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特集 令和4年度第2次補正予算及び令和5年度予算について


主計局総務課主計官 一松 旬


1.令和4年度第2次補正予算及び令和5年度予算編成の背景
日本経済については、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかな持ち直しが続いている。一方、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、日本経済を取り巻く環境には厳しさが増している。
(参考)
令和4年度の実質GDP成長率は1.7%程度、名目GDP成長率は1.8%程度と見込まれており、令和5年度はそれぞれ1.5%程度、2.1%程度と見込まれている。
一方、財政状況に目を転じれば、日本の財政は、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応や累次の補正予算の編成等により、過去に例を見ないほど厳しさを増している。
財政は国の信頼の礎であり、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保しておくことが不可欠であると考えている。責任ある経済財政運営を進めるに当たっては、経済あっての財政という方針に沿って、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要である。引き続き、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(令和4年6月7日閣議決定)等における2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革を着実に推進していく。


2.令和4年度第2次補正予算の概要
(1)令和4年度第2次補正予算のポイント
昨年10月28日に、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」が閣議決定された。
この経済対策は、足元の物価高や世界経済の下振れリスクを乗り越え、社会課題の解決と持続的な成長の実現により日本経済を再生するためのものであり、令和4年度第2次補正予算はこれを実行するために編成された(昨年12月2日成立)。

(2)令和4年度第2次補正予算のフレーム
令和4年度第2次補正予算の歳出においては、経済対策の実行に係る経費として29兆861億円を計上している。このほか、国債整理基金特別会計への繰入れを行うとともに、既定経費を減額している。
一方、歳入においては、租税等の収入について、最近までの収入実績や企業収益の動向等を勘案して3兆1,240億円の増収を見込んでいる。また、税外収入について、6,731億円の増収を見込むほか、前年度剰余金2兆2,732億円を計上している。
以上によってなお不足する歳入について、公債を22兆8,520億円発行することとしている。
この結果、令和4年度一般会計第2次補正後予算の総額は、一般会計第1次補正後予算に対して歳入歳出ともに28兆9,222億円増加し、139兆2,196億円となる。
また、令和4年度の公債発行額は62兆4,789億円となる。


3.令和5年度予算の概要
(1)令和5年度予算のポイント
令和5年度予算は、歴史の転換期にあって、日本が直面する内外の重要課題の解決に道筋をつけ、未来を切り拓くための予算としている。
本予算は、前述の経済財政状況等を踏まえ、「令和5年度予算編成の基本方針」(令和4年12月2日閣議決定)に沿って編成が進められたものであり、具体的なポイントは以下の通りである。

(1)我が国が直面する内外の重要課題への対応
【安全保障・外交】
我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえ、新たな国家安全保障戦略等を策定し、5年間で緊急的に防衛力を抜本的に強化するため、43兆円の防衛力整備計画を実施するとともに、防衛力を安定的に維持するための財源を確保する。
また、G7広島サミットや日本ASEAN友好協力50周年等を見据え、機動的で力強い新時代リアリズム外交を展開するための予算を確保する。
【こども政策】
本年4月にこども家庭庁を創設し、こども・子育て支援を強化する。出産育児一時金については、過去最高の引上げ幅となる42万円から50万円に引き上げる。加えて、妊娠時から出産・子育てまで一貫した伴走型相談支援と、妊娠届出・出生届出を行った妊婦・子育て家庭に対する経済的支援をあわせたパッケージを引き続き実施する。
【地方・デジタル田園都市国家構想】
地方団体に交付される地方交付税交付金は、リーマンショック後最高となる18.4兆円を確保する。
また、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」の策定を踏まえ、デジタル田園都市国家構想交付金により、自治体のデジタル実装の加速化や、デジタルの活用による観光・農林水産業の振興等の地方創生に資する取組などを支援する。
【GX】
成長志向型カーボンプライシング構想の具体化で得られる将来の財源を裏付けとした「GX経済移行債」の発行により、民間のGX投資を支援する仕組みを創設する。
また、2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた革新的な技術開発やクリーンエネルギー自動車の導入などの支援を開始する。

(2)メリハリの効いた予算
同時に、「経済財政運営と改革の基本方針2022」等に基づき、社会保障関係費について、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成するとともに、社会保障関係費以外について、防衛関係費の増額を達成しつつ、経済・物価動向等を踏まえて柔軟な対応を行うことを通じて、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続している。
・社会保障関係費+4,100億円程度
(高齢化による増(年金スライド分+2,200億円程度を除く))
・非社会保障関係費+47,417億円
(税外収入の防衛力強化対応(45,919億円)を除き+1,500億円程度※)
(防衛関係費の増額を達成しつつ、経済・物価動向等を踏まえて柔軟な対応を行うことを通じて、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続)
※平成25~令和3年度における消費者物価上昇率は平均+0.38%程度、当初予算における社会保障関係費以外の歳出増は平均+330億円程度。令和5年の消費者物価上昇率(政府経済見通し)は+1.7%。
また、行政事業レビューや予算執行調査等の反映に取り組むなど、予算の質も向上させている。
結果として、前年度予算と比較して、新規国債発行額を減額する(令和4年度(当初)36.9兆円⇒令和5年度35.6兆円)など、メリハリの効いた予算となるよう編成している。

(2)令和5年度予算のフレーム
令和5年度予算の一般歳出については、72兆7,317億円であり、これに地方交付税交付金等16兆3,992億円及び国債費25兆2,503億円を加えた一般会計総額は、114兆3,812億円となっている。
歳入については、租税等の収入は69兆4,400億円、その他収入は9兆3,182億円を見込み、公債金は35兆6,230億円となっている。

(3)主要な経費の概要
社会保障関係費については、出産育児一時金の増額や、出産・子育て応援交付金の継続実施など、こども政策の充実のために必要な経費を確保しつつ、国民負担の軽減のための毎年薬価改定の実施など、様々な改革努力を積み重ねた結果、前述のとおり、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成している。これらの結果、36兆8,889億円を計上している。
文教及び科学振興費については、小学校高学年における教科担任制の推進等のため、教職員定数の合理化等を図りつつ必要な措置を講じるほか、「科学技術立国」の観点から、量子・AI分野等の重要先端技術の研究開発を戦略的に推進するとともに、基礎研究・若手研究者向け支援を充実することとしている。これらの結果、5兆4,158億円を計上している。
地方財政については、臨時財政対策債の発行額の縮減や、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金償還額の増額を行うなど、地方財政の健全化を図りつつ、地方の一般財源総額を適切に確保することとしている。これらの結果、地方交付税交付金等として16兆3,992億円を計上している。
防衛関係費については、新たに策定された国家安全保障戦略等に基づき、スタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力、施設整備などの重点分野を中心に、防衛力を抜本的に強化するとともに、防衛力を安定的に維持するための財源を確保することとしている。これらの結果、6兆7,880億円(防衛力強化資金(仮称)への繰入れ3兆3,806億円を除く)を計上している。
公共事業関係費については、新技術を活用した老朽化対策やハード・ソフト一体となった流域治水対策など、防災・減災、国土強靱化に資する総合的な取組を推進するとともに、生産性向上のためのインフラ整備等についても重点的に取り組んでいくこととしている。これらの結果、6兆600億円を計上している。
経済協力費については、国際情勢が激変する中、G7広島サミット等を見据え、「自由で開かれたインド太平洋」をはじめとする取組を強化しつつ、ODAは現下の国際情勢にしっかりと対応できる予算を確保することとしている。これらの結果、5,114億円を計上している。
中小企業対策費については、価格転嫁対策を強化するほか、生産性向上や事業再生・事業承継に対する支援など、中小企業を取り巻く現下の課題に対応することとしている。これらの結果、1,704億円を計上している。
エネルギー対策費については、エネルギー対策特別会計において、カーボンプライシングで得られる将来の財源を裏付けとした公債を発行し、カーボンニュートラル目標の達成に必要な民間のGX投資を支援していくこととしている。これらの結果、一般会計では8,540億円を計上する一方、エネルギー対策特別会計では1兆6,563億円を計上している。
農林水産関係予算については、食料安全保障の強化に向けた畑地化などの対策を講じるほか、農林水産物の輸出拡大、森林資源の適正な管理による林業の持続的成長の推進、さらには水産資源管理を行う漁業者の経営安定対策等に取り組むこととしている。これらの結果、2兆2,683億円を計上している。
東日本大震災からの復興については、第二期復興・創生期間において、復興のステージに応じたニーズにきめ細かに対応するとともに、福島国際研究教育機構の設立などの取組を通じて「創造的復興」を成し遂げるため、令和5年度東日本大震災復興特別会計の総額を7,301億円としている。
加えて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や物価高騰、世界的な景気後退懸念など、予期せぬ状況変化に引き続き万全の備えを講じるため、4兆円の新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費、1兆円のウクライナ情勢経済緊急対応予備費を計上している。


4.結び
前述のとおり、令和5年度予算は、歴史の転換期にあって、日本が直面する内外の重要課題の解決に道筋をつけ、未来を切り拓くための予算としており、関連法案と合わせて、国会での御審議を経て速やかに成立することが期待されている。
日本社会を次の世代に責任を持って引き継いでいけるよう、戦後日本が直面し、積み残してきた多くの難しい問題の解決を図っていくとともに、日本経済をしっかり立て直し、財政健全化に向けて取り組んでいく一助となればと考えている。
(以上)

図表.令和4年度補正予算(第2号)の概要
図表.令和4年度一般会計補正予算(第2号)フレーム
図表.令和4年度2次補正後予算フレーム
図表.令和5年度予算フレーム(概要)
図表.主要経費別内訳
図表.一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移