霞キャンパス(医学部・歯学部)と県立広島大学本部キャンパスがあり、高等学校は県立、私立を含め6校があるなど、学校施設が集中しています。
我々の研修施設である税務大学校広島研修所も、平成27年に上記学校の周辺地域に移転しています。
広島市内には野球、サッカー、バスケットボールなど複数のプロスポーツチームがありますが、当署管内にも、バレーボールチームが拠点を置いています。
〔バウムクーヘン発祥の地 似島(にのしま)〕
広島港の沖合約3kmに位置し、広島市最大の島で、美しい稜線を描く「安芸小富士」として知られ周囲13kmの自然豊かな島です。明治28年に旧陸軍検疫所が設置されて以降、第二次世界大戦終結まで、軍の島として歩んだ歴史があり、戦争にまつわる遺構が点在しています。令和3年4月には似島平和資料館がオープンしています
また、第一次世界当時、ドイツ人捕虜で菓子職人のカール・ユーハイムが、日本で初めてバウムクーヘンを焼いたことから、バウムクーヘン発祥の地となっています。
島内にはシーカヤックやアウトドア施設が開業し、賑わいを見せています。

〔黄金山(おうごんざん)〕
広島市の南東部に位置する標高221.7mの小高い山。日本の夜景百選にも選ばれた絶景スポットです。広島湾及び市街地を一望でき、春には桜が咲き誇り、登山道は桜の花道となります。
名前の由来は、黄金山の北側にある観音寺の山号が「黄金山」であったこと、この辺り一帯の麦畑が夕日に染まって黄金に輝いて見えたことなど諸説あります。

〔比治山〕
比治山は桜の名所として知られています。美術館やまんが図書館のほか彫刻が点在しており、豊かな緑と芸術に癒される憩いの森です。
「広島市現代美術館」は広島をテーマとする作品を収集・展示しており、デザイン、素材ともに斬新な建物は黒川紀章氏の設計。
「広島市まんが図書館」は北斎漫画から現代までその時代を代表する漫画を収蔵しており、日本初のまんが専門公立図書館です。

〔猫田記念体育館〕
オリンピック3大会(東京・メキシコ・ミュンヘン)に出場し、世界一の名セッターといわれた猫田勝敏選手の功績をたたえて建設された猫田記念体育館。一階にあるギャラリーには、オリンピックで獲得した金・銀・銅のメダルのレプリカやユニフォームなど、功績の数々が展示されています。
プロバレーボールチームであるJTサンダース広島の本拠地であり、バレーボールの国際大会も開催されます。

〔G7サミット開催〕
G7広島サミットが令和5年5月19日から21日まで、広島市南区で開催される予定であり、日本での開催は7回目となります。会場となるグランドプリンスホテル広島は、周囲を海に囲まれた立地で、平成28年にはG7外相会合を開催しています。
また、同ホテルはアカデミー賞国際長編映画賞受賞の「ドライブ・マイ・カー」のロケ地としても使用され、ホテル前の桟橋から宮島・江田島行きの高速艇がでています。


瀬戸内の美しい海と豊かな恵みに溢れる歴史とアクティビティ満載の島 江田島市
江田島市は、広島湾に浮かぶ江田島、能美島とその周辺に点在する大小合わせて10の島々から構成されています。広島港からフェリーで25分、呉港から12分の位置にあり、呉方面からは早瀬大橋と音戸大橋を経由して陸続きになっています。
波穏やかで透明度の高い瀬戸内海と島の大半を山地などが占める豊かな自然が魅力です。
また、江田島市には、旧海軍兵学校をはじめ貴重な史跡、国内トップクラスの生産量を誇る牡蠣、国際コンテストで世界1位に輝いた江田島のオリーブオイルなどがあるほか、瀬戸内海特有の気候を活かした柑橘類、花、野菜などの栽培が盛んです。
美しい海と山、絶景夕日スポット、マリンアクティビティなどたくさんの魅力が詰まった島となっています。
〔海上自衛隊第一術科学校・幹部候補生学校〕
旧海軍兵学校が明治21年8月に東京築地から江田島に移転して以来、江田島はアメリカのアナポリス、イギリスのダートマスとともに世界3大兵学校として知られることとなりました。終戦により昭和20年12月1日、約60年の幕を閉じ、以後10年間は連合軍が教育施設等に使用しました。昭和31年1月に返還され、当時横須賀にあった術科学校が江田島に移転、その後、昭和32年5月に幹部候補生学校が独立開校しました。
校内には明治期に建設された生徒館(現幹部候補生学校庁舎)、大正時代の石造の大講堂、昭和初期の教育参考館など、近代建築の博物館さながらです。
事前予約により校内見学が可能です。

写真:(海上自衛隊第一術科学校)
写真:(幹部候補生学校)

〔牡蠣〕
全国的に有名な「広島カキ」、中でも江田島市はむき身の生産量が日本で1・2を争うカキの本場です。島を訪れた際は、ぜひ本場のカキを味わってみて下さい。瀬戸の美しい海で育ったカキは実が引き締まり風味豊かで、「海のミルク」と称されるほど栄養価も抜群です。

〔オリーブ〕
官民一体でオリーブを活かした地域振興に取り組んでおり、江田島のオリーブオイルがイタリアで開催された国際コンテストで第1位の高評価を得ました。


おわりに
広島と言えば、世界遺産である宮島の厳島神社や原爆ドーム、野球はカープ、もみじ饅頭にお好み焼きなど多くの方が連想する名所や名物がありますが、今回は広島南税務署管内にスポットをあててご紹介しました。
広島にお越しの際の新たな1ページに加えていただければ幸いです。
〔写真提供:広島市南区、(一社)江田島市観光協会、JTサンダース広島〕



「明治維新胎動の地」今も歴史が生きる街 萩

萩税務署 総務課長 松田 健介


はじめに
萩税務署は、明治22年7月に設置された萩収税署の廃止に伴い明治29年11月に設置され、その後、昭和27年3月に新築された現庁舎に移転しました。
管轄は、山口県北部に位置し日本海に面した萩市及び阿武町の1市1町(管内面積約814km2、管内人口約47,000人)で、東は益田市、西は長門市、南は山口市と美祢市に隣接しています。
当署がある萩市の歴史は古く、関が原の戦いに敗れた毛利輝元が慶長9年に築城・開府してから、13代・毛利敬親が藩府を山口に移すまでの約260年間、城下町として隆盛を極めました。
また、幕末から明治維新には、吉田松陰、木戸孝允、高杉晋作、伊藤博文など近代日本の先頭に立った幾多の人傑を輩出し、「明治維新胎動の地」として、「松下村塾」をはじめとした史跡が至る所に見られます。
城下町の特徴が残り「江戸時代の地図がそのまま使えるまち」と言われる、今も歴史が生きる街「萩」の名所や特産品などを紹介します。


管内の名所
〔国選定「重要伝統的建造物群保存地区」〕
古くからの街並みが多く残る萩市では、武家屋敷の地割りが残り土塀越しの夏みかんが特徴的な、旧萩城三の丸「堀内地区」と外堀南側の武家地「平安古(ひやこ)地区」が、昭和51年に全国で最初に、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されました。
その後、平成13年に三角州北東端の港町で江戸時代以降の町屋が多く残る「浜崎地区」が、また、平成23年に萩城下町と三田尻港(防府市)を結ぶ萩往還の宿場町として栄えた「佐々並市(ささなみいち)」が選定されました。
萩市は、指定地区数が全国で最も多い市町村のひとつとなっています。

〔世界遺産「明治日本の産業革命遺産」〕
「明治日本の産業革命遺産」は、幕末から明治にかけて、西洋の技術と日本の伝統文化を融合させ急速な発展を遂げた炭鉱、鉄鋼業、造船業に関する23の文化遺産(8県11市)で構成され、萩エリアには、5つの構成資産があります。

【萩城下町】
幕末に産業化を目指した日本の政治・行政・経済をあらわす遺産で、城跡・旧上級武家地(萩城下町)・旧町人地(堀内地区)の3地区からなっています。
萩城下町は、当時の地域社会が有していた伝統と身分制、社会経済構造を非常によく示しています。

【萩反射炉】
萩市椿東(ちんとう)にある遺跡で、同種の遺跡としては、伊豆の国市(韮山反射炉)と鹿児島市(旧集成館反射炉)にしか現存しない遺跡です。
萩反射炉は、軍事力の強化を図るため、試作的に築造・操業されたもので、西洋の科学技術への試行錯誤を象徴しています。

【恵美須ヶ鼻造船所跡】
長州藩が設けた造船所の遺跡で、ロシアとオランダの2国の技術による造船が行われました。
異なる二つの技術による造船を、ひとつの造船所で行った例は他にないと言われています。

【松下村塾】
明治維新の中心人物・吉田松陰先生(萩では今でも松陰先生と呼んでいます。)が主宰した私塾で、海防の観点から工学教育の重要性をいち早く提唱し、自力での産業近代化の実現を説きました。
松陰先生の教えを継いだ多くの塾生が、後の近代化・工業化の過程で重要な役割を担いました。

【大板山たたら製遺跡】
江戸時代から幕末にかけて創業していた製鉄所で、砂鉄を原料に木炭を燃焼し鉄を生産する、日本の伝統的な方法で製鉄していました。
山口県内最大級の規模であり、石見系たたら遺跡の典型的事例として、多くの遺構が残っています。


グルメ
〔瀬つきあじとあまだい〕
萩から望む日本海は、朝鮮半島まで大陸棚が達し、大島や見島など多くの島々や「瀬」と呼ばれる天然礁が多く、また、潮流が激しくプランクトンが良く育つことから多くの好漁場に恵まれています。
中でも、萩沖の瀬についているエサを食べ、脂がのりふっくらとした肉厚が特徴の「瀬つきあじ」や、近くの漁場から新鮮な状態で水揚げされる高級魚「あまだい」は絶品です。
この他にも、白身で濃厚な甘みを持つ「金太郎」や、須佐漁港に水揚げされるケンサキイカは「須佐男命いか」としてブランド化されています。
最近ではドラマ「ファーストペンギン」のモデルにもなるなど、漁業がたいへん盛んな地域で、新鮮な魚介類が堪能できます。

〔見蘭牛〕
萩沖45kmに浮かぶ離島「見島」で血統を守り続け、和牛のルーツとも言われている国指定天然記念物「見島牛」の雄と、オランダ原産ホルスタイン種の雌を交配させて生まれる「見蘭牛(けんらんぎゅう)」は、きめ細やかな霜降りと濃厚な赤身の肉質を色濃く受け継ぎ、ステーキはもちろん、網焼きやハンバーグなど、様々な肉料理が楽しめます。

〔夏みかん〕
明治維新後、生活の術を失った士族救済のため、空き地となった武家屋敷を利用して栽培が始まった夏みかんは萩のシンボルとなっています。
中身をくり抜き羊羹を流し込む丸漬けやジュレ、マーマレードなどの加工品も人気のお土産です。

〔日本酒(GI萩)〕
良質で柔らかな水と、稲作に適した土壌・気候に恵まれた萩のお酒は、米のふくよかさと、上品な旨味、爽やかな香りを感じることができるお酒です。
令和3年3月、萩市と阿武町にある6つの蔵(岩崎酒造、岡崎酒造、澄川酒造、中村酒造、八千代酒造、阿武の鶴酒造)が製造する日本酒(39銘柄)が、酒類では中国地方初となる「地理的表示(GI)」に指定されました。


伝統工芸

〔萩焼〕
萩焼は、古くから茶人の間で、「一楽二萩三唐津」とまで絶賛され、茶陶の優なるものとされています。
陶土と釉薬の具合によって生じる「貫入」と、長年使いこむことで貫入にお茶やお酒が浸透することによって生じる「七化け」が特徴で、つややかで淡紅色を帯び、枯淡さと重厚感にあふれています。
萩の城下町には、多くのギャラリーがあるので、散策途中に是非訪れて、土のぬくもりに触れてみてください。


おわりに
萩市では、現在、「萩・明倫学舎」開館5周年をはじめ、「明治日本の産業革命遺産」の5資産、「長州ファイブ」など、「5」にちなんだ観光キャンペーン「GO TO 萩」を展開しています。
また、今回紹介しきれませんでしたが、萩市を含む山口県北部地域が「萩ジオパーク」として、日本ジオパークに再認定されており、「歴史・まちなみ」、「食」だけでなく「大自然」も楽しめる地域となっています。
「明治維新胎動の地」今も歴史が生きる街「萩」に、是非一度、足をお運びください!!
(写真提供:萩市観光協会)



日本遺産「石の島」と「星空版世界遺産」

笠岡税務署 総務課長 小笹 恭央


はじめに
笠岡税務署は、明治29年に設置され、現在、岡山県南西部の2市1町(笠岡市、井原市、矢掛町)を管轄しています(管内人口約96,000人)。
当署がある笠岡市は、瀬戸内海に面した港町で、江戸時代は天領として栄え、明治以降も備中地方の産業・交通・文化の要衝として発達してきました。
国営事業として約22年を費やして完成した広大な笠岡湾干拓地の先に、日本遺産「笠岡諸島」が広がっており、そのうちの7つの有人島へはJR笠岡駅近くの港から出航するフェリーで訪れることができます。
旧山陽道に面した井原・矢掛地区は、江戸時代は参勤交代の宿場及び農海産物を取引する市場町として栄え、その時代から備中木綿と呼ばれる綿花や藍が盛んに栽培されるようになり、そうした背景が、欧米のバイヤーから絶賛され、欧米向けに数多く輸出されている「井原デニム」など、今日の繊維産業の基礎となっています。


管内の名所
[笠岡諸島]
瀬戸内海国立公園に属し、7つの有人島を含む大小31の島々からなる風光明媚な笠岡諸島は、日本遺産に認定されている「せとうち備讃諸島」の一角を構成しています。
なぜ日本遺産なのかと申しますと、それは、この島々が「悠久の時が流れる石の島」だからです。
島々からは、古来より花崗岩をはじめ良質な石が産出され、江戸時代以降、大阪城石垣や日本銀行本店本館、東京駅丸の内本屋など歴史的価値のある建造物に使われてきました。いわば日本の発展を支えてきた石の島なのです。靖国神社の大鳥居や明治神宮の神宮橋にも使われているんですよ。
そんな笠岡諸島から、3つほどご紹介します。

・(北木島)石切りの渓谷(たに)展望台
北木島にある「北木石」の採石場は、明治25年に開かれ、現在も採石が続いています。
良質な石を求めて地下深くへと掘り進んだ結果、天に向かってそそり立つ絶景が誕生しており、展望台から、その壮大な景色を堪能できるため、パワースポットとして、島の観光名所になっています。
なお、北木島は、お笑い芸人「千鳥」の大悟の出身地としても、近年認知されつつありますね。

・(大飛島)大飛島遺跡
大飛島周辺の海は東西の潮流がぶつかる難所で、古代より危険な航海の無事を祈る場所となり、島の砂州の付け根にある巨石群を信仰する都びとたちによって、島には数々の宝物が捧げられました。
遺跡は、遣唐使などが航海の安全を祈った祭祀跡といわれており、貴重な出土品から「海の正倉院」と表現する専門家もいるそうです。

・(白石島)白石踊
国指定重要無形民俗文化財である白石踊は、白石島で800年にわたって受け継がれる盆踊りです。
ひとつの口説きに合わせて何種類もの踊りを踊る点が特徴で、男踊・女踊・娘踊など13種類の踊りがあり、源平水島合戦の戦死者の霊を弔うために始まったと言われています。
昨年末、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが決まりました。

[カブトガニ博物館]
カブトガニは、2億年も前から姿が変わっていないことから「生きている化石」と呼ばれています。
このカブトガニをテーマにした世界唯一の施設が、ここ笠岡市立カブトガニ博物館なのです。
国指定天然記念物であるカブトガニ繁殖地の保護や研究に取り組んでいて、幼生から成体まで、生きたカブトガニを間近で見学することができます。
ちなみに笠岡では、記念写真を撮る際に掛ける言葉は、「はいチーズ」ではなく「カブトガにい~」。

[笠岡ベイファーム]
広大な笠岡湾干拓地の一角にある道の駅、笠岡ベイファーム周辺では、夏の100万本のひまわりをはじめ、菜の花、ポピー、コスモスなど四季折々の花々が百花繚乱の大パノラマを描き出します。
笠岡市の風物詩として、岡山県内外から多くの観光客が訪れます。

[「星空保護区」の美星天文台]
古くから流れ星にまつわる伝説が息づく井原市美星町は、「星空版の世界遺産」と称される「星空保護区(コミュニティ部門)」にアジアで初めて認定されています。
星空保護区は単に星空が綺麗というだけでは認定にならないそうで、全国初の「光害防止条例」を制定したりして星空環境保全に献身的に取り組んでいる地域ぐるみの努力が評価されてこそ。
美星天文台は、口径101cm望遠鏡を使って天体を見ることのできる中国地方最大級の公開天文台です。


おわりに
南は瀬戸内海に浮かぶ「石の島」から、北は伝説に彩られた「星の郷」まで、幅広くご紹介しましたが、当署管内には、まだまだ紹介しきれなかった魅力的なスポットがたくさんあります。
ソウルフード「笠岡ラーメン」もお待ちしていますので、是非一度お越しください!
(写真提供:笠岡市、井原市、美星天文台)