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特集 令和5年度財政投融資計画について


理財局財政投融資総括課長 原田 一寿


1.令和5年度財政投融資計画等の基本的考え方
昨年10月28日、足元の物価高や世界経済の下振れリスクを乗り越え、社会課題の解決と持続的な成長の実現により日本経済を再生するため、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策(以下、「総合経済対策」という)」が閣議決定された。この総合経済対策においては、財政投融資を活用し、物価高騰への取組や、「新しい資本主義」の重点分野への投資等を推進する政策が盛り込まれた。
これを踏まえ、令和4年度第2次補正予算において、独立行政法人国際協力機構による開発途上国等に対する緊急財政支援、株式会社国際協力銀行(以下、「JBIC」という)による燃料価格高騰の影響を受ける本邦電力・ガス会社等に対する燃料輸入のための金融支援、株式会社日本政策投資銀行(以下、「DBJ」という)による脱炭素社会の実現に向けたGXに資するインフラ整備を推進するための金融支援等、総額1兆210億円の財政投融資計画を追加することとし、その政府案が11月8日に閣議提出され、12月2日に国会にて成立した。(資料1)
続いて、12月23日に令和5年度財政投融資計画(以下、「5年度計画」という)が予算政府案とあわせて閣議提出された。これは、令和4年8月末に要求を受けた後、総合経済対策も踏まえつつ、財政制度等審議会財政投融資分科会における審議を経て決定したものである。


2.令和5年度財政投融資計画のポイント(資料2)
5年度計画の総額は、16兆2,687億円であり、新型コロナウイルス感染症に加え、物価高騰の影響も重なって厳しい状況にある事業者への資金繰り支援に引き続き万全を期すとともに、「新しい資本主義」の加速や外交・安全保障環境の変化への対応等を行うこととしている。


3.令和5年度財政投融資計画の主な施策
(1)事業者への資金繰り支援
事業者への資金繰り支援については、株式会社日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫及び独立行政法人福祉医療機構において、新型コロナウイルス感染症に加え、物価高騰の影響も重なって厳しい状況にある事業者への資金繰り支援に引き続き万全を期すこととしている。

(2)「新しい資本主義」の加速
「新しい資本主義」の加速については、「人への投資」への取組として、DBJにおいて、人的資本に関する非財務情報(※)に着目した融資制度を強化し、企業の人的資本に対する取組を促すこととするほか、株式会社日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫において、「健康経営優良法人」と認定された中小企業等を支援することとしている。このほか、日本私立学校振興・共済事業団において、デジタル・グリーン等の成長分野をけん引する高度専門人材の育成に向けて大学の学部再編等を支援することとしている。
また、スタートアップへの取組として、株式会社日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫において、高い成長性が見込まれるスタートアップを対象とする融資制度の活用等により、スタートアップへの金融支援を強化することとするほか、DBJにおいて、「DBJスタートアップ・イノベーションファンド」を活用するなど、スタートアップ及びベンチャーキャピタルへの資金供給を強化することとしている。
さらに、GX(グリーン・トランスフォーメーション)への取組として、株式会社脱炭素化支援機構において、民間企業等による脱炭素化に向けた意欲的な事業活動を支援することとするほか、独立行政法人住宅金融支援機構において、グリーン債を発行することにより、省エネルギー性に優れた住宅の普及を促進することとしている。
(※)男女間賃金格差の是正や育児との両立環境整備等によるエンゲージメント向上、リスキリング、労働時間適正化、メンタルヘルス対策等

(3)外交・安全保障環境の変化への対応
外交・安全保障環境の変化への対応については、JBICにおいて、我が国企業のサプライチェーン強靱化や、グリーン・デジタルなど先端分野における我が国企業の海外展開を支援することとするほか、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構において、我が国企業の天然ガスやレアメタル等の金属鉱物資源の安定的な供給等の取組を支援することとしている。このほか、株式会社日本政策金融公庫において、半導体や蓄電池等の重要な物資の安定供給確保を図る事業者の長期・大規模な資金需要に的確に対応することとしている。

(4)地方公共団体向け
地方公共団体向けについては、地方債計画に基づき、社会資本整備や災害復旧を中心に、地方公共団体の円滑な資金調達に貢献する観点から、必要な資金需要に的確に対応することとしている。